私的山in新潟 長岡 |
毒書生活分類(外国) 作者姓アイウエオ順 |
作者と借出日 |
題名と感想 |
ア |
ア |
ジョン・アーヴィング |
第四の手 |
2004
11/28 |
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今は無いサンリオ文庫で初めて「ガープの世界」を読んで衝撃を受けた。同じ題名の映画を見てB級映画風だったけど、まあ面白かった。この人の本はみんな出来は良いけどこの本は高い部類にある。素直に言えば面白いラブストーリーだった。 |
ア |
グレッグ・アイルズ |
ブラッククロス(下) |
2007
1/12 |
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数百人の犠牲で数万人が助かるのなら大義名分が立つという、ゲームのように数で人間を捉える指導者。囚人の中に自分の父親を発見した工作員は、みすみす父親が死ぬと分かって攻撃できるのか?囚人、ナチ、スパイ、工作員、それぞれの思いが交錯する。終盤は混沌とし過ぎかも。(竹) |
ア |
グレッグ・アイルズ |
ブラッククロス(上) |
2007
1/12 |
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第二次大戦末期、ヨーロッパ本土への上陸作戦を前に、ドイツ軍に毒ガスを使わせないために、連合国側も毒ガスを持ち報復可能を示唆する目的で強制収容所への毒ガス攻撃作戦を立てる。それが同盟国のアメリカに内密でイギリス独自でやることからさらに問題が難しく複雑化する。(竹) |
ア |
クロード・アヴリーヌ |
U路線の定期乗客 |
2018
4/8 |
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白昼、パリの大通りで男が射殺される。「U路線の定期乗客」名で警察への挑戦状が発見され、更に男が誘拐される。パリ警視庁の警部長が指揮を取るが、頭の良い犯人は上手を行く。登場人物が多く複雑な人間関係でストーリーが分かり難い。それなりの理由が分かって来る終盤はテンポが良くなり、全ての謎が解明する。古いが読み応えがある。(竹) |
ア |
ボリス・アクーニン |
アキレス将軍暗殺事件 |
2008 3/23 |
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ロシア人のファン・ドーリンを主人公にした歴史探偵小説。今回は主人公が久しぶりに祖国ロシアに戻って来て、ロシアの英雄の将軍の死亡事件を捜査する。見せ場はあるが盛り上がりが足りない。後半の暗殺者の生い立ちを描いている章の方が面白く、この小説がピリッと締まった。主人公の小姓として日本人が登場する。(竹) |
ア |
ボリス・アクーニン |
リヴァイアサン号殺人事件 |
2008 1/5 |
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ロシアで人気のファンドーリン・シリーズ3作目。1878年のパリで起きた大量殺人事件の犯人を追ってインド航路の旅客船に乗り込むフランス人警部。そこで日本へ行く主人公と遭遇、謎解きが始まる。TVで言えば2時間ドラマの娯楽サスペンス風。ガチガチのサスペンスと違い、優雅にゆったりと楽しめる。1作目よりは出来が良い。(竹) |
ア |
ボリス・アクーニン |
堕ちた天使 |
2007
6/19 |
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書評は大絶賛で読む前の期待は高まったが、それ程でも無くガッカリした。著者はロシアの日本文学研究家。100年以上前の帝政ロシアを舞台にしたサスペンスで、ロシアにおける中間小説として書いたらしい。筋書きが主人公を活躍させるためのご都合主義が目立ち、楽しめない。シリーズ物だが次を読む気にはならない。(竹) |
ア |
ダグラス・アダムス |
宇宙クリケット大戦争 |
2012
11/16 |
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SFスラップスティックの銀河ヒッチハイクガイドシリーズ3巻目の完結編。続けて読まなかったので筋や登場人物を忘れてしまっていた。クリケットを知らないので調べてから読み始めたがその必要はない(巻末の解説で充分)。宇宙の滅亡を救うというスケールはデカイがスケール感がないのが良い。単にバカバカしいだけではなくイギリスジョーク?満載。(竹) |
ア |
ダグラス・アダムス |
宇宙の果てのレストラン |
2012
7/18 |
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「銀河ヒッチハイク・ガイド」の続編で、地球を破壊された後、生き残りの地球人2人と宇宙人2人とロボット1台が宇宙を珍道中する。さらにハチャメチャ度合いがエスカレートし、時間も空間も壮大なスケールで変化し、SF気分を満喫出来る。ただコミカルだけではなく所々でサビを効かせてピリッとした味も出している。3作目は「宇宙クリケット大戦争」。(竹) |
ア |
ダグラス・アダムス |
銀河ヒッチハイク・ガイド |
2012
5/2 |
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イギリスナイズされたSFスラップスティックコメディ。地球が消滅する寸前に地球人になりすましていた宇宙人に誘われ、地球を壊した宇宙船にヒッチハイクする。次から次に奇想天外な展開で退屈しない。こういうのは嫌いじゃないが、日本人の自分にはちょっとくすぐりがピンとこないのは仕方ないか。続編があるというので借りてみよう。(竹) |
ア |
ジョン・アップダイク |
メイプル夫妻の物語 |
2018
7/15 |
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アメリカの中流家庭の夫婦の20年の物語。作者の自伝的小説という。60年前という古さを感じさせないのは、世相や仕事や子供達さえもあまり介在させないで、主に夫婦の心のうちという普遍的のものを描いているからのよう。互いにキライでは無いのに離婚に向うというのは、自分の生き方を重視するアメリカらしい。離婚が破局とはなっていない。(竹) |
ア |
ジョン・アップダイク |
帰ってきたウサギU |
2010
4/6 |
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ウサギは自分の恋人が黒人の男を家に引き入れた事も許してしまう。類は友を呼ぶ典型で黒人や若い女もだらしがなく麻薬や性で近所の問題になるのに自分の子供への影響を考えないウサギ。自分からこの情況を変える事が出来ず、悲惨な事件が起きる。本が古い(32年前)ので翻訳の用語が古いが、小説としての出来は良い。好みの問題。(竹) |
ア |
ジョン・アップダイク |
帰ってきたウサギT |
2010
4/6 |
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ウサギ三部作のニ作目。妻の不注意で二人目の子供を亡くしたウサギは妻に優しく出来ず、妻は子供を置いてウサギの元から出て行ってしまう。妻は恋人と暮らし、ウサギは歳若い女を家に入れる。ベトナム戦争や黒人問題や麻薬や性の問題などアメリカの世俗的な事を織り込んだ一般庶民の小説。ウサギの不甲斐なさを描くアンチ成長物語。(竹) |
ア |
ジョン・アップダイク |
走れウサギ(下) |
2010
3/2 |
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親の虐待や高校や兵役でのイジメ等の性格を捻じ曲げるような経験しない普通の青年が、結婚をすると非道徳的になる。社会人の責任を回避し自分の欲望のままに行動する。妻の妊娠を逃れ恋人のもとに行くが、妻の出産で元に戻る。これで円満な家庭をと思ったら、青年の性根は変らず大きな災難を引き起こす。読者は青年の不明をじれったく思う。(竹) |
ア |
ジョン・アップダイク |
走れウサギ(上) |
2010
3/2 |
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取り柄と言えばバスケで、高卒後軍隊を経験し早い結婚をして次の子も産まれるという「ウサギ」というあだ名を持つ青年の話。漠然と今の生活が嫌になり家出をして他の所に転げ込む。計画も生きる目的も無く宗教にとらわれず、いざという時は他人に頼る自分勝手な若者の姿を描く。倫理感は無いが自分に正直に生きる。庶民の新しい生き方か。(竹) |
ア |
ジョン・アップダイク |
同じ一つのドア |
2009
10/24 |
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第2次大戦の戦中戦後に青春を迎えたアメリカの作家の短編集。内容もその体験に即している。特に大きな事件が起こるわけではなく普通の生活の中での何気ない出来事から人間の気持ちを描いている。少年や若い夫婦の生活を描いているものが多い。今の小説と比べると泣きを抑えあっさり感を出している。泣かさない程度に自分の心を揺する。(竹) |
ア |
マーガレット・アトウッド |
侍女の物語 |
2019
3/15 |
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女は読み書きを禁止され、受胎可能な者はエリート達の子供を生む道具にされる。中世のような状態だが近未来のアメリカ。ユートピアの反対の世界。主人公の女の淡々とした生活が語られる。オンナの意識が充満していて読む方(男)としては息が詰まりそう。劇的なものはあまり無いので尚更面白味が無い。文庫だが500ページを越え重い。(竹) |
ア |
マージェリー・アリンガム |
クリスマスの朝に キャンピオン氏の事件簿V |
2018
6/26 |
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素人探偵キャンピオン氏の短編集のはずが、1編の中篇(長編)と他1編の短編を収納。しかも表題となるのが短編。でも作者の優しさに溢れている。大部分を占める「今は亡き豚野郎の事件」に優しさは無く、幼少時からの悪人が大人になっても悪人で良い死に方をしない。主人公は身体を使って解決をするものの失恋をする。人間的な探偵が良い。(竹) |
ア |
マージェリー・アリンガム |
幻の屋敷 キャンピオン氏の事件簿U |
2017
7/4 |
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警察に属さない素人探偵が主人公の2番目の短編集。構成が自由で主人公が全て謎解きをする訳では無い。「面子の問題」は解決さえもしない。それに極短い作品もある。今なら編集者にもっと膨らませと言われている。舞台は半世紀より前のイギリスだが、古さを感じないのは今も格式ばっていると思われているせいか。それが逆に親しみを持つ。(竹) |
ア |
マージェリー・アリンガム |
窓辺の老人 キャンピオン氏の事件簿T |
2017
4/2 |
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知名度は劣るがクリスティと並んで英国を代表するミステリー女流作家の短編7品収納。素人探偵のキャンピオン氏が主人公。この人物も巻末の作者のエッセイによると仮の姿らしい。そこまでの役作りの必要があるかどうかはともかく、頭脳だけで解決するのではなく、時には間違いもし、身体を張ったりするのは人間らしい愛すべき探偵と言う事が出来る。(竹) |
ア |
マージェリー・アリンガム |
屍衣の流行 |
2014
11/15 |
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紳士探偵キャンピオンシリーズ。1938年作で前に読んだ「霧の中の虎」より前の作品らしい。ファッション業界に身を置く主人公の妹が惹かれる男性を得意客の既婚の舞台女優に横取りされ、終には殺人事件が起きる。人物描写は繊細で申し分無いがミステリーとしては伏線が薄く紛らわしい描写があり分かり難い。人物が多く複雑にし過ぎる嫌いあり。(竹) |
ア |
マージェリー・アリンガム |
霧の中の虎 |
2013
2/2 |
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イギリスの三大女性推理作家の一人という。しかし、アガサ・クリスティが群を抜いていてこの作家も含め他の二人は始めて聞く名前。舞台は第2次大戦後の混乱のイギリス。脱獄犯が狙う宝を探偵、警官、司祭が協力し守ろうとする。善人の存在感が薄いし、悪人は態とらし過ぎる。筋が情に流される感じがしてこういう女性作家は好きではない。(竹) |
ア |
ニコロ・アンマニーティ |
ぼくは怖くない |
2016
9/6 |
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イタリア南部の貧しい家庭に育つ9歳の少年が、廃屋の中で鎖に繋がれた少年を見つける。親に言おうとするが最初は帰宅が遅れ、親が怒って言い出せなかった。そのうち真実が分かるにつれ別の意味で言い出せなくなる。ミステリー的な展開だが割合ストレートでその要素は少ない。少年が閉塞的な状況で何が大切を考え行動する所が感動的。(竹) |
イ |
イ・ギホ |
誰にでも親切な教会のお兄さんカン・ミノ |
2021
6/13 |
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韓国作家の韓国人の名前が入った短編7作とエッセイみたいなあとがきを収める。韓国の小説を読むのは、新型肺炎で行けなくなったので韓国の息吹を感じたいからで、充分に堪能した。韓国ドラマを観るとダサいと言われる名前があるようだが、ピンと来ない。男女の区別さえも分からない。解説によるとこの中に出てくる名前は一般的な名前らしい。(竹) |
イ |
グレッグ・イーガン |
ゼンデギ |
2018
10/12 |
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イラン駐在オーストラリア人記者と、イラン人女性研究者の章が交互に記される。後年、記者は結婚し子をもうけるが妻を亡くす。研究者はイランでヴァーチャル・リアリティ(VR)の会社に勤務。記者はガンに罹り、子の行く末の為に自分をVR化したいと願う。終盤、子の為というのにその子に感情移入出来ず。幼いから仕方が無いが小説として残念。(竹) |
イ |
グレッグ・イーガン |
白熱光 |
2017
12/26 |
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肉体では無くデータとして宇宙を飛び回れる時代に、未踏の宙域があり、その中に故郷の星を飛び出して危機に曝されていた集団があった。助けに行く方と孤立する集団が交互に描かれている。一言で言うと難解。全てを理解して読み進むには相当の知識がいる。結局は分からない所はそのままにしたり後書きを見たりした。面白く無い事は無い。(竹) |
イ |
グレッグ・イーガン |
プランク・ダイヴ |
2013
4/19 |
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現代のSF第一人者のオリジナル短編集。人間は様々な方法で永遠の命を得た。人体改造やクローンや数値化されたデータとして或いはそのデータをロボットに移して。今は生きるだけで精一杯だが不死になったらどう生きればいいのか、その答えがある。理数系に弱い頭にはついていけない部分もあるが、そのお陰で気持ち良く騙されて?楽しめた。(竹) |
イ |
グレッグ・イーガン |
TAPタップ |
2010
12/17 |
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グレッグ・イーガンの2008年に日本で編纂された最近の短編集。ホラー、SFを取り混ぜ10作を収める。ホラーでは「自警団」、SFでは「要塞」が好み。着想だけではなく筋や人物の配置も小説として優れている。自分の読解力不足の為、難解で面白さを感じにくいものもあるが、おおむね良好。やっぱりSFって面白い。(竹) |
イ |
グレッグ・イーガン |
ひとりっ子 |
2009
10/14 |
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この連続テレビ小説のような題名は現代ハードSFの巨匠の3番目の短編集。作品の殆どがSFとしてのアイデァも小説としての資質も優れている。昔々のハード的に弱いSF作家のあるいは漫画家の作品(傑作)を更にハード的に裏打ちして作り直したたようで、完璧に近いSF作品集。ハード的にも嘘っぽさが無く楽しめる。(竹) |
イ |
グレッグ・イーガン |
ディアスポラ |
2009
9/13 |
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30世紀の地球では肉体人間もいるが、多くは意識を持つソフトウエアとして存在する。中性子星の爆発で肉体人間は滅亡。原因を探るべく宇宙に飛び出す。宇宙ではさらなる災厄が待ち受けていた。無駄に太った所が無く締まった内容になっている。ただし難解で充分には理解せずに読み進めたが、それでも結構面白かった。(竹) |
イ |
グレッグ・イーガン |
万物理論 |
2009
4/5 |
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時は2055年で映像ジャーナリストが無政府主義者の人工島での万物理論の発表会の取材に行く。カルト集団の妨害工作やテクノ集団の人工島への攻撃が起きる。死者を甦らせる手術、ジェンダーの自由(身体の変更、脳の変更)、人工島の組成、そして題名にもなっている万物理論。アイディアも良いが筋も良い。深みのあるSF小説。(松) |
イ |
グレッグ・イーガン |
宇宙消失 |
2009/
1/4 |
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ナノテク全盛の近未来で探偵は失踪人探しを依頼される。太陽系を覆う黒い球体、その出現をきっかけに出来た狂信的集団のテロ、頭脳改変のモッドを武器に探し回る探偵、世界の全ての根源となるべき量子論の新解釈。理解し難い所も含めてリアリティに富み、ストーリーも背景も小道具も申し分の無いSF作品。(松) |
イ |
グレッグ・イーガン |
順列都市(下) |
2008/
11/18 |
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男はプロジェクトの為、仮想空間に内包する実験空間の惑星に原始林や生命体を作るよう依頼する。仮想空間で7000年が経ち、実験空間内では30億年が経つ。生物が進化する事で仮想空間に影響が出る。本当らしいと思う理屈は、自分の理解力不足のような気もする。ただ、仮想空間を維持するコンピュータやその場所、電源については説明無。(松) |
イ |
グレッグ・イーガン |
順列都市(上) |
2008/
11/18 |
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人格や記憶を持ったコピーという意識がコンピュータ内の仮想空間で生きている。コピーはそこから現実世界を操っている。コピーを持つ富裕層は現実世界に君臨し続ける。だが政治的変化を憂慮していた。そこに不老不死を売る男が現れる。精緻なSF世界が見事。リアルで無理なく没入出来、破綻が無い。ただ自分には理解しにくいのが難点。(松) |
イ |
グレッグ・イーガン |
しあわせの理由 |
2008 9/26 |
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SF短編集。各編が多彩でアイデアも優れてハード面も秀逸で傑作。表題作は男が脳腫瘍の為にしあわせを感じる物質が分泌されるが腫瘍を完治して全くしあわせを感じなくなってしまう。年数が経ち神経を再生する技術が確立される。さて、またしあわせを感じる事が出来るようになるのか?「アルジャーノンに花束を」のような精神的な葛藤を描写。(松) |
イ |
ジャネット・イヴァノヴィッチ |
私が愛したリボルバー |
2020 5/16 |
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イ |
カズオ・イシグロ |
クララとお日さま |
2022
4/19 |
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病弱な少女の友達として買われた少女型ロボットのクララ。太陽に宗教的な念を持ち、少女を助けようとする。でも、それが正しいのかどうかが分からないからハラハラする。ロボットが語る世界は格差があり分断された世界のようだ。ロボットが自分の機能を阻害させてまで少女を助けようとするのは童話の「幸福の王子」のよう。穏やかで悲しい。(竹) |
イ |
カズオ・イシグロ |
忘れられた巨人 |
2018
4/26 |
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仲睦まじい老夫婦が、遠くで暮らしている息子に会いに旅に出る。人々は竜の息により昔を忘れている。出会う騎士はその竜退治に来ている。記憶を取り戻す事は、昔の民族間の戦争での憎しみをも取り戻す事になる。体裁はファンタジーだが、現在に通じる問題を隠喩として含んでいるので暗く重い色調で描かれている。読むのに時間が掛かった。(竹) |
イ |
カズオ・イシグロ |
遠い山なみの光 |
2017
6/21 |
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今はイギリスに住む日本人女性が、20年以上も前に住んでいた戦後間もない頃の長崎の生活を回想する。その会話から複雑な身の上が想像されるが、明らかにはされない。日本でもイギリスでも暗い情景の中で生きる女性。ただその会話で雰囲気を心に染み入らせるような小説。作者の最初の長編でなければ二重人格の回想と深読みしそう。(竹) |
イ |
カズオ・イシグロ |
わたしたちが孤児だったころ |
2017
4/13 |
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上海で生まれ育った青年はイギリスでひとかどの探偵となり、幼い頃に失踪した両親を探しに、第2次大戦直前の上海に戻る。前作の「充たされざる者」程では無いが主人公の不確かさが不穏な雰囲気をもたらし、読者としては警戒しながら読み進んだ。最後に全貌が明らかになるが、こういうあやふやな小説は好きでは無い。探偵としての場面も無い。(竹) |
イ |
カズオ・イシグロ |
充たされざる者(下) |
2017
3/1 |
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音楽家は人に頼まれ右往左往し本来の仕事が出来ない。町はだまし絵のように不思議な繋がりを持っている。小説自体が、様々な方向から見える顔を一つの絵として書きあげた抽象画のよう。要点を言えと言いたくなる様な言葉の奔流は読む者を徒労感に捕らえる。理解出来ず先も見えない苦役をしているよう。前作でファンになったがこの作には閉口。(竹) |
イ |
カズオ・イシグロ |
充たされざる者(上) |
2017
3/1 |
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〈木曜の夕べ〉の出演で訪れた町で住民達の私的な要望に振り回される音楽家。自身さえ定かでは無い事で右往左往する。不条理な内容で、冗長で一方的な話が続き不安感をかき立てる。ただもう崖っぷちを歩くような状況に、いっその事奈落に落ちてしまえと思ってしまう。400ページを超える長さは退屈の一歩手前で読者に忍耐を押し付ける。(竹) |
イ |
カズオ・イシグロ |
夜想曲集 |
2017
1/22 |
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今ではイギリスを代表する作家と言われる、日系イギリス人の著者の短編集。副題通り5編を収納。著者の経歴にミュージシャンを目指していた頃があるのでその経験からの短編集と思って読む。解説にあるように落ちの無い結末が多い、一つ前の作品のように日本でもその形態は多いが、読後に残らない。わざとらしくない結末は難しいか。(竹) |
イ |
カズオ・イシグロ |
浮世の画家 |
2016
12/24 |
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戦争に協力した過去を自覚し戦後に隠居する画家。心には傷が残り自分を守る為に無意識に記憶を変えてしまう。価値観が大きく変わった時期の悲劇とも言えない普通の事かも知れない。こういう物語を戦後生まれで日本には5歳までしかいなくて後はイギリスで暮らした人が書き、しかもイギリスの賞を貰うなんて、イギリス人って文学に造詣が深い。(竹) |
イ |
カズオ・イシグロ |
日の名残り |
2016
12/3 |
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舞台は今から60年前のまだ第2次大戦の余波が残る頃のイギリス。貴族の屋敷に勤め、今はアメリカ人を主人に持つ執事の旅の途中の回想の物語。緻密な歴史を背景に古き良き英国の没落を執事の人生にからめた申し分の無い小説。書かれたのは27年前でブッカー賞受賞だが、逆にこの小説により日本でのブッカー賞の評価を上げた気がする。(松) |
イ |
カズオ・イシグロ |
私を離さないで |
2016
9/6 |
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介護人をしている女性が育った施設での事を回想する。場所はイギリスのようだ。少しずつ異様な状況が分かってくる。激しい出来事が起きてもおかしくない設定だが、あくまで淡々と女性の語りは続く。それはクライマックスでさえそうで、だからこそ読む者を揺さぶるのかもしれない。映画化もされ、日本でもTV化もされたという。知らなかった。(松) |
イ |
マイケル・イネス |
霧と雪 |
2012
9/8 |
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貴族の屋敷で銃撃事件が起こるというアプルビイ警部ものだが本人は九章から登場。登場人物が多くしかも身内同士なので人物の説明と家系図を別紙に書かないと話が見えてこない。後半には登場人物それぞれが考えた真相を語るようになると読む方も混乱。最後の結末はちょっとガッカリ。謎解きを楽しむ小説では無いのでまあいいか。(竹) |
イ |
マイケル・イネス |
アリントン邸の怪事件 |
2012
5/25 |
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イギリスの元警視総監のアプルビイを主人公にしたシリーズ物。最近代々の荘園を買い戻した元科学者の家に招待され、感電死した遺体を発見する。イギリス上流社会の気取った風俗が面白い。44年前に書かれたふわっとしたミステリー。アプルビイ夫妻の描写が歳を感じさせないのが不満。結末の主人公の態度は今は警官ではないといっても疑問。(竹) |
イ |
マイケル・イネス |
証拠は語る |
2012
4/14 |
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イギリスの大学で隕石に押し潰され教授が死ぬ。スコットランド・ヤードの警部が地元警察とともに事件の謎を解く。隕石という意外な凶器、俗物的で味のある教授たち、ヒットラーの台頭による不穏な世情など、道具立てに事欠かない。これぞ本格推理小説。1943年作で、舞台も第2次大戦前のイギリスだが、古臭さは感じさせずスイスイとページが進む。(竹) |
イ |
ブラスコ・イバーニェス |
血と砂 |
2007 9/28 |
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スペインの闘牛士の物語。人物も風俗も良く書けていて面白い。しかし昭和14年の翻訳は江戸言葉を遣う外国の物語という感じ。しかも、この本は文庫本でただでさえ小さい文字なのに、旧仮名づかいと字画の多い旧漢字は非常に読み取り難い。ふり仮名はさらに小さく老眼の度が進んだ気がする。(松) |
イ |
アーナルデュル・
インドリダソン |
厳寒の町 |
2022
5/1 |
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アイスランドの警察小説5作目。10歳児童が殺される。タイ女性とアイスランド男性の息子。指揮を執るエーレンデュル警部や部下の私生活やトラウマもシリーズの定番。2005年作品で当時のアイスランドの移民の現状も描かれている。現在幸福度が世界3位と言われるが、それから変わったのか。入管の暴力が報道される日本は遅れている。(竹) |
イ |
アーナルデュル・インドリダソン |
湖の男 |
2021
12/29 |
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アイスランドの警察小説の第四作。家族と別れ孤独に暮らしている主人公。前作では立ち直れなかった娘。この回は初めて息子が登場する。ストーリーは湖でソ連製の盗聴器を縛り付けられた骸骨が出てくる所から始まる。大戦後にアイスランドから東ドイツに留学した学生達の生活がその背景にある。人と国の歴史が物語に深みを与えている。(竹) |
イ |
アーナルデュル・
インドリダソン |
声 |
2021
8/17 |
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アイスランド警察小説のエーレンデュル捜査官シリーズ第3弾。ホテルのドアマンが殺される。ドアマンにボーイソプラノのスターの過去あり。その家族の確執は捜査官自身の弟を亡くした過去にも繋がる。離婚後、長年逢わなかった娘が麻薬中毒なり現れる。過去を悔やみ現在を改めようとしている捜査官。弱いものが更に虐げられる結末は悲しい。(松) |
イ |
アーナルデュル・
インドリダソン |
緑衣の女 |
2021
4/29 |
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レイキャビクで数十年前の骨が見つかる。当時は第2次大戦中の混乱期。酷い家庭内暴力があったり強姦されて失踪したりと、捜査の過程で様々な人の過去が明るみに出る。自身も別れた妻や娘からの憎悪を受ける捜査官。人の心の動きが丁寧に描かれている。現在と当時の物語が交互に語られクライマックスで感動する。結末は平静だが面白かった。(松) |
イ |
アーナルデュル・インドリダソン |
湿地 |
2018
12/8 |
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アイスランドを舞台にした警察小説でシリーズ3作目。読むのは初めて。老人の死体が発見され初老の捜査官が調べるうちに過去の事件が浮き上がる。土地が狭いはずなのに土葬とか、罪に対して罰が軽いとかアイスランドの実情が見えて来る。少し引っかかるのが、犯行現場に置かれたメモ全文が最初は明らかにされないのは変だが、出来は良い。(竹) |
ウ |
ジョン・ヴァーリイ |
スチール・ビーチ(下) |
2013
9/14 |
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地球を追われたルナ人達はテクノロジーの進歩で不死性を得るようになるが、その影で自殺が増える。その原因はセントラル・コンピューターにあるのか。下巻は会話が多く冗漫で説明的で退屈。残り1/3でアクションが起きるが軽口が多くスピード感が無い。結末も観念的で詰まらない。滑り出しの上巻が良かっただけに残念。この作者も盛りを過ぎたか。(梅) |
ウ |
ジョン・ヴァーリイ |
スチール・ビーチ(上) |
2013
9/14 |
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著者8年ぶりの新作。内容は侵略者に地球を追い出された人間が他の惑星(この場合は月)に住むという八世界シリーズなのだが、辻褄を合わせて書いていない著者は八世界ものでは無いと言う。主人公と統治するセントラル・コンピューターのやりとりがメインで、背景となる風俗は今では珍しく無くなったとはいえ、ユニークで面白く退屈しない。(竹) |
ウ |
ジョン・ヴァーリイ |
ウィザード(下) |
2013
2/2 |
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旅はウィザード(魔法使い)達とガイアの従神を巡り、別の目的もあった。ウィザードとは元宇宙船船長で、ガイアの要請でティーターニスの出産を司るが、盟友が殺されガイアに反旗を翻す。RPGもファンタジーも好みではないが冒険小説として読めば面白い。しかし幾つかの山場を説明で終わっているのは勿体無い。日本では第三部「デーモン」は未訳。(竹) |
ウ |
ジョン・ヴァーリイ |
ウィザード(上) |
2013
2/2 |
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土星の軌道を回る異星の巨大宇宙船は内部が一つの世界を形成していた。神というべきガイアに願いを叶えて貰おうとした地球人は、条件であるヒーローになる為に冒険の旅に出る。SFの形をしたギリシャ神話風冒険譚。半人半馬のティーターニス達が魅力的で陰の主人公とも言える。三部作の一の「ティーターン」を昔に読んだが内容を覚えていない。(竹) |
ウ |
ジョン・ヴァーリイ |
バービーはなぜ殺される |
2012
12/11 |
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9作を収める1980年のSF短編集。この珠玉の本を今まで知らなかったのは自分がSFにハマっていた頃よりも10年程あとの為か。ヴァーリイ独自の八世界という異星人に地球を侵略された後の世界を舞台にする作品が多い。殆どの作品はアイディアや筋書きは素晴らしく面白い。というよりも自分が理想とするSFはこういうものだと再認識した。(松) |
ウ |
ジョン・ヴァーリイ |
へびつかい座ホットライン |
2011
7/1 |
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宇宙からの侵略で地球を追われた人類は太陽系で新たな文明を築く。その原動力になったのがへびつかい座からの最新テクノロジーを満載した信号。侵略者とは?へびつかい座星人とは?不死を乗り越えた人類に新たな脅威が!これぞSF。これが1977年に書かれたなんて信じられない。今まで読まなかった自分も信じられない。(松) |
ウ |
アンドリュー・ヴァクス |
ハード・キャンディ |
2018
12/11 |
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私立探偵バーク第四作。最愛の女を失って本業のはずの探偵もやらず、強盗、詐欺をしている。結局は自分を取り戻すようだが、殺人、売春、麻薬、近親相姦、人身売買の荒んだ背景に読んでいてウンザリ。無法者仲間と築いている世界は共感出来ない。ジョーカーのようなキャラクターの強い人物で最後まで引っ張っているだけでストーリーが無い。(竹) |
ウ |
アンドリュー・ヴァクス |
ブルー・ベル |
2017
7/4 |
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バークとそのアウトローの仲間の物語。題名はバークに惚れた超弩級のストリッパー。バークはポン引きに売春婦を殺す奴らの探索を依頼される。バークは真相を暴き、仲間の力を借り罠を仕掛ける。今回は仲間の空手の達人は出ない。内容は新しい恋人との会話が多く、バークの心情がうかがえるがヤマ場が少ない。読み切るのに1週間かかる。(竹) |
ウ |
アンドリュー・ヴァクス |
赤毛のストレーガ |
2015
12/11 |
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無免許探偵が幼児ポルノの写真を取り返す為に動く。1987年作だからその頃のNYの雰囲気なのだろうが混沌として雑多で何でもありな印象。単純な正義は無く其々が信じるものを信じている。人物やストーリーと同じ位、この背景を大事に描いている。主人公は強くは無いし信念も無いしカッコよくも無い。ネオハードボイルドと言われる所以か。(竹) |
ウ |
アンドリュー・ヴァクス |
フラッド |
2015
9/17 |
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悪漢探偵が仲間と共に女性の依頼者の親友の仇を討つ話というと古いが、これは1985年作のネオハードボイルド。主役だけではなく登場人物は魅力的で一つの世界が出来上がっている。しかし、あまりに詰め込み過ぎで小説としてファットになり、ストーリーが停滞している。スピード感が無く読んでいる途中で飽きてしまった。都合良過ぎる展開も鼻に付く。(竹) |
ウ |
アンディー・ウィアー |
アルテミス(下) |
2019
2/3 |
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破壊工作を受けた側が悪のシンジケートで、儲けようとした実業家が殺され女も命を狙われる。完全にシンジケート側の施設を破壊しようと仲間を集める。女の言うことだけを信じて自分達がどうなるかも考えず破壊に力を貸すのは変。やはり筋書きが嘘臭い。冷静に考えると女は金目当てのテロリスト。相手を悪の組織にしたからって免罪符にはならない。(梅) |
ウ |
アンディー・ウィアー |
アルテミス(上) |
2019
2/3 |
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近未来の月の都市で密輸を商売にしている若い女が、大物実業家の依頼で破壊工作を請け負う。2000人が住む月都市の成り立ちや観光が面白い。ただ、実業家が勝算も無く経験の無い女に大仕事を依頼したり、その報酬も口約束というのも変。悪事も、少ない人口なので身元が判明しない訳が無い。筋書きが安易過ぎて小説に入り込めない。(梅) |
ウ |
ボリス・ヴィアン |
うたかたの日々 |
2015
3/8 |
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現実にはありえない生活様式の中で恋しあう優しい青年達。愛の終了だけが現実的。非現実だからこそ悲しみとユーモアが交じり合って透き通るような美しさと軽やかさがある。ファンタジーというよりシュールレアリスムの手法で描かれた恋愛小説。自分としては好きな小説では無いが面白みは感じた。70年位前に書かれたらしいが古さは感じない。(竹) |
ウ |
エレイン・ヴィエッツ |
死ぬまでお買物 |
2018
3/30 |
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浮気した夫を殴り、高給な職を投げ出してフロリダに逃げてきた女性。高級ブティックで帳簿外の仕事を得て働くが、女性支配人も客も怪しい人ばかり。殺人事件が起きて、自分の身元を探られないようにと自分で調べ始める。男探しもあり、緩いユーモアミステリーという感じ。読み難くは無いが、ページ数が多過ぎる。減量すればもっとスマートになる。(竹) |
ウ |
コニー・ウィリス |
ブラックアウト(下) |
2019
3/1 |
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2060年からのタイムトラベルだが、確立された技術ではないのに一人ずつしかも多数の学生を過去に送るのは無謀に思える。そこにストーリーの無理が見える。最後まで降下点とか回収チームで無駄な動きをする学生。小説の面白さでは無く、小説の構成の不備でハラハラというよりイライラを感じた。解決編があるとしてもその状況が長すぎる。(竹) |
ウ |
コニー・ウィリス |
ブラックアウト(上) |
2019
3/1 |
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大学タイムトラベルシリーズ3作目。「ドゥームズディ・ブック」は面白かったが「犬は勘定に入れません」はそれほどでもなく、さてこれはと読み進める。第2次大戦中のイギリスでの灯火管制(ブラックアウト)がテーマ。3人の学生がそれぞれの場所時間で過去を体験する。危険な場所の割には管理が雑なのが気になった。これがSFの三冠とは思えない。(竹) |
ウ |
コニー・ウィリス |
犬は勘定に入れません(下) |
2010
1/24 |
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ビクトリア朝時代に逃れた主人公は歴史に齟齬をきたさないよう人物の出会いを操作しようとするが上手く行かない。この時間の流れを司るものとは何?これを神と言いたいのかな。こういう情緒的な時間SFは好きではない。ただの恋愛ユーモア小説ではないか。だから女性作家のSFは嫌いなんだ。偏見と読んでもらっても結構です。(竹) |
ウ |
コニー・ウィリス |
犬は勘定に入れません(上) |
2010
1/24 |
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時間旅行ユーモアミステリ。時間について様々な解釈があるがこの作は単一世界で過去を改変出来ないという決まり。改変しようとすると他の事が起こって歴史は同じ結果になるというもの。ただし、それは歴史上の大きな出来事で小さな出来事は改変可能。第2次大戦中の物探しからビクトリア朝の人探しへ。これが1999年ヒューゴー賞とは。(竹) |
ウ |
コニー・ウィリス |
ドゥームズデイ・ブック(下) |
2009
5/17 |
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中世の女子学生は周りの看病で全快するが、帰る為の出現地点が分からなくなる。21世紀ではインフルエンザが猛威をふるい、タイムトラベルが出来なくなってしまう。このインフルエンザの猛威は、今の豚インフルエンザの流行にオーバーラップして身近に感じられる。この近未来は固定のTV電話はあるが携帯電話の無い世界なのが変。(松) |
ウ |
コニー・ウィリス |
ドゥームズデイ・ブック(上) |
2009
5/17 |
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使い古されたSFタイムトラベル物だが、魅力的な登場人物と文学的味付けで面白いものに仕上がる。21世紀半ばに女子学生が調査の為に12世紀のイギリスにタイムトラベルする。その直後に21世紀でインフルエンザが蔓延する。12世紀の女子学生も罹病。感染原因の謎を引っ張り過ぎの感があるが面白い。ヒューゴー、ネビュラ、ローカス受賞作。(松) |
ウ |
ロバート・チャールズ・
ウィルスン |
世界の秘密の扉 |
2010
11/20 |
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別の世界に移動出来る能力を隠して普通に生きて来て子供もいる女性が、謎の男に追われ子供と共に逃げるが、自分のアイデンティティーを知ろうと困難に立ち向かう。パラレルワールド家族SFと言ったところ。主題が家族愛に偏っていて、少し違った別の世界というパラレルワールドらしい面白さも、超能力で冒険するワクワク感も、薄まってしまった。(竹) |
ウ |
ロバート・チャールズ
・ウィルスン |
時に架ける橋 |
2010
9/5 |
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離婚し故郷に戻った青年が買った家の地下のトンネルが過去のニューヨークに繋がっていた。プロローグは先を期待させるSF活劇だったが、本編になると次第に理屈っぽくなり、SFらしい展開が見られない。使い古されているかもしれないが、過去に行ってする常套手段を展開したほうが面白かったと思う。それでも読み進むのに難儀はしなかった。(竹) |
ウ |
ロバート・チャールス
・ウィルスン |
無限記憶 |
2010
6/20 |
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時間封鎖(上)(下)の続編。40億年に渡って地球の時間の流れを遅らせた「仮定体」はインド洋に未知の惑星に繋がるゲートを作った。今回はゲートを越えた先の新世界が舞台。メインテーマはやはり神のような存在の「仮定体」。壮大なスケールのSFだが前回に比べると飛躍がなく、謎が謎として残るので消化不良だ。次回作に期待する。(竹) |
ウ |
ロバート・
チャールズ・ウイルスン |
時間封鎖(下) |
2010
2/12 |
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火星では移住した人類が独自の文明を育て、地球に一人の火星人がその成果と共に降り立つ。シールドの正体を探る計画が立てられる。このSF小説のスゴイ所はプロットという大風呂敷を広げちゃんと畳んで辻褄を合わせているし、親子の葛藤や友情、報われぬ恋など、個々の人間の描き方も良くてSFとしても小説としても面白く素晴らしい。(松) |
ウ |
ロバート・
チャールズ・ウイルスン |
時間封鎖(上) |
2010
2/12 |
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ある日地球全体がシールドに包まれ、その中で偽の太陽が輝く。シールド外では時間が一億倍早く流れる。人類は打開策として火星を地球化しようとする。この計画にかかわる双子の弟との友情やその姉との恋を交えて、壮大の中にも豊かな人間模様を描いている。なぜか、この小説には既視感がある。。2006年ヒューゴー賞。(松) |
ウ |
ヴァーナー・ヴィンジ |
最果ての銀河船団(下) |
2009/
8/4 |
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屈辱に甘んじ我慢に我慢を重ね長い雌伏の時を過した負け組が勝ち上がる山場が、会話が主なのは面白くない。スケールの大きな筋書きが最後には小さくなったしまった。クモ人の世界の技術的進化が早過ぎるし、どんでん返しも裏約束の存在は読者を騙すものだ。SFの醍醐味のハード的な味付けがごく薄い。これがヒューゴー賞とは思えない(梅) |
ウ |
ヴァーナー・ヴィンジ |
最果ての銀河船団(上) |
2009/
8/4 |
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人類の二つの商船団がクモ型生命体の住む惑星の商権獲得で戦闘になる。片方はだまし討ちで負け、勝った方も大きな損害。クモ人の技術を利用する為、進化するまで待つ事になる。敗者側の生き残りは騙され操られ利用される。設定も筋も面白いが派手な戦闘シーンが無いのとクモ人の表現の浅さと後半での中だるみが飽きる。(竹) |
ウ |
ヴァーナー・ヴィンジ |
マイクロチップの魔術師 |
2009
4/19 |
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近未来のアメリカでハッカー達の中から一国を牛耳る者が現れる。政府に雇われたハッカーがバーチャルリアリティーの世界で対決する。虚構から実在する人間への攻撃もある。終には最終戦争並みの惨劇になる。この題材を扱うにはページ数が少ない。しかも文庫本。無駄に字数を増やすのも困るが、少ないのも読み応えが無い。(竹) |
ウ |
ヴァーナー・ヴィンジ |
遠き神々の炎(下) |
2007 7/12 |
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犬型ヒューマノイドの星では両親を殺された姉弟が分かれて権力争いに巻き込まれる。救助チームに邪悪意識に操られた宇宙艦隊が迫る。宇宙ネットの無責任な書き込みで人間のいる星が破壊される。クライマックスを引っ張るだけ引っ張って大風呂敷を広げたが、どうも終わり方がスッキリしない。出だしが良かっただけに残念だ。(竹) |
ウ |
ヴァーナー・ヴィンジ |
遠き神々の炎(上) |
2007 7/12 |
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銀河系の中心部に進出した人類がパンドラの匣を開けたことから邪悪な超越意識が目覚め銀河世界を侵食していく。希望?を載せて脱出した宇宙船は進化程度が中世の犬型ヒューマノイドが支配する星に不時着する。希望?を奪取して邪悪意識に対抗しようとする救助チームの運命は?ヒューゴー賞受賞のこの作品はSFの面白さを堪能できる。(松) |
ウ |
ジャネット・ウインターソン |
オレンジだけが果物じゃない |
2004
11/16 |
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誤解を恐れずに言えば、書評を読んで「ぎすぎすしたレズ小説」ではないかと恐れていました。ところがぎすぎすしたなんてとんでもない。読みやすいし読んでみると面白い。少数派の人間の生き方が語られている。 |
ウ |
ジョン・ウィンダム |
呪われた村 |
2012
1/17 |
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UFOがイギリスの村に着陸し人々は失神してしまう。村に入ろうとした人間も同様で村が封鎖されてしまう。一日後UFOはいなくなったが、村の多くの女性が妊娠している事が分かる。そして生まれてきた子供たちは超能力を持つ新人類だった。1957年作で古典的侵略物SFだが、充分楽しめた。SFという前に小説としての骨格がしっかりしているからだ。(竹) |
ウ |
ジョン・ウィンダム |
トリフィド時代 |
2011
8/24 |
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大流星群を見た人達は盲目になるが、男は入院していて免れる。動く植物のトリフィドが逃げ出し人間を襲い始める。目が見える少数の者たちは其々の信念で行動する。博愛主義で盲目の人達を助けるのか、それとも人類を再興するために盲目の人達を見捨てるのか、男は悩む。文明批評が沁みた1951年の名作だが、この本の訳文は古過ぎる。(松) |
ウ |
ジョン・ウインダム |
チョッキー |
2011
8/2 |
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宇宙人と交信する少年の話。信じて欲しい人には信じてもらえないで、信じなくてもいい人に信じられて、どちらにしても少年に害を及ぼす。賢明だが心配し過ぎる母親を説得出来ない父親など、イギリスの一般家庭を良く描いている。あのSFの大家が優れたジュブナイル小説を書くなんて意外。まだ読んでいない本があったら読んでみよう。(松) |
ウ |
ドナルド・E・ウェストレイク |
殺しあい |
2022
8/13 |
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ニューヨークの地方都市の私立探偵が三度四度と命を狙われる。依頼を処理して探偵も汚職の片棒を担いで来た。市外からの改革圧力により、弱みを知られている市の中枢にいる人物の仕業らしい。市中の勢力が敵対し大規模な抗争に発展する。筋書きが粗く結末も中途半端だが、これが80年前のアメリカか。探偵小説の枠は超えている。(竹) |
ウ |
イーヴリン・ウォー |
愛されたもの |
2019
7/14 |
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イギリスからアメリカに移住した青年は詩人でもあってハリウッド映画界で仕事をしていたが、現在はペットの葬儀社に勤めている。人間の葬儀社に勤める女性に一目惚れするがライバルがいた。ナイーブな女性とドライなアメリカの風潮が悲劇を生む。人を好きになり愛を獲得するとは結局自己満足なのだと言っている。俯瞰で読むような作品。(竹) |
ウ |
イーヴリン・ウォー |
イーヴリン・ウォー傑作短編集 |
2019
1/18 |
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イギリスを代表する作家という。名前から女性だと思っていた。収められた15編は1930年頃で、内容も第一次大戦や没落した貴族の話が多い。以前読んだ長編の「ブライヅヘッドふたたび」は面白かったがこの短編もシニカルなものが多い。「ディケンズ好きの男」はSFにもありそうなシチュエーションで古さを感じない。他にも風刺がきいているものは面白い。(竹) |
ウ |
イーヴリン・ウォー |
黒いいたずら |
2016
11/8 |
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アフリカ東にある島で皇帝となった若者が革命で危機に陥る。難を逃れた皇帝の所に留学先だったイギリスから旧学友が来る。黒人の国でアラビア人やインド人、権益を狙うイギリス人やフランス人が入り乱れ、野蛮な事が巻き起こる。1932年作で訳も1964年のもの。昔だから出来た表現と思われるものが随所にあるが、それこそリアリテイを感じる。(竹) |
ウ |
イーヴリン・ウォー |
ブライヅヘッドふたたび |
2007 8/21 |
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第1次世界大戦から次の大戦の間で没落していくイギリスの貴族の生活を、付き合いのあった男の大学入学から従軍までを描く。池澤夏樹のエッセイで知った。結構長いので、エッセイに取り上げられたシーンの時化の続く客船の中の恋愛感情の高揚は、忘れた頃にやって来た。噛み締めて味わいが深くなるような純文学の面白さ。が、訳文は古い。(松) |
ウ |
サラ・ウォーターズ |
荊の城(下) |
2019
10/10 |
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下巻も第二部で途中までお嬢様が主役。第三部になって娘が主役になって結末に進む。娘が古巣に戻った所で殺人事件が起き、その結果泥棒一家は散り散りになる。下巻もまた人間も筋もおざなりで、会話や情緒的なもので構成され、逆転の結末も生かされず面白く無い。女性作家でもアガサ・クリスティのような緻密なストーリーを読んでみたい。(竹) |
ウ |
サラ・ウォーターズ |
荊の城(上) |
2019
10/10 |
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19世紀のロンドンで泥棒家業の家でスリに育てられた娘は、田舎のお城のお嬢様を騙す計画に乗った。お城で侍女となるが、その計画には裏があった。第一部はスリの娘から見た筋の展開、第二部はお嬢様と入れ替わる。別の視線からとはいえ同じ場面を同じようになぞるのは芸が無く、読んでいる方は退屈。基本の人間も筋書きも魅力を感じない。(竹) |
ウ |
サラ・ウォーターズ |
半身 |
2015
1/14 |
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19世紀イギリスで女囚監獄を慰問する老嬢。交霊中の事故により収監される霊能力者。慰問の度に霊能力者に深く惹かれて行く老嬢。表題は日本で命名。でも結末を考えると疑問。原題は引き付ける力。当時の雰囲気が良く出ているし宗教臭くない所が良いが情緒的で湿っぽい。こういう女性的な小説は苦手。サマセット・モーム賞などを受賞。(竹) |
ウ |
ミネット・ウォルターズ |
女彫刻家 |
2015
5/4 |
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母親と妹を切断し並べ直した犯行から彫刻家と異名をとる女性服役囚の事件を本にするよう女性作家が依頼を受ける。本人とも会見し誤審ではないかと疑問を持つ。結末までの展開に暴力場面もあるが緊迫感が無いし、結末もこじ付けのようで理由をスッキリと受け入れられない。女性作家特有(この作者)のもっさりした面が出て読後感がどんよりしている。(竹) |
ウ |
ミネット・ウォルターズ |
氷の家 |
2013
5/3 |
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イギリスの旧家の氷室から食い荒らされた遺体が発見される。警察は失踪した主人かと見込み捜査で妻を取り調べる。謎は広がるばかりで終盤まで謎のまま。登場人物は警官も含め全て怪しく、読者としての目線も定まらない。結果的には全ての謎が解き明かされるが、ミステリーを詰め込み過ぎた観がある。人物も背景も良く出来ているが混沌とさせ過ぎ。(竹) |
ウ |
ジョー・ウォルトン |
バッキンガムの光芒 ファージングV |
2013
3/20 |
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警部補は不本意ながらもイギリス版ゲシュタポの監視隊隊長となる。今回のもう一人の語りは養女にした殉職した部下の娘だが前2作に比べキャラがユルイ。現実と違う世界となった為か構成に難が見える。例えば監視隊に組織としてのスケール感が無いし、隊長に威厳が無いし裏の仕事の守秘が雑で緊張感が無く不自然。結末もミステリーのものでは無い。(竹) |
ウ |
ジョー・ウォルトン |
暗殺のハムレット ファージングU |
2013
3/20 |
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本編では警部補と女優による語りで構成。警部補は上司に脅かされ悩みながらも職務を続行。爆死事件の調査中にヒトラーへの爆弾テロの計画を知る。自分も含めファシズムに流される世の中でも正しい事を考える警部補。歴史改変物というより、少し間違えばこうなったかもしれない世界を表現。都合良過ぎる筋もあるが全体的に良く出来たミステリー。(松) |
ウ |
ジョー・ウォルトン |
英雄たちの朝 ファージングT |
2013
3/12 |
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第2次大戦後のイギリスの邸宅で殺人が起きスコットランドヤードが捜査。舞台となる世界は大戦末期にイギリスとドイツが平和条約を結んだという歴史改変物。警部補と上流階級の女性の交互の一人称からなり、読み始めると上流風俗と警察小説でも充分の面白さだが、歴史改変としてユダヤ人迫害ひいてはファシズムの怖さを表そうとし、成功している。(松) |
ウ |
ドナルド・A・ウォルハイム
&テリー・カー編 |
追憶売ります ワールド・ベスト1967 |
2022
5/1 |
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予約した本が届かずその一冊を取消。代りに自分の本棚から選んだ昔読んだ本。SFの短編が12編収納。表題にもなっている「追憶売ります」は映画「トータルリコール」の原作。フィリップ・K・ディックの名作だが感激が無い。もうSFに飽きて余程の設定か、SF+他の味付けが無いと楽しめない。7編で読むのを止めて、次の借りた本に移る。(竹) |
ウ |
カレル・ヴァン・ウォルフレン |
人間を幸福にしない日本というシステム |
2005
10/18 |
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日本は官僚独裁主義に支配されている。国民から選ばれた訳では無い官僚が日本を牛耳っている。説明をしない。無理を押し通す。失敗を認めない。責任を取らない。しかも正しいと思っている。官僚それぞれの縄張り争いに気を取られ、日本全体の国益を蔑ろにしている。政治家さえも歯が立たない。是非読んで。(松) |
ウ |
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ウ |
P・G・ウッドハウス |
比類なきジーヴス |
2016
8/28 |
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イギリスの有閑貴族の男とその惚れ易い友人が巻き起こす騒ぎを執事のジーヴスが納めるという短編集。男は損をするばかりか名誉も汚され全く良い所が無い。しかも執事は男の着る物にも口を出す。逆らうと助けて貰えない男は自主性が無くなる。特権階級への批判を込めたユーモア小説だが、余りに主人公が可哀相過ぎて面白さを感じない。(竹) |
ウ |
ジーン・ウルフ |
拷問者の影 新しい太陽の書@ |
2018
8/28 |
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かつては星間旅行もしていたと思われる惑星が中世の如くになった独裁者のいる国の制度としての拷問に携わる若者の物語。SFというよりはファンタジーで自分には苦手なのに敢えて読んだが再認識。背景は許すとしても論理的では無い筋の進行は退屈。それでも世界幻想文学大賞という。四部作の一つだが次を読む事は無い。面白く無いから。(梅) |
ウ |
ジーン・ウルフ |
ケルベロス第五の首 |
2008/
10/8 |
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SF中編を3作収めた本。表題作は地球から遠く離れた惑星で楼閣を営む親子の物語。他の2編も同じ背景の中で違う視線での作品。移住してきた地球人。抹殺された先住民。専制的な政治形態でいびつなテクノロジーをもつ社会。難解な部分を読み解く事が知性を刺激する。文学的な香りがする。(竹) |
ウ |
ジーン・ウルフ |
デス博士の島その他の物語 |
2008 7/6 |
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SF短編集。「アイランド博士の死」は未来の心身障害者が治療の為に人工の星に連れてこられる。その星の外殻は強化ガラスで内側に真水の海と島がある。その島がアイランド博士という人工知能の島。ボーっとして読んでいると肝心の部分を見落とし、面白さも見落とす。この辺が自分にとって難解な小説になってしまう。(松) |
ウ |
ヴァージニア・ウルフ |
ダロウェイ夫人 |
2015
2/5 |
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時代は第1次大戦後のイギリス。俗物的だが善良なダロウェイ夫人のある1日を登場人物の独白で構成している。様々な人の思念が飛び交っている小説。段落で切り替わる独白が後半は混交としてくる。1925年の作にしては、人の正直な気持ちを赤裸々に表しているのはこの当時としては画期的では。訳文の言葉が古いがそれも味というのものか。(竹) |
エ |
ウンベルト・エーコ |
フーコーの振り子(下) |
2008/
12/2 |
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出版会社の男達は、テンプル騎士団の謎を解き明かすまでに至る。そこで同じ謎を追っている秘密結社から狙われる。世界制覇を目指す者達とは誰か。じっくり読める小説で文学的な風味もあるが、消化の限度を越えたオカルト的な事物の羅列に脳は下痢を起こした。あの「薔薇の名前」の作者と聞けば、ああと納得。(松) |
エ |
ウンベルト・エーコ |
フーコーの振り子(上) |
2008/
12/2 |
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キリスト教の起源の前から続く神秘主義を、出版会社の男達が歴史を解き明かす作業を始めた。テンプル騎士団の隆盛と没落。秘密結社の動静。これでもかと言うほど中世の歴史の事実と類推が詰め込まれている。自分にはこの小説を楽しみながら全ての用語を理解するのは無理。さっと読み進んだ。手強い小説。(松) |
エ |
ブライアン・エヴンソン |
遁走状態 |
2014
8/30 |
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処女作でモルモン教を破門になったアメリカ人作家。19編の短編集。見かけから実験小説的なものが多い。設定は様々で現在や未来の崩壊した世界も描かれる。身近で普通の生活のように見えてもメタファーに思われる。自分には汲み取る力は無いのでそのまま受け止めるが、面白みは少ないが光る小品はある。中でも「九十に九十」は良い。(竹) |
エ |
アーロン・エルキンズ |
原始の骨 |
2010
12/3 |
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スケルトン探偵シリーズ15作目。主人公は愛妻とともに、スペインの南で地中海の出入口にある英領ジブラルタルに、会議の為に赴く。学者仲間との邂逅もそこそこにギデオンは突然殺されそうになる。またも殺人事件の渦中に投げ出される。ジブラルタルの特殊な位置や歴史が勉強出来た。こちらも馴染みのシリーズなので安心して読めた。(竹) |
エ |
アーロン・エルキンズ |
密林の骨 |
2009
5/30 |
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骨から推理しスケルトン探偵と呼ばれるギデオン・オリヴァーシリーズ。ミステリーだが、軽い読み味で、構える事無く物語に浸りきって安心して読み進められるし、当たり外れの無い、好きなシリーズ物の一つ。今回は友人の旅行業者とFBI捜査官とで観光で行った、ペルー側のアマゾン川上流の船ツアーで起こる事件を解く。(竹) |
エ |
アーロン・エルキンズ |
骨の城 |
2009/
3/27 |
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発掘された骨からその人物の特徴や年齢、仕事、趣味まで言い当てるスケルトン探偵の活躍は、もう十三作目(邦訳は七作目)になり、最初の感動は薄れたが、其々の人物描写が面白いし暴力場面の少ないマイルドミステリーは老若男女を問わず楽しめる。今回も海岸で犬が掘り出した小さな骨から主人公により事件が公にされる。(竹) |
エ |
アーロン・エルキンズ |
水底の骨 |
2006
6/3 |
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文庫本を買っていた時以来でスケルトン探偵は久しぶり。舞台はハワイ、友人のFBI捜査官と休暇を楽しむスケルトン探偵に墜落した飛行機に残された遺骨の鑑定を頼まれる。残念ながらこの結末は想像がついた。サスペンスを読みすぎると深読みしたのが当ったりする。普通に楽しめる小説も楽しめなくなるのはサスペンスファンの性(さが)。(竹) |
エ |
ミヒャエル・エンデ |
モモ |
2015
5/17 |
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大都会の寂れた遺跡に住み、老若男女の友達を持つ少女モモ。灰色の男たちが現れ巧妙に人々から時間を盗むようになり、モモを邪魔に思うようになる。モモは時間を司るマイスターを助け時間どろぼうと闘う。今読むと文明批判などと思うのが陳腐だが、少年の頃に出会いたかった作品。1973年作とあるのでタイミング的に読む機会が無かった。(松) |
オ |
ポール・オースター |
ムーン・パレス |
2022
4/1 |
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幼い時に母を亡くし伯父に育てられた少年。大学生の時に唯一の血縁の伯父を亡くす。自暴自棄になった青年を救ってくれた友人と後の恋人。その後、老人の相手をするという仕事をする。そこから徐々に血縁の存在に気付くようになる。三世代に渡る壮大な偶然の物語。都会生活や冒険旅行や恋愛などが詰まった歴史小説的な青春小説。(竹) |
オ |
ポール・オースター |
ミスター・ヴァーティゴ |
2012
10/6 |
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孤児の少年が修行によって空中歩行を獲得しショービジネスで成功するが、その後は紆余曲折の人生をたどる。SFともファンタジーとも違う、かといって純文学でもなくエンターテインメントとなるのか。紙芝居や無声映画で語られるような波乱万丈の物語を狙ったものだろうが、主題がはっきりしないし、後半はダイジェストで駆け足なので面白さが薄れる。(竹) |
オ |
ジェイン・オースティン |
エマ(下) |
2018
5/16 |
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二十歳そこそこの身分の良い娘だが、母を亡くし病弱な父親の面倒を見ている。といっても召使達はいるのだが。他人の結婚が趣味というおばさん的な性格で未熟ゆえに失敗もする。それを嗜める地主の独身男。物事はなるようになり、善女が善男と結びつき、そうでない人はそれなりの人と結びつくという結末。有閑階級が成り立っていた当時が不思議。(竹) |
オ |
ジェイン・オースティン |
エマ(上) |
2018
5/16 |
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200年前のイギリス上流階級の若い女性の普段の生活を捉えた小説。人の価値は身分が上か下かで判断される当時を描いている。主人公は歳若いが自分よりも年配の者に対しても辛らつな表現をする。この作者は、映画「ジェイン・オースティンの読書会」で知るが、好みでは無いし毎回同じようなシチュエーションなのに何故か結構読んでいる。(竹) |
オ |
ジェイン・オースティン |
分別と多感 |
2016
11/22 |
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205年前のイギリスの上流階級の恋愛小説。現在の感覚では理解し難い所がある。そういうものだろうと面白がって読む事が大切。婚約は当人達だけでするとか、男も女も身分と収入の具体額が問題となり結婚には必須とされるとか、使用人はいるのに小説では殆ど無視されるとか。それにしても最後のどんでん返しは力業という感じで優雅では無い。(竹) |
オ |
ジェイン・オースティン |
マンスフィールド・パーク |
2013
7/7 |
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文庫本688ページ3部作の大長編。1814年作で、イギリスの恵まれない女性が10歳から親戚のお屋敷に引き取られ18歳になり心身共に秀でた女性となり、若い紳士に見初められる話。如何に昔と言えど主人公の女性が堅苦し過ぎて共感が湧かないのと、上流階級なのに金の話が出るのはリアルな設定だろうが興醒め。全体にユーモアも足りない。(竹) |
オ |
ジェイン・オースティン |
説得 |
2012
11/16 |
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この作家の小説を読むのは2度目で前は「高慢と偏見」を読んだ。晩年の作らしいが似たような設定で、200年程前のイギリスの有閑階級の家庭恋愛物語。若い頃に恋をして周りの反対で結ばれなかった二人が7年の歳月の後に再会。登場するのは殆どが善意の人、それなのに個性があり軋轢が生まれる。ホンワカとした上品な物語で嫌いではない。(竹) |
オ |
ジェイン・オースティン |
高慢と偏見(下) |
2012
7/29 |
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イギリス地方地主家族の物語。美人で優しい長女、自立の精神を持つ次女、勉強好きな三女、流されやすい四女、我儘で享楽的な五女。長女の結婚話が流れて、次女が思わぬ人からプロポーズされ、五女の駆け落ち騒動があり、最後は落ち着く所に落ち着くという結婚騒動記。面白い中に感動もある。五女はモー娘のあの娘を思い出した。(松) |
オ |
ジェイン・オースティン |
高慢と偏見(上) |
2012
7/29 |
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映画(ジェイン・オースティンの読書会)でこの作家を知る。映画はこの作家の事を知らなくても充分面白かった。18〜19世紀の作家だが、恋愛というテーマは小説の古さを感じさせない。慣習などは違うが女性が自由を求める気持ちは今にも通じる。あまり風俗を出さず人間を描いているのが現代にも通じると思う。読んでいてもテンポがあり、ユーモアがあり面白い。(松) |
オ |
ユッシ・エーズラ・オールスン |
特捜部Q[8] アサドの祈り |
2022
10/20 |
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助手という立場で特捜部で働くアサドの全てが明らかになる。アサドを憎み妻子を人質にドイツでテロを目論む男。デンマークでは父母を殺してテロを企てる青年。特捜部は二手に分かれて事に臨む。それ以外でも盛り沢山な内容。新書で600ページ近い厚さだがどういう結末が待っているのか、ワクワクしながらページをめくる手が止まない。(松) |
オ |
ユッシ・エーズラ・オールスン |
特捜部Q〔7〕 自撮りする女たち |
2022
6/25 |
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デンマーク警察小説7作目。コペンハーゲン警察の未解決案件を担当するQ。助手の女性が極度に落ち込み、Qの仲間は殺人事件捜査の合間を縫い助けようとする。多数の事件は関連があり、助手の女性も巻き込まれる。新書で570ページと厚く、登場人物も多いが性格描写が巧みで、ストーリーにもハラハラさせられ飽きずに読み進められた。(竹) |
オ |
ユッシ・エーズラ・オールスン |
特捜部Q 吊された少女 |
2022
2/5 |
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左遷された警部補がアルバイトみたいな男女の部下を使い未解決事件を扱うデンマークの警察小説シリーズ第六弾。今回は17年前のひき逃げ事件を個人的に捜査していた警官が退官式で自殺し捜査を引き継ぎ新興宗教の教祖を追う。新書版で600ページを超えるボリュームで込み入った筋書き。でも人物が面白いから読み進められる。(竹) |
オ |
ユッシ・エーズラ・オールスン |
特捜部Q 知りすぎたマルコ |
2021
6/13 |
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デンマークのアフリカ援助金を着服する役人達。隠蔽の為に邪魔な人間を殺す。実行するのがロマの犯罪集団。専制的で将来は見えず危機を感じた15歳のマルコは逃げ出す。死体を見つけ特捜部との接点が出来る。シリーズ5作目。特捜部の警部補にも個人的な変化があり大河ドラマのよう。今回も色々詰め込まれ期待を裏切らず面白かった。(松) |
オ |
ユッシ・エーズラ・オールスン |
特捜部Q カルテ番号64 |
2021
1/13 |
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未解決事件を、それぞれに問題を抱えている警官一人と素人の男女のアシスタントで捜査するデンマークの警察小説4作目。不幸な生い立ちから断種された女性が係わる犯罪と、密かに人種を選別しようとする医師の犯罪。2010年現在と15年前を交互に経過を表す。500ページの大作。日本でも断種をの過去があり風潮のせいには出来ない。(松) |
オ |
ユッシ・エーズラ・オールスン |
特捜部Q Pからのメッセージ |
2020
9/13 |
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オ |
ユッシ・エーズラ・オールスン |
特捜部Q キジ殺し |
2020
3/14 |
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|
オ |
ユッシ・エーズラ・オールスン |
特捜部Q 檻の中の女 |
2019
12/11 |
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捜査中に2人の部下が死傷し、自身も心的にも肉体的にも怪我を負ったデンマークのベテラン刑事の新しい部署での活躍を描く。登場人物みんなが傷を持っていて人物描写も面白い。新しくアシスタントとして来た自称シリア人も謎があり物語に深みを与えている。シリーズ物の1作目で自分としては読書の金脈を掘り当てた気持。文句無く面白い。(松) |
オ |
ブライアン・オールディス |
スーパートイズ |
2017
5/5 |
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映画「A.I.」のモデルになったという「スーパートイズ」というSF。でも、3部あっても極短い短編で全部でも62ページにしかならない。他は、ショートショートよりは少し長い程度の短編集。作者はSF界の大御所だがこの作品は可も無く不可も無くだ。それにしても本の表紙(と背表紙)に張り紙を図書館がするというのは本への冒涜だ。多分栃尾図書館だろう。(竹) |
オ |
大森望 編 |
ここがウィネトカなら、きみはジュディ(時間SF傑作選) |
2011
2/10 |
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SFマガジン創刊50周年記念アンソロジーと銘打った時間SFの短編集。人生の後半を過ぎその残りも多くはないからこそ、時間というものをロマンチックに考えてしまう自分には好みのSF短編集。確かに有名なSF作家が名を連ねているが、目当てのものはなかった感じ。この素材ならもっと切なく心を打つ作品が作れたはずだが。(竹) |
オ |
キャロル・オコンネル |
愛おしい骨 |
2014
12/18 |
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二十年前に弟を失い故郷を離れた男が帰郷。玄関に人骨が置かれ未解決の失踪事件は進展かとマスコミが騒ぐ。ちょうど良い量の登場人物夫々が一癖も二癖ある様子で、人物描写は良いがサスペンスらしくなく淡々と進むストーリーは退屈気味。女性、女性した小説の組立や進行は、客観的には悪くは無いのだろうが個人的には苦手。好みでは無い。(竹) |
カ |
カ |
フィリップ・カー |
セカンド・エンジェル |
2006
11/28 |
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近未来の世界を舞台にしたSF。そこでは血液の病気が蔓延したため、血液自体が高騰し投機の対象にもなっている。それぞれの理由で月にある血液銀行を襲う者達の話。プロットはいいがストーリーは駄目な見本。脚本なら映像化で誤魔化せるが、小説としては全くなっていない。(梅) |
カ |
ブライアン・ガーフィールド |
ホップスコッチ |
2016
6/7 |
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閑職に追いやられ生きがいを見失った元工作員がCIAの謀略の数々を出版するとして自分自身を死のゲームに投じる。CIAやKGB等に狙われ逃げる元工作員。アイディアはとても良い。ワールドワイドに展開して行くが、盛り上がるべき逃走劇の後半はエピソードが小さく尻すぼみ。結末は許すとしても全体にバイオレンスが足りず筋書きも荒い。(竹) |
カ |
フレッド・カサック |
殺人交差点 |
2019
10/23 |
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中篇2編を収める。表題作は10年前の殺人がカメラのフィルムから明らかになり、手に入れた第三者が殺人者と被害者の母に証拠を競り合わせる。読者を誤誘導させる筋は良いとしても、理論的におかしい所や誤植もあり、キズありのサスペンス。もう一編は動機が分かり難い殺人事件。ドミノ倒しのように犯人の目的が達成される。ただ裏があった。(竹) |
カ |
フランツ・カフカ |
審判 |
2020
12/26
2014
1/25 |
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心当たりなく突然逮捕された銀行の若き支配人。拘束されず通常の生活しながら裁判の被告となる。得体の知れない裁判機構の人達と係わる支配人。個人ではどうしようもない何とも知れないものに管理されている不安感が出ている。第一次大戦末期に書き始めたようだが世相を反映したのか。未完成のものを没後に友人が編纂。後部に断片章有り。(竹) |
カ |
ポール=ガリコ |
ハリスおばさんパリへ行く |
2005
4/12 |
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いかにもジュニア文庫という表紙で大人にはとっつきにくいし、文章もひらがなが多く漢字にもルビを振ってあるが、内容は笑いありペーソスありで大人でも感動する。わざとらしい最近の関西系のお笑いよりは面白い。 |
カ |
ロレンゾ・カルカテラ |
スリーパーズ(下) |
2006
10/21 |
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作者はこれがノンフィクションだと言っているが、出来過ぎていて作り物感がする。大筋は作者の体験かもしれないが大幅に加筆修正されているようだ。内容は青春の友情物語と虐げられた者の復讐劇。どの場面も何処かの小説や映画から貰って来たような筋書きが思い付き、イマイチ。(竹) |
カ |
ロレンゾ・カルカテラ |
スリーパーズ(上) |
2006
10/21 |
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ミステリー好きがこの題名を聞けば、スパイ小説かと思うだろうがまるで違う。ニューヨークの暗部、法律とは別のものが支配する場所で生まれ育った少年たちの過ちと、それを償うべき少年院での看守による虐待の日々。それは少年たちにどんな影響を与えたのか。映画化もされた。(竹) |
カ |
ラーラ・カルデッラ |
ズボンがはきたかったのに |
2005
11/12 |
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イタリアの女の子が高校生のときに書いた小説。今から15年前に出版されイタリアだけでなくヨーロッパ各国やアメリカでもベストセラーになった。ユーモアはあるが爽やかではない青春小説。土地の因習が澱のように淀んでいる。高校生が書いたとは思えない悲惨な部分もある。(竹) |
カ |
ジョン・ル・カレ |
ナイロビの蜂(下) |
2021
10/21 |
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外交官は真実を探す旅に出る。死にそうな程の暴行を加えられ脅迫もされたが諦めない。愛する妻が殺されるのを止められなかったという思いがある。しかし金儲けに走る巨悪には個人の力は届かない。苦く悲しい結末。映画もこんな結末だったのだろうか。だったらカタルシスは訪れない。巨大企業によるアフリカでの不正は現実にもある。(竹) |
カ |
ジョン・ル・カレ |
ナイロビの蜂(上) |
2021
10/21 |
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ケニア在住のイギリス外交官の妻が殺された。妻はボランティアで現地での救援活動をしていた。妻は夫に迷惑をかけまいと独断で行動していた。夫はイギリスの警察による取調べと自分の調査で、ケニアでの製薬関係の会社の暗躍を知る。行動への布石だろうが、上巻は会話でのやり取りが多過ぎると感じた。映画化もされ、エンタメ性が高い。(竹) |
カ |
ジョン・ル・カレ |
スパイはいまも謀略の地に |
2021
2/27 |
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外国でスパイ活動をしてイギリスに戻って来た男は偶然バドミントンで若い男と知り合うが、後に防諜活動の対象の男と分かる。個人を越えるのが国家や組織の意向。自分自身を無くさないように生きるのは難しい。1963年出版の「寒い国から帰ってきたスパイ」で有名なスパイ小説家。これは2年前に88歳で書かれた最後の小説。その歳でスゴイと思う。(竹) |
キ |
ウィリアム・ギブスン
ブルース・スターリング |
ディファレンス・エンジン(下) |
2005
6/15 |
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上巻はパラレルワールドのSFサスペンスものとして読めたが、下巻に入ってその味が薄れ、イギリスの歴史や人物を知らないと意味が分かりにくくなった。訳者の造語も鼻についてきた。巻末に辞典があるが、それほど深く読むつもりも無い。 |
キ |
ウィリアム・ギブスン
ブルース・スターリング |
ディファレンス・エンジン(上) |
2005
6/15 |
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我々の世界とは時空のずれた世界のイギリスが舞台。全ての原動力が蒸気機関。燃料は石炭。歯車で計算するコンピュータの総延長が数マイル。物語はサスペンス調オムニバス形式で歴史上の人物が主人公。 |
キ |
キム・チョヨプ |
わたしたちが光の速さで進めないなら |
2021
8/28 |
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韓国作家のSF小説7編と収める短編集。「巡礼者たちはなぜ帰らない」や「スペクトラム」は宇宙という背景を使う必要の無い小説と思い、好感は持てなかった。表題作もまあ良かったが宇宙よりも身近な「感情の物性」や「館内紛失」の方が面白かった。人名がハングルだと性別が分からない。それと「老人」が女性なので戸惑った。訳を工夫して欲しい。(竹) |
キ |
キム・ヘジン |
中央駅 |
2020
10/16 |
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キ |
ジョナサン・キャロル |
死者の書 |
2014
4/10 |
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熱烈に愛した小説家の住んでいた町へ恋人と二人でその伝記を書く為に移り住んだ青年。そこは何処にもあるような田舎町のようだったが、しかし何かおかしな雰囲気があった。架空の作家や作品をよく作りこんであるが、ファンタジー(ホラー)は納得出来ない論理性があるので好きではない。宇宙人が出て来て活劇になる方が面白い。(竹) |
キ |
B・M・キャンベル |
ガラスの壁(下) |
2005
10/7 |
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上昇志向のある黒人女性が主人公です。物語はまるでアーサー・ヘイリーの大河小説のようです。幾多の苦難を乗り越えるのですが、最後のどんでん返しは望む所ですが構成が上手くありません。肝心のそこが嘘っぽかったのが残念。(竹) |
キ |
B・M・キャンベル |
ガラスの壁(上) |
2005
10/7 |
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原題は「ブラザーズアンドシスターズ」といいます。と言えばお分かりのようにアメリカの黒人の話です。現代でもある人種差別の話ですが、黒人問題は白人問題でもあり、作者が女性であるように女性の観点から見ています。黒人女性は人種差別と女性差別の二重の差別を受けているといいます。(松) |
キ |
ドロシー・ギルマン |
おばちゃまは飛び入りスパイ |
2004
12/7 |
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60歳を過ぎた女性が、活躍するスパイ小説。こう聞いたら荒唐無稽で面白そうだと思った。頭脳で活躍すると思ったら体力だった。さすがにウソっぽく楽しめなかった。 |
キ |
マイケル・ギルモア |
心臓を貫かれて(下) |
2005
8/26 |
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銃殺を望んだ兄は小さい時から父親の暴力にあい少年院や刑務所を出たり入ったりする生活を送る。立ち直るチャンスは何度もあったのに理由の分からない事で人を二人殺してしまう。実はそんな兄の物語では無く書いた弟の物語だった事に下巻で気付く。それも焦点がぼけてつまらない理由。(梅) |
キ |
マイケル・ギルモア |
心臓を貫かれて(上) |
2005
8/26 |
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人殺しで捕まり自分の銃殺刑を望んだ男の弟が書いた一家の年代記。あの村上春樹が約しているので面白いのかと思ったらそうでもない。特に一家が形成される前の縁者の話は退屈。それも殺人者の動機、理由を表したい為だと思うが、自分にはつまらない。自分の感受性も鈍化しているのかもしれない。(梅) |
キ |
スティーブン・キング |
夜がはじまるとき |
2018
6/26 |
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スリラーの巨匠の短編集。最初の「N」のような人間を超越した存在による恐怖は面白く感じない。だから読むのに手こずるかと思ったが、その後の作品は実際的な恐怖でスイスイ読めた。最後の「どんづまりの窮地」はなかなかの題材だが良かった。欲を言えばもっと衝撃的な結末が欲しかった。多作なので当たりはずれがあるが、これはまあまあ当たり。(竹) |
キ |
スティーブン・キング |
11/22/63(下) |
2015
4/5 |
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下巻に入ると恋の破綻や、オズワルドの動静の詳細など暗い話になり大作だけに読み進むのが苦。この世界はパラレルワールドでは無く単一の世界が続いているようだ。しかし過去を変えようと思うだけでその者の身に危険が起きる。自分には理屈的に納得出来ない。神が介在するという西欧文化によるか。作者の按配しだいに思え没頭出来ない。(梅) |
キ |
スティーブン・キング |
11/22/63(上) |
2015
4/5 |
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高校教師の男は食堂の店主から過去へ通じるタイムトンネルの存在を知らされる。店主は余命幾ばくも無く自分の悲願を打ち明ける。それがケネディ大統領の暗殺の阻止だった。題はその暗殺の日。上下巻でそれぞれが500ページを越える大物。過去では教師生活の充実や恋物語でこの上巻は読み進むのは苦にはならなかった。(竹) |
キ |
スティーブン・キング |
1922 |
2013
12/17 |
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スリラー物の第一人者のキングの表題作の中編と短編各一編が収録されている。中編は妻を殺した末に息子は出奔し自分も精神を侵されるという筋書きで、技巧的にも見る所が無く平凡で不快感だけが残った。短編は結末の逆転があるかと期待していたが無くて拍子抜け。キングには当たり外れが多い。というより自分に合わないものがあるのか。(竹) |
キ |
スティーブン・キング |
ビッグ・ドライバー |
2013
11/1 |
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表題作は、三流女性作家が講演会の帰りにレイプに遭い死にかけ、その復習譚。キングは大作よりも、このような小編にこそ味わいがある。併録の「素晴らしき結婚生活」も夫の秘密を発見した妻というありふれた題材だが、その後の救済まで丁寧に描く事で良品になっている。小説の骨格も人物構成もしっかりしていて破綻が無く読み応えがある。(竹) |
キ |
スティーブン・キング |
トム・ゴードンに恋した少女 |
2012
7/10 |
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家族とハイキングに来た9歳の少女が道に迷う。パニックになり判断力を欠き、森の奥へ奥へと入り込んでしまう。実際に山で遭難寸前の経験がある自分は分かる。迷った時は冷静になれない。まるで何かに取り憑かれたかのように間違いを何度もしてしまう。久しぶりの作者の小説だが出来が良い。それにページの量もちょうど良い。(松) |
キ |
スティーヴン・キング |
第四解剖室 |
2010
2/20 |
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ホラーの職人S・キングの短編集。表題作である最初の作品はオチが分かったし、最後の作品は連作の番外編でややレベルが落ちるが、他は珠玉短編集といってよいほど、出来の良いものが並んでいる。この作家の近年の長編にはガッカリさせられたが短編は良いようだ。他の短編集を借りても間違いは無いと思われる。(竹) |
キ |
スティーブン・キング |
ペット・セマタリー(下) |
2005
5/19 |
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「あまりの恐ろしさに発表を見合わせられた」作品といわれている。しかし、この下巻になって話の筋が一転して、読者が予想できる結末に向かっていった。作者がどう理由付けしてその結末に持っていくのかが気になって、あまり楽しめなかった。 |
キ |
スティーブン・キング |
ペット・セマタリー(上) |
2005
5/19 |
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現代のスリラーの第一人者のあのスティーブン・キングの作品。この作者のものは古いものから順に読み漁ってきたが「IT」あたりから飽きてきて中断していた。久しぶりに読んでみたが昔の熱狂的な面白さは無かった。 |
キ |
バーバラ・キングソルヴァー |
野菜畑のインディアン |
2006
3/15 |
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去年末に読んだ「天国の豚」の上巻となるもので女であっても自分が生む事ではなしに子供を自分の家族として引き受ける主人公の悩みの中での自分が生まれた国への憤りや生きる方向としての良識や巡り合う友人や実の親子関係などのしがらみを通して自身の成長を描いている面白さ。(松) |
キ |
バーバラ・キングソルヴァー |
天国の豚(下) |
2005
12/21 |
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アメリカでの先住民に対する差別の歴史が背景になっている。チェロキーの歴史への理解と和解があり、年寄りのラブストーリーがあり、祖父孫の再会があり、泣かせる物語は文句なしに良い。翻ってみると、日本人はアメリカの人種差別をよく知ってはいても、日本の先住民に対する差別をよくは知らない。(松) |
キ |
バーバラ・キングソルヴァー |
天国の豚(上) |
2005
12/21 |
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チェロキーの子供を養女にし今は固い結びつきの白人女性。チェロキーの子供は白人が簡単に養子には出来ないと法律をたてに迫るチェロキーの女性弁護士。逃げる母子。その弁護士にも二卵性双生児の兄(弟?)と無理やり離れさせられた悲しい過去を持つ。登場人物の肉付けが良い。(松) |
キ |
ジャメイカ・キンケイド |
川底に |
2005
7/23 |
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「謎のようなイメージの奔流」と書評にある。自分には分からない、苦手な作品だ。だって頭に入ってこないんだもん。文字を追うのも苦痛だ。結局飛ばし読みで、読んだ事にしてしまった。すみません。(梅) |
キ |
トンミ・キンヌネン |
四人の交差点 |
2017
8/29 |
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フィンランドの母と娘と息子の嫁、そして娘の夫の第2次大戦前から戦後にかけての物語。家に拘りのある人間達を年代順の短編で綴っている。主人公が代わると又年代が古くなり、同じ人間が別の視点から何度も登場するので混乱するが、新鮮な感じもする。封建的な時代に抗って生きた女性と家族を愛しながらも流されるしかなかった男の物語。(竹) |
ク |
ディーン・R・クーンツ他 |
ハードシェル |
2022
8/24 |
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表題他にエドワード・ブライアント、ロバート・R・マキャモンのモダンホラー短編を収録。ホラーは苦手だが読み始めるとソフトな感じで、普通のSFとして読んで興味深くスムーズに読み進めた。最後のロバート・R・マキャモンの「ベスト・フレンズ」がこれぞホラーという気持悪い系で、ストーリーが手に汗握る感じで面白かった。古さを感じさせない。(竹) |
ク |
アナ・クィンドレン |
母の眠り |
2007
2/11 |
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大学を成績優秀で卒業しニューヨークで出版社に勤め文筆業としても成功している女性。母がガンにかかり心ならずも自宅に戻り看病することになる。最初は母との旧交を温めるが、やがて闘病の辛い日になって行く。母が死んだ時に殺人の疑いをかけられ起訴される。周囲の善意や悪意、友情、愛情がこの小説の深みを増している。(松) |
ク |
アナ・クインドレン |
幸せへの扉 |
2009
4/5 |
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副題に「世界一小さなアドバイス」とある。これは、大学の卒業式のスピーチに作者が作った原稿。生きるためのヒントみたいな内容。ネットで話題になり出版される事になった本。作者には前から好感を持っていたので、小説と思い借りたが意外な内容で意外な薄さの本だった。自分には向かない。(竹) |
ク |
アナ・クィンドレン |
黒と青 |
2006
11/5 |
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DV(ドメステック・バイオレンス)を主題にした小説。悲惨さがネックになって読みにくいかと思ったが、淡々とした冷静な表現に救われる。警官である夫にDVを受けていた看護師の妻が子供を連れ秘密のボランティア組織の援助で逃避する。違う名前違う過去を持ち始めての土地で生活する。夫婦、親子、友情、地域などの繋がりを考えさせる小説。(松) |
ク |
トマス・H・クック |
夜の記憶 |
2006
11/18 |
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100年前を舞台にした小説を書くニューヨークのミステリー作家が田舎の旧家に招待され、50年前の未解決の殺人事件の謎解きを依頼される。作家自身も30年前に姉を殺されたトラウマを持つ。過去の現実と虚構を散りばめながら捜査は進む。ミステリーを読みなれた自分にも想定外の結末だったので良。(松) |
ク |
J・M・クッツェー |
モラルの話 |
2019
5/17 |
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最近の7編の短編集。初めの2編は表題通りで短い話。後の5編は年老いてきた作家の母を持つ家族(主に息子)の話。何度も小説になった世界。母と息子が性の事から哲学的な事まで話し合う。母からの働きかけだが息子は面倒がらずに真摯に対応する。創作だがそういう家族の歴史があった末の話合い。でも読んでいて面倒臭いと正直思う。(竹) |
ク |
J・M・クッツェー |
イエスの幼子時代 |
2016
10/20 |
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血の繋がりが無い初老の男と幼児が到着する。難民のようだが環境の様子が違う。男が幼児の母を捜すがその考え方も変だ。幼児も変でそれに同調する男。現世とは少しずれている世界。幼児に振り回される男が嫌だがついつい読んでしまった。何か意味があるのかと思ったが分からない。この続編があるというがそれより1冊で完了して欲しかった。(竹) |
ク |
J・M・クッツェー |
遅い男 |
2016
6/7 |
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自転車走行中に車と衝突し右足を切断する事になった還暦男に起きる辛口な悲喜劇。独身の故か女性介護士に恋して、その家族にも恩恵を施そうとし互いの人間関係を混乱に陥れる男。その収拾に現れるのが著者の分身とも言える女性作家。メタ小説にしないでリアルで書き上げた方が良かったと思うのだが。主人公に感情移入は出来た。(竹) |
ク |
J・M・クッツェー |
エリザベス・コステロ |
2016
2/3 |
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60代の女性作家を創造し、その言動の短編集。メタフィクション。南アフリカ出身の著者が言えない事を他の人格に言わせている。「リアリズム」は杓子定規で面白くないが、「悪の問題」は共感出来る。自分の経験では、コーマック・マッカーシーの「ザ・ロード」は面白かったが、心を遮断しないと取り込まれそうな気持ち悪い部分もあった。(竹) |
ク |
J・M・クッツェー |
少年時代 |
2015
10/9 |
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南アフリカ出身の筆者の決して裕福ではない少年時代の数年を描いた作品。オランダ系のアフリカーナの名前を持ちながら英語を話す家庭の少年。第2次大戦が終了して数年、頼りない父親と世話を焼き過ぎる母親と内弁慶の少年と弟が生活。政変での父親の失職で田舎に移り住む。分かっていながら素直になれない心情は自分にも共感出来る。(竹) |
ク |
J・M・クッツェー |
鉄の時代 |
2015
5/4 |
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アパルトヘイト時代。南アフリカに住む白人の老婦人。唯一の肉親の娘は国を嫌ってアメリカに移住し結婚。老婦人の身体にガンが見つかる。それでも気丈に生きようとする。しかしその善意も大きな流れの中では何の役にも立たない。頼りのメイドは息子を殺され離れ、浮浪者だけが話す相手。どうしようもなくても逃げずに立ち向かうのは難しい。(竹) |
ク |
J・M・クッツェー |
敵あるいはフォー |
2015
3/22 |
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イギリスで誘拐された娘を探しブラジルに来た女は反乱が起き孤島に放逐される。島には漂着した男と奴隷が住んでいた。これが最初の話。助けられイギリスに戻り体験談を作家に売ろうとする。登場人物が特異な人間ばかりと思っているとこの話全体が非現実的になってくる。そうか実験小説だったのか。読む側として最初の高揚の後は尻すぼみ感あり。(竹) |
ク |
J.M.クッツェー |
マイケル・K |
2014
12/6 |
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南アフリカでの話。父親はなく、ろくな教育も受けられずに公園管理の仕事をしていた青年は、暴動の後、病弱な母親を手押し車に乗せて故郷に向う。母親が死に、放棄地で一人の生活を試みるがゲリラや軍が干渉してくる。白人の優位に対し黒人が蜂起した頃の世情が出ている。暗い題材だが淡々と進む文章は意外に読み易い。1983年の作品。(竹) |
ク |
J・M・クッツェー |
夷狄を待ちながら |
2014
3/29 |
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夷狄(いてき)が攻めてくるという情報で第3局の大佐がやって来て現地人を捕まえ拷問をする。老民政官は反意を促すが聞き入れられない。民政官は拷問を受け不具になった娘に愛情を持ち、そこから破綻してしまう。人間の強さと弱さが凝縮されているような小説。夷狄という言葉をアフリカの地で使う事の違和感があったが、題名としての訴求力はある。(竹) |
ク |
J・M・クッツェー |
石の女 |
2014
1/11 |
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舞台は南アフリカの農場。主人公は母を亡くした農場の白人の娘。内容はこの女性の独り言。父や使用人との関係、自分の望みなどが書いてあるが一貫性がない。どれが真実でどれが空想なのかも分からない。しかも農場内という狭い場所での事で展開が少なくなかなか読み難い。苦手な小説。ただ、夫々のエピソードがしっかりしているので助かる。(竹) |
ク |
J・M・クッツェー |
ダスクランド |
2013
7/20 |
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「ヴェトナム計画」と「ヤコブス・クッツェーの物語」という別々の小説が収められている本と思えるが、合わせて一つの小説という。前者はアメリカのヴェトナム宣伝に携わる男の話で、後者はアフリカーナが従者と共に北へ象撃ちに出かける話で関連性は無さそうだ。変に深読みするより、力を持つ者の独善を読み取る位で良いと思う。後者は激烈な様が胸に迫る。(竹) |
ク |
J・M・クッツェー |
恥辱 |
2007 11/11 |
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南アフリカの大学教授が教え子と関係を持ち職を追われ田舎に住む娘の所に身を寄せる。アパルトヘイト後の田舎は黒人が力を持つ場所で悲惨な事件が起きる。屈辱的な立場になっても田舎にしがみつく娘の気持ちが父親には分からない。父親自身も何が望みかが分からなくなる。年を取る事や社会的基盤を失う事の漠とした不安を共感する。ブッカー賞。(松) |
ク |
レーモン・クノー |
地下鉄のザジ |
2023
2/2 |
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何故か地下鉄に出没するスリの話と思い込んでいたが全然違って、田舎からパリの叔父さんの所に遊びに来た生意気で悪口の少女の話。周りの大人も変な人が揃っていてドタバタコメディの観。結末に至ってはシュール過ぎる。一時フランス映画は分かり難いと言われたがそれに似ている。同性愛には時代錯誤を感じるが1959年の作なので仕方無い。(竹) |
ク |
レーモン・クノー |
あなたまかせのお話 |
2015
5/28 |
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「地下鉄のザジ」が無くて同じ筆者のこの本を借りたが面白くない。意味不明の実験的小説。動物が話す短編は小説だと分かるが、本当の事を語っているのかどうか分からないようなエッセイ風なものもある。短編なので読み進むのに苦は無いが、巻末の全ページの1/3を使った対談は飛ばした。フランス人らしい難解さと言えばいいのだろうか。苦手。(竹) |
ク |
メアリ・H・クラーク |
リメンバー・ハウスの闇のなかで |
2009/
8/4 |
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交通事故で息子を死なせた女性作家が次の子を授かる。海の側の旧家に移り住んだ女性作家に怪事が巻き起こる。別の海難事件を軸とした多岐な筋書きと人物描写はサスペンスミステリーの女王ならではのもの。だが、なかなか筋の方向性や犯人が分かってこないので、もっと前から上手い伏線を敷いてあるとミステリーファンには有り難い。(竹) |
ク |
マイケル・クライトン |
サンディエゴの十二時間 |
2008 6/28 |
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マッド大金持ちが陸軍の神経ガスを盗み、大統領が参加する共和党大会が行われるサンディエゴで撒くという。それを阻止しようとする政府機関員が主人公。1972年作のこの作品は255ページと今の常識からすると短い。むやみに長くするのも困るが、もう少し筋や人物に肉付けの必要がある。結末ももう一ひねり欲しい。(竹) |
ク |
ジェイムズ・クラムリー |
さらば甘き口づけ |
2022
11/12 |
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酔っ払い探偵が酔っ払い作家を探し出したら、バーのママから家出娘を探すよう頼まれる。一つの間違いから転落していく女を追う。探偵と作家の友情、探偵の恋心、題名もロマンチックなハードボイルドだ。人間が良く描けている。ただ、無人の車を乗用車で牽引するのにロープを使うのは無理。それと50代を老人扱いするのが古く感じた。(竹) |
ク |
トム・クランシー |
日米開戦(下) |
2006
10/2 |
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自衛隊が米空母や原潜を攻撃しサイパンを占領し、ウイルスで米証券市場も破壊する。旧ソ連から買ったICBMで核武装し、中国やインドとも密約し連携する。これがすべて日本国民は知らない内に行われる。下巻はやはりアメリカ的正義に打ちのめされるので自分はアメリカ人だと思って読めば楽しめる。(竹) |
ク |
トム・クランシー |
日米開戦(上) |
2006
10/2 |
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日本がアメリカの経済制裁に耐えかねて戦争を仕掛ける。しかも宣戦布告もなしの騙し討ちで。太平洋戦争の時と同じシチュエーション。ジャック・ライアン物で文庫本の上下巻だが、上巻でも766ページの大冊。日本人ならこの現実性に疑問を持つだろうが、そこに目をつむれば長い話も苦にならないかも。(竹) |
ク |
マーク・グリーニー |
暗殺者の正義 |
2018
6/14 |
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暗殺者グレイマンシリーズ2作目。元締めを失い単独で、ロシアンマフィアからスーダン大統領の暗殺を請け負う。そこにグレイマンを追う元同僚のCIAも加わり、複雑な展開になる。暗殺者なのに情に流されプロらしく無い所や、他にもストーリーが嘘臭く納得出来ない部分がある。筋を弄り過ぎ余計な部分を膨らませ過ぎ。1作目の方がまだ良かった。(竹) |
ク |
マーク・グリーニー |
暗殺者グレイマン |
2018
2/14 |
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元CIAの凄腕の暗殺者は民間警備会社の裏の仕事をしていたが、弟を殺された某国大統領の画策で各国の腕利きの殺し屋グループに命を狙われる。暗殺者なりの正義感や忠誠心もありそれが弱みになる。多少は無理のあるストーリーだが、それを忘れて物語に没頭出来る。殺戮と暴力ばかりであまりに現実離れしているので悲惨さが無いのが救い。(竹) |
ク |
グレアム・グリーン |
ヒューマン・ファクター |
2005
3/2 |
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今は無きソ連が出てくる王道のイギリス二重スパイ物。といっても007のような活劇物ではない。心理劇になるのかな。この作者はいろんなものを書くのですね。さて年老いた二重スパイの末路はどうなるのでしょう。 |
ク |
ジョン・グリシャム |
処刑室(下) |
2012
3/27 |
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下巻になったら更に面白くない。祖父を救い出す為に猛烈に勉強して弁護士になったはずなのに、孫には何のビジョンも無く周りに助けられるだけ。丁々発止と死刑擁護派と戦うシーンも無く退屈。死刑制度についての資料をかき集めて作ったような小説。サスペンス度が低く筋の展開に起伏が無いし伏線も生かしてない。死刑制度の啓蒙小説か。(竹) |
ク |
ジョン・グリシャム |
処刑室(上) |
2012
3/27 |
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KKK団として幼い子供たちを爆殺した罪で死刑囚としてミシシッピ刑務所に収監されている男。長年、刑が猶予されていたがついに執行の期限が迫る頃、若い男が弁護士として会いに来る。死刑囚が若い男を孫だと分かる所がクライマックス、後は死刑制度とか刑務所の状況とか手続きとか多くの登場人物とかの説明になってしまって面白くない。(竹) |
ク |
ジョン・グリシャム |
法律事務所 |
2008 8/7 |
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優秀な成績で卒業した大学生が待遇に釣られて入社した地方の法律事務所はマフィアの会社だった。FBIから内部情報を提供するようの迫られる。結局マフィアとFBIの両方から追われる。一番興味があったのは組織を裏切った結末の処理。執念深いマフィアからどう逃げるか、その後の生活がどうなるのかがキモだと思っていたが、結末は残念。(竹) |
ク |
ジョン・グリシャム |
依頼人(下) |
2006
11/28 |
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11歳の子供が事件に巻き込まれる原因となったのが隠れた喫煙とはアメリカらしい。映画化もされている。たとえ作家がそうでなくても、仲介者や出版社が儲け主義のアメリカの、映画化前提の小説は読み物としては面白くないのが通例。でも掴みは新鮮だし、ストーリーに流れはあるので及第点。(竹) |
ク |
ジョン・グリシャム |
依頼人(上) |
2006
11/28 |
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メンフィスの子供がマフィアの弁護士の自殺に居合わせ、死ぬ前の弁護士の言葉を聞いてしまった為に事件に巻き込まれてしまう。マフィアによる脅迫とFBIによる証言の強制の板ばさみ。言えばマフィアに殺されるし、言わないと刑務所に収監される。初老の訳ありの女弁護士を頼りにする子供の運命は?(竹) |
ク |
ジョン・グリシャム |
陪審評決(下) |
2006
9/4 |
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物語の始まりと終わりは良いが、途中の幾つかある審理などは冗漫になりスピード感が無く、飽きてしまったのは残念。主人公たちについても最後までミステリアスなのは良い面もあるが、感情移入しにくい面もある。全体に、自分の好きなアーサー・ヘイリーの小説の登場人物たちのような肉付けが薄い。(竹) |
ク |
ジョン・グリシャム |
陪審評決(上) |
2006
9/4 |
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日本でも陪審員制度が始まろうとしているこの時にこの小説はタイムリー。日本とは違うがこの制度の先進国であるアメリカのの問題点をつく小説。裁判も喫煙被害をタバコ会社に訴えると言う誰にでも分かりやすい題材。緻密な小説ではあるが登場人物が多く覚えるのが難と言えば難。(竹) |
ク |
アガサ・クリスティー |
なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか? |
2018
3/10 |
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表題の言葉が謎で、崖から転落してすぐ亡くなった男の口から発せられたもの。これを聞いた牧師の四男坊と貴族のお嬢さんが犯人探しをするという物語。終盤で説明的な展開があるのは興醒め。ストーリーの道すがら、それまでの謎を回収して貰えるとスムーズなのにと思った。シリアスさかけはかけ離れた軽いミステリーなので仕方ないか。(竹) |
ク |
アガサ・クリスティー |
春にして君を離れ |
2013
10/9 |
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イギリス中流階級の妻がイラクの娘夫婦からの帰途に、交通網が分断され何も無い砂漠の駅の宿泊所に閉じ込められる。そこで、自分の人生を振り返る。よくある家庭内の問題かと思っていると、深い人間観察の末の人物の構築が絶妙。ただの推理小説作家では無い所を伺わせる。この小説の凄さは解説で栗本薫が語る。一人芝居としても出来そうだ。(竹) |
ク |
アガサ・クリスティー |
さあ、あなたの暮らしぶりを話して |
2006
4/29 |
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クリスティーのミステリーを読んではいたが何度も中近東へ夫の発掘調査について行った事は知らなかった。これは第二次大戦頃のシリアとトルコの国境での発掘調査がユーモアを交えて語られている。イスラム教徒とキリスト教徒が対立しても、アラブ人やクルド人やアルメニア人などの人種が入り乱れていても、今よりノンビリした情勢だったことを伺わせる。(松) |
ク |
アゴタ・クリストフ |
第三の嘘 |
2022
11/2 |
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「悪童日記」「ふたりの証拠」に続く作品。1991年作とあるが戦争が影を落とす暗い小説。2018年に前二作を読んでいる。間が空いたのは楽しい気持にはなれないと分かっていたから。あらすじは忘れたが、想像通り。広げた話を収束するストーリー。戦争と、父親と母親が起こした原因による悲劇が記されている。やっと読めたという安堵感。(竹) |
ク |
アゴタ・クリストフ |
ふたりの証拠 |
2018
11/18 |
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「悪童日記」続編。ハンガリー(と思われる国)に残った双子の片方の物語。祖母と父親が死に、生活に全体主義国家の影が落ちるが、農業と酒場でのハーモニカで生計を立てる。家を追われた若い母子を引き取り、様々な人たちと付き合うようになる。主人公が感情を表現しないので物語が暗くなっていない。30年経った結末でも先が見えない。続く。(竹) |
ク |
アゴタ・クリストフ |
悪童日記 |
2018
7/5 |
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第2次大戦中はドイツに、戦後はソ連に主権を奪われたハンガリーで吝嗇な祖母に預けられた双子の少年の物語。普通と違うのは双子に独自性が無く、一人として考え行動している。戦争により悲惨な経験もするが、論理的に考える事で乗り越える。感情が無いように思えるが、そうでは無い事も分かる。ラストの意味は次で分かるのだろう。3部作。(竹) |
ク |
ジョン・クリストファー |
トリポッドC凱歌 |
2011
12/20 |
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トリポッド4部作の最終巻で大団円を予感できるが、中世の文明で異星人と戦うようなもので、文明が100年中断した影響は大きい。だが、文明が高かった時のライブラリーが発掘され、対抗手段が再発明される。軽率な少年が運と仲間に恵まれて異星人に反撃する。果たして異星人に完全に打ち勝つことが出来るのか。手に汗握る展開となる。(竹) |
ク |
ジョン・クリストファー |
トリポッドB潜入 |
2011
11/12 |
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白い山脈にある抵抗組織のアジトに到着した少年達は運動大会に勝つ為に訓練に明け暮れる。運動大会で勝つと異星人の基地に入れるという。しかし帰って来た者はいない。2人が異星人の基地に入りその全貌が明らかになるが、そこでは過酷な生活が待ち受けていた。御都合主義的な部分もあるが、目的の為に耐える少年が描かれている。(竹) |
ク |
ジョン・クリストファー |
トリポッドA脱出 |
2011
10/29 |
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トリポッドが地球に現われた時代から100年が経過し、中世に退行したようなヨーロッパでも人間を操る異星人の侵略は成功していた。14歳の春に脳を操作される金網を被ることは戴帽式として儀式化されていた。式に疑問を持った少年が抵抗組織の者に自由な世界を教えられ、友人?と共にその地を目指す冒険。ジュブナイルSFでも面白い。(竹) |
ク |
ジョン・クリストファー |
トリポッド@襲来 |
2011
10/13 |
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背の高い3本足の機械が宇宙からやって来て、最初はテレビで次には頭脳改変装置で地球人を操ってしまう。これはトリポッド3部作の最後に書かれたものとある。3部作は宇宙人の地球征服の由来を書いてなかったらしく後で書き足したらしい。だから4部作となる。ジュブナイルSF小説だが、結構楽しめた。全作読んでしまうつもり。(竹) |
ク |
キャロライン・グレアム |
うつろな男の死 |
2011
3/30 |
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バーナビー主席警部シリーズ。イギリス地方都市のアマチュア劇団が舞台。人物それぞれの性格や趣味が細かく描かれ生き生きとし、恋や裏切りや野望があり、ミステリーとしてではなく通常の小説としても面白い。伏線もちゃんとして謎解きも納得。女性作家としても、この小説はクリスティ以上。ただ題名は原題のようだが地味すぎる。(松) |
ク |
ロバート・クレイス |
容疑者 |
2022
7/9 |
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銃撃事件で重傷を負い相棒を亡くしたパトロール警官と、戦地で相棒を失った爆発物探知犬のシェパードが新しい相棒同士となり、未解決となった銃撃事件を捜査する。それぞれが心に傷を持ち克服しようとしている。犬の章もあって犬の心の動きが面白い。解説者が犬の登場する小説を紹介しているので読みたいのでメモを取った。(竹) |
ク |
ロバート・クレイス |
追いつめられた天使 |
2018
8/17 |
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ロスの私立探偵エルヴィス・コールの2作目。「葉隠」という武士心得の書物が盗まれて調査を依頼される。それがジャパンマフィアの拷問殺人になり更に依頼主の娘の誘拐へ発展。主人公の行動にしても結末の警察の対応にしても普通なら納得出来ない。これはハードボイルドという様式美を楽しむ小説なのだろう。1989年作だがトランプ氏の記述あり。(竹) |
ク |
ロバート・クレイス |
モンキーズ・レインコート |
2017
6/7 |
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ロスの探偵エルヴィス・コールシリーズの第一作。これぞハードボイルドだが、他と似ているのは仕方ないか。父子の失踪事件の依頼を受けた探偵が探るうちに事件が大事になって来る。政治家への影響力がある麻薬関連の大立者が臭い。これをどう収めるのか。力対力となるのか。武闘派の相棒と渦中へ飛び込む。ただ、女性の描き方はどうかなと思う。(竹) |
ク |
J・M・G・ル・クレジオ |
調書 |
2014
6/15 |
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学識はあるのに家を出て無為に過ごす青年の放浪の記。文章は平易だが意味を取ろうとすると難解。特に最後の病院の章は取り付く島が無い。やっと読んだという明確なものは何も残らない読後感。作者24歳のデビュー作という。映画でもそうだがこういう乾いたものがフランス人好みなのかもしれない。後年ノーベル文学賞を取るが自分には苦手だ。(竹) |
ク |
ル・クレジオ |
オニチャ |
2006
6/15 |
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アフリカに仕事で行ってしまったイギリス人の夫のもとへ向かうフランス人の妻と息子。これも大戦後の話で、物語は息子の目から語られる。アフリカ人を人間として見ない、現地のイギリス人総督とその社会にとけ込めない妻と息子。人類の発祥の地であるアフリカの民俗も語られるが、正直言って退屈。(竹) |
ク |
ジョン・クロウリー |
ナイチンゲールは夜に歌う |
2005
6/29 |
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SF短編集だがいわゆる大人の寓話という感じ。この中のメインの作品となる「時の偉業」はタイムパラドックス物。この理論は何回聞いても難解。穏やかな筋の運びや上品な表現は村上春樹に似ている。 |
ク |
ミラン・クンデラ |
存在の耐えられない軽さ |
2023
1/19 |
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1968年のロシアのチェコスロバキア侵攻を背景に数人の男女の関係を描いている。愛している女性と結婚しているのに他の女性との浮気は止まらない男。浮気を知っていてもそれを責められない女。同じ状況なら男を嫌な奴と描く事も出来るが作者はそうしてはいない。主役級が4人に作者も意見を言う。それに時系列が前後して理解が及ばなくなる。(竹) |
ケ |
ニール・ゲイマン |
アメリカン・ゴッズ(下) |
2010
11/6 |
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男は古い見捨てられた神々と行動を共にする。神々の中に何故人間のこの男がいるのかが明かされ、ついに古い神々と新しい神々の戦さが始まる。いわゆる八百万の神々を文字通り擬人化させるアイディアは日本なら新鮮味は無いが、キリスト教のアメリカだから面白い。ただあれだけ盛り上げた対決の結末が物足りない。結末も予定調和的だ。(竹) |
ケ |
ニール・ゲイマン |
アメリカン・ゴッズ(上) |
2010
11/6 |
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出所間際の男が妻の死を知る。戻ったシャバでは不思議な男に会い雇われる。古来アメリカに入って来た八百万の神が、今は祭る人も無く新しい神々にも追われていた。男は流されるように不思議な体験をしながら旅をする。先に先にと積極的にページをめくる力はやまない。上巻は筋を広げたところだが、これをどう結末へと導くのか下巻が楽しみ。(松) |
ケ |
エーリヒ・ケストナー |
エーミールと探偵たち |
2019
9/3 |
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ドイツの田舎からベルリンに出て来た少年が、列車の中で眠り込んでお金を盗まれる。同乗の男を一人で追いかけるが、ベルリンの少年達と仲良くなり大勢で男を尾行して追跡する。「二人のロッテ」や「飛ぶ教室」は読んだが、作者の最初の児童小説のようだ。過激な小説を読んで穢れた頭をリフレッシュ出来そうだ。大人が読んでも面白い。(竹) |
ケ |
エーリヒ・ケストナー |
ふたりのロッテ |
2018
1/26 |
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お互いを知らず、オーストリアとドイツで離れて暮らしていた双子の姉妹。夏季学校で驚きの対面。自分達の生い立ちがそこはかとなく知れるようになる。そこからは機転の利いた二人の行動は予想通り。ちょっとした苦難もあったが、それが却って二人の望みを叶えさせる元になる。この本は文学の面白さを発見する入門書となる。自分は始めて読んだ。(松) |
ケ |
エーリヒ・ケストナー |
飛ぶ教室 |
2017
9/12 |
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寄宿学校には9年生までの少年がいた。その中にクリスマス劇を練習する5年生の仲間がいた。それぞれに個性があり境遇も様々だった。クリスマス前から帰省するまでの数日間を描いている。先生は生徒を善導しようとし、生徒もそういう先生を尊敬する。俗物のような校長先生でさえ温かみをみせる。みんな善人で、そういう世界もあると言っている。(竹) |
ケ |
ケストナー/ツヴァイク |
ファービアン/ジョゼフ・フーシェ(世界文学全集26) |
2013
11/17 |
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ファービアン…第一次大戦後のドイツで青年は退職になる。愛しているはずの女性は夢と引き換えに男に抱かれてしまう。優しい青年の心情を綴る。当時はモラルが問われたというが、現代的とも言える。(竹)
ジョゼフ・フーシェ…革命からの激動期のフランスで政治の黒幕として暗躍した人物の伝記。フランスの歴史の勉強になる。読み易いし興味深い(竹) |
ケ |
フェイ・ケラーマン |
贖いの日 |
2021
9/8 |
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サンフランシスコ警察のデッカー刑事シリーズの第四作。ニューヨークへの新婚(再婚)旅行でユダヤ教徒の親族に会うが、自分を捨てた実の親にも遭遇し互いに落ち込む。その上、親族のトラブルで旅行気分は吹っ飛ぶ。どうしても宗教という古いものを信じる人の気持が分からない。ちゃんとした人なのに何故、神を信じるのだろうと思ってしまう。(竹) |
ケ |
フェイ・ケラーマン |
聖と俗と |
2018
10/26 |
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ロサンゼルス警察のピーター・デッカー刑事シリーズ2作目。前作で知り合ったユダヤ人女性の子たちとキャンプ中に死体を発見する。陰惨な事件は多くの関係者を悲しみに沈ませる。女性との進展と自らのユダヤ教への改宗も進まない。捜査も遅々として進まず、読む方もじれったくなるが、大河小説のようなこれが作風なのだと思う。次作も読みたい。(竹) |
ケ |
フェイ・ケラーマン |
水の戒律 |
2017
5/30 |
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ロサンゼルス警察のピーター・デッカー刑事シリーズの1作目。教義に忠実なユダヤ教の施設でレイプ事件が起きる。口を開かない被害者や一般とは隔絶したユダヤ社会の中で苦労しながら捜査する刑事。離婚し娘がいて惚れ易い設定は、4作前に読んだ刑事物に似ている。女性作家だがしっかりした骨格を持ったサスペンス小説になっている。(竹) |
ケ |
ジャック・ケルアック |
地下街の人びと |
2010
5/8 |
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ビート・ジェネレーションという50年代のサブカルチャーの旗手のドキュメンタリー恋愛小説。社会や組織や家族に囚われず、自由にドラッグやセックスにのめりこんで好きな事をしてアメリカ西海岸で暮らしていた若者達の生態。小説としては面白くも何ともないが、大戦後という時代を背景にしてみるとその後に花咲いた文化の片鱗が覗える。(竹) |
ケ |
ジャック・ケルアック |
ザ・ダルマ・バムズ |
2010
1/14 |
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表題は仏法を信奉する浮浪者の意。1955年から翌年にかけての筆者と友人達の交遊録。当時33歳で若くないがピッピーの元祖と言われた筆者の青春物語。日本や中国の仏教の話が出てくるが堅苦しくなく筆者の独自の仏教三昧の日々を描いている。その中にヒッチハイクや登山や乱交パーティがある。青春小説には甘い。勿論良い。(松) |
ケ |
トニー・ケンリック |
スカイジャック |
2008 7/18 |
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360人を乗せたジャンボジェットが忽然と行方不明になる。その事件を聞いた弁護士は身近に起こった不思議な事件から、消えた旅客機を探す事になる。完全犯罪を目論む誘拐団だが彼らも気付かないもう一つの要素があった。過不足の無いユーモアサスペンスで気楽に楽しめる。でもいざ謎解きをされると少し無理を感じた。(竹) |
ケ |
トニー・ケンリック |
マイ・フェア・レディーズ |
2008 2/13 |
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盗品を扱う故買屋が義理で預かっていた盗品の宝石を横取りしようと新聞記者が娼婦や女優を使って企んだ計画。獲らぬ狸の皮算用とはこの事。果たして成功するのか?命を賭けてやるにはどう見ても成功率が低過ぎる。基盤となる悪人が義理を大事にするという所の表現に説得力がない。なので今一つ真実味に欠ける。(竹) |
コ |
マイクル・コーディ |
イエスの遺伝子 |
2015
12/11 |
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遺伝子治療の研究者は何者かに命を狙われる。その後、娘に出来たガン治療の為にイエスの遺伝子を探す。娘の為に手段を選ばず、個人情報を違法入手しイエスの遺物まで盗む。宗教は苦手だが書評が良いのでつい借りてしまったが、最新のテクノロジーで始まったのに冒険小説になり最後はファンタジーになった筋書きには誤魔化された感じ。(竹) |
コ |
ナディン・ゴーディマ |
ゴーディマ短編小説集JUMP |
2020
2/1 |
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コ |
ナディン・ゴーディマ |
ブルジョワ世界の終わりに |
2013
8/17 |
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南アの裕福な白人の家に生まれたのに人種差別撤廃運動にのめり込んだ男と結婚していた女性が、その死を知らされてからの行動と考えの移ろい。理不尽な状況に置かれても、自分は自分を取り囲む最小の世界の中で可能な幸せを求めてしまうだろう。大きな世界の変革に参加する事は幾多の交渉と挫折と長い時間が必要。性急な自分には無理。(竹) |
コ |
ディヴィット・ゴードン |
雪山の白い虎 |
2018
3/10 |
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この作家では「二流小説家」「ミステリーガール」に続いて3作目に読む。13編収録で、それぞれが多様な趣向で書かれている短編集。性に関するものが多いがミステリーのようなものもある。重厚では無いが軽佻でも無い。読み難くは無いが、気分によっては読書スピードが落ちる。まあ、人生なかなかハッピーエンドにはならない、という教訓?(竹) |
コ |
デイヴィッド・ゴードン |
ミステリーガール |
2017
8/2 |
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妻に去られ仕事も無くした自称小説家の男がついた仕事が探偵の助手。外出出来ない探偵に代わりある女性を見張る。怪しい仕事に怪しい女。成り行きはどんどん変わる。500ページ越えの2段組の新書のボリュームは大きい。細部にこだわらず物語の展開を早めた方がスッキリする。ファットな小説。段々興味が失せてページをめくるのが苦痛。(竹) |
コ |
デイヴィッド・ゴードン |
二流小説家 |
2015
3/22 |
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死刑執行前の殺人鬼から売れない小説家に事件を本にして欲しいと依頼が来る。その後酷似した事件が発生、小説家も殺されかける。内容は本筋のサスペンスの他に幾つかの変名で書く小説の断片、小説家業界の内幕等、多彩で小説としての深みがある。弱い主役や高校生の仕事のパートナーなど配役の面白みもある。小出しの結末は疑問。(竹) |
コ |
マイクル・コーニイ |
ハローサマー、グッドバイ |
2012
11/1 |
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異星の少年少女のSF恋愛小説。季節により粘度が増す海、テレパシーをする毛深い哺乳動物、蒸気機関を使用する遅れた文明、そして戦争、それに身分を気にし理解の無い少年の父母。SFもラブストーリーも楽しめる。表現は穏やかで児童向けで、大人が読むには物足りないかもしれない。どんでん返しの結末をもっと書き込んで欲しかった。(竹) |
コ |
ウイリアム・ゴールディング他 |
ありえざる伝説 ファンタジイ傑作集B |
2012
11/9 |
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ゴールディングを読みたくて借りたが、3人の作家の短編集だった。ゴールディングの「特命使節」はローマ帝国に新発明をもたらした男の話で出来は平均的。ジョン・ウインダムの「蟻に習いて」(別名「アマゾンの時代」)は良かった。女だけの世界を描いているがSFを読み始めた頃の興奮を味わった。マーヴィン・ピークの「闇の中の少年」は好みではない。(竹) |
コ |
ウィリアム・ゴールディング |
尖塔 −ザ・スパイア− |
2012
8/12 |
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イギリスで最高の123mの尖塔を持つソールズベリー大聖堂をモデル。大聖堂に尖塔の幻視(ヴィジョン)を見た司祭は尖塔建設にのめり込み他人の意見を聞かなくなる。職人頭は悩み工夫しながら誰もなしえなかった高さの尖塔を積み上げていく。困難に際しても宗教という非現実的な力を信じる司祭と現実的な面から仕事をしていく職人頭。(竹) |
コ |
ウィリアム・ゴールディング |
通過儀礼 |
2012
3/27 |
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19世紀、イギリスからオーストラリアに向かう帆船の中での出来事を貴族階級の若い男が綴る。当時の階級社会の人間模様が描かれている。階級が上で良心がある者でも理解が伴わず身勝手だし、階級が下の者は無知で乱暴だ。良心もあり理解もある者は権力が無い。閉鎖空間でのストレスを発散させる力は、弱い者を探し出しそこに向けられる。(竹) |
コ |
ウィリアム・ゴールディング |
可視の闇 |
2011
9/9 |
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字が細かくびっしりで取り付き難そうだったが、掴みはバッチリ。爆撃の炎の間から現れた男の子が、知恵遅れのような精神と重度の火傷の傷跡を負ったハンディキャップを持ちながら、成長、放浪しながら自分とは何かを探し続ける。このまま終わってくれれば良かったが、対象的な悪となる人物も出てきて宗教臭さが全開となる。そこは付いていけない。(竹) |
コ |
ウィリアム・ゴールディング |
自由な顛落(てんらく) |
2011
4/13 |
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イギリスで生まれ第2次大戦を経験した男の幼少から大人になるまでの半生の物語。回想は時系列を無視し行きつ戻りつする。恵まれない少年時代、欲望のまま女性を傷つけた青年時代、そのあと従軍しナチの捕虜になり不合理も体験する。この小説は現代にも通じる、普遍的な一人の男の懺悔の物語なのかもしれない。(竹) |
コ |
ウィリアム・ゴールディング |
後継者たち |
2011
2/10 |
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ネアンデルタール人が平和に暮らしていた森に人間がやってくる。ネアンデルタール人は殺され、残った男女が拉致された子供を取り返しに行く。ネアンデルタール人の視線思考で物語は進むので、読者にとって分かり難い場面もある。ネアンデルタール人の純朴さと人間のむごさが比較される。あの「蝿の王」と同じく人間の業を描く。(竹) |
コ |
ダニエル・ゴールマン |
EQ〜こころの知能指数 |
2006
1/4 |
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その人の価値はIQだけでは無い。大切なのはEQ=心の知性。自分の感情をコントロール出来て他人に対して共感出来る人が、問題を解決し必要な時は手助けを得て良い仕事が出来る。いろいろな分野でのEQの必要性を事細かく説いている。それが専門的過ぎ長すぎる。EQをどうトレーニングすればよいかが聞きたい。(竹) |
コ |
パトリシア・コーンウェル |
死因 |
2007
2/11 |
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女性検屍官シリーズの7作目。主人公が活躍しないと面白くないが、これは活躍しすぎ。設定の職業の範囲を飛び越えている。FBIに入った姪もコンピュータの天才というが伝わってこないし、FBI職員としては性格的に脆さを感じる。ストーリーを盛り上げる手段として検屍官ファミリーを活躍させている感じで嘘くさい。それより地道な話を期待する。(竹) |
コ |
パトリシア・コーンウェル |
私刑 |
2007
1/21 |
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ホームズにはモリアーティ教授、キャレラにはデフマン、で、この主人公ケイにはゴールト。この回で悪の権化と決定的に対決する事になる。悪が強すぎて、組織を挙げて全力で立ち向かうFBIや警察が馬鹿に見えてくる。ケイを人間的に描くためだろうが、弱みを見せすぎる。シッカリしろと言いたくなる。今回はそれ程面白く無かった。(竹) |
コ |
パトリシア・コーンウェル |
死体農場 |
2006
12/20 |
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女性検視官シリーズ5作目。今はバージニア州検屍局長のケイを描く、言ってみれば大河小説。ケイ自身の人間関係を一番に、次にメインとなる殺人事件、その次にアメリカの捜査方法が味付けされ、香辛料として前作からの悪賢い殺人鬼を配置する。自分には合っていて面白い。(松) |
コ |
パトリシア・コーンウェル |
真犯人 |
2006
10/11 |
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女性検屍官シリーズの4作目。最初の作品は世間の評判通りには良いとは思わなかった。理由は主人公の肉付けや筋書きの面白味が足りなかった事。今回の主人公は50歳近くの設定だが、精神的に成長していく部分もあり人間としての奥行も出て良かった。筋書きも及第点。(松) |
コ |
パトリシア・コーンウェル |
証拠死体 |
2005
9/28 |
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このシリーズものの最初の「検屍官」は面白くないと思ったようで、その後このシリーズを読む事はありませんでした。今この2作目を読んでみるとストーリーの展開やその複雑さ、登場人物の作り込みなど全く文句の無い仕上がりです。いったい自分は1作目の何処が気に入らなかったのでしょう。(松) |
コ |
パウロ・コエーリョ |
アルケミスト 夢を旅した少年 |
2017
2/14 |
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スペインの羊飼いの少年が見た夢を、ジプシーの占い師や不思議な老人に話して促され、ピラミッドにあるという宝を探しに行く旅。少年は旅の途中で様々な人に助けられ、良い事も悪い事も全ては夢を成就する為に必要な事だったと気付く。それにしても結末はあっさりしていて何度もページを見返してしまった。200ページに満たないが光る小説だ。(竹) |
コ |
E・J・コッパーマン |
海辺の幽霊ゲストハウス |
2020
11/19 |
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コ |
マイクル・コナリー |
シティ・オブ・ボーンズ |
2015
10/22 |
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刑事ハリー・ボッシュシリーズ8作目。今回はハリウッド署に勤め、犬が見つけた骨から20年前の殺人事件を捜査する。警察組織の内情や警官の気質、被害者家族への聞き込み、マスコミ対応に署内恋愛と複雑な味を醸し出している警察小説。結末で二転三転するのはやり過ぎ、高まった気持ちが萎えてしまう。もっとストレートで良いと思う。(竹) |
コ |
マイクル・コナリー |
バッドラック・ムーン(下) |
2011
10/29 |
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女はホテルでの窃盗に成功する、が盗んだ金額は予想以上で危険。クレバーな悪徳探偵が女を追う。探偵のキャラは、殺人鬼並みの殺人をしなければ今後も使える主役級の人物像。悪役がシッカリしているからこそ小説が面白い。裏の陰謀もあったが、それは稚拙で蛇足。原題のヴォイド・ムーンは風水の禁忌(不運)を意味する言葉。(竹) |
コ |
マイクル・コナリー |
バッドラック・ムーン(上) |
2011
10/29 |
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堅気になってカーセールスをしていた女が、上巻では伏線だけの理由から窃盗をする事になる。場所はカジノのホテルの客室。愛していた男とかつて窃盗を働き失敗した場所だった。男は死に、自分は刑務所に収監された。盗む側も盗まれる側も追ってくる男もみんな悪党。小気味良い筋の流れで人物描写も申し分ない。(竹) |
コ |
マイクル・コナリー |
わが心臓の痛み |
2010
11/20 |
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心臓移植をした元FBI捜査官が心臓を提供した女性の殺人事件を追う。主人公の過去、生活、恋愛、仕事、等々を細かく入れ込んだ2段組みの500ページ近い長い小説。よく言えば丁寧な内容だが、サスペンス小説としてはスピード感やキレが無いし、不必要などんでん返しがある。アイディアは良いが全体としては疑問。でも、これで賞をとっている。(竹) |
コ |
マイクル・コナリー |
トランク・ミュージック(下) |
2010
7/16 |
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証拠を見つけ解決するかに見えた事件が、犯人と思われていた者に確実なアリバイがあった。ボッシュは証拠をでっち上げたと疑われ捜査から外され内部監査を受ける。汚名を晴らすためにも捜査を秘密裏に続ける。警察の内情やFBIとの確執など背景描写は巧みで筋書きも良いが、恋愛に捕われてしまう主人公は好きではない。(竹) |
コ |
マイクル・コナリー |
トランク・ミュージック(上) |
2010
7/16 |
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ロス市警のハリー・ボッシュが主人公のシリーズ5作目。ロールスロイスのトランクからマフィアの資金洗浄をしていた男の死体が見つかる。手掛かりからラスヴェガスへ飛ぶがそこで昔愛した女と出会う。警察内部の抗争もあり事件は複雑になっていく。筋も人物も出来は上々。かと言ってずば抜けて面白いとも言えない。題名はマフィア流殺し方の名前。(竹) |
コ |
マイクル・コナリー |
ラスト・コヨーテ(下) |
2007
3/27 |
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言葉の侮辱だけで内務監査課の刑事に手を出してしまう。こんな暴力的な性格なのに、組織の中でよく刑事を続けられているのが不思議。恋愛話も組み込んであるが違和感がある。シリーズを通じて主人公のボッシュの肉付けをしているが、今回の作は主人公が前面に出過ぎの感があり、この筋は自分としては面白くない。(竹) |
コ |
マイクル・コナリー |
ラスト・コヨーテ(上) |
2007
3/27 |
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ハリウッド署殺人課刑事ハリー・ボッシュシリーズの四作目。折り合いが悪い上司に怪我をさせ、ボッシュはカウンセラー付きの休職になる。心に蓋をしていた、30数年前に起きた未解決の母親の殺人事件を個人的に探る事になる。段々ボッシュの生い立ちが明らかになるが、こういう構成ではサスペンスとしては緊迫感が無いのは仕方がない。(竹) |
コ |
マイクル・コナリー |
堕天使は地獄へ飛ぶ |
2006
11/18 |
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ロサンジェルスの刑事、ハリー・ボッシュシリーズの6作目。新婚早々の妻の失踪、事件を政治的に解決しようとする上司、前から反目する内務監査課の刑事、杓子定規に捜査を仕切る管理官、と様々なハンデを背負いながら事件に立ち向かうボッシュ。自分としてはこういう結末はスッキリしなくて好きではないが、現実とはそういうものだと示唆している?(松) |
コ |
フォルカー・クルプフル
ミハイル・コブル |
ミルク殺人と憂鬱な夏 |
2021
7/22 |
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ドイツの田舎の警部が主人公。妻に言うべきことも言えない恐妻家。しかも死体が苦手なのに、ミルクが絡んだ殺人事件が起きる。警部は慣れない捜査で右往左往。ホンワカした中にも乳業業界の問題も提起している。ドイツでは人気で、きわめて人間的な警部の性格が愛され、TVドラマにもなっているそうだ。シリーズ物だが日本ではこれだけか。(竹) |
コ |
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コ |
フリオ・コルタサル |
遊戯の終わり |
2014
11/15 |
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アルゼンチンで育ち主にフランスで執筆した作家の短編集。アルゼンチンを舞台とする物語が多いが、リアルなものからシュール(怪奇)なものまである。自分としてはどちらでもよいが、意味がよく汲み取れるものでないと楽しめない。残念ながらそういうものは少ないがそれがこの作家らしさなのか。表題作のような作品ばかりならいいが、それだと飽きるか。(竹) |
コ |
フリオ・コルタサル |
すべての火は火 |
2006
6/4 |
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作者はベルギー生まれのアルゼンチン人らしく、ラテンアメリカやヨーロッパを小説の舞台にしているが、実験的な短編集で、日常と非日常、現実と非現実、過去と現在を行き来し、結末さえも明示していない作品もある。実験的小説と言っても面白くない訳ではない。自分はその中でも「正午の島」が好きだ。(竹) |
コ |
ヨースタイン・ゴルデル |
ソフィーの世界(下) |
2009/
1/18 |
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哲学の歴史をミステリーとメルヘンの要素を取り入れて解説した本で、分かりやすく読みやすい。人間の「考える」歴史がサワリとはいえよく分かる。自然科学や天文学や分子工学の進歩発見で新しい考え方が生まれる。世の中の経済活動や思想、宗教の変化でも変わっていく。大宗教のキリスト教についても教えられる事が多い。(竹) |
コ |
ヨースタイン・ゴルデル |
ソフィーの世界(上) |
2009/
1/18 |
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ノルウェイの14歳の少女に突然届いた手紙は、哲学の秘密の講義だった。少女は「自分は誰なのか」との問いから始まり、古代哲学から順に学ぶ事になる。教える先生とは、そして、謎の少女とその父とは?哲学なんて机上の学問と思っていたが、宗教や自然科学などと結びついて変化してきたと初めて知る。哲学の入門書のようだ。(竹) |
コ |
コレット |
シェリ |
2006
7/1 |
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自分で稼いで金持ちになった49歳の女と、親子ほどの年の差のある青年との話。シェリとはその青年の愛称だが主人公は49歳の女の方。自分は古い小説には偏見があるが、第1次大戦後にパリで発表されたにしては面白い。フランス文学界とは違う位置にいた作者は、自身の人生の方が小説より奇なりという。少しあとの時代のサガンの小説を思い出した。(松) |
コ |
コン・ジヨン |
楽しい私の家 |
2020
9/2 |
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コ |
ジョセフ・コンラッド |
闇の奥 |
2016
7/15 |
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作者が1890年にベルギー領コンゴに渡って体験した事を元に、イギリスに戻って友人達に話すという形で物語にしている。出版された当時は相応に評価があったらしい。冒険小説と思って読み始めたが当が外れた。ストーリーとしては短編小説並みで主人公の懊悩や会話でページが膨らんでいる。又、訳者前書きや後書きや訳注が1/3を締める。(竹) |
サ |
サ |
ラファエル・サバチニ |
スカラムーシュ(下) |
2007 12/22 |
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宿敵の貴族の為に結婚が破局し、騒動を起し演劇の世界から逃げ出す。次に主人公が入ったのが剣の道。この道でも頭角を現し、世情不安による事件の為道場主になる。物語の舞台は18世紀だが、書かれたのは1921年で比較的新しい。筋に停滞が無く読者を飽きさせない展開で面白い。フランス革命の知識が無くても楽しめる肩のこらない読み物。(松) |
サ |
ラファエル・サバチニ |
スカラムーシュ(上) |
2007 12/22 |
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スカラムーシュとは道化役者の意。フランス革命の数年前、父なし子として生まれた主人公は荘園領主の庇護の元、弁護士として生活をする。貴族に親友を決闘で殺され復讐を誓い、民衆を扇動した罪で追われるが、逃げる為に入った旅芸人一座で新しい才能に目覚めスカラムーシュとなる。次から次へと場面展開するノンストップムービーの面白さ。(松) |
サ |
コートニー・サマーズ |
ローンガール・ハードボイルド |
2022
9/16 |
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母親は育児放棄で失踪、近所に助けられて姉が妹を育てる。妹が母親の前の男に殺され、姉はその男を追う。題名のようなスマートな物語では無く、泥にまみれ血に汚れた追跡劇。それをラジオ局のプロデューサーが追うのが解説のようだが、ドラマの脚本なら良いが蛇足。同じシーンが別の角度から語られるから無駄にページ数が多い。(竹) |
サ |
ローレンス・サンダーズ |
無垢の殺人 |
2005
3/2 |
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新しく作った読書リストの順に選んだら、サスペンスが続いてしまった。これも連続物でやや重い。キリスト教のいう大罪のうちの姦淫を扱ったもの。女性が犯人の連続殺人は珍しい。結末は安易過ぎる。 |
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シ |
フェルディナンド・フォン・シーラッハ |
コリーニ事件 |
2019
1/5 |
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新人だが考える所があってベルリンで一人だけの弁護士事務所を開いた若い男。最初の弁護が殺人事件。被疑者は語らず被害者との接点が見つからず、動機が不明だった。ハードカバーだが189ページの短さであっけなく終る。最後はともかく予想した筋書きだった。でも簡潔なストーリーで要点は押さえている。戦後のドイツ刑法の変遷が興味深い。(竹) |
シ |
フェルディナンド・
フォン・シーラッハ |
罪悪 |
2018
1/16 |
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前の「犯罪」と同じように、弁護士が語る実話風の短編小説。ドイツ国内の犯罪録のようで、移民が多い状況も見える。感情を出さずに淡々と事実(実はフィクション)を述べる所に、犯罪に至った経緯から感動が生まれる。作者の経験からのエピソードもあるのだろう。切れ味鋭い終り方をするものもあり、長編だったらどうなるのかと読んでみたくなった。(竹) |
シ |
フェルディナンド・フォン・シーラッハ |
犯罪 |
2017
1/8 |
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ドイツの弁護士が経験を元に書いた、表題通りの様々な事件の11編を収納。人を裁くという観点より、何故罪を犯したのか、或いは何故罪になったのかを描く。裁く側の過ちもあるが、弁護士が被告の守秘義務の為に未来の被告の犯罪を防げない事例もあるのは切実。日本でもありえる物語。金が無くても、金があっても罪を犯す。それは幸せと同じ?(松) |
シ |
アレックス・シアラー |
青空のむこう |
2020
8/16 |
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シ |
アレックス・シアラー |
13ヵ月と13週と13日と満月の夜 |
2015
2/14 |
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一人っ子で優しい性格の少女は転校生のおばあちゃんから信じられない話を聞く。魔女から身体を入れ替えられてしまったという。ジュブナイルファンタジー。新聞のコラムで若い女優が好きだと言っていた小説。自分も多感な年頃に読めば感動したかもしれない。結末で老人ホームを訪問するともっと良かったかもしれないが優等生的過ぎるか。(竹) |
シ |
ハーヴェイ・ジェイコブズ他 |
グラックの卵 |
2008 4/6 |
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英米の1940年代から60年代のユーモアSF短編集。読んでみて面白い。やっぱりSFの醍醐味は短編集だと思う。短編集というのは、嫌いがあっても好きもあり、不出来があっても出来の良いものもある。自分の求めるものはこの年代に多い。現代の長編SFは無駄に長く、途中で投げ出したくなる作品が多い。(竹) |
シ |
メアリー・アン・シェイファー
&アニー・バロウズ |
ガーンジー島の読書会(下) |
2020
12/26 |
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シ |
メアリー・アン・シェイファー
&アニー・バロウズ |
ガーンジー島の読書会(上) |
2020
12/26 |
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シ |
マイケル・シェイボン |
サマーランドの冒険(下) |
2012
1/17 |
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野球が大きな要素となっていて、何かを決めるのにも野球の試合で決まる。少年達の寄せ集めチームが世界を破滅から守るために懸命に試合をする。出来るかどうか分からなくても自分の夢に向かって努力する事が大事だと、少年少女を啓蒙する小説。そういうと教条的に聞こえるが、それほど単純ではなく小説としての面白さは充分そなえている。(竹) |
シ |
マイケル・シェイボン |
サマーランドの冒険(上) |
2012
1/17 |
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アメリカの田舎の野球の下手な少年が、妖精や人間以外の生物と係わり合いを持ち、世界を破滅させようとする勢力と戦う。ふりがなもあるジュブナイル小説だが、大人が読むのにも耐える。少年達が戦うというのでは「トリポッド」シリーズという重苦しい小説があるが、こちらは明るくて間違いなく子供に薦められる小説。(竹) |
シ |
マイケル・シェイボン |
シャーロック・ホームズ 最後の解決 |
2011
3/9 |
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現代の人気作家の描くシャーロック・ホームズ、ミステリ。第2次大戦後期に大陸から逃げてきたユダヤ人少年の持つオウムは暗号のような数字をしゃべる。様々な目論見からオウムが狙われ殺人事件が起き、同じ町で養蜂家をしていたホームズが解決に乗り出す。雰囲気は申し分ないがページ数が少なく物足りない。(竹) |
シ |
マイケル・シェイボン |
悩める狼男たち |
2010
11/6 |
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切なくて可笑しい人間関係を描いた全部で九つの短編集。ヒーローやヒロインがいなくても、見せ場やどんでん返しがなくても、骨格がシッカリしていて人物描写が奥深いと面白いものが出来る見本。読む方は先読みしないで物語の流れに流されて行けば良いだけ。それぞれの結末では「アーアッ、そうなっちゃうわけね」と声が出た。(竹) |
シ |
マイケル・シェイボン |
カヴァリエ&クレイの驚くべき冒険 |
2010
8/17 |
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ヒトラーが台頭した時代にチェコのプラハからアメリカに逃げてきた青年がいとこと一緒にコミック全盛期にヒーローを生み出す。第2次大戦が青年の野心や生活に陰を落とし紆余曲折の冒険となる。本書は縮約判でもともとの長さはこの3倍。そういえば人物描写は申し分ないが個々のエピソードが描ききれていない不十分な感じがした。ピュリッツア賞。(竹) |
シ |
マイケル・シェイボン |
ワンダー・ボーイズ |
2010
7/16 |
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大学教授で作家でもある男は数年来一つの作品(ワンダー・ボーイズ)を仕上げられずにいた。ある日突然、妻から逃げられ愛人からは受胎を告げられる。マリファナや酒に逃避しさらにハチャメチャに落ちていく男の週末の数日間の物語。ファミリードラマ程度の刺激だが、人物が良く出来ているし悲惨な話もドライに描いて読みやすく面白い。(竹) |
シ |
マイケル・シェイボン |
ユダヤ警官同盟(下) |
2010
3/2 |
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殺されたのはユダヤ教の救世主と言われた男。刑事は大きな陰謀に巻き込まれる。刑事の妹が死んだ事も伯父が失脚した事もその計画の流れの中にあった。「赤毛の牛」が出てくるが最近読んだ「時間封鎖」にもあったので、少し驚いた。結末は激しい終わり方にした方が良かったと思う。2008年ヒューゴー、ネビュラ、ローカス賞。(松) |
シ |
マイケル・シェイボン |
ユダヤ警官同盟(上) |
2010
3/2 |
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別世界の西暦2007年のアラスカユダヤ人特別区には、イスラエル建国がならずに大勢のユダヤ人が移住。そこでの刑事の殺人事件を追う姿を描く。人物とユダヤ人社会の作りが良い。ユダヤ風俗を知っていたらさらに興味深い。SF風味は隠し味程度で警察小説として面白い。ドイツへの原爆投下や満州国の存続等この世界の小情報も面白い。(松) |
シ |
EL・ジェイムズ |
フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ(下) |
2020
4/4 |
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シ |
EL・ジェイムズ |
フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ(上) |
2020
4/4 |
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シ |
P・D・ジェイムズ |
策謀と欲望 |
2016
4/24 |
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スコットランドヤードの警視長が休暇で訪れた田舎で起きた殺人事件に否応無く係わるようになる。登場人物が多いのに其々の人物描写がしっかりしていて筋書きの面白さを更に増す。半月程の期間の出来事を扱ったミステリーだが、大河小説を思わせるような重厚感を感じさせる。新書版で読み応えある461ページという厚みの全編が面白い。(松) |
シ |
P.D.ジェイムズ |
女には向かない職業 |
2005
6/2 |
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若い女が探偵になってしまった為に言われる言葉。しかも助けてくれる人は今は無い。自分で道を切り開くがスーパーウーマンじゃない普通の若い女だから、筋も展開も華々しくない。最後の結末も平凡と思ったら、最後の最後があった。 |
シ |
ロバート・シェクリイ |
無限がいっぱい |
2018
11/28 |
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副題が異色作家短編集9という。新書版だがハードカバーという作り。内容はSFで1960頃の作品なので科学的な要素は古いし、ストーリーも使用感があるが、懐かしいSFという気がする。多分50年前なら熱狂的に読んだのだろう。中でも「先住民問題」は今でも通じるテーマだと思う。作者は、自分達は何様なのだと自問自答していたように感じる。(竹) |
シ |
ロバート・シェクリイ |
人間の手がまだ触れない |
2013
8/25 |
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1954年の第一短編集。年は経たが色褪せない作品が多い。宇宙嵐で乗組員を失った宇宙船が代りの乗組員を探して地球に来る。地球人が、生物が組み合わされて成る宇宙船の一つのパーツだったという「専門家」が面白かった。全般にウィットが利いたユーモアがとてもスマートで、田舎の少年には都会的に感じた。確かに筒井康隆に似る。(再読)(竹) |
シ |
フランク・シェッツィング |
深海のYrr(イール)(下) |
2012
11/27 |
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著者はドイツ人で原題は「群れ」。「Yrr」は深海生物を表す造語。海中の天変地異を起こしたのが深海の生命体である事が徐々に判明して結末へ。メカ的に詰めが甘かったり、山場の拵えが安易で不自然さが目に付くのは興ざめ。長い物語の割りに読めた方だと思うが、超大災害時に個人の恋愛など緊張感が無くムダな部分も多いと感じた。(竹) |
シ |
フランク・シェッツィング |
深海のYrr(イール)(中) |
2012
11/27 |
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メタンハイドレート層の崩壊を引き金に大規模な海底斜面の地滑りが起こり、北ヨーロッパは大津波に襲われ壊滅する。ここでやっと米軍の元に世界の研究者と軍が結集されるが真の敵の姿が掴めない。無臭のメタンガスに悪臭がするという誤りがある。津波の原発への被害が小規模なのが今となっては不適正。これは悲しいが現実がSFを追越した。(竹) |
シ |
フランク・シェッツィング |
深海のYrr(イール)(上) |
2012
11/27 |
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ノルウェー沖のメタンハイドレート層を掘る大量のゴカイ、カナダ西岸で小型船を集団で襲うクジラたち。世界の海で異常事が起きているのが全体を把握する人間がいないうちに事態は更に悪化する。文庫だが500ページを超える全3巻は読み応えがある。スケールが大きいだけに説明の部分が長く、それだけ丁寧な筋運びだが退屈な部分でもある。(竹) |
シ |
チャールズ・シェフィールド |
マッカンドルー航宙記 |
2017
4/2 |
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天才物理学者と女性パイロットの宇宙探検記。宣伝文句にはハードSFの傑作とあり、独自の理論による宇宙船はある。でも家族問題や官僚機構の束縛とか、筋書きはハードとは違い情緒的で作者は女性かと思った。冒険場面もありふれていて、これぞハードという突き抜けた面白さが無い。もう少しスペースオペラ的な娯楽性が欲しかった。(竹) |
シ |
ジェローム・K・ジェローム |
ボートの三人男 |
2018
3/1 |
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ボートでテムズ川を下る3人の男と犬のそれぞれの失敗や過去の失敗話を大げさに諧謔的に語っている。100年以上前のイギリスの古典的ユーモア小説。古さやイギリスならではの所があるので、分かり難さや興味を持てない部分もある。だから面白さも半減している。ユーモア小説の教科書と思って読めば良いのかも知れない。期待外れ感はある。(竹) |
シ |
ダン・シモンズ |
ハイペリオン(下) |
2006
3/29 |
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久しぶりに読むSFだが、自分はこういうものを面白いとは思わなくなっていた。主役の人物形成も浅薄。結末が納得出来ないのは次作の「ハイペリオンの陥落」で明らかになるとしても、その次作を読む気にもならない。でも巻末の解説は大絶賛、賞も取っているのでSFファンなら読んでみては如何?(竹) |
シ |
ダン・シモンズ |
ハイペリオン(上) |
2006
3/29 |
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本格SF長編の体裁だが、単調になりがちなスペースオペラの内容を登場人物がそれぞれに自分の過去を語ることで、バラエティに富むようにしている。この上巻は司祭、戦士、詩人の物語になる。戦士はSFらしくて面白かった。ヒューゴー・ローカス賞受賞作。日本の星雲賞も海外長編部門で受賞している。(竹) |
シ |
シャーリイ・ジャクスン |
野蛮人との生活 |
2022
9/16 |
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田舎に引っ越したアメリカ白人一家の生活を妻が描く私的小説。1953年の作だけあって夫は何もやらない。自動車の運転さえ妻任せ。表題の野蛮人とは子供を指すのだろうが、夫も含まれると思う。大体事実に基づくのだろうが、4人で引っ越して物語の終盤には6人になっている。自身も小説家なのに弱音を吐かない妻。そういう時代か。(竹) |
シ |
シャーリイ・ジャクスン |
処刑人 |
2021
11/13 |
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父母と弟の元を離れ、女性だけの大学へ進学したヒロイン。誰とも親しくなれず孤独感を募らせる。帰省した時にも家族に悩みを打ち明けられない。後半ヒロインと仲良くなる学生は現実とは思えず、二人で行った湖は幻想的。「処刑人」という題名は、危ういヒロインを表しているのだろうが違和感。ちょっと古い小説だと思ったら1951年のもの。(竹) |
シ |
ジャクマール&セネカル |
グリュン家の犯罪 |
2018
6/5 |
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舞台はストラスブール。早朝に川で発見された遺体。それが消えて装釘家の自宅にあった。それが息子の婚約者だった。事件を探る警視には殺害方法や動機が見えてこない。容疑者全員の話を聞くうちにほつれが見えて来る。1976年のフランスの推理小説だが、昔の無理な密室殺人ではなく、現代のサスペンスに近い。読んで納得出来る結末。(竹) |
シ |
セバスチアン・ジャプリゾ |
シンデレラの罠 |
2019
7/28 |
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大金持ちの叔母を持つ娘が火事に遭う。顔や手が焼けて本人も記憶喪失になり、自分が誰か分からない。火事で死んだ幼なじみの娘かもしれない。怪我から回復すると周囲で陰謀が渦巻いていた。あとがきによると評価が高い作品だが、自分は謎の為の謎のような複雑な小説は好きではない。物語としての骨格が通って人物に魅力がある方が好き。(竹) |
シ |
ネビル・シュート |
パイド・パイパー |
2018
3/23 |
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第2次大戦初期にフランスにいた老人はイギリスに帰ろうとしていたが、戦火の急拡大を知らず知人の子供2人を預かる。逃げ遅れ、ドイツ軍が迫る中次々と子供を預かる。表題はハーメルンの笛吹き男の意味。SF作家だと思っていたが、こんな小説を書いていたと始めて知る。戦争中の1942年に発表。残酷さは抑えてあるが、現代にも光る戦争小説。(竹) |
シ |
ミランダ・ジュライ |
いちばんここに似合う人 |
2012
3/2 |
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言葉にしない愛や愛への執着や裏返しの愛や愛からの退場や孤独の平穏さや予感出来る墜落や墜落を止めない諦めや暴力を受け止める愛など、どれもこれも生きていく途中の出来事。当事者たちは日常茶飯事で些細な事だと受けとめる。映像作家らしく映画的で真剣味がある小説集。この小説集のどこかに自分もいるようだ。(松) |
シ |
アニータ・シュリーヴ |
パイロットの妻 |
2023
3/25 |
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夫が操縦する旅客機が墜落。原因が爆発物でそれを夫が持ち込んだらしいという推測。航空安全局の調査、報道機関の騒動が続く。娘も動揺し母に助けられる。妻は自問自答する。夫の持ち物を調べてロンドンに行く妻。そこで真実を知る。題名に馴染みがあって読んだかと思ったが初めてで、同名の映画も観ていない。何の記憶だったのか。(竹) |
シ |
アニータ・シュリーヴ |
パイロットの妻 |
2006
11/5 |
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午前3時、眠る妻に夫の操縦する旅客機が墜落したと告げようとする男が自宅の戸を叩く。悪い夢のような場面から始まる物語。その後、追い討ちをかけるように、夫が自殺した可能性の報道がされ、妻は苦悩し夫の過去を思い返してみる、「そういえば…」。妻の知らない夫が段々と明らかにされていく心理ミステリー。(竹) |
シ |
ベルンハルト・シュリンク |
朗読者 |
2022
2/5 |
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15歳の少年が愛したのは母親の年齢に近い女性だった。だがその女性は突然失踪してしまう。再会したのは少年が法科の大学生になり傍聴していた裁判所でだった。女性が被告となっていた。大戦後のドイツで戦争の影響が残る頃だった。題名はこの物語の大事な部分になる。守りたいものは人それぞれで違う。その気持に寄り添ったのに。(竹) |
シ |
マウリツィオ・
デ・ジョバンニ |
集結 P分署捜査班 |
2021
1/31 |
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イタリアの警察小説一作目。アメリカの87分署シリーズに似て、個性のある面々がそれぞれの事件を捜査する。これは不名誉な事件を冒して、閉鎖されそうな分署に派遣された警官達が扱う最初の事件。似たような小説はあるが、人物が良く描かれていて好感が持てた。本も文庫で357ページと丁度良い長さで無駄に厚くないのも好印象。面白かった。(竹) |
シ |
スタンレー・ジョンソン |
アイスキャップ作戦 |
2008/
12/21 |
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キーワードは地球温暖化。イギリスのロイターの通信員が公私共に世界的陰謀に巻き込まれる。地球温暖化を左右する鉱物が発見され、ロシアは温暖化によってシベリア凍土を農地化しようと画策するという地球環境サスペンス。この話ではロシアが困窮して自身のエゴイズムで行動するが、今のエネルギー大国となったロシアとは隔世の感がある。(竹) |
シ |
シン・ギョンスク |
母をお願い |
2021
8/5 |
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田舎から出てきた年老いた母を地下鉄ソウル駅ホームで見失う。小説家である長女、会社の要職を務める長男、連れ合いである夫のそれぞれの視点で語られる。自分以外の為に身を粉にして働く母。母にはして貰うばかりで母の事を考えてもみなかった家族。母の思いも語られるが辛い事ばかりでは無かった。韓国だけではなく家族を考えさせる小説。(竹) |
ス |
グレアム・スウィフト |
この世界を逃れて |
2006
4/29 |
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この作家の本は2冊目。前は「ウォーターランド」。人間よりも土地が主役と思えるほど心に残った。この本は心の溝を持った父親と娘の交互の独白の形式になっている。真実を言えば自分の立場を娘に理解してもらえるのに、真実を言うと娘を悲しませるから言わない父親。真実を明るみに出すより娘に恨まれる方を選ぶ父親。さて和解は出来るのか。(竹) |
ス |
ジョン・スコルジー |
レッドスーツ |
2019
4/2 |
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宇宙艦隊の旗艦に配属された男は不思議な現象に気付く。特定の人間は大怪我をしても死なない。そうでない人間で特に新入りの死亡率が高い。仲間と共にその謎を解こうとする。50年位前の雰囲気だが2012年作。SFユーモア小説なので論理性は無い。それにしても三部もある終章は蛇足で一気に面白さ半減。これでヒューゴー賞とは信じられない。(竹) |
ス |
ジョン・スコルジー |
ゾーイの物語 老人と宇宙4 |
2013
5/12 |
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3巻を再度、主人公の養女の視点から一人称で語られる物語。3巻を補完する為という。だが、エイリアンの救世主の娘でエイリアンの護衛に命令する高慢さは若年の愚かさとしても、考え無しの行動に魅力は感じず恋物語も正直退屈。筋書きは見えているので飛ばし読み。シリーズを通して、老人が戦争に行くというアイディアを生かし切れなかったのが残念。(梅) |
ス |
ジョン・スコルジー |
最後の星戦 老人と宇宙3 |
2013
5/12 |
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1巻と同じ主人公が退役して新しい家族を持ち新しい星に入植する。政治的工作で未知の星に到着してしまい、知らずにエイリアン組織への反攻のおとりになっていた。無理に複雑な構成にしてしまって、論理的に変で乱暴な筋書きになっている。前半のエピソードは捨て話か。新たな真実で主人公の考えが変わり、読むほうも騙された気分で面白くない。(竹) |
ス |
ジョン・スコルジー |
遠すぎた星 老人と宇宙2 |
2013
5/12 |
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前回は若返った老人が主役で、今回は大人の身体と知識を持つ生まれたての男が主役。生が与えられたのは裏切り者の意識を埋め込みその男を追うため。徐々に他人の意識が顔を出す。小説は心理描写かアクションシーンかのどちらかが優れていれば楽しいが、どちらも及第点とは言えない。前半は退屈でページが進まず終盤になってやっと面白くなる。(竹) |
ス |
ジョン・スコルジー |
老人と宇宙(そら) |
2013
5/3 |
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正統派戦争SF。直訳すると「老人の戦争」というシリーズ物。75歳の老人がエイリアンとの戦争に従軍する。勿論若返り処置を受ける。老人というのが良いアイディアだ。最初は自分のブログに載せていた小説だというから驚きだ。しかし自分で自分を守る権利は、インディアンへの侵略や全米ライフル協会の主張等も頭によぎり素直に楽しめない部分もある。(竹) |
ス |
シオドア・スタージョン他 |
千の脚を持つ男(怪物ホラー傑作選) |
2009/
3/12 |
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怪奇ホラー傑作選の短編集で、いわゆるモンスターが主役。このジャンルとしては年代的に古い事もあって原点とも呼べる正統的な部類。自分の歳ではあの「ウルトラQ」のワクワクドキドキする映像と音楽を思い出す。全編が、ホラー部分だけでなく小説としてもちゃんとした骨格を持っているから面白い。(竹) |
ス |
シオドア・スタージョン |
ヴィーナス・プラスX |
2008 7/27 |
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雌雄同体の未来人達に過去から拉致された男は愛する者の元に戻る為に協力する。その仕事とは第三者の立場から未来人の世界を評価する事。1960年の作でメインストーリーの間に当時のアメリカ人家庭の寸劇が入れられる。文明批判のニューウェーブSF。といっても読み難くはない。しかし、この宗教臭さは自分にはエグイ。(竹) |
ス |
ニール・スティーヴンスン |
ダイヤモンド・エイジ(下) |
2007 8/9 |
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最近の(といっても10年前か)ヒューゴー賞は自分には合わない。レッド・マーズよりは良いが、こんな小説なら村上春樹を読んだ方がよっぽどまし。小説の主題が散乱して何を言いたいのか分からない。この題名に因んだエピソードさえも出てこない。筋がちゃんとしていないと自分は読み進められない。(竹) |
ス |
ニール・スティーヴンスン |
ダイヤモンド・エイジ(上) |
2007 8/9 |
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ナノテクが発達したため既存の国家が崩壊し、人種・宗教・主義・趣味などを同じくする集団の小国家に細分化された近未来の話。この上巻の最初は誰が主人公なのか定まらず話の筋を追いにくい。近未来のテクノロジーの造語が多く一つ一つに説明が欲しい。テクノロジーが主役のように思える。(竹) |
ス |
ダニエル・スティール |
5日間のパリ |
2019
12/21 |
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パリで出会ったアメリカ人男女の恋と脱出の物語。男は製薬会社の社長だが家庭では疎外感があり難しい仕事に腐心していた。女は議員の妻で夫は妻を政治の道具にしか思っていないのが不満。一時流行った超訳というもので間違いなく読み易くはある。それなら結末をもっと劇的にして欲しかった。それにしてもこの会社の本は装丁が安っぽい。(竹) |
ス |
ダニエル・スティール |
敵意(下) |
2006
9/1 |
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不幸な少女の成長物語。幸せになりそうでなれない事の繰り返しは、この小説を面白くさせようとする意図が見えて不興。これはアカデミー出版の本だが、装丁も安っぽいし、翻訳を「超訳」なんて言って胡散臭い。前にここのシドニィ・シェルダンの本を読んだが、その意訳のせいか全く詰まらなかった。(竹) |
ス |
ダニエル・スティール |
敵意(上) |
2006
9/1 |
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映画を見ているように、スラスラ読める。物語にも起伏がありハラハラドキドキもする。ただあくまで読む側は受身で、読む側の自問自答が無い。後に残らない、引っ掛かりの無い小説。でも面白くない訳ではないので、難しい小説の合間にはいいかも。最近では珍しく3日で上下巻を読み終えた。(竹) |
ス |
マリオ・リゴーニ・ステルン |
雪の中の軍曹 |
2006
8/5 |
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第2次世界大戦の終わり頃のロシア戦線での枢軸側のイタリア軍の退却の様子を描いた小説。作者の実際の体験を描いたのでノンフィクションということになるのか。同盟のドイツ軍も追ってくるソ連軍も略奪されるロシア農民も命懸けなのは間違いないが戦争と言う特殊な状況で淡々と(仕方なく)生きているように見える。日本軍ならもっと悲惨になるような気がする。(松) |
ス |
チャールズ・ストロス |
シンギュラリティ・スカイ |
2017
7/19 |
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辺境の独裁国家の星系で未知の世界からの接触があり、侵略と理解され艦隊が差し向けられた。そこに国連のエージェントである女と、艦船の修理を依頼された男が乗り込む。恋あり陰謀ありサスペンスありで、SFらしい壮大さもある。先に続編の「アイアン・サンライズ」を読んでしまったが、それでも大いに楽しめた。これからもこういうSFが読みたい。(松) |
ス |
チャールズ・ストロス |
アイアン・サンライズ |
2017
5/16 |
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新型兵器で2億人が住む星が消滅し、余波から逃れ難民となった少女は陰謀の手掛かりを知っていた。コンピューターの神が騙され、善い奴悪い奴が入り乱れ、ドタバタSF活劇。SFファンにはたまらないSF要素満載。しかも文庫本ながら650ページの大容量。ただ、わざとなのか盛り上がりを抑えてあるのは不満。この作家は3作目だがどれも面白い。(竹) |
ス |
チャールズ・ストロス |
残虐行為記録保管所 |
2017
4/22 |
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元ハッカーが所属するのは数学的魔術の誤用、悪用を防ぐイギリスの秘密組織だった。イギリスの学者をアメリカから帰国させる仕事が発端となって災厄に巻き込まれる。ナチスや宇宙の邪悪な存在も登場して、手に汗握るSF冒険活劇が展開。現実世界の裏にある科学的呪術の世界を見事に構築しているだけでなく、面白い筋と人物構成は見事。(松) |
ス |
チャールズ・ストロス |
アッチェレランド |
2017
3/12 |
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21世紀始め自らはアイディアを出し無償で与えるだけで経済活動には係わらない男に、人間以外の知性から助けを乞われる。そこから飛躍的な発展を遂げる人類。この男の三代に渡る年代記。小さい文字で2段組で500ページを超える量。SF用語満載でさぞかし訳者の大変さが偲ばれる。表題は段々加速すると言う意味らしい。4年がかりの大作。(松) |
ス |
ウィルバー・スミス |
リバー・ゴッド(下) |
2009
5/1 |
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エジプトにヒクソスと呼ばれるセム系遊牧民が攻めてくる。エジプトに無い馬を使った戦法や、射程距離の長い弓でエジプト軍は圧倒される。エジプトの民はナイルを遡って逃げる。宦官は相手を研究し馬を使い戦車も作り弓も改良する。逃げのびた所に王の墓を作る。この墓探しの物語が「秘宝(上下)」として別の小説になっている所が面白い。(竹) |
ス |
ウィルバー・スミス |
リバー・ゴッド(上) |
2009
5/1 |
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古代エジプトの貴族に仕える天才的な宦官の物語。芸術、建築、医術などで活躍する。直接仕える貴族の娘がファラオに嫁ぐ事になり、宦官もお城に住む。財政が逼迫する中、貴族の汚職が横行。古代史を基にした冒険小説。昔の話は苦手だが軽快な筋書きなので読み進められる。筋やクライマックスシーンがご都合的主義的なのがつまらない。(竹) |
ス |
ウィルバー・スミス |
秘宝(下) |
2009/
2/19 |
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他国の隠された墓に眠る秘宝を密かに取ろうというのは国際的な犯罪だし、もっとエゴイステックな競争相手がいる事は免罪符にならない。この為に何人もの人が死に、墓という文化的遺産が破壊されるという筋は楽しめなかった。かといって現地と協力して根回しして10年がかりで発掘するという正しい方法では冒険活劇にならないが…。(竹) |
ス |
ウィルバー・スミス |
秘宝(上) |
2009/
2/19 |
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その昔、エジプトの王が戦いに敗れて青ナイル川を遡ったエチオピアに墓を築いた。その墓の位置と財宝を巡って非力なイギリス人(良い人)と財力に勝るドイツ人(悪い人)の戦いを描くハラハラヒヤヒヤと恋もある冒険アドヴェンチャー小説。まるでインディ・ジョーンズ。勧善懲悪で上巻は解りやすく感情移入しやすかった(竹) |
ス |
ウィルバー・スミス |
灼熱戦線(下) |
2008 9/3 |
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娘の乗った病院船はドイツ軍のUボートに沈められるてしまう。サメに襲われながらもアフリカに漂着して、死ぬ寸前をブッシュマンの老夫婦に助けられる。波乱万丈で過酷な筋書きに、思わず「娘を助けてやれよ」と言いたくなるほど没入した。ラストは納得できない部分もあるが全体に面白い冒険小説。原題通りの「灼熱海岸」の方が相応しい内容。(松) |
ス |
ウィルバー・スミス |
灼熱戦線(上) |
2008 9/3 |
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第一次大戦でドイツ軍と戦う為にイギリス植民地の南アフリカから来た男は、戦場でフランス娘と恋に落ちるが結婚式の日に死んでしまう。ここから主人公はフランス娘に切り替わる。娘は男の子供を宿し二人で夢見たアフリカの地へ赤十字の船で旅立つ。離れ業のような急展開の筋書きであっけに取られるが、読む者を引き付ける。(松) |
ス |
ウィルバー・スミス |
飢えた海 |
2008 2/9 |
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これぞ冒険小説。専門的知識を駆使した緊迫シーンは秀逸。難破した客船のサルベージをめぐり競争相手から権利を勝ち取る。難破船のオーナーは、妻と船舶会社の社長の座を奪った男。荒れ狂う南氷洋の中、危険な賭け(サルベージ)に乗り出す。全体に欠点は無いが文庫本で671Pは長い。長すぎて冗漫になったのが残念。(竹) |
ス |
ウィルバー・スミス |
無法の裁き |
2007 11/25 |
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謎のテロ組織に挑むコマンド部隊の指揮官が主人公。最初のハイジャック事件では緻密な筋書きで引き込まれ、その後も誘拐事件の間に恋愛を絡め緩急をつけ興味を逸らさない筋書きは本格派冒険小説。ただ結末は良くない。結末までテロ組織の黒幕が判らない。誰であってもおかしくない筋運びが過ぎて作為的。結末もスピード感が無いし貧弱な感じがした。(竹) |
ス |
ウィルバー・スミス |
熱砂の三人 |
2007 9/20 |
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世の中は第2次世界大戦前の不安定な時。舞台は1935年のエチオピア。中古の装甲車を売りつけ、それを密輸する事になったイギリス人の武器商人とアメリカ人のエンジニアの物語。それに美人ジャーナリストが加わって友情あり、恋あり、戦争ありの冒険活劇。やがてイタリアとの第2次エチオピア戦争に巻き込まれる。出来は及第作。(竹) |
ス |
ウィルバー・スミス |
虎の眼 |
2007 6/24 |
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アフリカ沖のインド洋の架空の島国で、沈没船の宝物をめぐる海洋活劇。手に汗を握る場面が次から次とこれでもかと現れる。一人称のわりに主人公に感情移入もしやすく、スイスイと読み進める。しかし、主人公を窮地に陥れる場面をあまりにも作り過ぎで、後半は作為感を感じる。面白い事には間違いが無いが、そのへんが残念だ。(竹) |
ス |
ウィルバー・スミス |
闇の豹(下) |
2007
3/16 |
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この作者の作品で最初に読んだ「地底のエルドラド」はとても良い出来だったが、この作品は期待していただけに落第点だ。不必要なエピソードや、クドイ状態表現を入れ作品を大きく膨らませ、金儲けのための出版社やエージェントが望む作品にした(と思う)。作者のさじ加減でスリルな場面を作っていると感じてしまって、読んでいて楽しめない。(竹) |
ス |
ウィルバー・スミス |
闇の豹(上) |
2007
3/16 |
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アフリカの裕福な白人農場に生まれた主人公は、黒人政権の誕生でイギリスに逃げる。作家として成功するが故郷を忘れられず戻る。そこで部族間の対立に巻き込まれる。冒頭の象の殺戮シーンは引き込まれた。しかし、読む方がこれは罠だなと思うのに、落ちてしまう主人公は愚かに見える。サスペンスでは主人公はスマートでなければならない。(竹) |
ス |
ウィルバー・スミス |
地底のエルドラド |
2007
2/11 |
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まるでSFのシリーズ物のようなこの題名にこの表紙はいただけない。原題の「金鉱」で良かったのではないか?南アフリカの金鉱山を舞台に色々な者達の思惑が絡んだサスペンス小説。たった367ページだが内容が凝縮されている。今の感覚だと倍以上に膨らませて発表されているだろうが、そうなったとしてもこの小説の価値は下がらない。(松) |
ス |
トム・ロブ・スミス |
チャイルド44(下) |
2009/
7/12 |
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主人公が自分や家族を犠牲にしてまで連続殺人事件を解決したいという動機がよく分からない。殺人者の動機もあやふやで、逃避行中に主人公を助けるその他大勢の動機もご都合的。それに結末も、これで連作をしようという意図がありありのご都合的。筋も人物描写も全くなっていない。深みの無い浅薄なサスペンス風小説。(梅) |
ス |
トム・ロブ・スミス |
チャイルド44(上) |
2009/
7/12 |
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スターリン時代のソ連国家保安省の捜査官が心の弱さからか人間らしい心を持った為か、罠に落ちモスクワから妻と共に地方に左遷される。モスクワ時の惨殺事件を事故として封印してきたが、左遷先でも同じ事件が起こる。妻とも破局し誰も味方のいない主人公の生きる道は?時代背景はなかなかだが、人物描写がいまいち浅い。(竹) |
ス |
マレー・スミス |
悪魔の参謀(下) |
2009/
1/4 |
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イギリス情報部の幹部ともあろう男が、浮気内容を神父に懺悔するというのは不自然。アイルランドの判事で実はIRAの幹部もIRAの為に何度も外国に行くがこれも不自然。他にも細部の詰めが甘く白ける。下巻になっても中々筋が進展しないし、主人公を単一に設定していないので、本筋がつかめず(というか無く)面白みが分散される。(竹) |
ス |
マレー・スミス |
悪魔の参謀(上) |
2009/
1/4 |
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ニューヨークで麻薬を捜査する刑事。南米の麻薬カルテルへの潜入捜査を目論むイギリス情報部。ヨーロッパに流通網を作りたい麻薬カルテル。活動資金が不足するIRA過激派。イギリス、アメリカ、コロンビアなどを舞台にしたバイオレンスサスペンス。上巻はまだプロローグ。場面が細かく切り替わるのは読書の波に乗れない嫌いがある。(竹) |
ス |
ミッチェル・スミス |
ストーン・シティ(下) |
2015
6/11 |
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教授はゲイの若い男と犯人探しに奔走するが力も金もツテも無く捗らない。刑務所対抗のボクシングの試合で八百長を仕掛けた話から、段々と犯人に迫って行く。登場人物が多くて人種も雑多で覚え切れないのが難。ストーリーも結末も平凡。一番のウリは刑務所内の描写だと思うがアメリカを凝縮した世界であるのは確か。でも好きな小説では無い。(竹) |
ス |
ミッチェル・スミス |
ストーン・シティ(上) |
2015
6/11 |
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大学教授が飲酒運転で少女を轢き逃げした事により州立刑務所に入る。凶悪犯が2000人もいて幾多の暴力沙汰があり殺人も起きるが犯人は見つからない。教授は犯人を探す役目を、刑務所側からも囚人組織からも半ば強制される。最初は、教授も自己中心的な嫌な男で小説に入り込めなかった。読むうちに無法さや汚さに慣れてスムーズになる。(竹) |
ス |
ジョン・スラディック |
見えないグリーン |
2013
12/28 |
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この作家はSFも書くがこれは推理サスペンス小説。推理小説マニア達が40年ぶりで集まるが、そこから連続殺人事件が始まる。密室殺人の謎やアリバイなどひと昔前(1977年)の推理小説だが、破綻は見当たらず結構楽しめる。謎解きを最後の最後まで引っ張るのも憎い手法だ。最近こういう謎解きがメインの小説は見なくなった。解説の鮎川哲也は絶賛。(竹) |
ス |
ジョン・スラデック |
遊星よりの昆虫軍X |
2013
1/8 |
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イギリスの売れない作家がアメリカで一旗上げようとしてプログラマーに間違えられて雇われ起こすドタバタコメディでまあまあ楽しめる。宇宙はまるで出てこない。題名を付けたのは訳者だろうが当時はハマっていたんだろう。原題は「BUGS」で直訳は虫だがプログラムの欠陥というのは周知の事。意外に登場人物が多く、メモっておかないと混乱する。(竹) |
ス |
ジョン・スラデック |
蒸気駆動の少年 |
2012
7/18 |
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SFのつもりで借りた本だが内容は様々。訳者も様々で編者が著者の代表作を集めて短編集としたのか。本格SFから推理小説、残酷な童話、アンケート用紙まである。共通するのは一風変わっている事。それでも、これだけ多様であればきっと気に入る短編もあるはず。自分が気に入ったのは小品だが「ホワイトハット」。どちらかというと普通のSF。(竹) |
セ |
ドロシー・L・セイヤーズ |
不自然な死 |
2018
9/26 |
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貴族探偵の三作目。居酒屋での偶然から、老女の不自然な死を知る。状況が怪しいが他殺の証拠が見つからず自然死とされていた。調べるうちに法律の改正が動機につながる。更に殺人や殺人未遂が起きる。最近は過剰な暴力や無意味などんでん返しが多過ぎるが、人物を重視した正統派のミステリーこそ楽しい。1927年作という古さを感じない。(竹) |
セ |
ドロシー・L・セイヤーズ |
雲なす証言 |
2013
12/17 |
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貴族探偵ピーター・ウィムジイ卿の2作目。実兄が別荘で起きた殺人事件の犯人として起訴される。兄も含め証言を拒んだり虚偽を言う者ばかり。1926年作の古典的探偵小説だが時代差はさほど感じないのは平民とは異なる貴族の内情を描いている為か。及第の出来で次も読んでみたいと思える。ただ重要部に偶然が重なり過ぎているのが難といえる。(竹) |
セ |
ドロシー・L・セイヤーズ |
誰の死体? |
2013
2/24 |
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貴族探偵ピーター・ウィムジイ卿シリーズの第1作。自宅の風呂で誰だか分からない死体を発見した建築家が逮捕され、母が知合いで卿が捜査に乗り出す。卿の執事や友人の警官のキャラクターが確立してそのやりとりが面白い。ちょうど90年前の作だが今となっては筋書きは平凡。死体の移動方法も疑問。始めて読む作家。ミステリー(女性)作家は多い。(竹) |
ソ |
ロバート・J・ソウヤー |
ホミニッド −原人− |
2010
12/11 |
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ホモ・サピエンスが滅び、ネアンデルタール人が繁栄する地球があった。事故でネアンデルタール人の物理学者が現在の地球に転移する。いわゆる平行世界ものだが、ハイテクを操るネアンデルタール人という発想は面白い。ネアンデルタール人の生活と比べた社会批判もあるが、中身は肩の凝らない楽しく読める小説。2003年ヒューゴー賞(松) |
ソ |
コリン・ホルト・ソーヤー |
フクロウは夜ふかしする |
2022
12/23 |
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高級老人ホームの老婦人たちの素人探偵ぶりを描く「海の上のカムデン」シリーズ3作目。老人ホームに出入の業者が殺され、次に庭師が殺される。そして新しい入居者も殺される。捜査にいつもの警部補が来ないのが老婦人たちの不満。今回も警察の邪魔になっても事件に係わる老婦人たち。裕福で暇を持て余す老人は頭を使いたい。(竹) |
ソ |
コリン・ホルト・ソーヤー |
氷の女王が死んだ |
2021
8/28 |
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リゾートホテルを改装した高級な老人施設で事件が起きる。シリーズ2作目。元気なのは女性達でそれぞれが余生を満喫している。そこで事件、嫌われ者の老女が殺される。老ヒロイン達は事件を嗅ぎ回るが襲われる。前回と同じ刑事コンビに注意されるが止めない。残酷な場面や捻り過ぎたトリックも無いので安心して読める。お口直しに最適。(竹) |
ソ |
コリン・ホルト・ソーヤー |
老人たちの生活と推理 |
2020
8/16 |
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ソ |
ソン・ウォンピョン |
アーモンド |
2021
11/25 |
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感情を表現出来ない男子が主人公。父親が幼い時に亡くなり、その後暴漢に祖母が殺され、母親が意識不明になり一人暮らしが始まる。転校して来た不良と変な繋がりが出来る。題名は脳の扁桃体の形と、母親に食べさせられたアーモンドによる。素材が面白いし読み易い。少年少女向け小説なのか、結末は気に入らない、優し過ぎる。(松) |
ソ |
ドナルド・J・ソボル |
2分間ミステリ |
2023
1/5 |
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これは特殊な小説で、ミステリーのショートショートとでもいうもの。2ページ程度の事件の説明で犯人を当てる。博識でないと答えが分からないものや、理由がこじつけに感じるものもある。謎解きが好きな人にはお勧め。答えは1問先に裏返しで印刷してある。全部で71問で230ページと短いが、謎解きを考えるので普通の小説より時間が掛かる。(竹) |
ソ |
ソルジェニーツィン |
イワン・デニーソヴィチの一日 |
2023
3/11 |
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ノーベル文学賞を受賞した小説で前から知っていたが難しいのかと避けていた。意外に読み易かった。ソ連時代の収容所での元農民の1日を描く。理不尽な理由での収容者ばかり。生き延びる為にくよくよせず、その日一日を精一杯生きている。この本のどこがソ連に対する反逆なのか、部外者には分からない。独裁者の圧制は今のロシアに通じる。(竹) |
タ |
タ |
ドナ・タート |
ひそやかな復讐(下) |
2021
5/14 |
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少女が昔の殺人事件を探ると言っても子供の遊びの延長のようなもの。偶然からストーリーが進むが、メインはアメリカ南部の生活習慣や家族の逸話。物語の結末も事件が解決した訳では無い。下巻は更にページ数が多く読み進めるのに速読した。作者が悪い訳ではなく、自分が間違った小説を選んでしまった。苦行みたいな2冊だった。面白くなかった。(竹) |
タ |
ドナ・タート |
ひそやかな復讐(上) |
2021
5/14 |
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アメリカ南部の田舎町で9歳の少年が首を吊られて死んだ。その12年後、当時は赤ん坊だった少女が未解決だった事件を探る。サスペンスというよりも登場人物の多い一族の年代記のよう。キリスト教でも色々な宗派があり、教義の記述もあり、苦手な部分だ。当時の風俗の記述も多く重く読み進み難い。上巻では事件の核心に近づかなくてじれったい。(竹) |
タ |
ジョン・ダールトン |
ネアンデルタール |
2012
1/3 |
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ネアンデルタール人については謎が多いため歴史ミステリーの種にされる。この作も中央アジアに現在も生き延びているという設定になっているが、殆ど進化していない事や発見されなかった理由が薄弱。学者の主人公が探検家のような行動をするのも興醒め。このテーマではゴールディングの「後継者たち」が唯一認められる。(竹) |
タ |
スチュアート・ダイベック |
僕はマゼランと旅した |
2016
11/8 |
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シカゴに住むポーランド系一族を描いた連作短編。短編の題名がテーマとなっていてその線にそったものを無作為に詰め込んだという印象がある。全体に言えるのは記憶が大事な要素になっている。時間も場所もバラバラ、一つの作品の中でも飛んでしまっているので理解し難い。一度では良さが分からず繰返し読むと面白さが見えて来る気がする。(竹) |
タ |
スチュアート・ダイベック |
シカゴ育ち |
2006
4/15 |
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昔はこういう本は、西日が差す部屋でジンライム片手に角氷の音を聞きながら読んだものだ。カッコつけて本を読んでいた頃だね。今はもうジンライムなど飲まないし、せいぜい日本酒で撮りだめしたビデオを見るぐらいだ。ジンライムで本を読めばあの頃に戻れる、なんてことは無い。切なくなるような青春の風が吹いている本だ。(松) |
タ |
ジョン・ダニング |
名もなき墓標 |
2018
11/18 |
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過去に栄光を持つ新聞記者は地方紙に転職し、身元不明の少女の死体から20年も昔の事件を掘り起こす。未だに追うFBIと追われる共産主義者がいて、FBIの暗殺部門の実態が記されたファイルの存在が焦点になる。登場人物の素性からストーリーの展開が読めた。最初の少女の死についてもおざなりの感がある。通俗的なサスペンスに思えた。(竹) |
タ |
ジョン・ダニング |
封印された数字 |
2017
2/2 |
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送られて来た写真をきっかけに、昔を思い出す男。その頃行われた催眠実験のせいらしい。潜在意識に導かれ金が眠ると言われる廃鉱に着く。最初から思わせぶりで分からないまま筋は進む。途中のクライマックス部分も想像し難く、結末は説明的でそれでも不明な部分が残る。この題名も、小道具も他の登場人物もこけおどしでつまらない。(竹) |
タ |
ジョン・ダニング |
幻の特装本 |
2015
8/27 |
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元警官で古書店主の男が親しくもなかった元同僚から罪を犯した女性の逮捕と移送を頼まれる。これだけでも筋が強引。その後、敵対する男に女性を奪われ死の危険があるのに、幻の本を追う方に血道を上げる。この辺もおかしい。伏線も効いていないし緊張のさじ加減も円滑でない、要するに構成がなっていない。内心文句を言いながら読んでいた。(竹) |
タ |
ジェラルド・ダレル |
積みすぎた箱舟 |
2014
12/30 |
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イギリスの動物園の為に中央アフリカのカメルーンで動物の採取をした時の筆者の実話。1947年の事で今とは事情が違うが、現地人との交流や動物を捕まえる際の失敗、生かしておく餌やり等、目新しいエピソードが満載。著者の別の本が無くてこれを借りたが正解だった。ふりがなが付いているので児童書だが大人が読んでも面白い。(竹) |
タ |
ウェルズ・タワー |
奪い尽くされ、焼き尽くされ |
2014
10/18 |
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アメリカの新進作家(といっても今年41歳)の最初の短編集。訳者によると推敲を重ね完璧さ目指す作家という。そう言われて読んでみるとどの作品も滑らかで荒さがない。収容されている九編の中で表題作の他には「下り坂」が強く印象に残った。好印象では無く自分の心を不本意ながら乱していったつむじ風のような作品。秀逸と呼んでいい短編集。(竹) |
タ |
スザンヌ・ダンラップ |
消えたヴァイオリン |
2011
8/11 |
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時は18世紀ハンガリー。ヴァイオリニストを夢見る少女が世情の混乱から父を殺される。失意の中でも犯人を捜し父の望みを継ぐまでを描く。大作曲家ハイドンを始め有名な人物が出てきて物語の奥行きはあるし、スピード感もあるが、問題の解決がご都合主義的など筋書きはゆるくミステリーファンとしては物足りない。(竹) |
チ |
テッド・チャン |
あなたの人生の物語 |
2011
3/9 |
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珠玉SF中短編が8作。どれも異なった題材をテーマにしていて、天に届く塔や、超天才の行く末や、数学にのめり込む学者や、風変わりな宇宙人とのコンタクト等のSF風味を味わうのが楽しい。なかでも「地獄は神の不在なり」は現代社会なのに天使の出現が災害ももたらす世界を描き、無宗教の自分にも理解できる興味深いものだった。(松) |
チ |
チョ・ナムジョ |
82年生まれ、キム・ジヨン |
2022
1/20 |
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結婚して子を持つ韓国女性が精神科に掛かる。医師の聞き書きのような体裁。女性の地位が低かった時代から現代においても貶められている現状を生きて来た。韓国で地下鉄の妊婦専用席を見たが、日本女性が韓国人男性から無視したと言われて殴られた事件もあった。女性の地位向上はまだ途上だ。日本も韓国もアイスランドを見習うべき。(竹) |
チ |
チョ・ナムジュ |
彼女の名前は |
2021
2/13 |
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韓国の女性達が上げる声を小説として表現。一つ一つは短いが内容は濃い。200ページを少し越える中に28編収まり、最後に著者の分もある。労働環境が厳しい韓国で、家庭では女性は更に報われない思いをしている。女性達の声で改善の方向にある。日本で個人はSNSで発信するだけのようだ。「82年生まれ、キム・ジヨン」はまだ借りれず未読。(竹) |
チ |
チョ・ナムジュ他 |
ヒョンナムオッパへ |
2020
6/12 |
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テ |
ウィリアム・L・デアンドリア |
視聴率の殺人 |
2016
2/3 |
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アメリカのキー局でトラブル処理をする部署の男が主人公。TV局内の探偵という感じだが副社長。トラブルの連絡を受け呼び出されたホテルで殺人が起きて自身も殴られ気を失う。知合いの警官、ギャング等も出てなかなかの賑わい。大団円の手法が現実的で無いという以外は良く出来ている。TV業界の内幕と言っても著作は1978年だから古い。(竹) |
テ |
ジュノ・ディアス |
こうしてお前は彼女にフラれる |
2014
4/22 |
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ドミニカの男は浮気っぽいらしい。作者の実体験を基にした男の身勝手な恋愛短編集。一人の女だけを愛そうと(先はどうなるにしても)しない男は何処にもいるもので、その男は倫理観のその部分が欠落しているから仕方が無い。オスの欲望が強いとも言える。そういう男に巡り合った女は災難。だからといって男が全部浮気するとは思わないで欲しい。(竹) |
テ |
ジュノ・ディアズ |
ハイウェイとゴミ溜め |
2014
3/15 |
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ドミニカ出身でアメリカに移住した作者の幼年期から青年期にかけての私小説的な短編集。全米最優秀短編小説に選ばれた「イスラエル」は豚に齧り取られた顔を隠す少年のマスクを剥がす話で、貧しい田舎で楽しみの無い子供の好奇心の残酷さを鋭く描写。安楽な自分は後味悪く感じたが、生きる事に懸命さが溢れているせいか嫌いでは無い。(竹) |
テ |
イサク・ディーネセン |
バベットの晩餐会 |
2005
1/12 |
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中篇2編の本。自分の力を信じられる芸術家は豊かになれる。それのみで生きて行くことができる。他人からどう思われようとも幸せだ。どんな職業にも稀だけど芸術家はいるだろうなと思った。自分は芸術家になれはしないが、近づくことは出来そうだと思う。しかし、努力はしないと分かっている。 |
テ |
ジェフリー・ディーヴァー |
魔術師(下) |
2017
10/22 |
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魔術師の目的は自分を冷遇した興行師なのか、それとも地方検事補を狙う殺し屋なのか。不明のまま物語は進む。それに対応する警察側の対応が明らかに緩い。発砲すべき所でしないし、捕まえても手品師と分かっているのに取調べが甘くて逃げられている。どんでん返しも安易で物語上はムダ。カッチリした筋書きが無いままフラフラしている印象。(竹) |
テ |
ジェフリー・ディーヴァー |
魔術師(上) |
2017
10/22 |
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リンカーン・ライム・シリーズ5作目。大掛かりなイリュージョンを得意とする手品師が引き起こす殺人事件を捜査するいつもの面々。時々ある業とらしい緩い捜査が気になって没頭出来ない。1作目のハラハラドキドキ感は無く、鑑識の仕事の目新しさも無く、大御所の小説感丸出しでタイト感が無いのでしばらく読んでいなかった。やっぱり変わりが無い。(竹) |
テ |
ジェフリー・ディーヴァー |
ウォッチメイカー |
2015
7/22 |
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猟奇的な殺し方で殺人現場に古時計を置く犯人。対するのはいつものメンバーに尋問のプロが加わる。新しい発見があり捜査は二転三転する。このリンカーン・ライムシリーズは久しぶりに読んだがやはり自分の好みに合わない。第1作は傑作だったのに、筋運びがあざとくなり、読者を騙すような展開は素直に物語りに没入出来ない。もう読まない。(竹) |
テ |
ジェフリー・ディーヴァー |
獣たちの庭園 |
2014
3/2 |
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第一次大戦後のナチス隆盛のドイツに暗殺命令を帯びた殺し屋が潜入する。殺し屋を追うドイツ警察との追跡劇。久しぶりのディーヴァーで1冊完結なので選んだ本だが、文庫本でも600ページを越えて大河小説モドキで内容も冗漫で飽きる。プロの殺し屋らしからぬ情に流される等の筋の穴が幾つもあり、物語に没頭出来ない。期待外れ。(竹) |
テ |
ジェフリー・ディーヴァー |
12番目のカード(下) |
2012
2/9 |
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筋書きの急な新展開は読者を緊張させる効果はあるが、あまり多いし伏線が不適当だと騙された気分になる。騙されて楽しい小説もあるがこれはそうではない。人物像や小道具は立派なので、そこを抑えて真っ当な筋書きだけでも成功すると思うが、そうでないのであざとい。読後は、筋があってないような、テーマが何だか分からなくなる混乱がある。(竹) |
テ |
ジェフリー・ディーヴァー |
12番目のカード(上) |
2012
2/9 |
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鑑識のスペシャリストで重度の障害者であるリンカーン・ライムのシリーズもの。黒人少女がレイプされそうになるが機転を利かせ逃れる。ライムとサックスたちが調べるとレイプは偽りで命を狙われている。その理由は少女が調べていた先祖の逸話にあるようだ。いつものシリーズと同じ緻密な捜査と人物の構成が巧みで、やり過ぎ感もあるのは愛嬌か。(竹) |
テ |
ジェフリー・ディーヴァー |
クリスマス・プレゼント |
2011
7/1 |
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「ボーン・コレクター」で有名なミステリー作家の短編集。長編ばかり読んできたが短編もなかなか良いものがある。平凡な長編は水増し感があって嫌いだが短編は無駄な所がそぎ落とされて純粋に面白さが際立つ。いろいろなテーマの16編は珠玉と読んでも良い。ただ、図書館の本の中でも状態が悪い方(汚い)なのでページをめくるのが少々苦痛。(松) |
テ |
ジェフリー・ディヴァー |
石の猿(下) |
2010
10/19 |
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蛇頭のボスが密航者達を殺そうとする事が筋が走る元だが、その理由が最後になるまで明かされない。しかも、その理由が薄弱で説明的。無理なドンデン返しを安易に使い過ぎてもいる。このキャラ達がいれば奇をてらわなくても面白い本になるはずだが、シリーズ最初の本以外は同じ間違いをして面白くない。今回も読んで損をした感じ。(竹) |
テ |
ジェフリー・ディヴァー |
石の猿(上) |
2010
10/19 |
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中国密入国組織の船によりアメリカへ到着した者達が、乗船していた蛇頭のボスの顔を知っているという理由で殺されそうになる。船が沈没しボスも密入国者達も行方をくらます。ライムとサックス達は両者を追う。人気シリーズの4作目。相変わらず、主人公達の人物描写は巧みだが、マンネリの感もある。上巻はこんなものでも下巻に期待したい。(竹) |
テ |
ジェフリー・ディーヴァー |
ブラディ・リバー・ブルース |
2010
2/12 |
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映画の撮影地を探す仕事の男を主人公にしたシリーズの2作目。男は寂れた田舎町でのロケ中に殺人事件の容疑者を見たと、地元警察にもFBIにも思われ理不尽な取り扱いを受ける。男は、自分に間違えられて友人が殺された事から逆襲に出る。華の少ないB級サスペンス。良い所は期待しないで力を抜いて読める。悪い所は死体の処理方法と結末。(竹) |
テ |
ジェフリー・ディヴァー |
ヘルズ・キッチン |
2009/
2/1 |
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ニューヨークで映画コーディネーターをする男が自分のドキュメンタリー映画を製作中に連続放火事件に巻き込まれる。出演者が逮捕され無実を信じる男は火災監督官、地元ギャング、不動産王等を探り回る。序盤中盤と筋が平坦、終盤は伏線と呼べないような強引な展開でちぐはぐなストーリー。読んでいて気持ち悪い。又も残念な作品。(梅) |
テ |
ジェフリー・ディーヴァー |
青い虚空 |
2008/
12/2 |
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ハッカーがインターネットのセキュリティを破るだけでは満足できなくなり連続殺人まで犯すようになる。対策に刑務所に収監中の元ハッカーが駆り出される。ハッカーの余りのスーパーマンぶり(金は使い放題、神出鬼没、完璧な変装)は現実味が無い。それに物語の展開が唐突過ぎる。伏線をしなやかに活用して流れるような筋書きが欲しい。(竹) |
テ |
ジェフリー・ディーヴァー |
エンプティ・チェア(下) |
2008 1/5 |
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下巻では上巻と違い少年の描写が犯罪者からタダの普通の少年になるのは変。場面場面のクライマックスがありそれなりに面白いが、話の筋が何処へ向かっているかが終盤まで分からない散らかった印象。どんでん返しも不必要なものがある。少年の起した誘拐は最後まで動機が不明。法廷場面は無理が見えるし複雑な小説にしようとして未熟な印象。(竹) |
テ |
ジェフリー・ディーヴァー |
エンプティ・チェア(上) |
2008 1/5 |
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リンカーン・ライム・シリーズの3作目。ライムが手術の為に訪れたノースカロライナ州で事件を依頼される。少年が起した誘拐事件で追跡するサックス達。鑑識技術の冴えを見せ少年を追い詰める。最初から読者の心を掴み、離さないで進む展開。大小の地図も付いている。エンプティ・チェアは直訳すれば空の椅子。本当の意味は?(竹) |
テ |
ジェフリー・ディーヴァー |
コフィン・ダンサー(下) |
2007 10/14 |
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ダンサーはまるでスーパーマンか魔法使いのように攻撃と撤退を繰り返すがライム達は捕まえる事が出来ない。何度も筋に波を作って読者を楽しませようという意図は分かるが、それが作者の筋書きいじりとして作為的に感じてしまう。終わりのどんでん返しは、そう来るだろうと自分は解っていた。この一連のどんでん返しは読者に対する裏切りだと自分は思う。(竹) |
テ |
ジェフリー・ディーヴァー |
コフィン・ダンサー(上) |
2007 10/10 |
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寝たきりの(今回は電動車椅子にも乗る)の四肢麻痺の元鑑識(科学捜査)のリンカーン・ライム、シリーズの2作目。今回も美人鑑識官のアメリア・サックスを使って犯人を追い求める。コフィン・ダンサーと言われる殺し屋が重要証人を殺しに来る。何度も何度も攻撃を仕掛けるダンサーとライムとの頭脳の限りを尽くす戦いが続く。(竹) |
テ |
ジェフリー・ディーヴァー |
汚れた街のシンデレラ |
2007 8/21 |
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ニューヨークの貸しビデオ店に勤める夢見る女の子が、殺人事件に遭遇して友達のために(欲のために)事件を解決しようとする。あの「ボーン・コレクター」の作者の作品だが期待したほどでもない。この女の子を主人公にしてシリーズ化されているらしい。TVの脚本なら映像でどうにか見れるだろうが、サスペンス小説としては見劣りする作品。(竹) |
テ |
ジェフリー・ディーヴァー |
監禁 |
2007 7/1 |
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あの「ボーン・コレクター」を書いたこの作者得意のサイコサスペンス。サイコサスペンスなら最後まで緊張の糸をピーンと張っていなくては面白くない。悪役があくまでも強くなくては面白くない。読者に必然性の疑問を抱かせるようでは面白くない。肝心の結末周辺に無理筋が見えるのは面白くない。この作家なら無条件に面白い、なんて無い。(竹) |
テ |
ジェフリー・ディヴァー |
ボーン・コレクター(下) |
2007
5/24 |
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始めは捜査を嫌がっていたサックスがFBIから証拠品を持ち出し、再度独自にライムの捜査が進み、その次の犠牲者も助ける。そのため捜査の主導権もライムたちの手に戻る。金でもセックスでも無い犯人の動機とは?そして安楽死を望むライムの心は?色々な香辛料を入れた複雑な味の小説は面白い。この作者の一番出来の良い小説(今のところ)。(松) |
テ |
ジェフリー・ディヴァー |
ボーン・コレクター(上) |
2007
5/24 |
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事故で四肢が麻痺し警察を辞めた科学捜査部長のリンカーン・ライムは安楽死を望んでいた。事件が発生し捜査を依頼される。美人警官のアメリア・サックスを手足として捜査は進み、犯人の遺留物から次の犠牲者を助ける。しかし、FBIが捜査に割り込みライムたちは捜査から外される。人物も魅力的、背景小道具も目新しい、筋も複雑で展開が速い。(松) |
テ |
ジェフリー・ディーヴァー |
死を誘うロケ地 |
2007
4/29 |
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映画制作会社のスタッフがロケ地を探してある田舎町に来る。ところがスタッフの同僚が殺されてしまう。そのうえ映画のロケは町長が許可を出さず、仕事が出来ないスタッフはくびになる。同僚の殺人事件の処理が曖昧なので密かに調査をする。登場人物それぞれの意外性は買う、が、読者を騙すための意外性に思える。(竹) |
テ |
ジェフリー・ディーヴァー |
眠れぬイヴのために(下) |
2007
4/10 |
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追う者達はそれぞれの理由を持って追っている。そして、追われる者も理由があり、狙われた者にも理由がある。分裂病の大男は稚拙なように思わせて、実は妄想の中で緻密な計画を立てていた。自分を追う者を排除し、狙う者に迫る。緊迫感は高まるが、場面の頻繁な展開と不充分な説明はじれったい。(竹) |
テ |
ジェフリー・ディーヴァー |
眠れぬイヴのために(上) |
2007
4/10 |
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病院を脱走した精神分裂病の大男が幾多の追跡をかわしながら、病院に閉じ込められる原因になった事件の証人の女に迫る。場面が頻繁に変わるし、その時の大男の行動を充分説明していないし、時間経過も順列では無いようで物語を把握しにくい。読者に考える楽しみを与えているらしい。(竹) |
テ |
ジェフリー・ディーヴァー |
悪魔の涙 |
2007
1/12 |
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最近のサスペンスでは、犯人を追う側に特殊な才能や職業を設定し、一般人は知らない専門知識を披露して新鮮さやリアリティを付加してきた。この作品の主人公は文書検査士。ワシントンDCでFBIと共に大晦日から元旦にかけて無差別殺人者を追う。終盤がクドイのだか面白いのは間違いない。(松) |
テ |
ジェフリー・ディーヴァー |
静寂の叫び(下) |
2006
10/28 |
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FBIの交渉専門家、犯人、人質と、その性格を過不足なく描いている。その他にこの小説を本当らしく見せているのは、聾者の考え方や現状をやり過ぎない程度に専門的に紹介している点と、警察組織の序列をさりげなく表現している点にあると思う。そこから生まれる確執があり、感情移入できる。(松) |
テ |
ジェフリー・ディーヴァー |
静寂の叫び(上) |
2006
10/28 |
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凶悪な脱獄者たちが聾学校の生徒たちを人質に、荒れ果てた肉処理工場跡にたてこもる。包囲する警官たちにも軋轢がある。FBIの専門家が指揮を取るが、FBIの現地所長、州警察、保安官、マスコミ等がそれぞれの思惑で入り乱れて勝手なことをする。一体人質は助かるのか。引き込まれる。(松) |
テ |
フィリップ・ディジャン |
ベティ・ブルー |
2006
2/4 |
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実生活でも喋り過ぎる男は嫌いだ。一人称の小説はどうしても饒舌な語りになり、主人公の主観だけの世界になってしまう。短編なら我慢出来るが長編は飽きてしまう。破滅に向かう恋愛を描いているが、筋にも物の性格付けにも破綻して行く過程にも無理がある。(竹) |
テ |
フィリップ・K・ディック他 |
20世紀SFA 1950年代 初めの終わり |
2022
2/19 |
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日本人編集によるSFアンソロジー。1950年代の短編14作を収録。人類の宇宙への旅立ちや、逆に宇宙からの侵略、思想統制の世界、かと思うと心優しいファンタジー等々。テープの記憶装置や真空管のコンピューターが懐かしい。表題は宇宙へ飛び出す息子を家の夜空に見送る夫婦の話。穢れ無きSF。今ではSFは洗練され過ぎているか。(竹) |
テ |
フィリップ・K・ディック |
虚空の眼 |
2019
7/28 |
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SFの巨匠の初期の長編。巨大な化学実験施設で事故が起き8人の男女が巻き込まれる。気が付くと同じようだがどこか違う。一人の人間のイメージがデフォルメされた世界に変わっていた。1957年の作で古いが、このアイデアは他の作家でも読んでいる。共産主義を極端に敵視するのは当時の風潮らしく思えた。ただ宗教色は好みでは無い。(竹) |
テ |
フィリップ・K・ディック |
あなたをつくります |
2014
3/15 |
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電子オルガン製造会社が精巧な人造人間を作り売り出そうとするが巨大企業に乗っ取られそうになる。近未来の話らしいがテクノロジーのレベルが裏書きされていないので突然出来たような人造人間が唐突。主人公達が一体何をしようとしているのかも分からない。解説には中期の名編とあるが嘘。この作者は名作と駄作が入り混じっているがこれは駄作。(梅) |
テ |
フィリップ・K・ディック |
未来医師 |
2013
6/28 |
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時間旅行SF。医療が衰退した西暦2400年の世界に、2010年から医師が連れて来られる。筋書きも人物もSF的要素も魅力を感じ無い。しかも、書かれたのは1960年で、時間旅行の世界観が現在主流のパラレルワールドではないので違和感がある。人気SF作家だからといって、自他共に出来の悪さを認めた作品を出版するのはどうかと思う。時間の無駄。(梅) |
テ |
フィリップ・K・ディック |
スキャナー・ダークリー |
2012
2/9 |
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麻薬取締官がおとり捜査のため麻薬常用者と生活するが、秘密捜査なので取締官自身が捜査の対象になってしまう。取締官は麻薬を常用するうちに壊れていく。1977年作のSFなのでハード的には画期的なものは無いが、小説の骨格はしっかりしている。結末は「アルジャーノンに花束を」的な雰囲気があり余韻を残す。自分は好きな部類だ。(竹) |
テ |
トーマス・M・ディッシュ |
いさましいちびのトースター |
2012
4/14 |
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夏の別荘に取り残された電気器具たちが主人に使ってもらうために、長い道のりを移動する物語。どこかで見たシチュエーションだし、はっきり言って童話に近いので、大人が読んで満足できるものではない。ただ、イラストは味があって出来が良い。日本人の作家らしいが、このタッチはNHKのみんなの歌で見たような気がする。(竹) |
テ |
トマス・M・ディッシュ |
アジアの岸辺 |
2008 8/20 |
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SF短編集。表題作はこれがSFなの?と言いたくなる小説。妻と別れアメリカからやって来た男がヨーロッパとアジアの境のボスポラス海峡で幻想する心理小説。だが数々の多彩な短編を読み進むうちに、まるで筒井康隆のようだと思った。自分としては風刺が効いて毒のあるものを面白く感じる。年代によって作風が違うらしい。(竹) |
テ |
フランシス・ディドロ |
七人目の陪審員 |
2018
3/30 |
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散歩途中の川辺で男は水浴していた女の首を絞めてしまう。男は真実を知られず、死んだ女と同棲する若者が捕まる。男は若者を救おうと奔走するが陪審員に選ばれる。罪悪感を持たないのに正義感があるという男の設定はフランスの作家らしいといえる。大きな展開は望めないので結末を気になりながら読んだ。皮肉な心理劇だが読み易い。(竹) |
テ |
レン・デイトン |
戦闘機(下) |
2009/
2/1 |
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下巻は大航空戦を実際の資料から日時を追って著述。当時の飛行機は複葉機からやっと単葉機、しかも全金属製のものに進化し始めていた時期で、戦術戦略もお互いに手探りで始めた。全体主義的なナチスドイツの計画の脆さは予想がついたが、存亡の危機にあったイギリスでも高官が足の引っ張り合いをしていたとは意外。(竹) |
テ |
レン・デイトン |
戦闘機(上) |
2009/
2/1 |
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スパイや戦争小説の得意な作者が描くノンフィクション。第2次大戦中のイギリスとドイツの歴史的航空戦を様々な資料から公平な見方をした史実として描く。上巻が両国の兵器開発(戦闘機、機関銃、レーダー、無線機など)等。幼少時の少年雑誌では馴染みのある名前がよく出てくる。しかし、翻訳は言葉や言い回しが非常に古い事が気になった。(竹) |
テ |
レン・デイトン |
ヴィンター家の兄弟(下) |
2008/
10/8 |
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兄はアメリカへ移住、弟はゲシュタポに勤務しユダヤ人の迫害にも関与する。兄はスパイとしてドイツに潜入するがヒトラー暗殺に失敗し弟に助けられる。ドイツの戦況が悪化し、家族、友人の気持ちが荒んでいく。戦争が背景となった家族の小説。人物描写がシッカリしていて悲惨な時代を垣間見る事が出来る。(松) |
テ |
レン・デイトン |
ヴィンター家の兄弟(上) |
2008/
10/8 |
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第一次大戦から第二次大戦に渡るドイツ人の家族の年代記。プロローグに第二次大戦後の兄弟が立場を違えて再会しようとしている所から物語は始まる。家族兄弟友人達が急激な世相の変化に揉まれる。作者得意の時代背景の中でドイツの歴史が語られる。上巻は第二次大戦前のナチスの台頭まで。(松) |
テ |
レン・デイトン |
トゥインクル・トゥインクル・リトル・スパイ |
2008 5/11 |
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冷戦時代のスパイ小説。サハラ砂漠でソ連の科学者の亡命を助ける事から始まる。「私」はイギリス諜報員でCIAと共同で事に当たる。西側にいるソ連の協力者を探し出す為に、アメリカ、ヨーロッパ各地を点々とする。情景も人物も会話も良く描けている。自分はこれを重視する。そうでないと浅薄な作品になってしまうと思うから。(松) |
テ |
レン・デイトン |
昨日のスパイ |
2008 3/15 |
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第2次大戦中にナチスドイツを共通の敵として戦ったフランスのレジスタンスの仲間が、戦後になりそれぞれの民族、思想、欲望の為にお互いが敵同士となる。主人公はその当時もイギリスの諜報員だった男で、不穏な動きを見せる昔の仲間(親友)を探る。これこそ人間が良く描けている作品。日本のハードボイルド作家に見習ってもらいたい。(竹) |
テ |
レン・デイトン |
SS-GB(下) |
2008 1/14 |
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警視が殺人事件に介入していくうちに、レジスタンスやドイツ軍の権力闘争に巻き込まれ自身の信条も変わっていく。警視の行く道は?段々とこの世界の現状が明らかになっていく。アメリカは、ソ連はどうなっているのか?そして日本は?「もしも」の世界が丁寧に描かれている傑作。SS−GBとは「イギリス本土駐留ドイツ親衛隊」という独語略。(松) |
テ |
レン・デイトン |
SS-GB(上) |
2008 1/14 |
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時は1941年、場所はロンドン。殺人課警視は今日も犯人を追う。しかしそこは今とは違い第2次世界大戦でドイツが勝った世界。だが戦後まだ2年でレジスタンスが暗躍し、ドイツはイギリスを完全に掌握していない。ナチスを上司に持つイギリス人の警視は仕事は仕事と割り切ろうとするが…。人物も筋もシッカリしていて警察小説としてもSFとしても楽しめる。(松) |
テ |
レン・デイトン |
ベルリン・ゲーム |
2007 10/10 |
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ソ連という国があってドイツが西と東に分かれていた頃のスパイミステリー。二極対立していた世界が変わりスパイ小説が作り難くなった今、スパイの黄金時代の頃の小説が陳腐化するかというと、そうでは無い。例えば、イギリスの時代小説を読む時のように、その時代の知識が少しでもあれば面白く読める。会話も楽しい。1983年作。(竹) |
テ |
レン・デイトン |
グッバイ、ミッキー・マウス(下) |
2007 7/12 |
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戦時の体験を沢山聞いて作ったこの物語はノンフィクションかと思えるほど真実味に溢れている。連合軍の大陸反攻をひかえて空の戦闘も激しさを増す。ドイツ軍も底力を発揮し、アメリカ軍を苦しめ仲間が次々に脱落する。そんな中、戦闘機乗りの私生活が乱れスキャンダラスな事件が起きる。戦争を一生懸命生きた若者達の物語。(松) |
テ |
レン・デイトン |
グッバイ、ミッキー・マウス(上) |
2007 7/12 |
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第2次大戦時ノルマンディー以前のイギリスに駐留するアメリカの戦闘機大隊の物語。P-51ムスタングが影の主人公。攻撃する側から見た戦争の悲惨さと、戦時に青春をむかえた若者の恋を描く。援護がなくても自由に爆撃されていた太平洋戦争後期の日本の場合とは異なる、ドイツ本土への爆撃機の命懸けの攻撃も印象的。(松) |
テ |
レン・デイトン |
スパイ・ストーリー |
2007
4/29 |
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東西冷戦時代のスパイ小説。戦略研究所に勤める「わたし」の周りで怪しげな事が次々と起きる。変に冷静な「わたし」は元スパイだったことが分かって納得。化かしているつもりで化かされる。誰がどういう目的で行動しているかが最後まで分からない。舞台は原潜で始まり、原潜で終わる。(松) |
テ |
レン・デイトン |
優雅な死に場所 |
2007
3/27 |
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この作家の毎度御馴染みの東西冷戦時代のスパイ小説。ハードボイルドタッチからは少しズレがある。「わたし」が主人公だが、誰が敵で味方なのか、登場人物全ての本当の正体は何なのか、曖昧模糊としたままストーリーは続く。主題もなんだかぼやけていて、スパイ「ゲーム」のままで終了した感じ。(竹) |
テ |
レン・デイトン |
ベルリンの葬送 |
2007
2/8 |
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ハードボイルドタッチのスパイ小説。時代は東西冷戦の真っ盛り、ドイツが、ベルリンが分断されていた頃の話。イギリスのシニカルな諜報員が主人公。話が入り組んでいて、ちゃんと頭に入れながら読み進まないと分かり難い。この、何人かが死んだ事件の後に、誰がどう得をするのだろう。結局スパイも淘汰されていくのか?(竹) |
テ |
レン・デイトン |
イプクレス・ファイル |
2006
11/28 |
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第2次大戦後の東西冷戦時代のスパイ小説。でも、サスペンスというよりも、レイモンド・チャンドラーのハードボイルドのよう。最近の説明過多な小説と違って一言一句を読み取らないと味が分からない。書かれた時代も書かれている時代も古いから懐かしい感じがする。だって、女性のストッキングにシームがあるなんてね。(松) |
テ |
ジェィムズ・ティプトリー・JR |
輝くもの天より墜ち |
2008 5/24 |
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エイリアンが分泌する液を残酷な方法で採取する事で人間にとって最高品質の酒が出来る。連邦が戦いの末に密造組織を破り、エイリアンの星は平穏になった。他の星の滅亡も絡めた壮大な物語だが、筋が一貫していない上に視点がブレて、全く面白くない。前に読んだ短編集の面白さに引かれて読んだが、読む価値なし。(梅) |
テ |
サミュエル・R・ディレイニー他 |
ベータ2のバラッド |
2008 5/27 |
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60〜70年代のニューウェーブSF短編集。表題作は、大船団が恒星間旅行をする為に何世代もかけて目的地へ着く間に大きな事故にあう。その伝承歌(バラッド)の歴史の謎を学生が調査に行く。技術は進歩して、昔は数百年かかったところへ数時間で着く。SF素材のミステリー。これが自分の好み。(竹) |
テ |
サン=テグジュペリ |
人間の土地 |
2019
4/13 |
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飛行機の黎明期にフランス人である作者が郵便飛行をしていた時の経験を基にした思索の書。多少ロマンチック過ぎる部分もあるし、今の基準では人種差別のような部分もある。ドキュメンタリーではないし小説でもないのでちょっと退屈。本文に飛行機の重さを15トンとあるが1/10ではないか。触発され、関係ないが最新のホンダジェットを調べてみた。(竹) |
テ |
ネルソン・デミル |
ニューヨーク大聖堂(下) |
2017
1/8 |
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教会での攻防戦のはずだが登場人物が多いのでそれぞれの会話が延々と続く。その上、守る方も攻める方も規律や行動がプロらしくない。だからウソっぽい。まるでアメリカのホームドラマのような場面がダラダラと続く。こんな小説を読むのは時間のムダ。これは個人的意見でーす。「誓約」や「ゴールド・コースト」、「将軍の娘」を書いたデミルは何処へ。(竹) |
テ |
ネルソン・デミル |
ニューヨーク大聖堂(上) |
2017
1/8 |
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大都会の教会でアイルランドの祝祭日にIRAが人質をとって立てこもる。この作者の初期の作品は良いが後になるとページを水増しする作品が多いがこれも同類。この上巻は文庫で500ページを超えるが内容は薄い。ダイエットすればスピード感が出て面白いサスペンス小説になるのに残念。登場人物も多いのも読み難い。やっぱりガッカリだった。(竹) |
テ |
ネルソン・デミル |
アップ・カントリー(下) |
2009
12/20 |
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ヴェトナムで戦ったアメリカ人の回顧談を元に作ったような小説。筋書きも公平ように見えてアメリカ人の独善性が出ている。捜索は旧北ヴェトナムのなので最初からそちらに行けばよいのに、南から北へ大移動をし、しなくてもよい人殺しをした。もっとスマートに作れたはずなのに結末もお粗末。こう長い物語だと主人公の軽口も鼻につく。(梅) |
テ |
ネルソン・デミル |
アップ・カントリー(上) |
2009
12/20 |
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ヴェトナム戦争従軍経験のある男が、戦後数十年経って人探しの為にヴェトナムを訪れる。旧名サイゴンも共産主義世界で、警察はこの元米軍兵士を怪しむ。この上巻はメインストーリーよりも、主人公の恋愛や、ヴェトナム観光や、ヴェトナムの歴史にページが割かれページ数が膨らむ。それはそれで面白い。「将軍の娘」の続編。(竹) |
テ |
ネルソン・デミル、
トマス・ブロック |
超音速漂流 改訂新版 |
2008/
11/13 |
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亜空間を飛ぶ旅客機が米海軍のミサイルで胴体に穴が開き殆どの人間が窒息により死ぬか脳損傷を起こす。乗客数人が助かり、小型機の経験のある男が操縦桿を握ることになる。軍は隠蔽工作の為に撃墜しようととする。航空会社も脳損傷患者の高額な賠償金を嫌い偽情報を流し墜落させようとする。絶体絶命の大ピンチ。ノンストップの面白さ。(松) |
テ |
ネルソン・デミル |
王者のゲーム(下) |
2008 6/14 |
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下巻では、やっと暗殺者の意図に気付いた主人公たちが巻き返しを図る。本好きの児玉清さんが絶賛するように面白くない事はないが、主人公のアメリカンジョークも、恋愛も、会議も、暗殺者の行程も、銃撃されている間さえも説明調の会話部分が多くスピード感が無い。肥満した作品。結末も尻すぼみに終わる。(竹) |
テ |
ネルソン・デミル |
王者のゲーム(上) |
2008 6/14 |
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ジョン・コーリーシリーズ。J・F・K国際空港に着陸したジャンボ機に乗っていたのは300人の死人だった。ニューヨークからアメリカ全土へイスラム過激派の暗殺者の旅が始まる。主人公の対テロ組織は秘密事項に縛られ後手に回る。フィクションではあるが300人を簡単に殺す設定は自分には違和感があり落ち着かない。(竹) |
テ |
ネルソン・デミル |
プラムアイランド(下) |
2008 2/1 |
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自身の興味から事件に係わったニューヨークの刑事は、事件に深入りし止めるに止められなくなるなり、自分の意思で動いて事件の真相に迫る。後半は主人公が現職の刑事とは思えないような行動をとり、筋に無理が見られる。この作家の失敗作のパターン。最初は良いが、結末に破綻してしまう。全体の筋書きや人物描写が良いだけに残念。(竹) |
テ |
ネルソン・デミル |
プラムアイランド(上) |
2008 2/1 |
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ニューヨークのロングアイランドの東に浮かぶプラムアイランド島にある動物疫病研究所の職員夫婦が殺された。休養中のニューヨーク市警刑事が地元警察署長に依頼され事件に係わる。研究所の病原菌が盗まれたのか?パニックを恐れるFBIとCIAは隠蔽工作を企む。筋に淀みが無く先へ先へと読み進める。刑事のシニカルな台詞も面白い。(竹) |
テ |
ネルソン・デミル |
チャーム・スクール(下) |
2007 12/5 |
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チャームスクールとはベトナム戦争捕虜やヨーロッパ旅行者を拉致してアメリカそのものを教える教官とし、アメリカ潜入工作員を育てる所。まるで北朝鮮拉致事件だ。これは20年位前の作品でフィクションだが、いかにもと言う感じ。実際に北朝鮮はもっと前からやっていた。だから全体主義国家は怖い。結末は「ゴールド・コースト」を書いた作者らしいシニカルさ。(松) |
テ |
ネルソン・デミル |
チャーム・スクール(上) |
2007 12/5 |
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ソ連という国が存在していた東西冷戦末期、ロシアを旅行中のアメリカ人青年が意外なものに遭遇する。チャームスクールとは直訳すれば花嫁学校。そういう学校の内幕物と思って借りたが、スパイサスペンス物。主人公はモスクワの大使館に勤める、CIAではなく国防総省の情報部員。さすがにこの作者が描く登場人物の表現はそつが無い。うそ臭くない。(松) |
テ |
ネルソン・デミル |
スペンサーヴィル(下) |
2007 11/2 |
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主人公のいい歳をした男の行動がおかしい。政府の情報機関で働いていた大佐には思えないほど直情的。筋書きも主人公を困難に遭わせようという意図が見え見え。面白くない上に無駄が筋が多い。こんな作品でも訳者や解説者はいいことを言う。本気かね。ネルソン・デミルの小説は今まで面白くない事は無かったが、今回は駄作。(梅) |
テ |
ネルソン・デミル |
スペンサーヴィル(上) |
2007 11/2 |
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アメリカの国家情報部局に勤めていた独身の40男が東西冷戦の終結で職を辞し、自身の故郷の中西部の町に帰る。目的は若い頃に恋人同士であった女性に会う事だった。その女性は町の悪徳警察署長の妻になっていて、否応無く男は警察署長と対決する事になる。というあらすじはバイオレンスを予感させるが、内容はハーレクインのような恋愛小説。(竹) |
テ |
ネルソン・デミル |
将軍の娘(下) |
2007
3/1 |
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殺された大尉の淫らな私生活は父への復讐のためだった。その動機となる昔の事件が明らかになったときに上層部から捜査に邪魔が入る。捜査時間の制限を受ける中、犯人は捕まえられるのか?終盤の足踏みしたような筋運びがマイナス。伏線とか、どんでん返しとかを深読みし過ぎてしまった。(松) |
テ |
ネルソン・デミル |
将軍の娘(上) |
2007
3/1 |
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アメリカ陸軍基地内で女性大尉が全裸で手足を縛られて絞殺される。大尉は基地司令官(将軍)の娘。CID(軍警察)の捜査官が、同じCIDで元恋人の捜査官とともに事件を任される。多くの将校と愛人関係にあった将軍の娘の私生活が判明する。容疑者は将校か?軍隊内部を暴くサスペンス。(松) |
テ |
ネルソン・デミル |
ゴールド・コースト(下) |
2007
1/28 |
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これはサスペンスではなく重厚な文学作品。人とその家族とそれを取り巻く文化や歴史の流れに、惜別の思いが込められている。大傑作。上下巻約1000ページの長さが苦にならないどころか、読み進み残り少なくなることに残念さを覚えたほど。主人公の決断は他に方法が無かったのかと思う。結末は悲しい。キリスト教的な再生が、救いがあるのか。(松) |
テ |
ネルソン・デミル |
ゴールド・コースト(上) |
2007
1/28 |
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アメリカの由緒正しい上流階級の住む土地、ゴールド・コーストを舞台にした物語。代々住む上流階級の弁護士夫婦の隣に、マフィアのボスが引っ越して来る。現在の自分に物足りなさを感じていた弁護士は、マフィアのボスに少しずつ引かれ事件に巻き込まれて行く。一体弁護士はどうなってしまうのか?一人称の弁護士のシニカルな言葉は好き。(松) |
テ |
ネルソン・デミル |
誓約(下) |
2006
10/11 |
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上巻は家族内の波乱が描かれ、下巻は陸軍に再召集された主人公が弁護士とともに軍事裁判に臨む所が描かれる。当時小隊長だった主人公だけが罪を問われる。段々真相が明かされるが「誓約」のため裁判では本当の事を言おうとしない主人公。罪無き罪で殺人罪が言い渡されるのか?どんでん返しはあるのか?結末が読めない面白さ。(松) |
テ |
ネルソン・デミル |
誓約(上) |
2006
10/11 |
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民間企業の部長が昔のベトナム戦争時の虐殺事件で訴えられる。その時の真相はなかなか語られない。題名にもなっている「誓約」とは一体何の事か。陸軍上層部の思惑と暗躍、新聞の興味本位の報道、世間の評判、家族の混乱。サスペンス風味の物語。人物の作りや筋書きがカッチリしていて破綻が無く、引き込まれてしまう面白さを持った小説。(松) |
テ |
マルグリッド・デュラス |
北の愛人 |
2006
4/15 |
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最近読んだ「夏の夜の10時半」とは全く違う私小説。作者の原点という「愛人」をもっと濃く描いたもので、当時映画化されるということで、脚本的な書かれ方もしている。第2次大戦前の仏領インドシナでのフランス人の女高生と華僑の青年の恋愛話。「愛人」を読んでいれば、これは読む必要は無いかも。(竹) |
テ |
マルグリット・デュラス |
夏の夜の10時半 |
2006
1/28 |
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たった二日間のことを描くロードゴーイング小説。アル中気味の女とその幼子と夫と友達の女が車で旅行している時に起きる、愛情問題と殺人事件とのからみ。登場人物それぞれのクライマックスの時間を切り取って見せている映像的な小説。映画化もされているが出来はよくないらしい。(竹) |
テ |
フレデリック・デラコステ他編 |
セックス・ワーク |
2005
11/26 |
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副題が「性産業に携わる女性たちの声」という。アメリカでの性産業の実態と売春婦の声を編集したもの。売春はほぼ全世界で違法とされているが、違法とされているからこそ、どうしても売春に携わらざるを得ない女性たちを苦しめている。売春をするしないは女性の権利であると本当のフェミニストは言う。(竹) |
テ |
ボストン・テラン |
神は銃弾 |
2015
2/27 |
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元妻を殺し娘を連れ去ったカルト集団を、元メンバーの助けを借り警官は追う。殺人やレイプ表現が多くサスペンス物というよりホラー。読者に衝撃を与える為の言葉や表現に思える。追跡劇だがスピード感が無い。肝心の対決場面も盛り上がりに欠ける。ありきたりの筋書きで一つ光るものといえば汚い表現。もう少し構成に工夫が必要。これがCWA新人賞。(竹) |
テ |
ドン・デリーロ |
コズモポリス |
2012
5/11 |
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2000年4月ニューヨークで若き投資会社経営者の1日はボディガード付きの超大型のストレッチリムジンで移動中に仕事をする。オフィスに行かず部下達があちこちの街角で待っていて乗車してくる。健康診断の医者までも。新婚の妻とのひと時や愛人との情事も。若い成金の生態は感情移入し難いが先端のニューヨークの街や人がイメージ出来て面白い。(竹) |
テ |
ドン・デリーロ |
ボディ・アーティスト |
2011
10/22 |
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映画監督がニューヨークの元妻の家で自殺。3番目の妻は田舎の大きな借家に一人残され、そこに不可思議な男が住み着く。人の動作や考えを克明に描写。それでいて曖昧にしている部分が多い。今までのダイナミックな小説とは違って観念的で実験的な小説。といって難解ではない。まあ、前のページをめくり直して確認したりはしたが…。(竹) |
テ |
ドン・デリーロ |
アンダーワールド(下) |
2010
12/17 |
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主題も主人公も分かり難いワイドな物語。20世紀後半のアメリカの世相とゴミが主題と言えるかも。話の筋が遡って進行して、メモを取っていても理解するのが難儀。出来上がったジグソーパズルを見てから組み立てるようで、このピースがここに入るのかと確認しながら読み進める。章ごと主人公が替わるが短編として読んでも読み応えはある。(竹) |
テ |
ドン・デリーロ |
アンダーワールド(上) |
2010
12/17 |
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長い長い物語。プロローグは野球を観戦するFBI長官にソ連の原爆実験の報がもたらされる。試合では9回裏に大逆転になり何かの暗示のよう。主人公の一人は廃棄物処理会社に勤める男。その家族や大勢が登場するし、区切りの度に時間を遡っていくのでメモ必要。上巻ではただ不安感だけが漂う。物語が幅広いが読み難くはない。(竹) |
テ |
ドン・デリーロ |
リブラ 時の秤(下) |
2010
5/8 |
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ケネディは様々な組織で狙われていた。オズワルドには共産主義を求める気持ちがあるのに、ソ連やキューバに受け入れられない。かと言ってアメリカにも居場所がない。オズワルドの心の揺れる様子が彼が生まれた10月にも掛け、題名のリブラ=天秤宮となったようだ。オズワルドの人間的な面を描いているが、実話に近いだけに作られた面白さがない。(竹) |
テ |
ドン・デリーロ |
リブラ 時の秤(上) |
2010
5/8 |
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ケネディ大統領を暗殺したとされるリー・オズワルドの幼少からの物語と、CIAくずれの反カストロ分子の立てたお膳立てが時間的に前後しながら進行していく。オズワルドは共産主義を信じソ連に一時亡命していた事もあり、陰謀にはうってつけの手駒だった。登場人物は実名で、実話にも即した物語。カッチリと組立てられた小説。遊びが少ない。(竹) |
テ |
ドン・デリーロ |
ホワイト・ノイズ |
2009
6/7 |
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大学教授は4度の結婚をし今は妻を愛し異母異父兄弟の子供達と幸せに暮らしている。教えるのはヒトラー学科というこの情況が変。大学教授は事故で毒物を浴び死の恐怖にさいなまれる。骨格のしっかりした小説で、会話も軽薄ではないが、何故かページが中々進まない。自分には理解しにくい観念的な部分が拒絶感をもよおすようだ。(竹) |
テ |
ジャナ・デリオン |
ミスコン女王が殺された |
2020
3/14 |
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テ |
ジャナ・デリオン |
ワニの町へ来たスパイ |
2019
12/11 |
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中東で潜入捜査をしていた女工作員がCIA内部の裏切者のせいで敵に追われ逃げ戻り、アメリカの田舎町で他人に成りすまし隠れ住む。シリーズ物。目立たずにいるはずが人骨を見つけ元気な熟女グループと意気投合し殺人事件を探る。威勢の良い女性が出て気持ち良い。筋は荒唐無稽では無く常識的で及第。一時図書館に無かった。(竹) |
ト |
スコット・トゥロー |
われらが父たちの掟(下) |
2007
2/8 |
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何故面白くないかよく考えてみると、饒舌過ぎる会話が多い。映画のシナリオでは無く物語なので不適切。内容の恋愛法廷サスペンスは上下巻にする必要が無い。これも最近多い金儲け主義の水増し上下巻。「ゴールド・コースト」の爪の垢でも煎じて飲ませたい。やっと読んだが時間の無駄だった。(梅) |
ト |
スコット・トゥロー |
われらが父たちの掟(上) |
2007
2/8 |
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全く内容を確認せず読み始めた。何故か、題名からアメリカ先住民族の世代の背景にした物語だと勝手に思っていた。それが全く違って、ベトナム戦争当時の反戦世代が20世紀末にどうなったかを、殺人事件の法廷を通して描いている。主人公の女性判事はありきたり過ぎて魅力を感じない。(梅) |
ト |
ホセ・ドノソ |
夜のみだらな鳥 |
2013
8/25 |
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ラテンアメリカ文学11。表紙は赤だけ。チリの作家で背景は中南米そのもの。時間や語り手が不意に変わるが、段落を替えないから、しばらく読み進めないと内容が汲み取れない。内容は地方の地主を中心に、教会とそこに住む老婆や孤児の生活で、秘書の男が一応の主人公。題名に引かれて読み始めたが、読み難く、滅多に無い事だが途中リタイア。(梅) |
ト |
ローリー・リン・ドラモンド |
あなたに不利な証拠として |
2015
6/25 |
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女性警察官を題材にしたハードボイルドな小説。同じ警察署に勤める5人の女性を主人公にした短編集。ミステリーの衣をまとった純文学と言っていいようなほど個人の意識を掘り下げられているし、例えば拳銃の携帯が身体にどう痣を作るかなどとてもリアル。87分署が娯楽的警察小説に思えるほどこの小説は現実感に溢れ緊張して内容に没頭出来る。(松) |
ト |
ローレンス・トリート |
被害者のV |
2012
6/8 |
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組織捜査をする警察小説の元祖だけあって製作は1945年と古い。内容にも第2次大戦中のエピソードが出てくる。現行犯逮捕と自白が重要視され物的証拠がないがしろにされていた時代の若い刑事と鑑識課員の捜査を描く。ハードボイルドでもサスペンスでも無いし、その後に出て来た警察小説と比べても凡庸とした印象は否めない。(竹) |
ト |
ローレンス・トリート編 |
スペシャリストの犯罪
アメリカ探偵作家クラブ傑作選(8) |
2012
5/2 |
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その道のプロがかかわる犯罪の短編集。プロがする犯罪もあればプロがこうむる犯罪もある。全15編はそれぞれ専門の知識の片鱗を垣間見れる。と言っても30年前の編集で今の自分から見るとピンと来ないものもあり玉石混交。それでも目新しさが勝っていて飽きずに読み進められる。アメリカ探偵作家クラブ(略称MWA)はエドガー賞を主催。(竹) |
ト |
トレヴェニアン |
シブミ(下) |
2018
1/4 |
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男は引退してスペインのバスク地方に住み、ケイビングを趣味としていた。そこに昔の知己の娘が助けを求めてくる。男はマザーカンパニイに一矢を報いるが、その強大な力に屈しそうになる。暗殺や報復と言った、手に汗握るサスペンスは殆ど無く、「渋み」という意味も多くは語られてはいない。結末も敗北主義的になっているのもスッキリしない。(竹) |
ト |
トレヴェニアン |
シブミ(上) |
2018
1/4 |
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第2次大戦時上海に住んでいたロシア貴族の末裔が日本の将軍を父と思い、戦後日本で混乱の中、感覚を研ぎ澄ます術を会得して行く。その男を暗殺者として始めて利用したのがCIA。その上部組織のマザーカンパニイが密かに世界を牛耳ろうとしている。時代を前後させながら物語は進む。術の会得はもっとページを割いて欲しかった(竹) |
ト |
トレヴェニアン |
パールストリートのクレイジー女たち |
2016
3/19 |
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1936年に6歳からスラム街暮らしの母子家庭の兄が主人公。知能指数が高いので出世物語かと思ったら状況は停滞のまま。物事がうまく行きそうになると、きっと悪い方になる。それが読んでいて分かる。貧困でもいつも愛情ある家庭なら良いが、クレイジーな母親は不安定で時に少年を苦しめる。読んでいる方も気分が落ち込む。少年の苦難の物語。(竹) |
ト |
トレヴェニアン |
ワイオミングの惨劇 |
2015
11/19 |
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18世紀末の西部。斜陽の銀鉱山に近いこれも寂れた町に若者がやって来る。一方、脱獄した凶暴な男達もこの町に着く。町は凶暴な男達に支配され住人は暴力と死に怯える。若者も住民と一緒になって事態を打開しようとするが、若者もまた秘密を抱えていた。西部劇仕立てで派手な見せ場こそ無いが、切り詰めた筋書きが好感の冒険活劇。(竹) |
ト |
トレヴェニアン |
夢果つる街 |
2015
10/22 |
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カナダのモントリオール市でも一番の猥雑な地区を受け持つ警部補。その昔ながらの捜査方法は上層部からもクレームがある。殺人事件が起こり新入りの警官と捜査する。街は変わり人も変わるが警部補は変わらない。警部補自身の事情や関わり合う雑多な人達との交流を通して町の姿が浮かび上がる。警察人情小説とでも言うようで心に沁みる。(松) |
ト |
ジェレミー・ドロンフィールド |
飛蝗(バッタ)の農場 |
2015
1/25 |
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小さい農場に一人住む女性が宿を借りに来た男を間違って撃つ。男は看病され農場に留まる。別の時系列がずれた物語が並列で進行。ミステリーとはいえなかなか全体像が見えない構図はじれったい。連続殺人事件や二重人格、狂気などの要素は揃っているが、普通にストレートに突き進む物語の方が好き。意味薄い飛蝗を表題にするのも変。(竹) |
ト |
ジム・トンプスン |
死ぬほどいい女 |
2016
12/3 |
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人生に疲れた男がいい女と出会ったばかりに、さらに人生の階段を下って行く物語。男の職業の訪問セールス、男のグータラな妻、執拗な会社の上司、愚かな顧客、という要素は殺伐な背景を飾る。殺人まで犯しても報われない男。運の悪い人間ばかりが出てくるので読んでいて楽しくない。それが売りなのだろうが、B級に徹する筋と結末。(竹) |
ト |
ジム・トンプスン |
アフター・ダーク |
2016
7/26 |
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元ボクサーで精神を病む男。流れてついた街で出会った女に惹かれる。そこから誘拐を企てる男に絡め採られ一味となる。気が弱く互いを信じられない者たちの犯罪が上手く行く訳が無い。読んでいて辛くなるような小説。底辺に生きる者達にも、悪であろうと報われる結末が欲しい。良い心を蘇らせた報酬が死か。感傷的過ぎるし、ステレオ的。(竹) |
ト |
ジム・トンプスン |
残酷な夜 |
2016
3/1 |
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裏の世界の男が元締めからの命令を受け裏切者を処分しに田舎町にやってくる。官憲に追われているがうまく身分を隠し人の中に入り込み殺しを画策する。途中の盛り上がりが無く、最後まで筋が平坦で飽きてくる。登場人物もステレオタイプで魅力を感じない。もともと評価が低かった作者で、後にキングなどに再評価されたが、これは凡作だな。(竹) |
ト |
ジム・トンプスン |
ポップ1280 |
2015
8/15 |
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解説では伝説のノワール作家と紹介されていたがいわゆる悪人が主人公の悪漢小説。アメリカの田舎町の保安官は優柔不断ながら優しさのせいか女性にはもてる。しかし男にはバカにされていた。ある日突然売春宿のひもを殺し、自分の不倫相手の旦那を殺す。何が彼をそうさせたのか。ブラックな宗教的な皮肉が効いている。「ゲッタウェイ」の原作者。(竹) |
ト |
ジェイムズ・トンプソン |
白の迷路 |
2019
8/9 |
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カリ・ヴァーラ警部シリーズの3作目。フィンランドの歴史や国内事情が分かって興味深い。本作品では警部が非合法活動をする特殊部隊の指揮運営をする事になる。警部が脳腫瘍の手術で性格が変わった事もあるが、今までの作品とガラリと変わった。警察小説の枠も越えた。これで着地点はあるのかと読んでいて心配になる。残酷さが心地悪い。(竹) |
ト |
ジェイムズ・トンプソン |
凍氷 |
2018
8/28 |
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フィンランドの警察小説第2弾。ヘルシンキに転勤した警部は数々のストレスを抱えて頭痛で悩み精神科にかかる。アメリカ人妻の妊娠、人騒がせな妻の兄弟、独りよがりな若い相棒、捜査では複数の殺人事件や、自分の祖父が係わった戦争犯罪。取り込み過ぎて複雑になって結末が心配だったが、どうにかまとまった。1作目よりこちらの方が好きだ。(竹) |
ト |
ジェイムズ・トンプソン |
極夜 |
2018
1/26 |
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フィンランドの警察小説。ソマリア難民の女性が惨殺され、管轄している田舎町の警察署長が捜査する。捜査線上に浮かんだ被疑者は署長と関係があった。事件の陰惨さに加え、フィンランドの寒さ、住民の暗さが圧し掛かる。読む方も暗雲たる重いに駆られる。少なくとも冬に読む小説ではない。結末に至る導入部は警官としては安易過ぎる。(竹) |
ナ |
ニ |
ジョン・ニコルズ |
卵を産めない郭公 |
2017
10/8 |
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60年代アメリカの伝統的な大学に入学した若者が別の大学の女子を好きになり大人しい性格が変わって行く。TVや映画で観たその頃のアメリカっぽさが出ている。時代風潮は政治には係わらない学生。愛情表現も含め若者らしいバカな事の羅列。ノーブレーキで突っ込んだ恋愛は長くは続かないが羨ましい。その後に別の穏やかな愛を得るのか。(竹) |
ニ |
キム・ニューマン |
ドラキュラ紀元 |
2005
6/29 |
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ブラム・ストーカーの「吸血鬼ドラキュラ」の結末を改変してドラキュラが勝利した後のイギリスを描いている。ドラキュラが主役ではないが、サスペンスの筋も登場人物の骨格も魅力的。久しぶりに面白い小説を読んだ。 |
ネ |
ジョー・ネスボ |
ザ・バット 神話の殺人 |
2019
12/21 |
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オーストラリアで殺されたノルウェー人女性の捜査でオスロ警察の刑事が来る。容疑者が二転三転し捜査は捗らない。親しいオーストラリア人同僚が死に、刑事はアルコール中毒に。サブストーリーは登場人物の造形に必要でも多過ぎてメインの邪魔になっている。主人公も気持を投影出来るほどの魅力が無い。長い物語をやっと読み終えた。(竹) |
ノ |
ネレ・ノイハウス |
悪女は自殺しない |
2020
7/26 |
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ノ |
ネレ・ノイハウス |
白雪姫には死んでもらう |
2014
10/18 |
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「刑事オリヴァーとピア」シリーズ日本紹介の2作目。少女殺害の罪で10年服役し出所した青年に故郷は冷たく過酷な仕打をする。そんな中、似たような少女失踪事件が起きる。昔の事件を掘り起こし現在の事件を捜査する。登場人物が多く夫々に性格設定が巧み。複数の動機が絡み複雑。それに各人の事情もあり濃厚。しかし結末の変転がしつこ過ぎる。(竹) |
ノ |
ネレ・ノイハウス |
深い疵 |
2014
8/17 |
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ドイツの女流作家の警察小説。シリーズ物でこの3作目が初の日本紹介作。連続殺人の序章となるユダヤ人の老人が射殺される。遺体の刺青から実はナチ党員だった事が判明。動機は金か恨みか。筋運びで登場人物が聞いている内容を読者に教えないというミスリードは疑問。それとシリーズ物にしても登場人物が多過ぎ、散漫になっている。(竹) |
ハ |
ハ |
T・ジェファーソン・パーカー |
サイレント・ジョー |
2021
12/9 |
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赤ん坊の時、父親に硫酸をかけられ、孤児院で過ごし優しい養父母に巡りあった。青年となり一緒にいる時に養父が殺される。殺人事件と自身の生い立ちを絡めたサスペンス。長い小説は気力が続かないので上下巻は敬遠しているが、これは一冊でも文庫で639ページでやっと読んだ。人物が多いし無駄なエピソードも多いが面白味は少ない。(竹) |
ハ |
T・ジェファーソン・パーカー |
カリフォルニア・ガール |
2020
6/11 |
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ハ |
アントニイ・バークリー |
シシリーは消えた |
2019
9/3 |
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上流階級出身の男がある家の従僕に身を落とし、そこで、かつての恋人?や友人に巡り会う。誘拐事件らしきものが起きて、素人探偵が活躍?するという筋書き。ミステリーというより謎解き。今まで読んで来たシェリンガムシリーズものでは無い。登場人物が多過ぎて無駄な伏線もあり、盛り上がりにも欠ける。1926年頃の作品なので古いが味がある。(竹) |
ハ |
アントニイ・バークリイ |
絹靴下殺人事件 |
2017
11/24 |
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新聞に寄稿もする小説家が連続して起きる自殺に疑問を抱き、警察と共同で、後には別に被害者の親族や婚約者、疑われている友人達と調査にあたる。シェリンガム・シリーズ第4作。結論から言うと、肝心の結末がお粗末でシリーズの中では駄作の部類。最後に至っての犯人の行動や謎解き中の暴行、犯人の自供などは納得出来るものでは無い。(竹) |
ハ |
アントニイ・バークリー |
ピカデリーの殺人 |
2016
10/20 |
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スコットランド・ヤードにも知られる犯罪研究家の男の前で毒物殺人が起きる。男が依頼されて調べるうちに自分が見たものと真相とは違う事が分かってくる。筋をひねくり回し過ぎて無駄に複雑になっている。結末にしても事実を入れ替える事で誰でも犯人になってしまうような筋は良くない。自殺して終るのも感心しない。人物描写が良いだけに残念。(竹) |
ハ |
アントニイ・バークリイ他 |
警察官に聞け |
2016
12/24 |
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謎解きが重視されていた頃の古い(1933年)ミステリで、しかも6人の作家によるリレー小説。それぞれの作家が勝手に筋を進めるので、そのまま幾つもの真実があるという形で終るなら許せるが、まとめようとするのでなお辻褄が合わず変になる。お遊びのような小説。ミステリのレガシー(負の遺産)だ。読み進むのが苦痛で良い所が見当たらなかった。(梅) |
ハ |
アントニイ・バークリー |
第二の銃声 |
2016
7/26 |
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田舎の邸宅で殺人事件を演じ、探偵小説家に解決させようという余興の中で本当の殺人が起きる。探偵が最後に二転三転する結末を解説する。素人探偵シェリンガムのシリーズ物らしい。作者が巻頭で言っている様に人物の魅力も文体もユーモアも備えた魅力的な探偵小説になっている。ただそれでも小細工があるのは流石に1930作と古く感じる。(竹) |
ハ |
アントニイ・バークリー |
毒入りチョコレート事件 |
2015
1/14 |
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郵送されたチョコを居合わせた人にあげ、貰った人の妻が食べて毒で死ぬという事件。犯罪研究会の面々が1日毎に謎解きをして、1つの事件を6つの違った解決を提示。ミステリーを系統だって読んではいなかったので、この作品は見逃していた。ミステリーの一つの手法の多重解決を確立した作品という。なるほど、これが「毒入チョコレート事件」か。(竹) |
ハ |
ジョン・ハート |
川は静かに流れ |
2020
11/4 |
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ハ |
イザベラ・バード |
朝鮮紀行 英国夫人の見た李朝末期 |
2020
6/11 |
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ハ |
カール・ハイアセン |
これ誘拐だよね? |
2018
6/5 |
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二流アイドル歌手はドラッグ漬けでセックス好き。そのスキャンダルを封じ込める為にマネジメントをする母親に影武者として雇われた若い女性が主人公。本人と間違われ誘拐され連れ回される。舞台はフロリダで、お馴染みの原理主義的自然保護者も登場。芸能界の内幕やフロリダの不動産事情も披露。気楽に読めるユーモア・サスペンス小説。(竹) |
ハ |
カール・ハイアセン |
スキャット |
2014
3/29 |
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ユーモアミステリーのジュブナイル小説第3弾。またもフロリダが舞台で環境破壊がテーマ。厳しくて嫌味な先生が失踪し、生徒の少年は身辺を探るうち自然を守る戦いに参加する。ジュブナイルらしいのは漢字に読みがながある事と悪人が分かりやすくて間抜けな所。500ページ近いが読みやすくて、世相を反映している所もあり、大人が読んでも面白い。(竹) |
ハ |
カール・ハイアセン |
迷惑なんだけど? |
2013
3/3 |
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フロリダに住むバツいち女が一人息子との団欒を電話勧誘で邪魔をされた事に腹を立てその相手にわざわざ航空券を贈りフロリダにおびき寄せる。事故で逃げているインディアンが上陸した島へ程度の差はあれ奇人変人が大集合。今回も悲劇が喜劇となるドタバタコメディが繰り広げられる。登場人物は誰もがキャラが立ち主役をはれそう。面白さは変らず。(竹) |
ハ |
カール・ハイアセン |
復讐はお好き? |
2012
11/9 |
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夜の客船から自分の夫に突き落とされ殺されそうになった妻が、命を助けてくれた男の協力を得て夫に復讐をする話。場所は作者の好きなマイアミ。相変わらず人物描写が巧みで悪人でさえも好い味を出している。エグ味も破綻もない、これ以上望むとすると独特な題材の選定。文庫本ながら547ページの長編だが面白くて止まらなくなる。(竹) |
ハ |
カール・ハイアセン |
珍獣遊園地 |
2010
8/28 |
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フロリダのテーマパークでの金儲け主義者と自然保護主義者の戦いのドタバタ劇。登場人物紹介の最初は普通は主人公になるものだが、これがこそ泥で主人公格ではない。誰が主人公だか分らず感情移入出来ずに読み進むが、だんだんと面白味が分かってくる。人が死んだりするが陰惨でなく明るいのが特徴。(竹) |
ハ |
カール・ハイアセン |
フラッシュ |
2008 1/22 |
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正義感の強い短気な父親を持つ男子の一人称による構成。フロリダの賭博船の汚水垂れ流しを阻止しようとする一家を描く。若年層向け小説で漢字にはルビを振ってあるが大人も充分楽しめる。小中学生が小説の面白さを体感するのには最適。表題は閃光では無く(スペルも違う)水をどっと流すと言う意味。だが両方の意味がある事が最後に判る。(竹) |
ハ |
カール・ハイアセン |
幸運は誰に?(下) |
2007 10/20 |
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自分達も半分の1400万ドルが当たったのに、全部を欲しがる強盗達の望みは白人至上主義の私設軍隊を作る事。一度は強奪された宝くじを取り返す為の逆襲が始まる。この本は表紙のようなマンガではなく小説だがコミックのようにコミカル。結末もコミカル?いいやバカっぽくて悲しい。(松) |
ハ |
カール・ハイアセン |
幸運は誰に?(上) |
2007 10/20 |
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ロト宝くじに1400万ドル(約16億円)当たった女性が宝くじを奪われ、取材に来ていた記者と強盗犯人達を追う。警察に届けずに自分達で捕まえようとする強引な展開。宝くじで動物達のサンクチュアリを買おうとする美人黒人女性や、離婚係争中の白人記者、頭が悪そうな人種差別主義の白人強盗達、宗教上の奇跡で金を儲ける人達が面白い。(松) |
ハ |
カール・ハイアセン |
ロックンロール・ウイドー |
2007
5/10 |
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元大物のロック歌手の変死事件から始まる。主人公は社主を大勢の前でこき下ろしたために冷遇される新聞記者。話の筋も人物造形も描写もテンポも全くダメ。本の書評は「ミステリー界のベストセラー作家の妙技、気分が冴えない日に最適」などと書いているが、本当にそう思っているの?と疑ってしまう。それほど出来は悪い。(竹) |
ハ |
カール・ハイアセン |
顔を返せ(下) |
2007
3/8 |
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最初はハードボイルドタッチだったのに、殺し屋が腕を噛み千切られた辺りから、段々とコメディタッチが混じってくる。舞台になるマイアミは絵になり映像的な小説だが、映画ではなくTVという感じ。人が安易に殺され過ぎるし、人を殺しても(善も悪も)全く罪の意識が無いというのが、アメリカTVドラマ的。(竹) |
ハ |
カール・ハイアセン |
顔を返せ(上) |
2007
3/8 |
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この人の作品はジュニア向けから読んだので、本格的なサスペンスを書くとはビックリ、こっちの方面がメインと聞いて二度ビックリ。過去に悪事を働いた整形外科医がその事件を穿り出そうとしていると思い込んで、元捜査官の殺害を企む。主人公の元捜査官が逆襲をするストーリー。(竹) |
ハ |
カール・ハイアセン |
ホー |
2007
1/3 |
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作者のジュニア向けの作品。漢字には振り仮名あり、自分もこういう本を読んで漢字を自然に覚えた。舞台はフロリダ。敵役は汚い大人。主人公は正しい小学生。で、現代版トムソーヤってのがありきたりだが、ジュニア向けと思えば面白い。大人向けと何処が違うといえば薄味でドロドロしていない。当たり前。(松) |
ハ |
ラリー・バインハート |
見返りは大きい(下) |
2016
8/6 |
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敵ばかりではなく、上院議員の依頼という助っ人も現れ捜査は進行する。標的が大物でワールドワイドになるのは良いとしてもメインの筋が一本通っていない。横道に逸れる事は普通は物語が複雑になって味が出るのだが、サイドストーリーに面白味が無い。多分、TVドラマのような細切れなら良いのだろうが小説としては一体感やスピードが損なわれる。(竹) |
ハ |
ラリー・バインハート |
見返りは大きい(上) |
2016
8/6 |
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私立探偵が知り合いとの賭けから、アメリカ司法長官のスキャンダルを暴こうとする。小さな二人だけの探偵事務所だが、コネや親類の援助や恐喝まがいで突き進む。そこへFBIが関与して来て挫折。上下編だが1冊300ページ程度と厚くは無いが、登場人物が多過ぎる上に、関係の無い?挿話もあり、まとまりが無くなかなか読み進み難い。(竹) |
ハ |
バイコフ・斉藤洋 |
偉大なる王(ワン) |
2008 2/9 |
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中国東北部、日本では満州とも呼ばれていた地域に住むアムールトラを主人公にした動物小説。原作者は19世紀から20世紀に生きたロシアの作家だが、この本は日本人が小説として読みやすいようリライトしたもの。全ての漢字にふり仮名が付いているし内容も幼年層向け。自分には小説として物足りないので原作があれば読み比べてみたい。(竹) |
ハ |
ラリー・バインハート |
ただでは乗れない |
2015
11/5 |
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探偵が探っていた横領事件の証人が殺され、その娘から真相の究明を依頼される。怪しいと思われる上流階級に住む者達に手が届かない。探偵はあらゆる手段を使って動機を探る。仲間を頼んで姑息な手段を使うし、女にはだらしが無いし、自分の信条は曲げるし、止めたはずの麻薬にも手を出すし、良い所の無い探偵。人間らしいと言えば言える。(竹) |
ハ |
パク・サンヨン |
大都会の愛し方 |
2021
3/20 |
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韓国の大都会ソウルに住む男の生活交友を描く連作短編4編を収める。主人公がゲイだからこそ男性とは恋愛になるが、女性の性格によっては友情になる。それが1作目の「ジェヒ」。日本よりも保守的な考え方の韓国。堕胎が罪では無くなったのは最近だそうだ。生きづらくても、大都会だからこそ緩和される部分もある。韓国に行けないが小説で味わえた。(竹) |
ハ |
パク・ミンギュ |
ピンポン |
2022
11/2 |
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いじめの対象になっている中学生男子2人が主人公。誰も助けてくれないし、誰にも助けを求めない。2人の家族は登場しないし説明も無い。暴力が日常なのに打開しようとはせず、頭の骨がヒビ割れる程の怪我でも受け入れる。でも、ハレー彗星が地球に衝突するのを願う。結末は現実離れしたものになるが、救いは来ない。出口が無い世界。(竹) |
ハ |
オルダス・ハクスリー |
すばらしい新世界 |
2019
1/5 |
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自らは父や母になる事が無く、その精子と卵子からランク分けされた人間が生産される。不満の元は予め排除されて教育される人間。性欲は満たされ、不安も薬で解消される安定世界。そこで異端となった者が問うアンチユートピア小説。1932年作と古いがSF好きなのに知らなかった。作者はイギリスでどうしても神の問題になってしまうのは白ける。(竹) |
ハ |
ブレーズ・パスカル |
パンセ(瞑想録)上 |
2011
11/12 |
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長岡市図書館には読みやすい文庫はこの上巻しか無い。結局自分で中公文庫(全1巻)を購入。馴染みの警句もあるが、キリスト教の立場に立ち無神論者や異教徒を攻撃したり戒めたりする話の方が多い。数学者のパスカルが宗教を信じるのが正直驚き。内容は直訳で訳注も不十分、用語が判らず辞典の助けを借りながら読み進めた。(竹) |
ハ |
ジェームズ・パターソン&
ピーター・ドゥ・ヤング |
17番グリーンの奇跡 |
2006
9/13 |
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無駄な肉付けをしページ数を稼ぐような小説が多い中、小説とはエンターティンメントとはこういうものを言うのだと、自分は思う。ゴルフはやらないし、身近でゴルフをやる奴も大嫌い。でも、TVで芸能人のゴルフを見るのは嫌いではない。その程度のゴルフの知識で楽しめるゴルフ小説。(松) |
ハ |
ジョン・ハットン |
偶然の犯罪 |
2021
10/2 |
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教師を指導育成する学校の教師の男。どちらかと言えば堅物の部類に属する。それが一時の気の迷いで女性ヒッチハイカーを乗せ、侮辱された腹いせに夜の荒野に置き去りにする。女性が殺され教師は取り調べを受ける。自分の地位向上に汲々とする公務員の姿に嫌悪感で、主人公に共感出来なかった。だから面白く読めなかった。26年前の作品。(竹) |
ハ |
D・W・バッファ |
弁護 |
2009
4/19 |
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実際に罪を犯したかどうかは二の次で被害者の事も考えずに裁判に勝つ事だけが重要と思う弁護士がいた。その後月日が流れ、昔の評決が原因となる事件が起きる。結末を待たずに犯人が分かったり、弁護側の捜査の不可解な不備があったりしたが、大体において良く出来ていると思う。ただ、法定ミステリーも食傷気味で新しい展開が欲しい。(竹) |
ハ |
スティーヴ・ハミルトン |
氷の闇を越えて |
2016
11/1 |
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元プロ野球選手で、その後警官になって銃弾を打ち込まれ退職した男が過ごすカナダ国境の町で殺人事件に巻き込まれる。物語の背景も人物造形も充分だが、素材を調理する腕が良くない。その素材を使う必然性が感じられない。結局は観念的になって会話中心の流れになってしまう。これが幾つかのアメリカの賞を取ったとは信じられない。(竹) |
ハ |
エドモンド・ハミルトン |
反対進化 |
2014
10/4 |
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「キャプテン・フューチャー」が有名な作家だが自分の好みに合わずあまり読んでこなかった。この短編集に収められたものも既読感がなく新鮮に読めた。今では古い感じはするが、SFのバリエーションの見本のよう。やはり自分に合わないものもあるが、面白いものもある。「異境の大地」や「審判のあとで」のようなペシミスティックなものが自分の好み。(竹) |
ハ |
スティーヴ・ハミルトン |
解錠師 |
2015
11/19 |
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幼年期に声が出せなくなった少年は絵の他に鍵開けの才能があった。恋人とその家族の為に裏の世界に入り技術を習得して金庫破りになってしまう。筋書き自体はそれほど感心したものではないが、素材となる鍵開けと若き主人公に引かれ2日で読了した。収監された刑務所から始まる話だが、表の世界での解錠師として次作を期待したい。(竹) |
ハ |
ダシール・ハメット |
血の収穫 |
2013
8/1 |
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1929年のデビュー作。探偵社の「おれ」が悪徳はびこる街に乗り込み悪人同士を戦わせて街を掃除する話。文中では「おれ」は太っていてカッコ良くも無いし、多くの殺人に動揺する部分もある。表紙とは大分違うようだ。後半になると色々詰め込み過ぎて筋のまとまりが無くなる。ハードボイルドは文体が命だが、1959年訳では古過ぎて興醒め。(再読)(竹) |
ハ |
J.G.バラード |
コカイン・ナイト |
2004
10/21 |
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もうSFには何回も波が来て、その昔その波の旗手だった人。その時の好みではなかったが一目置いていた(当時自分は高校生)。これはSFではなくミステリーという分類。なかなか読み応えがある。映画のシーンが目に浮かぶよう。映画化を狙って書いたのですか。 |
ハ |
ロバート・ハリス |
ファーザーランド |
2013
3/29 |
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前回読んだファージング3部作と同じような、ナチスドイツが勝利した世界を描く。ドイツ人の刑事(親衛隊大隊指揮官)が通常の殺人事件の捜査から大きな問題の糸口を見つける。刑事は孤独で優秀で職人気質であるからこそ越権行為を物ともせず突き進む。その行き着く先に人間として何が正しいかを問われるナチスが勝った世界をドイツ人の側から描く。(松) |
ハ |
マリオ・バルガス=リョサ |
緑の家(下) |
2020
2/13 |
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ハ |
マリオ・バルガス=リョサ |
緑の家(上) |
2020
2/13 |
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ハ |
マリオ・バルガス=リョサ |
誰がパロミノ・モレーロを殺したか |
2006
4/29 |
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サスペンス仕立ての通俗小説だが、作者の名前のように舞台は南米ペルー。作者はかつてあのフジモリ氏と大統領を争ったので有名。似たような題材でジェイムズ・マクルーアのクレイマー警部補シリーズがあるが、南アフリカ共和国を舞台にしていて、本格サスペンスでもっと面白い。(竹) |
ハ |
バルザック |
ゴリオ爺さん |
2005
3/15 |
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大河小説、人間喜劇の一場面。古い小説だけれど退屈せずに読めた。自分は古い小説に偏見を持っている?特徴は長台詞。瀕死の病人もこれでもかとしゃべり通す。これをこのまま舞台でやったら役者が大変だなと変な気を使ってしまった。 |
ハ |
ハン・ガン |
回復する人間 |
2020
5/16 |
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ハ |
ハン・ガン |
菜食主義者 |
2020
3/3 |
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ヒ |
ジェレマイア・ヒーリー |
ニュースが死んだ街 |
2013
6/15 |
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私立探偵ジョン・カディシリーズ5作目。製作順に読んでないので主人公の生活が前後する。冒頭で主人公は中古のホンダプレリュードに乗り換える。地方紙の女性記者に殺人事件の調査を依頼されるが、女性記者が不審死を遂げる。調べるうちに主人公も殺されかける。よくある筋書きで結末も感心しないがクールな主人公の言動を楽しめただけで良い。(竹) |
ヒ |
ジェレマイア・ヒーリー |
死を選ぶ権利 |
2013
4/10 |
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私立探偵ジョン・カディシリーズ6作目。重病者の死ぬ権利の提唱者への脅迫事件を捜査する。プロローグにボストン・マラソンについてのくだりがあるが、今回のボストン・マラソンで爆弾テロが起き偶然に驚く。自立心が強く適度にシニカルでタフな主人公の性格が好み。筋書きよりも人間関係の描写が面白い。だから、結末の必然性には難があるが許せる(竹)。 |
ヒ |
ジェレマイア・ヒーリー |
別れの瞳 |
2013
2/16 |
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探偵ジョン・カディシリーズ。保険会社に在職していた縁で若い女性の死亡事件を依頼されるが、マフィアの顔役の孫と分かり警察も非協力で難しい調査となる。最初に身内が怪しいと思ったが、そんな簡単な筋の筈が無いと思いながら読んだ。なかなかのハードボイルドでいつも80点以上の出来なのにあまり知られていない作家。文庫化されていない?(竹) |
ヒ |
ジェレマイア・ヒーリイ |
湖畔の四人 |
2012
12/28 |
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私立探偵ジョン・カディシリーズ。リゾート地でのボウガンによる殺人事件の調査をする。犯人に繋がる伏線が薄く、誰が犯人でもいいような状況が結末まで続くが、少女ギャング団との対決など見せ場はある。登場人物の関係性に余り頼らず、純粋にサスペンスとしてカッチリとした造りで読み応えがある。好きな作家となり期待値が高いので評価は辛目。(竹) |
ヒ |
ジェレマイア・ヒーリー |
死の跳躍 |
2012
12/11 |
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私立探偵カディシリーズ4作目。離婚訴訟相手の夫が危険人物で、知合いの弁護士に警護を頼まれる。その夫が娼婦と共に殺され現場にはカディが奪われた拳銃が残される。麻薬がらみでギャングや刑事や娼婦のひもや妻や弁護士やら、登場人物が多く事件の収拾がつかない。複雑に入り組んだ謎を解く予想も付かない展開が面白い。(竹) |
ヒ |
ジェレマイア・ヒーリイ |
消された眠り |
2012
9/16 |
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ボストンの私立探偵ジョン・カディは、精神科医のグループ治療中に殺人を告白し拳銃も所持し逮捕された黒人大学生の身辺を調査する。主人公は腕っ節は強く情もあって適度にクールで好感が持てる。他の登場人物の描写も良いのだが、優秀なはずの大学生が救いようがなく見えたのと、バタバタした終盤と結末に納得がいかない。シリーズ物。(竹) |
ヒ |
ジェレマイア・ヒーリイ |
つながれた山羊 |
2005
3/1 |
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私立探偵ジョン・カディの2作目。といっても読むのは初めて。サスペンスとしては重い方。重いから良くて軽いから悪いというのではなく。重いというのは登場人物の情念がストレートに出ているもの。登場人物が情念を隠して、ツライのにツラクナイといってやせ我慢しているもの、またはそこに少しユーモアが漂っているのは軽いと見ている。及第点。 |
ヒ |
ナンシー・ピカード |
死者は惜しまない |
2005
9/28 |
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この本から四冊前の本の女性の推薦による女性作家の多い読書生活になります。戦々恐々、おそるおそる読み始めます。何故かというと殆どの女性作家の小説は今までの経験から行くと面白くなかったからです。これはミステリーで及第点。(竹) |
ヒ |
ジャック・ヒギンズ |
双生の荒鷲 |
2006
10/28 |
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第2次大戦中のヨーロッパ戦線で、敵と味方に別れて戦った双子の戦闘機乗りの話。その頃の戦闘機には詳しく好きなシチュエーションだが…。導入部のプロローグは良かったが、本編の筋は劇的な出会いを演出し過ぎて都合よく作られていて嘘くさい。「本当のような話をしてよ。僕を気持ちよく騙してよ」と言うところ。(竹) |
ヒ |
トニイ・ヒラーマン |
死者の舞踏場 |
2016
7/2 |
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ナヴァホ警察のリープホーン警部補のシリーズ物。殺人事件が起き、失踪した少年を追う警部補。現代の話だが、部族によっても違う風習を背景にした伝奇ミステリーともいえる。そして伝奇の方に重きを置いているのでミステリーとしては手薄で自分としては不満。このシリーズは知っていて新作と思い借りたが家の本棚にあった。何十年前も前で忘却。(竹) |
ヒ |
ジョー・ヒル |
20世紀の幽霊たち |
2012
8/25 |
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18編ほどの怪奇系の短編集。ファンタジーや幻想小説や純文学も混じっている。アメリカの地方を題材とするホラー作家にスティーブン・キングがいるが、なんと作者はキングの息子。この内容はキングに勝けず劣らず。作者は2005年のデビューで今年40歳だというが小説を読むととても若手には思えない重みがある。ホラーという題材のせいか?(竹) |
ヒ |
レジナルド・ヒル |
骨と沈黙 |
2016
5/26 |
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イギリスの地方都市のダルジール警視とパスコー主任警部をダブルキャストにしたミステリーシリーズの一つ。警視が目撃した発砲事件から端を発し、失踪、暴力、麻薬、屋外劇、自殺の告白など重層的な題材を大勢の登場人物を駆使して描いている。文庫本で584ページは読み応えがあった。人物、舞台、筋書きとどれをとっても申し分が無い。(松) |
ヒ |
トマス・ピンチョン |
ヴァインランド |
2010
3/16 |
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アメリカ合衆国の近代史を、その舵を操る勢力に翻弄される人達とともに描いている。日本人では分からない隠喩が多くて、奥付に訳者の用語解説がある。これを見ながら断続的に読み進んだが、却って分からなくても最初は物語のリズムのままに読み進んだ方がよかったかもしれない。何度も読み返す教科書のような小説か。(竹) |
ヒ |
トマス・ピンチョン |
重力の虹U |
2009
11/26 |
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ドイツは敗北し領内は無秩序状態。アメリカ、イギリス、ロシア等々様々な人間が暗躍する。U巻でも同じような展開で物語が混沌としている。二段組みでギッシリ文字が詰まったブ厚い本が2冊で、しかも読む方も立板に水ならぬ横板に餅の状態で、個々のセンテンスは面白くないわけではないが、読了するのに1ヶ月近くかかり苦労した。(竹) |
ヒ |
トマス・ピンチョン |
重力の虹T |
2009
11/6 |
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第2次大戦中のイギリスはドイツのV2ロケットの攻撃を受け超能力研究者話から始まる。唐突に場所や時間や人物が変わるし、登場人物が多い上に寄り道、脇道、回り道で筋が把握し難く、読む気持ちが萎えてしまう。内容はSF、純文学、異常性愛、戦争、サスペンス、のゴッタ混ぜの文章のオンパレードでわけ分かず、自分としては苦手な読み物。(竹) |
ヒ |
トマス・ピンチョン |
競売ナンバー49の叫び |
2009
6/7 |
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現代アメリカ小説。隠喩を多用し巻末に訳者の解説あり。難しそうで構えて、解説を見ながら読んでしまった。だが言葉に意味が隠されているのはどんな小説でも同じ。意味を知らなければ小説を楽しめないとは限らない。途切れ途切れに読んでしまって小説の面白さが半減した。解説など無視してただ読むべきであった。表題作他短編1編収録。(竹) |
フ |
クリストファー・ファウラー |
白昼の闇 |
2016
4/10 |
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都会的ホラー短編集。それぞれの短編の冒頭にアメリカでのイギリス人旅行者の災厄が狂言回しとして挿入されている。短編自体はイギリスでの話でアメリカとは異なる部分があって興味深い。ホラーは好きではないがミステリー仕立てになって予想が外れる転回があって面白い。この作家は独特な筋立ての「ルーフワールド」以来に読む。(竹) |
フ |
クリストファー・ファウラー |
ルーフワールド |
2013
12/5 |
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世間には気づかれずにロンドン市街の密集した屋根上で生活する集団がいた。そこに新興のオカルト集団が敵対して殺人が起きる。アイディアも良いし出だしも面白さを予感させるものがあったのに、その後のストーリーや結末はまとまりがないし盛り上がりに欠ける。悪役も警部もキャラを上手く生かせないまま終わってしまった。25年前の作という要因もあるか。(竹) |
フ |
ハンス・ファラダ |
田園幻想譚 |
2022
3/5 |
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父母を亡くし親戚縁者もいないと思い都会で働く青年に叔父がいる事が分かり、雀に姿を変えて田舎に飛ぶ。もう最初からファンタジー。悪い魔法使いを排除して青年は農場を相続出来るのか。前作の「あべこべの日」のように童話に近い。ドイツの作家で1935年の作品というから大戦の合間に書いたか。カバーの飯野和好のイラストが印象的。(竹) |
フ |
ハンス・ファラダ |
あべこべの日 |
2017
8/29 |
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ドイツの作家の童話。11編を収納。現実の世界観は崩さず、動物が話をし、無機物も話したり動いたりし、魔法もある普通の童話。教訓は表立って主張しないから押し付けがましく無いが、泣かせ所も無く、ひねりやオチの面白さも無い。子供の純粋さも表現されていないように思う。80年前の作品だが文庫本になっているので評価はされたのだろう。(竹) |
フ |
レイモンド・E・フィースト |
魔術師の帝国(下) |
2009/
8/28 |
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異次元世界との戦争で主人公達は離れ離れになる。魔術師の弟子は異次元に連れて行かれ大魔術師になる。騎士の弟子は古代のよろいを身に付けてから伝説の騎士が乗り移る。異次元との戦争や内紛で世界が疲弊する中やっと和平の兆候がみえてくる。筋書きが大きくなり過ぎて後半は強引な辻褄合わせがあるが、良く出来た方か。(竹) |
フ |
レイモンド・E・フィースト |
魔術師の帝国(上) |
2009/
8/28 |
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魔術師とか騎士とか妖精とかがいるヨーロッパ中世風味のファンタジー。主人公は天涯孤独の少年で、一番の友達は騎士の弟子になったが自分は魔術師の弟子になる。その国に異次元から敵が攻め込んできて戦いになる。少年とその友達を軸にした波乱万丈な物語。ファンタジーは苦手な方だが意外にスムーズに読める。(竹) |
フ |
ノーマ・フィールド |
へんな子じゃないもん |
2007 7/12 |
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太平洋戦争の敗戦から2年後に、進駐軍のアメリカ人の父と日本人の母の間に生まれた作者のエッセイ。主に作者を可愛がってくれた祖母との思い出話。その祖母が倒れて、母の看病とその時の世情に対する作者の思いを書いたもの。日本人の戦後を描いてもいる。表題は、作者に祖母が言った言葉。「自慢の子だもん」と続く。(竹) |
フ |
ノーマ・フィールド |
祖母のくに |
2007
5/10 |
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作者は日本生まれのハーフでアメリカで生活。本の半分は日本語で書いたエッセイ。もう半分は英語で書いた論文。エッセイは今まで読んできたものと同じで共感できる。論文の内容は大学教授らしい難しい言い回しで自分の頭には入りにくい。論文なので平たい言葉を使えないのだろう。それと「合衆国」を「合州国」としてあるのは気になる。(竹) |
フ |
ノーマ・フィールド |
天皇の逝く国で |
2006
7/1 |
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作者は日本生まれのハーフ。その立場から「国旗」、「靖国神社」、「天皇」について起こった問題を取材して書いている。波風立たないように暮らせば、自由のような、民主主義のような日本の、タブーに触れてしまった人達の闘いの話。作者の生き方もベースにある。字数が多いが読みやすいので是非読んで、考えて欲しい。(松) |
フ |
セバスチャン・フィツェック |
乗客ナンバー23の消失 |
2018
9/11 |
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大西洋を渡る大型クルーズ船で妻子が失踪した警官が、証拠品に釣られ個人的な捜査をする為に乗り込む。何度も起きる失踪事件の謎を探る。面白いのか分からずに読み進めたが、結局面白く無い。筋も人物も不必要に複雑過ぎる。読むたびに、どんでん返しのし過ぎで内容が入ってこない。もっとスムーズな構成にすれば面白いのに残念。(梅) |
フ |
ジャック・フィニイ |
レベル3 |
2011
10/5 |
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1957年の著作の再版。作者は1911年の生まれでそれより20年近く若い福島正実が訳し、作者は1995年まで生き福島正実はそれより20年近く早く没した。ジャンルは幻想文学短編というものだろうが、自分は時間SFと思える。時代背景の古さは当然あるが小説としての古さではなく読みやすい。ほのぼのとした青春ものもある。(竹) |
フ |
ジャック・フィニィ |
時の旅人 |
2010
7/6 |
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時間旅行テーマのSFの続編。目的地(過去)と変わらない場所でその事物を思い浮かべていると過去に行けるという。今回は第一次世界大戦を阻止するという主題はあるのだが実際は1912年当時の写真をそえた風景、人物、芸能を紹介する過去のニューヨーク旅行記。過去のアメリカの風俗を紹介されても日本人の自分にはピンと来ない。(梅) |
フ |
ジャック・フィニイ |
夢の10セント銀貨 |
2009
10/14 |
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多元世界SFラブコメディ。仕事でも家庭でもマンネリで妻とは会話も交わさない男が別の世界に移動。そこでは、男は仕事もバリバリで妻も別の美人だった。男は元の世界で妻だった女に会い愛情が復活。恵まれた世界を捨て元の世界に帰り妻ともう一度やり直そうとするがすでに離婚した後だった。恋愛の果かなさを軽いタッチで描いている。(竹) |
フ |
リンダ・フェアスタイン |
誤殺 |
2016
1/8 |
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ニューヨーク女性検事の友人である女優が殺される。検事を狙って間違えて殺されたのか、或いは女優が狙われたのか、動機が分からず捜査範囲も広がる。波が無く会話だけで進んでゆくストーリーに飽きる頃展開があるが、その後もまた平坦になる。犯人は無理やりこじつけた感がある。会話自体は陳腐では無いものの自分の好みには合わない。(竹) |
フ |
E・M・フォースター |
天使も踏むを恐れるところ |
2006
6/4 |
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大仰な題名にも惹かれて読み始めた。イギリスのいいとこの未亡人がイタリアに旅行に来て、ただ美男子だという理由で金も身分も無いイタリアの若い男と結婚してしまう。現代小説と比べると描写が荒いのが難。前に読んだ「眺めのいい部屋」と同じ古い設定だと思ったら、作者は1879年生まれの人だった。その当時は現代小説だったのか。(竹) |
フ |
E・M・フォースター |
眺めのいい部屋 |
2005
3/15 |
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100年も前の設定の小説。女性の自立が主題。といっても多様な価値観がある現代に設定を変えても問題ないような話。イギリスやイタリアの背景設定が良い。映画になったのも頷ける。機会があったら映画も見てみたい。BSでやらないかな。 |
フ |
フレデリック・フォーサイス |
イコン(下) |
2006
9/13 |
 |
上巻の無駄に多いような説明は下巻の為の布石と期待していたが、折角の下巻のサスペンス場面も小説としては駄作と言わざるを得ない。映画なら何とか誤魔化せるかもしれないが…。そう言えば状況説明が多いのは映画のシナリオを頭に(映画化で儲けようと)描いて書いていたのかと勘ぐってしまう。(梅) |
フ |
フレデリック・フォーサイス |
イコン(上) |
2006
9/13 |
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過渡期のソ連と欧米のスパイの確執を扱う小説。この時から考えれば未来である今は、この小説のようにはなっていないので違和感はある。この分野での第一人者の小説の骨格は良いが、登場人物が多いうえ、端役の者にもその背景の丁寧な解説をするのはどうか。年代は飛ぶし、人物は飛ぶし、状況を把握するのが困難。(竹) |
フ |
G・M・フォード |
憤怒 |
2014
2/11 |
 |
ニューヨークで記者だった男は自分の記事から訴訟を起こされ解雇されるが、シアトルの新聞社主に救われる。連続レイプ殺人の犯人で死刑間近の男が冤罪らしいからと社主から調査を命じられ、助手となる女性と事件を探って行く。立派なガタイをしているのにアクションが無いのがサビシイ。センテンスが短いので読みやすいが読書の波に乗れない。(竹) |
フ |
セシル・スコット・フォレスター |
駆逐艦キーリング |
2021
11/25 |
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第二次大戦中の連合国船団とドイツ潜水艦隊(Uボート)の戦いを護衛艦の艦長の目から描く。ヨーロッパでの戦いを有利にするにはアメリカからの物資が必要で、50時間もの間、不眠不休で指揮を執る艦長は人間業では無い。的確に指揮しても巧くいくとは限らず、運も大きい。また、戦争は単純に良い悪いでは無いから読後が重い。。(竹) |
フ |
セシル・スコット・フォレスター |
勇者の帰還 |
2007
3/1 |
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海の男/ホーン・ブロワーシリーズの7巻目、といっても長岡市の図書館には6と7巻しかない。十九世紀のヨーロッパの帆船物の冒険活劇だが、この巻はフランス軍に捕まったホーン・ブロワーの逃走の物語で帆船は余り出てこない。艦長は傍目ではどっしり構えて良い男に見えるが、心の中はいつもビクビクして金勘定をしている小心者。(竹) |
フ |
セシル・スコット・フォレスター |
燃える戦列艦 |
2007
2/8 |
 |
海の男/ホーン・ブロワーシリーズの6巻目。イギリスが海を支配していた頃のイギリス艦長の物語。ナポレオン軍と戦う主人公のホーン・ブロワーの海の冒険活劇。書かれたのは1938年。古い割には面白い。機動力のある帆船が戦争の主役だった時代。こういう話は舞台と道具を変えるだけで宇宙活劇にさえなってしまうので普遍的な物語だ。(松) |
フ |
ケン・フォレット |
ペーパー・マネー |
2023
2/11 |
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ギャングに脅かされ情報を教えるエネルギー相。その情報で会社を買収する銀行家。ギャングは銀行家からの情報で焼却前の古紙幣を強奪。集めた細かい情報を組み立てて記事を作る新聞記者。ロンドンの1日を時系列に様々な人間を描いている。ヒーローもいなければ勧善懲悪でも無くクライマックスも少ないが、面白くスムーズに読んだ。(竹) |
フ |
ケン・フォレット |
モジリアーニ・スキャンダル |
2022
12/8 |
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世に知られていないモジリアーニの絵を知り、行方を追う女子学生。その動きを察知した画廊のオーナーが探偵を派遣する。一方若手画家は贋作を計画する。有名画家の絵の存在や、贋作に騙される画廊など、ストーリーが安易過ぎて面白味が無い。女子学生も最初と最後に出て来ただけで、誰が主人公か分からず、感情移入出来ない。(竹) |
フ |
ケン・フォレット |
レベッカへの鍵 |
2021
4/15 |
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第2次大戦中のアフリカ戦線。ドイツのロンメル将軍とイギリス軍の戦いの中で暗躍するドイツのスパイとイギリス情報部の大佐との戦いを描く。ストーリーは作者のさじ加減だが、スパイには不利な条件で、それが強引な手段や垢抜けない行動になっている。負けるにしてもスパイのスマートさが欲しかった。自分はレン・デイトンのような小説が好み。(竹) |
フ |
ケン・フォレット |
大聖堂(下) |
2007
1/3 |
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やっと大聖堂を建てられると思った石工はあえなく最後をとげ、跡を継いだ実の息子が作った大聖堂が崩れるが、スペイン、フランスと勉強の旅から帰った義理の息子は新機軸の大聖堂を建て始めるが…。うまくいくと思えば邪魔が入り、今度こそうまくいくと思えばやっぱり邪魔が入る。その連続と、いささか長い物語に飽きてしまった。(梅) |
フ |
ケン・フォレット |
大聖堂(中) |
2007
1/3 |
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それから10〜15年たち、戦乱の世の中で修道士は修道院長になり、石工は大聖堂の建築現場の頭となる。戦の趨勢のより国王が代わったりもする中で、何とか大聖堂を完成させようとする人達と、その人達と係わりを持つ人々の大河小説。日本では鎌倉幕府を開く源頼朝も生まれていない時代。(竹) |
フ |
ケン・フォレット |
大聖堂(上) |
2007
1/3 |
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始まりは1123年のイングランド。大聖堂を建てたいという石工と、堕落した修道院を立て直したいという修道士の物語。基本的にこの設定は自分には苦手。長い物語(上中下巻、六部作)を読み通せるかが不安。ちなみに日本ではまだ公家同士が争い、その乱世に乗じて武士が実験を握ろうとしていた時代。(竹) |
フ |
チャールズ・ブコウスキー |
パルプ |
2021
4/15 |
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競馬と酒が好きで生活の糧が探偵なのに仕事嫌いで金に困っている。女は好きだが手が出ない。拳銃を持っていないとからっきし弱く、デブでブオトコでカッコ悪い。ハードボイルドかと思いきや宇宙人や魔女(?)が登場。内容は題名通りのパルプ小説だが、場面場面が絵になる。ストーリーよりもアメリカ下町のくだけた悪っぽい雰囲気を味わうべきもの。(竹) |
フ |
ヴォルフラム・
フライシュハウアー |
消滅した国の刑事 |
2014
8/1 |
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東ドイツ出身の警視正は21世紀になった今でも自由主義に慣れないが、警察という仕事に誇りを持っていた。猟奇的なバラバラ死体事件が発生し捜査の指揮をとる。人物描写に深みがあり、途中から経済小説の面も見せ小説としての深さも感じさせる。ただサスペンスとしては反則的な筋立てがあり、結末もいまいちスッキリしないのが残念。(竹) |
フ |
ダン・ブラウン |
天使と悪魔(下) |
2014
11/27 |
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誘拐された候補者は次々と殺され爆発が迫る反物質も見つからない。逆に大学教授は死にかけ女性研究員も誘拐される。どう解決なるのかと期待が高まる最終巻。全体として、短い章にして次々と場面を換えるのは緊迫感があるが、日本人には宗教問題は想像するしかないから主題として弱いし、ストーリーも結末も並で、不満足な部分が多々ある。(竹) |
フ |
ダン・ブラウン |
天使と悪魔(中) |
2014
11/27 |
 |
ヴァチカンに反物質が仕掛けられ、教皇選挙の候補者4人が誘拐され殺害予告も受ける。大学教授は研究機関の女性研究員と共に、まずは誘拐された教皇候補の救出に向う。殺害場所の謎を解きイルミナティという組織の暗殺者と対決する。全3巻だが1冊300ページ程度で文庫にしては字が大きいのでボリュームは意外に少ない。スピード感がある。(竹) |
フ |
ダン・ブラウン |
天使と悪魔(上) |
2014
11/27 |
 |
紋章の研究家の米大学教授がスイスの科学研究機関に呼ばれ、見せられたのが遺体に焼印された秘密結社の紋章。奪われた反物質がヴァチカン市国に隠され大爆発まで数時間。宗教と科学の対立がテーマ。なかなかサスペンスフルな出だしだが、実用化されていない宇宙航空機や反物質が出て来てSF的なのが現実感が無い。読み易くはある。(竹) |
フ |
フレドリック・ブラウン |
発狂した宇宙 |
2013
8/17 |
 |
筆者の短編は熱狂的に好きだったが、この長編は全く覚えていない。自分の評価は低かったようだ。1949年の作のパラレルワールド物。出版社の編集者がロケット事故に巻き込まれそのエネルギーで別の世界へ飛ばされる。再読したが解説(1951年)の筒井康隆氏のようには良いとは思えない。筋運びが荒くSFの荒唐無稽さに頼ってしまっている。(再読)(竹) |
フ |
シルヴィア・プラス |
ベル・ジャー |
2019
9/28 |
 |
アメリカの女性作家の自伝的小説。自殺した人と知って借りた。重い主題で読み難いかと思ったがそうでも無かった。短編小説や詩で賞を取った早熟の少女は感覚が鋭過ぎるのだろう。抑えが利かなくなり自滅するような危さに落ち込む。片親でも仕事をして育ててくれた母親が可哀相に思えたが、それはこの場合どうでも良いのだろうが気になった。(竹) |
フ |
チャールズ・プラット |
バーチャライズド・マン |
2011
5/22 |
 |
FBI捜査官は本来とは違う研究をしている所員たちを調べる。黒幕は元アナーキストの天才コンピュータ科学者。人間が不死となる脳のデジタル化に成功していた。邪魔を恐れFBI捜査官の脳をデジタル化してから殺す。天才コンピュータ科学者は世界を変えようともしていた。人物も筋も良くサスペンス要素もありSFの名作だが題名が良くない。(松) |
フ |
チャールズ・プラット |
フリーゾーン大混戦 |
2011
2/10 |
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1999年のロサンジェルスの独立地帯のフリーゾーンに、時間を遡ってきたロボットや宇宙からの侵略者やアトランティスからの攻撃や知性化した凶悪な犬達や多元宇宙のナチスなどが入り乱れて大混乱。SFテーマ満載でファンにはたまらない。せめて上下巻にしてもっと長く読みたいが、1冊でやめておく所が潔い。説明はいらない読んでみて。(松) |
フ |
ボフミル・フラバル |
わたしは英国王に給仕した |
2011
1/13 |
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主人公はチェコ人の小男。ホテルの給仕の職についてからずっと同じ仕事を続け、第2次大戦前後のヨーロッパの不安定な政情の中で成り上がり金持ちになって、自分のホテルを持つという長年の夢を叶える。チェコの作家の5編の連作の物語。表題は主人公の師匠の給仕長が自らを誇る時の口癖の言葉。ちょっと風変わりで暖かい物語。(松) |
フ |
ディック・フランシス
フェリックス・フランシス |
矜持 |
2012
10/6 |
 |
競馬シリーズを書き続けてきたディック・フランシスの遺作。アフガニスタンで片足を失って母親の牧場に戻ってきた主人公は、母親と義父が恐喝され金ばかりか競馬の不正にまで手を出し刑務所行き寸前なのを知る。いつものパターンでまず悪人に痛めつけられてからの報復が始まる。マンネリといえばマンネリの筋書きだが勧善懲悪が心地よい。(竹) |
フ |
ディック&フェリック・フランシス |
拮抗 |
2011
3/30 |
 |
作者独特の競馬小説で、控えめな主人公が事件を受身で負って最後にはハッピーエンドというスタイルは親子で書くようになっても変わっていない。今回はイギリスのブックメーカー(賭け屋)が主人公。幼い頃に死んだと思った父親が生きて現れ、すぐ本当に死んでしまう。筋に荒さが見えるが安心感はある。毎回の訳者の二字熟語には感心。(竹) |
フ |
ディック・フランシス |
審判 |
2010
12/3 |
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お馴染みの競馬シリーズの最近作(2008年発行)。弁護士でアマチュア騎手の青年が、殺人事件の弁護絡みで脅迫を受け、実際に暴力を振るわれる。悪人の所業は強引だし、恋愛もステレオタイプだし、痛めつけられた正義が最後には勝つというのも同じだが、久しぶりに読むと間違いの無い安心感がこの物語にはある。(竹) |
フ |
ディック・フランシス |
再起 |
2008 9/3 |
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競馬シリーズのシッド・ハレー4作目。馬が勝てない理由を調査中に疑惑の騎手が殺され、調教師は逮捕されたあとに自殺する。ハレーは謎の人物から脅迫され恋人が怪我をしてしまう。久しぶりのシッド・ハレーは、旧友と再会した気持ち。奥さんを亡くした作者は一度断筆したが家族の応援で復活した。訳者の菊池光さんは亡くなっていた。(竹) |
フ |
ディック・フランシス &
フェリック・フランシス |
祝宴 |
2008 3/15 |
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今回の主人公はミシュラン一つ星のシェフ。出だしから前途多難で自らの料理での食中毒事件、競馬場での爆弾事件。事件の犯人と動機が不明の中、さらに事件に巻き込まれる。恋も絡めての、いつものフランシスのいつもの主人公。好きだった料理を久しぶりに食べた感じ。味は悪くは無い。息子との共著とは新しい生前贈与の形?(竹) |
フ |
ディック・フランシス |
出走 |
2007 9/8 |
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この作者には珍しい短編集。勿論、競馬サスペンス。巻末の解説によるとこの競馬サスペンスは競馬と名が付くだけで敬遠する人がいるらしい。自分も競馬はやらないがサスペンスとしても、単に小説として楽しめる。読まないのは勿体無い。イギリスの作家に人情というのも変だけど、人の機微が分かる小説家だ。油断すると泣かされるよ。(竹) |
フ |
ディック・フランシス |
騎乗 |
2007 8/4 |
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今回は17歳のアマチュアジョッキーが主人公で、その一人称で筋が進む。ジョッキーを無理やり辞めさせられ父親の政治家への道を手伝う事になるが、妨害工作を受けて主人公の対人懐柔や問題解決の能力が発揮される事になる。それにしても息子も父親も年齢より上の老成した考え方や言い方をするのが不自然。翻訳家のせい?(竹) |
フ |
ディック・フランシス |
勝利 |
2007 7/1 |
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毎度御馴染みの競馬シリーズ。今回はガラス職人が主人公で競馬サスペンスの競馬の部分はホンの少し。一人称で語る主人公はシニカルで少し自虐的な大人のいじめられっ子。主人公から見る他人はみんな性格が悪く、主人公に害をなそうと企んでいる。主人公が子供にも悪人にも甘い事が最後に殺人に発展した。愚かな主人公は嫌いだ。(竹) |
フ |
ディック・フランシス |
烈風 |
2006
6/3 |
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競馬シリーズも久しぶり。主人公は殆ど毎回違うが、何故か性格は同じ。一人称だからそう感じるのか?冷静で控えめで、読んでいる方がじれったくなるほど消極的。長いシリーズなので骨格は競馬だが色々なバリエーションがある。今回は武器商人の話。主人公に感情移入している読者としては、我慢に我慢を重ねた上は、パーッと発散したいが?(竹) |
フ |
ジョナサン・フランゼン |
フリーダム |
2017
11/24 |
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昔は善人だったのに評判を落とした夫婦のプロローグから始まり、家族、友人と広がり、アメリカの世相も反映した現代アメリカ人の物語。人が多く登場し絡まりあった関係を築いている。時系列が前後し項毎に主役も変わるが、結局は家族を構えた中年女性再生の物語。700ページを超えるが物語に身を委ねゆったり読めばスイスイ進む面白さ。(竹) |
フ |
ジョナサン・フランゼン |
コレクションズ |
2012
5/25 |
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アメリカ中西部に住む年老いた両親と、東海岸に離れて住む3人の子供たちの物語。専門知識を背景に個々人の性格を掘り下げ、理不尽な中にも家族の繋がりを表現し脇役さえ魅力的。才能を全て注ぎ込んだのではないかと思ってしまうが、3作目という。ハードカバー2段組520ページという分厚い本にもかかわらず、読み進める障害は本の重さだけ。(松) |
フ |
クリスチアナ・ブランド |
はなれわざ |
2022
3/5 |
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スコットランドヤードのコックリル警部シリーズ。警部一人の休暇でパッケージツアーに参加、イタリイに来る。地中海の大公領の小島で同じツアー客が殺される。二転三転するストーリーは良いが謎解きが古い。机上の空論的。現実味が薄い。警部の味付けも薄い。作者はクリスチィーより後の人、作品は1955年の作らしい。訳文も1985年と古い。(竹) |
フ |
クリスチアナ・ブランド |
緑は危険 |
2020
10/16 |
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|
フ |
クリスチアナ・ブランド |
ハイヒールの死 |
2015
7/22 |
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洋装店(今で言うブティック)で仕入部主任の女性が不審死。直前に帽子の漂白の為に買ってきた薬品によるものらしい。スコットランドヤードの若い警部が担当。登場人物の人物描写は良いが、女性が多い為かイメージし難く判別し難い。謎解きもスムーズではない。1941年作でこういう筋書きなのは仕方が無いか。同じ女性作家でもクリスチィには劣る。(竹) |
フ |
クリストファー・プリースト |
夢幻諸島から |
2014
11/1 |
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地球ではない他の人間が住む惑星での島嶼の観光ガイド。地球よりも多くの島がある夢幻諸島は、戦争をする北の大陸の国々から中立している。様々な芸術家の活動、北の国々からの影響、住民の生活等を島毎にガイド形式で紹介するというオムニバス小説。SF臭さがなく地球の南洋の何処かで実際にあるような現実感がある、が好きではない。(竹) |
フ |
クリストファー・プリースト |
限りなき夏 |
2012
10/19 |
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著者の代表作8編を収めた短編集。ジャンルはSFになるが、SF臭は程度にもよるが全般的に薄い。訳者はメインストリームと言っているが日本で言えば純文学作品に近いもの。独自の背景がたまたまSFとなるだけで、内容は人の心の葛藤を描く。収集作に途中まで主人公の性別を間違えて読み進んでいたものがあり、気付かされて驚いた。わざと?(竹) |
フ |
セス・フリード |
大いなる不満 |
2014
8/1 |
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まだ若いアメリカの作家の短編集。全体にシニカルな風味で嫌いでは無いがわざとらしさや飛躍し過ぎ?には付いていけない。表題作はエデンの園に住む動物達の不満の話だが聞いたような話で退屈。この中ではバランス良くまとまっている「ロウカ発見」が好き。他は「格子縞の僕たち」が良い。その他は作者の世界に入り込めず、好きにはなれない。(竹) |
フ |
J・ブリュース |
ハエが夜をねらう! |
2018
8/9 |
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ソ連という国があった冷戦時代のベルギーで誘拐事件が連続して起きる。アメリカ情報部が事件解決に乗り出し、捜査員が派遣される。この捜査員が主人公だが、スーパーヒーローではなく、現実の人間として描かれている。事件解決も他力本願に終る。ハードカバーだが字が大きく123ページしかない。フリガナもあり少年向けの読み物で物足りない。(竹) |
フ |
H・M・ヴァン・デン・ブリンク |
追憶の夏 |
2020
8/16 |
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フ |
チャールズ・フレイジャー |
コールドマウンテン(下) |
2006
12/12 |
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内戦でまとまりの無い混沌としたアメリカは戦闘以外にも残酷な面を見せる。南軍の無断離隊者、それを追う自警団、迫ってくる北軍。女のもとに帰ろうと山を辿る男。そこで遭う人々の様々な暮らし。これこそ奥行のある豊かな小説で、自分が求める面白い小説だ。1997年度全米図書賞。(松) |
フ |
チャールズ・フレイジャー |
コールドマウンテン(上) |
2006
12/12 |
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南北戦争当時のアメリカの南軍の脱走兵士と南部の娘のラブストーリー。ラブストーリーは苦手な自分がスイスイと読み進められるのは、それ以外の要素の自然と人間が濃くて楽しめるからだ。表紙を見ると映画化されたようだが、軽薄でこの小説の良さが出ていない。上下巻同じ表紙というのも難。(松) |
フ |
ブレイディみかこ |
花の命はノー・フューチャー |
2023
2/11 |
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この方の「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」2冊を読んだが、それ以前のエッセイ。代々貧乏というワーキングクラスの夫とブライトンで暮らす日々。英国の下層の人々の生活に係わる政治や行政も話題。人種的に混沌とした都会の姿はこれからの日本の地方都市か。悲しくても楽観的な言い回しが読み易い。何故かエッセイを続けて読む。(竹) |
フ |
ブレイディみかこ |
ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー2 |
2022
8/24 |
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アイルランド人男性と結婚した日本人女性が中学生の息子と三人でのイギリスで暮らしのエッセイの続編。自分には縁の無いシチュエーションだが、イギリスの庶民の生活から、教育や政治が見えて「2」も興味深い。息子と日本の祖父との関係も面白い。結末に、息子は思春期に入り話さなくなったとあるので、これが完結編となるのが惜しい。(竹) |
フ |
ブレイディみかこ |
ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー |
2021
12/29 |
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アイルランド人と結婚し出産し中学生になった息子と三人で英国ブライトンに住む日本人女性のエッセイ。息子に関係する政治や教育に移民や人種差別を取り混ぜた内容で、全てがリンク。イギリスの現状が分かって面白い。息子がクールでシッカリしているのが救い。エッセイは余り読まないが下手な小説より面白い。続編(完結編)も読みたい。(竹) |
フ |
ミリヤム・プレスラー |
マルカの長い旅 |
2011
7/24 |
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第2次大戦時のポーランドで暮らしていた母親と二人の娘がナチスドイツのユダヤ人狩りから逃れる途中で7歳の下の娘と離れ離れになり、それぞれが苦難の旅をし再会するまでを描いている。7歳の娘は幼いなりにしっかりと生き、悲惨な状況の中でも幸運や他人の親切に会うが、希望を何度も摘み取られて心を閉ざしてゆくのが悲しい。(松) |
フ |
E・アニー・プルー |
港湾(シッピング)ニュース |
2005
8/6 |
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先に映画を見ました、ビデオを借りて。地味で陰気な映画だったのを覚えています。だからこの本のページを開いて2段組のギッシリ詰まった活字を見ると手強そうと思いました。ところが読み始めてみると小さな章の区切りがいいのかすらすら読めます。原作とは違い映画のケビン・スペイシーはカッコ好過ぎ。もっとデブでなきゃ。(松) |
フ |
ローレンス・ブロック |
暗闇にひと突き |
2023
1/19 |
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マット・スカダーシリーズ4作目だが日本では2作目。9年前の連続殺人の犠牲者と思われた娘の犯人は別にいると分かる。その父親から依頼され、元警官なので警察資料を見て、足の捜査もして犯人像を浮かび上がらせる。個人の事情も表現し、深みのある人物を形成。これぞハードボイルド。前作の「八百万の死にざま」に比べ題名に味が無い。(竹) |
フ |
ローレンス・ブロック |
泥棒は抽象画を描く |
2022
4/1 |
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泥棒バーニイシリーズの五作目。直角の線と原色のモンドリアンの絵を巡る殺人事件に主人公は巻き込まれる。謎が多過ぎるし登場人物も多く、読んでいてストーリーが把握出来なくなる。ストーリーは軽快だが強引な展開もある。何故か刑事に信頼されていて、関係者を集めての最後の謎解きは、名探偵がやる役割だが泥棒がやっている。(竹) |
フ |
ローレンス・ブロック |
泥棒は哲学で解決する |
2016
12/30 |
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泥棒バーニイシリーズ。豪邸はすでに泥棒に荒らされ、隠し金庫からコインを盗ったまでは良かったが、殺人事件が起きる。主人公は泥棒なので感情移入し難い。相棒のような悪徳警官もいて、これは倫理観のズレを楽しむ小説か。1980作だが今だったら隠しカメラが普及しているので泥棒(小説)も大変だ。気の良い悪い奴らの娯楽ミステリー。(竹) |
フ |
ローレンス・ブロック |
泥棒は詩を口ずさむ |
2016
10/7 |
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一冊しかないと言う本を巡って蒐集家達が暗躍。主人公も泥棒の腕を買われ巻き込まれる。バーニイシリーズ3作目。又も殺人現場に遭遇し警察に追われる。このドタバタ感はユーモア・ソフトサスペンスといった所。終盤、主人公が手の内を見せず結末でまとめて開陳するというのは置いていかれたようで詰まらない。多少の推理はさせて欲しい。(竹) |
フ |
ローレンス・ブロック |
泥棒はクロゼットのなか |
2016
8/17 |
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泥棒シリーズの2作目。別れた妻から宝石類を盗むように依頼されるが、クロゼットに閉じ込められる。出てみるとそこには死体が。又も殺人事件に遭遇し追われる身に。ユーモア小説の部類だが、それでも義賊では無く自分の欲の為の泥棒なので感情移入がし難い。事件の度に新聞に出て素性を知られる事になるが今後も仕事がし難いのでは。(竹) |
フ |
ローレンス・ブロック |
八百万の死にざま |
2016
3/1 |
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ニューヨークの無免許探偵マット・スカダーシリーズ。警官在職時、少女を死なせた事から仕事も家庭も失ない、今もアル中のまま。コールガールからヒモと切れる事を依頼され、円満に解決したと思えた後、コールガールが惨殺される。主人公がクールでもマッチョでも無く、弱くて悩む所が人間的で物語に深みがある。結末も予想外だが納得出来る。(竹) |
フ |
ローレンス・ブロック |
泥棒は選べない |
2015
12/30 |
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ニューヨークで泥棒家業の男は窃盗を頼まれて入ったマンションで警官に踏み込まれる。賄賂を払い目こぼしして貰えそうだった矢先、警官が死体を発見。男はその場を何とか逃げ出し罠にはまった原因を探す。40年位前の作品のせいか世情も殺人さえもノンビリした印象。悪い奴は沢山出てくるので主人公さえ普通に見え、正しい奴が変に思える。(竹) |
フ |
ローレンス・ブロック |
おかしな事を聞くね |
2015
10/9 |
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ピカレスク短編集。躊躇なく悪事を働く者や、状況からやむなく犯す者など様々だが、逮捕される者は少ない。殆どは悪事をやりおおせる(と予想される結末)。生きる一つの方法として悪もあると想像は出来る。しかし悪に手を染めるにはどんな経験がそうさせるのだろう。ユーモアの欠片も無いシリアスな作品もあれば、悪人が騙される作品もあり様々。(竹) |
ヘ |
アーサー・ヘイリー |
殺人課刑事(下) |
2006
12/12 |
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主人公と警察内で不倫していた女は別れた後主人公より出世するが、別れたことを恨み主人公の昇進を止めさせる。主人公自身も忙しすぎて妻とも上手くいかない。主人公の進む道は?そして正義は勝つのか、因果応報となるのか、連続殺人を模倣した真の殺人犯人とは…。(竹) |
ヘ |
アーサー・ヘイリー |
殺人課刑事(上) |
2006
12/12 |
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アーサー・ヘイリーが今までも書いてきた「ホテル」や「自動車」などの組織小説の警察版。マイアミ警察殺人課の白人の部長刑事が主人公。元カトリック神父の主人公に連続殺人犯人が死刑の前に告白する。やったとされたうちの1件はやっていないと言って死刑になる。それは模倣殺人なのか。(竹) |
ヘ |
バリントン・J・ベイリー |
時間衝突 |
2005
7/12 |
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ブルース・スターリングが激賞している。荒唐無稽が嫌いではないが、自分には話の筋が飛びすぎて付いていけなかった。考えたアイディアを全て盛り込んだという感じで一つ一つが上手く調理できていない。読むこちらも消化不良。(梅) |
ヘ |
アルフレッド・ベスター |
ゴーレム100 |
2008 3/23 |
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古いSFファンなら誰でも知っているこの作者。この作者の初期の傑作「虎よ、虎よ!」は1950年代。この作品が出版されたのが1980年。その当時でも過去の人だったはず。SFのニューウェーブに乗った作品か?SFという以前に小説としての出来が良くないし、こういうSFも好きではない。だからハードカバー483ページはとても苦痛。(梅) |
ヘ |
M・スコット・ペック |
平気でうそをつく人たち |
2005
11/12 |
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アメリカの精神科医が業務上で出会った邪悪な人達。社会的には成功者もいて、普通は邪悪な人と分からない。最近の日本の例では1級建築士が建物の強度を嘘の計算報告を出していた。しかも恥ずかしくも無くTVに出ていた。この本では5,6例だけだが説明が「クドイ」ので無駄に長く感じる。(竹) |
ヘ |
ダニエル・ペナック |
散文売りの少女 |
2018
4/17 |
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出版社の支配人の男は苦情処理係のような仕事をしていた。代理で怒られる、又は激情を宥めるのは得意だった。愛する妹が結婚するという。妊娠も分かり、その子供の為に名前を明かさない作家の身代わりとして金を稼ごうとする。真実と思った裏に別の真実がある。後半は荒唐無稽になるが、段落が短いから読み易い。マロセーヌシリーズ3作目。(竹) |
ヘ |
デイヴィッド・ベニオフ |
25時 |
2016
12/13 |
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麻薬の売人で優雅な生活をしていた若者が逮捕され刑務所に7年収監される前日、恋人や友人との交わりを描く。道を踏み違えても力の誇示に憧れる若さの行く末か。読後に苦さが残る青春小説。それにしても、肉体的にも精神的にも廃人になるかもしれないというアメリカの刑務所とは何て驚異的なんだろう。それが犯罪の抑止力になっているのか。(竹) |
ヘ |
デイヴィッド・ベニオフ |
99999(ナインズ) |
2016
9/25 |
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現代社会の様々な場面を捉えた短編集。誰でも思いつくような素材であるし、それほど技巧的でもないが真摯で直接的な鋭さを感じる。映像としても目に浮かぶのはそのように書いているのだろう。表題作は愛車のメーターが一回り(実際は二回り)するのを仲間と祝うドラマーの話。どの作品も感動がささやかなだけに実感を持って心に迫る。(竹) |
ヘ |
ディヴィッド・ベニオフ |
卵をめぐる祖父の戦争 |
2015
4/23 |
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第2次大戦末期ナチスドイツに包囲されたレニングラードでロシアの少年が若い脱走兵とともに卵を探す物語。まず設定が斬新で面白い。悪に支配されたロシアに別の悪が戦争を仕掛け、生きる為に一般市民も悪に染まる。戦争の残酷さを具体的に表現。ショッキングな人食い場面もあるが、何にも増して通い合う友情が良い。最後の台詞まで素晴らしい。(松) |
ヘ |
アーネスト・ヘミングウェイ |
日はまた昇る |
2013
8/1 |
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第一次大戦後にパリで記者をしている主人公がパリでの生活や仲間とのスペインの旅を通して、変わる世相や人の生き方を自然に語る。これがハードボイルドと言われると、ハードボイルド=サスペンスが頭にあるので違和感がある。文体も男女の生き方も小説としても普通に思える。逆に言えば古さは感じない。同時代的に読んでこその小説か。(再読)(竹) |
ヘ |
アーネスト・ヘミングウェイ |
われらの時代・男だけの世界 |
2005
3/29 |
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アメリカの文豪ヘミングウェイの短編集。自分で所有しているのに借りてしまった。このドキュメンタリーのような乾いた文体は嫌いじゃない。この時代の後に登場する作家たちのウェットな本も嫌いじゃない。 |
ヘ |
レイ・ペリー |
ガイコツと探偵をする方法 |
2018
10/26 |
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骨だけの存在が何故動けて喋れるのかを言い出したらこの小説は成立しない。大学講師の女性が娘とガイコツと暮らしていて、ガイコツの身元を探るうちに殺人事件に遭遇する。ミステリーというよりもユーモア小説。シリーズ化されているらしい。設定だけが取り柄で筋書きは平凡でもう一味欲しい。この程度だったら2作目を読んでみたいとは思わない。(竹) |
ヘ |
キャロル・リーア・ベンジャミン |
バセンジーは哀しみの犬 |
2022
7/30 |
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女性と犬がコンビの探偵シリーズの1作目。ゲイの画家が轢き逃げで死亡。その友人から依頼が来る。ドックショーの裏側は興味深いが、ミステリーとしてはストーリーの組立が甘く面白さに欠ける。バディの犬が活躍する場面も欲しかった。表紙の犬はバセンジーという犬種で探偵の犬とは違う。題名は良いけど。1996年の作で表現が古い。(竹) |
ホ |
アンソニー・ホープ |
ゼンダ城の虜 |
2013
10/9 |
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英国貴族の次男がヨーロッパの小国へ旅し、その王と瓜二つである事で陰謀に巻き込まれて起こる冒険活劇。表題の意は義弟の城に幽閉された本物の王の事。悪役が強く主人公の活躍が少なく盛り上がりがイマイチだが、19世紀の小説にしては意外に読み易いのは筋が明快だから。併載の続編は語り手が代り違和感があり、筋がスムーズでは無いのが難。(竹) |
ホ |
ジョー・ホールドマン |
ヘミングウェイごっこ |
2009
9/27 |
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ヘミングウェイの贋作を目論む男が、時間が乱れるとタイムパトロール?に止められる。しかし贋作を進めた為に殺されるが、また別の時間線に前の記憶と共に復活する。多次元宇宙物のSF。タイムパトロールに殺される理由が納得出来ない。多次元宇宙ならなんでもありだと思うのだが…。SFにヘミングウェイを持って来る所に文学の香りがする。(竹) |
ホ |
ニック・ホーンビィ |
ガツン! |
2022
7/21 |
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ロンドンに住むスケボー好きの少年は恋人を妊娠させ16歳で父親になる。実は母親も16歳で少年を産んで一人で育てた。稚拙な親の愚かさを充分に表現。突っ込み所が多いが、相手は16歳。仕方無いか。やっぱり女の方が産むだけあって大人。そんな少年が未来に放り出されるシーンもあるユーモア青春小説。古い紙を使って装丁も凝っている。(竹) |
ホ |
ニック・ホーンビィ |
いい人になる方法 |
2022
5/14 |
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女医は二人の子供と定職を持たない夫と暮らす。他人に攻撃的で皮肉屋の夫に愛想を尽かし浮気をする。ところが夫が癒し屋と出会い、いい人になる。二人は町内の有志を募ってホームレスを住まわせる。影響される子と反発する子。女医は罪の意識で反対出来ない。自分と他人、それに家族を考えさせられる。この作家の中で一番面白い。(松) |
ホ |
ニック・ホーンビィ |
ぼくのプレミア・ライフ |
2017
8/2 |
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小説だと思って借りたらサッカー日記だった。著者はイギリス人なのでサッカーとは言わずフットボールと言う。物心つく頃からアーセナルのファンで、ホームでのゲームは欠かさず見ている。選手も地名も用語も分からないので、返却しようと思ったが何とか最後まで読み進めた。著者の人生の大半を占めるサッカー、ここまでのめり込めば本望だろう。(竹) |
ホ |
ニック・ホーンビィ |
ハイ・フィデリティ |
2016
8/17 |
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イギリスの儲からない中古レコード店を営む男は35歳で恋人と別れたばかり。別れたくない男は歴代の恋愛に失敗したケースを思い出す。身勝手な男は生まれ変わって幸せになれるのか。曲やバンド名が頻繁に出てくるが門外漢の自分には分からない。それでも恋愛小説として読める。フィデリティは(約束、義務の)厳守とか貞節という意味もある。(竹) |
ホ |
ニック・ホーンビィ |
ア・ロング・ウェイ・ダウン |
2016
5/13 |
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大晦日の夜、ビル屋上に自殺志願者が4人集まる。自殺の勢いを削がれた4人は、1人の要因となった男を探す。3部構成で自殺を先延ばしにしている後日談が1人ずつ短いセンテンスで語られる。年齢男女自殺要因と全て違い、集まっても喧嘩ばかりしているのに離れられない4人。ハラハラしながら読んだ。表題は「長い階段を下りて来る」という意。(竹) |
ホ |
ポール・ボウルズ |
シェルタリング・スカイ |
2006
6/15 |
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アメリカという文明国の夫婦が、大戦後のアフリカを訪れて心身ともにカルチャーショックを受ける話、といえばどこでも在りそうな話。今と違って、休暇旅行で行けるアフリカでは無いし、視点も文明国の人間が未開のものを見る位置。現地人の普通の暮らしにとけ込めない文明人。旅行先にアフリカを選んだ時点でこの夫婦の末路は決まってしまっていた。(竹) |
ホ |
C・J・ボックス |
ブルー・ヘブン |
2020
9/13 |
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ホ |
ロベルト・ボラーニョ |
通話 |
2010
1/3 |
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この本は2009年6月発行という新しい本で、すでに亡くなったチリの作家の短編集。舞台となるのはチリ以外の欧米やメキシコが多い。色んな理由で問題を抱えた人達を描いている。残酷さや悲惨さや汚さをストレートに表現しているが、感情を高ぶらせない文で淡々としている。読者の感情を揺さぶり難いが正確に伝わる。自分は好き。(竹) |
ホ |
アンソニー・ホロヴィッツ |
その裁きは死 |
2022
12/23 |
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ヤメ警官ホーソーンのシリーズ2作目。作者自身も登場する謎解きミステリー。離婚専門の弁護士が殺される。その24時間前に一人が不審な死を遂げる。二人はケイビング仲間で、昔もう一人が洞窟で亡くなっている。捜査に同行して作者は女性警部と女性作家に苛められる。謎解きよりも特徴ある人物が大勢出て、現実も混じって面白い。(竹) |
ホ |
アンソニー・ホロヴィッツ |
メインテーマは殺人 |
2022
10/8 |
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テレビや映画の脚本も書く作者へ元刑事から現実の事件の小説化の依頼がある。報酬は折半。婦人が自身の葬式の依頼をした後に殺されたという事件。探偵と作者が二人で事件に当るという凝った趣向。今年初めて作者の「カササギ殺人事件」を読んだ。本作も評価が高く感心はするが、人物の書き込みが少なく、好みからは外れる。(竹) |
ホ |
アンソニー・ホロヴィッツ |
カササギ殺人事件(下) |
2022
6/10 |
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勘違いしていた。上巻の序文が仰々しいと思ったら、これはミステリーの中にミステリーが入った作品。下巻は、上巻の作者が自殺か他殺かを巡るストーリー。出版社の女性編集者が探偵役として謎を探る。緻密に計算されたミステリーと納得した。まあ面白い。ただ、物語には重要ではないが、終盤のアナグラムが日本語になっているのは興醒め。(竹) |
ホ |
アンソニー・ホロヴィッツ |
カササギ殺人事件(上) |
2022
6/10 |
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余命幾許も無い探偵が最後の仕事と思う殺人事件。静かな村の古い屋敷で家政婦が事故のように死ぬ。その後に屋敷の当主が首を切られて死ぬ。他人の秘密を探っていた家政婦と無慈悲な当主には、死んで欲しいと思っている人間が大勢いた。物語の展開としては上巻で終わりそうな勢い。評判の推理小説なのでまだ二転三転はありそう。(竹) |
ホ |
コルソン・ホワイトヘッド |
地下鉄道 |
2019
2/16 |
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19世紀前半のアメリカの奴隷少女の逃亡の物語。奴隷州から北の自由州に黒人逃亡を助ける組織がありそれが地下鉄道と呼ばれていた。ここではそれが実在の鉄道として描かれている。アフリカから拉致され、アメリカで家畜並みに扱われた黒人の苦難は心が苦しい。アメリカは殺人、強奪、残虐で出来ていると文中にあるが、報いはあったのか。(松) |
ホ |
ラリー・ボンド |
核弾頭ヴォーテックス(下) |
2009
10/24 |
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南アフリカ軍は核爆弾を使いキューバ軍は毒ガスを使う。混沌の中アメリカ・イギリス軍が参戦。核施設制圧は人命を軽視する無謀な作戦だし、狂信的な南アの大統領一人を国を憂える側近が止められないのが変。筋にはひねりも伏線も無く真っ向から戦争につぐ戦争を描き、もう沢山と言いたくなるぐらい人が死ぬ。邦題はこの内容に合わない。(竹) |
ホ |
ラリー・ボンド |
核弾頭ヴォーテックス(上) |
2009
10/24 |
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南アフリカ共和国で狂信的な政権が誕生し隣国に侵攻するがキューバが参戦し阻止する。キューバは南アフリカの資源を狙い逆侵攻する。付属の地図を見ながら物語を追っていくが場面がどんどん進展するので退屈はしない。ただ原題はVORTEX(渦)というのにこの邦題はどうかと思う。この上巻では核弾頭は出てこないのでネタばれになる?(竹) |
ホ |
ペトゥル・ポペスク |
アウストラロピテクス(下) |
2011
1/27 |
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人類学者は謎の男に襲われ密林に逃げ、そこで猿人の子供に遭遇し助けら原始的な生活を共にする。ナイロビでは人類学者の上司が成果を横取りしようと陰謀を企てる。簡単に車が入れる所に世紀の発見の猿人が住むという設定が残念。後半の連続殺人も悪人を際立たせるにしても安易。まとめはご都合主義的でサスペンス的要素が不発。(竹) |
ホ |
ペトゥル・ポペスク |
アウストラロピテクス(上) |
2011
1/27 |
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ケニア奥地で、アメリカの人類学者が猿人の手掛りを見つけるが直後に何者かに襲われる。ナイロビに戻った人類学者は充分な調査をする為に友人の助けを借りもう一度密林に戻る。命を狙う者は誰か?猿人は本当に絶滅したはずのアウストラロピテクスなのか?謎は下巻へと持ち越しだが、読み手は期待感でワクワクする。本格冒険小説。(竹) |
マ |
マ |
ナイオ・マーシュ |
道化の死 |
2013
1/19 |
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舞台はイギリスだがニュージーランド出身の女性作家の推理小説でアレン警視シリーズ。1955年の作なので多少は設定に古さはあるが味になっている。城での歴史ある古舞踊の最中に男が首を切断されて死ぬ。誰もがアリバイがあり、殺される前の男も衆人環視の中にいた。日本では馴染みの無い作家だが、作品の質は高い。ラストの謎解きが楽しみ。(竹) |
マ |
ナイオ・マーシュ |
ランプリイ家の殺人 |
2012
3/13 |
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ニュージーランドから来た娘が貴族の家で殺人事件に遭遇。推理小説としては凝った筋立てをしてはいないが、子沢山の愛すべき没落貴族一家の物語として、推理小説というより家族小説として面白い。捜査をするアレン警部のシリーズもの。400ページ超はボリュームがあるが読み進むのに難は無い。初物の作家で古典的な匂いもするが好きな部類だ。(竹) |
マ |
ジョージ・R・R・マーティン
ガードナー・ドゾワ&
ダニエル・エイブラハム |
ハンターズ・ラン |
2013
3/12 |
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異星で鉱脈探しをする男が人を殺し未開の山に逃げる。偶然、未知の異星人の秘密基地を発見するが捕まり、秘密を知った他の人間を追うよう強制される。異星人にひも付きで猟犬代わりにされるという設定が面白い。30年かけて3人が関わって出来た長編だけあって筋書きが作り込まれていて面白い。結末では解決出来ない問題も残るが次回があるか?(松) |
マ |
ベン・マイケルセン |
ピーティ |
2013
4/10 |
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身体的に重度の障害を持って生まれた子の物語。1922年という昔で脳性まひが精神的な知的障害だと思われていた時代に、親からも見放され適切な治療も受けられなかった。それでも内面は感受性豊かで幸せを感じて生きて来た。ふりがなのある児童文学作品だが大人でも読み応えがある。現代の自分でもこの問題に理解が足りない事を痛感した。(竹) |
マ |
ベン・マイケルセン |
スピリットベアにふれた島 |
2011
10/5 |
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少年が荒れて周りを傷つけ、終には他人に大怪我を負わせる。少年は刑務所の替わりに無人島での生活をすることになる。全ては他人のせいと思っている少年は島でも愚かな事をし、熊に瀕死の目に遭わされる。死を間近にした少年は変わり始める。この夏の高学年向けの課題図書だったが、大人が読んでも確りとした感動がある。(松) |
マ |
ロバート・R・マキャモン |
狼の時(下) |
2011
4/13 |
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狼男のスパイはナチに捕われては脱出を何度も繰返し見せ場を作るが、場面は代わり映えがせずただページ数だけ稼いでいるようで飽きてくる。ナチスドイツの最終兵器とかも出てくるが使い尽くされた題材だ。目新しさが無い上に狼男という素材を上手く使っていない。上下巻の小説でピリッと締まった面白いものにはなかなか当らない。嘆。(梅) |
マ |
ロバート・R・マキャモン |
狼の時(上) |
2011
4/13 |
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人間が狼に変身するという人狼伝説を題材にして、第2次大戦末期の連合国側工作員の活躍を描く。最初は面白そうだったが、主筋と平行して人狼になった幼少時も描いているが、これが陰気臭い。主題をホラーなので仕方ないが、サスペンスの部分もゆるい。スーパーヒーロー読物に徹した平井和正の人狼の方が好き。(竹) |
マ |
ロバート・R・マキャモン |
少年時代(下) |
2010
10/9 |
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プロローグの殺人が全編にミステリー味を出していて、その糸口から少しずつ解けて来る。その他にも問題が解決される下巻では上巻より更に面白い。町のギャングとの決闘や、見世物の怪獣や、親友の死などハイライトシーンが豊富。父親の失職など大人の世界でも世の中が変わろうとしていた60年代を少年の視点で捉えていて瑞々しさがある。(松) |
マ |
ロバート・R・マキャモン |
少年時代(上) |
2010
10/9 |
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1964年アメリカ南部の偏見の強い土地で生きていく感受性豊かな12歳の少年の冒険物語。近代のトムソーヤは化物や魔法や伝説を信じられるという夢と、殺人者や人種差別や暴力という現実の間で翻弄されながら成長する。当時の混乱した風潮が分かる。少年物語ではキングが有名だが、これは匹敵するくらい面白く、読む手が止まらない。(松) |
マ |
ロバート・R・マキャモン |
ナイト・ボート |
2010
8/4 |
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妻子を失った男が流れ着いたのがカリブ海の島。ここで第2次大戦当時に沈没したUボートを発見する。このUボートは島を攻撃した際に住民からブードゥーの呪いをかけられて沈められたものだった。そのUボートの中では呪いをかけられた乗組員がゾンビと化していた。筋も背景も人間も良いが結末はモーヴィーディックの焼き増しのようでちょっと平凡。(竹) |
マ |
ロバート・R・マキャモン |
ミステリー・ウォーク(下) |
2009/
3/4 |
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ホラー小説だが主人公の成長を描く青春小説でもある。故郷の町で傷ついた主人公は世の中に飛び出す。邪悪なものは行く先々で主人公を滅ぼそうと企む。主人公の出生の秘密も明かされ、より巨大な悪とも対決する事になる。筋にひねりは無いがその分解りやすく、読み進むのが楽しくて短時間で読み終えてしまった。(松) |
マ |
ロバート・R・マキャモン |
ミステリー・ウォーク(上) |
2009/
3/4 |
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大戦後でまだ差別と偏見が実在していたアメリカ南部に、インディアンの母と白人の父を持つ男の子がいた。母にはさまよっている霊を鎮める力があり、子にも遺伝していた。神秘的な善と悪の対決を描くホラー小説。知らなければスティーブン・キングの傑作と言われても納得するような出来。良い時のキングに勝るとも劣らない程面白い。(松) |
マ |
ロバート・R・マキャモン |
ブルー・ワールド |
2009/
2/19 |
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一応、ホラーの中・短編集というが、SFやファンタジー、何よりエンターテインメントの珠玉の作品集。表題作の中編はポルノ女優と神父の話だが物語として完璧。他の作品も期待に違わないものでハズレはない。ホラー好きでない人にもお勧め。自分は今まで知らなかった著者だが、久々読み応えのあるものに出会った。(松) |
マ |
イアン・マクドナルド |
火星夜想曲 |
2018
7/15 |
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火星で緑の人を追っていた時間学者は移動手段の風力船を失って荒野に取り残される。その後に鉄道が通り、逃亡者、放逐された者、間違って降り立った家族などで町が出来ていく。時間を重ねた町の興亡の物語。一つの大きな物語というより幾つものエピソードを重ねたもので、登場人物が多くて覚え切れない。500ページ超で読むのも手強い。(竹) |
マ |
イアン・マクドナルド |
サイバラバード・デイズ |
2017
11/24 |
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近未来のインドを舞台にした7つの短編集。AIやロボット、遺伝子操作がカースト制度やガンジス川等の風土とミックスされてインドという混沌とした雰囲気を出している。新書版で454ページで結構なボリュームがある。面白いのだが読むのに2週間近く掛かったのは耳慣れない人名や用語のせいと思う。それとも自分の理解力が減退したせいか。(竹) |
マ |
エド・マクベイン |
最後の希望 |
2009/
3/27 |
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ホープ弁護士シリーズの最終作。作者のエド・マクベインは亡くなったので、これは自分が読む最後の作品。このシリーズはフロリダが舞台だが、87分署のキャレラ刑事も登場する。内容は取らぬ狸の皮算用で、物を盗んでいないうちから盗人同士の化かしあい殺し合いが始まる。筋が時系列的に前後するので分かりにくい。(竹) |
マ |
エド・マクベイン |
最後の旋律 |
2008/
11/26 |
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ニューヨークをモデルの架空の都市アイソラを舞台にした87分署シリーズは56作目の最終回。今回も連続殺人事件が主筋。その中で刑事達の生活が副筋になるのはいつも通り。差別主義者のオリーが恋愛で少し変わるのが面白い。長いシリーズはキャレラで始まりオリーで終るか。この作者の未読はホープ弁護士シリーズの残り1冊だけ。寂しい。(松) |
マ |
エド・マクベイン |
寄り目のテディベア(ホープ弁護士シリーズ) |
2008 7/27 |
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ホープ弁護士シリーズ。斜視の女性がアイデア盗用で玩具会社を訴える。玩具会社社長が殺され女性が逮捕される。銃撃から復活したホープの弁護活動を主軸に、探偵の部下の麻薬感染を副軸に、マイアミが描かれる。敵対者も依頼人さえ嘘を繰り返し探偵は行方不明のなかホープが苦闘する。人間が人間らしいので物語に幅があり面白い。(松) |
マ |
エド・マクベイン |
耳を傾けよ!(87分署シリーズ) |
2008 5/27 |
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87分署の敵、ヒールのデフマンが久々に登場。刑事生活小説というシリーズが、デフマンが出てくるとピカレスク小説になる。盗みも殺人もする悪い奴だが知能犯として一種のヒーローとして描かれている。デフマンの意図が分からず悩む87分署。筋が細切れの進行なので読みやすいといえば読みやすいが、長くは読み難い。(竹) |
マ |
エド・マクベイン |
小さな娘がいた(ホープ弁護士シリーズ) |
2008 3/4 |
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始めにホープ弁護士が銃撃され昏睡する。この事件で恋人や娘との絆と元妻の疎遠が際立つ。犯人を捜してホープの友人の刑事や探偵がポープの足取りを調査する。ホープの無意識下の語りと、現実の捜査が入り混じった形で物語が進むが、捜査とホープの意識の切り替わりが頻繁にあり、その区切りが無いので注意しないと読むとき混乱。(竹) |
マ |
エド・マクベイン |
歌姫(87分署シリーズ) |
2008 1/22 |
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これから売り込む新人歌手がイヴェント会場から誘拐された。キャレラと87分署が捜査を始める。そのうちFBIが捜査を開始。誘拐が歌手売込の手段の臭いをさせて物語は進行。多面的に筋が進行するのはこの作品の特徴だが、始めの細分化した筋は解り難い。最初に登場しても筋になかなか入らないオリーがまた良い所をかっさらうのか?(竹) |
マ |
エド・マクベイン |
メアリー、メアリー |
2007 12/5 |
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ホープ弁護士シリーズ10作目。自宅の庭で少女の遺体が発見され逮捕された元女性教師。何人もの人間が、少女と元女性教師を目撃していた。元女性教師を信じるホープ弁護士は法廷でどう戦うのか。残念ながらこの作者にしては結末が甘い。結末が二択で想像出来たし、強引にはめ込んだような不自然感が残った。(竹) |
マ |
エド・マクベイン |
ノクターン |
2007 11/18 |
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87分署シリーズ。真夜中に起きた老婆と娼婦の殺人事件が平行に流れて行く。そこにアメリカの大都会の縮図がある。刑事の生活、犯罪者の生活、下町に生きる庶民の生活、結末はやるせない。罪を犯したものは因果応報となるのか。事件が解決し刑事の帰る家には愛する子供と妻が待つ。元ピアニストの老婆と夜の捜査だから題名がノクターン(夜想曲)。(松) |
マ |
エド・マクベイン |
逃げる |
2007 10/20 |
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エド・マクベインは87分署シリーズが有名で、短編集は珍しい。本名のエヴァン・ハンターで書いた短編も多い。この作品集の原書に入っていた作品のうち全部を載せていない。早川書房の他の本に入っているからとの理由。駄作もあるかもしれないが、殆どはこれこそ人間を描いているという作品。ジャンルによらず日本人作家には参考にして欲しい。(竹) |
マ |
エド・マクベイン |
三匹のねずみ |
2007 9/28 |
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87分署で有名なエド゙・マクベインのホープ弁護士シリーズの9作目。今回も人間的な人物描写で物語が豊か。3人のヴェトナム人が猟奇的に殺される。容疑者として捕らえられたのは、その3人にレイプされた女の夫。ホープは弁護を引き受ける。離婚した妻とよりを戻せないホープの前に現れるのは、ヴェトナム人の女性通訳と、女性検事補。(竹) |
マ |
エド・マクベイン |
ロマンス |
2007 9/8 |
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久しぶりの87分署シリーズ。架空の都市(ニューヨークがモデル)の警察小説。サスペンスが売りでは無く、事件と主役達の生活がパラレルに語られる物語。登場人物が生身の人間として描かれる所が良い。今回はバート・クリングの新しい恋愛と舞台女優の殺人事件が綾織のように紡がれる。いつも及第点で安心して読めるシリーズ。(竹) |
マ |
エド・マクベイン |
でぶのオリーの原稿 |
2005
1/24 |
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87分署シリーズのうちの1冊。好きなシリーズだがなかなか読むのに手こずった。何故だろう?今回の主役のオリーは、身近にいれば嫌な奴だが自分は結構好きだ。やはりサブストーリーが多過ぎて(多いのは嫌いじゃないが…)飽きたか、メインストーリーが弱かったかだろうね。話が散漫になってしまったようだ。 |
マ |
シャーロット・マクラウド |
にぎやかな眠り |
2020
11/4 |
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マ |
ジェイムズ・マクルーア |
英国人の血 |
2006
5/13 |
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南アフリカ共和国の架空のトレッカースブルグ警察を舞台にしたシリーズ。書かれたのは四半世紀前で人種差別政策の真っ只中。南アの風俗や人種差別の一端も伺える。その中でも人種を越えた人間同士の信頼感がクレイマー警部補とゾンディ部長刑事にある。軽そうでいて骨太な小説。ただこの本の結末はミステリーとしては及第点以下。図書館には他に5冊ありお勧めしたい。(竹) |
マ |
アン・マクリーン・
マシューズ |
ザ・ケイブ |
2010
2/20 |
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女性心理学者が湖畔の別荘地で殺人鬼に監禁される。すでに何人も殺された形跡が有る。心理学者は犯罪者の心理を読んで対抗しようとするが、殺人鬼の心理は悪賢くて残酷だった。最後には暗闇の鍾乳洞での追跡劇になるのが表題作のケイブ(洞窟)と繋がる。心理描写が多くサスペンス度が低く最後の開放感のスッキリ度も低い。(竹) |
マ |
エリック・マコーマック |
ミステリウム |
2011
10/13 |
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島国の小さな村に部外者の男がくる。時期を同じくし村に忌まわしい事件が起こり終には悲惨な結末となる。新聞記者や村人や行政官が短い物語を語るが、主筋よりその短い断片が魅力的。全編に流れるのは「謎」。段々と謎が解明されて行き読者の期待感が高まる。ミステリーの結末の処理は難しいが、作者らしく破綻無く出来は良い。(竹) |
マ |
エリック・マコーマック |
パラダイス・モーテル |
2011
3/20 |
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男が幼い頃に30年の失踪から戻ってきた祖父は、ある町で起こった奇怪な殺人事件の話をする。男は成長してからその事件で生き残った兄弟姉妹たちの消息をたどる。兄弟姉妹たちはそれぞれに数奇な人生を送っていた。練りに練った短編をつないだような小説。飽きさせない面白さでぐいぐい引っ張る。それでいてこの結末、は嫌いではない。(松) |
マ |
コーマック・マッカーシー |
越境 |
2011
5/22 |
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国境三部作の二番目をその最後に読む。秀逸な短編を繋ぎ合わせた長い物語。これは1940年代にメキシコ国境近くに住む16歳の主人公が狼を捕まえ、若者らしい無鉄砲さでメキシコ山地に戻そうとする所から始まるが、因果は巡る糸車。どのジャンルを通しても、これだけ読み易いのに重量感のある小説にはお目にかかれない。(松) |
マ |
コーマック・マッカーシー |
平原の町 |
2010
6/20 |
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国境三部作の最終作だが二作目を飛ばして読んでしまった。メキシコ国境の牧場のカウボーイがメキシコの町の娼婦を好きになり結婚しようとする話。1950年代の牧場が衰退する情況の中、カウボーイの仕事をする男達。心に沁みるエピソードを盛り込んだリリカルな小説。誰が話しているのか分からない文体は、さらに情緒溢れるものにしている。(松) |
マ |
コーマック・マッカーシ |
すべての美しい馬 |
2009
10/3 |
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1950年テキサスで祖父の死後自分の居場所を無くした少年が親友と馬でメキシコへ越境する。メキシコの牧場で仕事を得て恋もするが知り合った少年の所為で刑務所に入る。馬での旅や牧場での野生馬の調教など引き込まれて読んだ。唯一少年がとても落ち着いていて16歳に思えない所が引っかかるが、面白いのは間違い無い。(松) |
マ |
コーマック・マッカーシー |
血と暴力の国 |
2009/
7/4 |
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題名通りのタダのバイオレンス犯罪小説ではなく、原題直訳の「老人の住む国にあらず」が適当。麻薬組織の抗争から大金を拾った男が組織に追われる逃走劇。場面毎の保安官の独白は、西部開拓以来幾多の戦争で犠牲を払ったのに、社会は悪い方に向っているという。確かにアメリカだけではなく世界中で感じられる事。読後感は重い。(竹) |
マ |
コーマック・マッカーシー |
ザ・ロード |
2009
5/1 |
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文明が壊れ動物も植物も死んだ世界で冬の寒さから逃れ南に歩く父子。生きるためにはタブーも人の尊厳も無くなってしまう、狂気と暴力が支配する胸が悪くなるような世界を描く衝撃の作品。生きる努力を続ける父子に救いが来て欲しい。淡々とした筆致に重い主題が込めれている。よくありそうな宗教臭さは無いのが良い。ピュリッツァー賞。(松) |
マ |
W・P・マッギヴァーン |
ゆがんだ罠 |
2014
2/11 |
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雑誌編集者の男が自宅に帰ると自分が血まみれである事に気づく。泥酔していた為何があったのか覚えていない。主人公も周りも、えぐ味を含め人間らしさが出ていて物語に厚みがあり読み応えがある。軽快感と筋の盛り上がりには欠けるが、1952年のサスペンスにしては古さは感じない。ただ32年前の本なので字が小さく擦れたような字体も読み難い。(竹) |
マ |
ウィリアム・P・マッギヴァーン |
最後の審判 |
2013
1/8 |
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第2次大戦後のシカゴ。私設馬券屋の男は人妻といい仲になっていた。その夫が復員して邪魔になり排除しようと完全犯罪を思いつく。1949年のハードボイルド。男は悪に徹しきれず全然クールではない。どんどん深みにはまって行くのが読んでいて怖いくらい。どういう結末になるのか予想がつかない。その結末のつけ方は洒落?ていて自分は好きだ。(竹) |
マ |
W・P・マッギヴァーン |
高速道路の殺人者 |
2012
4/22 |
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サスペンス風のハードボイルド短編集。1961年作で東西ドイツが存在した頃の話は今は理解し難いが、1963年の訳が古さを増している。その為サスペンスがピリッとしていないでぼやけた感じ。それでも脚色を加えてTVドラマの脚本にしたらまだ使えそう。いや、すでにそうなっていて知らないうちに観ていたのかもしれない。なんだか既視感がある。(竹) |
マ |
W・P・マッギヴァーン |
悪徳警官 |
2012
3/13 |
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著作も舞台もだいぶ前のアメリカ。題名通りのいかにもありそうな暗黒街から報酬を貰う刑事の物語。ギャングから偽証を強要され断った弟が殺され、やはり真っ正直だった死んだ父親を思い出し、ギャングどもに立ち向かう。悪に徹しきれずに、かといっていまさら善にも戻れない男。1954年作という古さを感じさせるちょっと湿ったハードボイルド。(竹) |
マ |
クリントン・マッキンジー |
コロラドの血戦 |
2022
10/8 |
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ワイオミング州の警官が休暇で父親とコロラド州の岩壁でクライミング。トラブルに巻き込まれ、後から来た兄に助けられる。家庭内の確執がある。ハードボイルドな冒険小説。地元の大物対自然保護活動家の図式はステレオタイプ。人物描写が単純で、ストーリーも作者の意図が感じ過ぎる。意外性が無く、2003年作にしては古い感じ。(竹) |
マ |
G・ガルシア=マルケス |
百年の孤独 |
2020
12/5 |
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マ |
G・ガルシア=マルケス |
予告された殺人の記録 |
2017
2/2 |
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スペイン系やアラブ系が住む港町で大きな婚礼の翌日に殺された男。しかも殺す方はあちこちで言い触らしていたにも係わらず起きてしまった事件。友人が27年後に当時を振り返り人々に聞いて周り真実を探る。結末が分かった筋書きを最後まで読者を引き付ける手法は良い。最後にまた事件をリアルに再現するがそれも臨場感があって良い。(竹) |
マ |
スティーヴ・マルティニ |
情況証拠(下) |
2006
12/20 |
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弁護士の家庭は崩壊しているが、もう一度やり直したいと思っている。この裁判に勝たなければ仕事も家庭もすべて駄目になる気がしている弁護士。裁判の過程で味方だと思ったものが敵になり、弁護士自身も危うくなる。色々なファクターがサスペンスを高めていて面白い。唯一、最後の最後の結末が説明的になっているのが残念。(竹) |
マ |
スティーヴ・マルティニ |
情況証拠(上) |
2006
12/20 |
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上司の妻と不倫がばれて法律事務所を辞めた弁護士が主人公。その元上司が殺害され不倫相手だった元妻が起訴される。元妻には新しい愛人もいるが、弁護士は好意で弁護を引き受ける。元妻には不利な情況証拠が沢山ある。法廷物サスペンスもお馴染みのものだが、登場人物がステレオタイプではなくそれぞれに個性があり実話のようで面白い。(松) |
マ |
ヘニング・マンケル |
白い雌ライオン |
2019
4/2 |
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ヴァランダー警部シリーズ三作目。女性の失踪からスウェーデン内で元KGBの暗躍が疑われる。南アフリカ共和国中枢にいる差別主義者に雇われたロシア人がスウェーデン内で暗殺者の訓練をしていた。文庫だが小さい文字で700ページを越えるボリュームは手に余る。スウェーデンと南アフリカの二つの物語を読んだ感じ。物語が膨らみ過ぎの感あり。(竹) |
マ |
ヘニング・マンケル |
リガの犬たち |
2017
5/16 |
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スウェーデンの田舎町の警官のヴァランダーシリーズ2作目。ゴムボートで流れ着いた射殺死体の捜査に旧ソ連圏のラトヴィアから警官が来る。捜査が終了しラトヴィアに帰った警官が殺され、ヴァランダーがラトヴィアへ呼ばれる。国際的な様相で終盤はスパイ小説もどきの様相。相変わらず自己憐憫と惚れ易い性格は変わらず。弱さが人間的か。(竹) |
マ |
ヘニング・マンケル |
殺人者の顔 |
2017
4/22 |
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スウェーデン発の警官小説。と言えばマルティン・ベックが思い浮かぶが、こちらは自己憐憫が激しい男。署長代理を務める程の能力はあるが、妻と娘には背かれ、母親は亡くなり父親との折り合いが悪く、家庭的には不幸を抱える。その中で殺人事件を捜査する。現在も問題となる難民の流入と自国民の反発との狭間で悩む、弱い警官を描く。(竹) |
ミ |
チャイナ・ミエヴィル |
都市と都市 |
2017
9/24 |
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場所はヨーロッパで時代は現在の設定。国境が不条理に絡み合う架空の都市国家が舞台のSF。一方で殺人事件が起り、捜査をする刑事が主人公。現代社会にファンタジー的だが厳格な設定が組み込まれているが、説明が無く、少しずつ明らかになって行く。それでも最後まで「ブリーチ」がどの程度のものか分からなかった。設定が命の小説。(竹) |
ミ |
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|
ミ |
ジャクリーン・ミチャード |
青く深く沈んで |
2006
10/21 |
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3歳の子供を誘拐された家族の物語。まるでノンフィクションのよう。登場人物達の心理の葛藤が前面に出ているが、ミステリー性は高く無い。正直言って、女性作家は情緒に流れ過ぎて面白くないと言う偏見を持つ自分としては、文庫本にしても700ページを越える物語は飽きる寸前。(竹) |
ミ |
マーガレット・ミラー |
まるで天使のような |
2018
7/29 |
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山中で偶然に入った宗教施設で食事を貰った私立探偵は人探しを依頼される。その人は近くの町で行方不明になっていた。調べると同じ時期に起きた横領事件も絡んでいるようだ。重要で無い部分はあやふやでも良いが、主筋が見えないので全体にまとまりが無い。後半の展開が納得出来ない。それに結末も予想出来た。ついでに表題も意味不明。(竹) |
ミ |
マーガレット・ミラー |
殺す風 |
2016
5/13 |
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妻と息子達を置き、男だけで過ごす週末の別荘へ向った男は消息を絶つ。友人や妻が行方を捜す。良く言えば繊細な人物と筋書きなんだろうが、筋に関係の無い寄り道が多い。それが物語に深みを与えるなら良いが、ただ単に退屈になるだけ。宣伝文句に鬼才の最高傑作とあったが、自分には練りこみの足りない薄味で骨細のミステリーに思える。(竹) |
メ |
A・E・W・メイスン |
薔薇荘にて |
2016
9/15 |
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避暑地で富裕な女性が殺され、たまたま来ていたパリ警視庁の探偵?が捜査する。必然性から考えると疑問点が多数ある。探偵の登場とか、犯罪の構成とか。納得せずに読み進むから面白くない。おまけに、前半で探偵の推理があるのに、後半で同じ筋を犯人の側から描いているのは蛇足。作者は新機軸を狙ったのかもしれないが失敗作だ。(竹) |
メ |
ピーター・メイル |
セザンヌを探せ |
2006
9/23 |
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室内装飾のカメラマンが巻き込まれる、絵画の贋作騒動。作者は「南仏プロヴァンスの12か月」を書いただけあって、小説はサスペンス仕立てになっているが、主眼はフランスの観光や料理やワインの話。サスペンスも添え物なので、フランス料理を食べたことも無い自分には共感できるものが無かった。(竹) |
メ |
ピーター・メイル |
南仏プロヴァンスの12か月 |
2006
5/13 |
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イギリス人夫婦が南フランスのプロヴァンスに家を買って田舎生活を楽しむノンフィクション。プロヴァンスといっても避暑地を外れた場所を選んだイギリス人。本当の田舎生活を郷に入りて郷に従い楽しむ。イギリスからの歓迎すべからざる客にも楽しむ余裕を持つ。日本人なら、「いい身分ですね」と誰もが思ってしまうことでしょう。(竹) |
メ |
チャールズ・エリック・メイン |
アイソトープ・マン |
2012
1/3 |
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SFのような表題だが、原子力工学を題材にしたミステリー。しかも1957年作なので現在からすれば放射能に関する認識も緩い。雑誌記者が原子力研究所の学者に似た身元不明の怪我人を知り、調べていくにつれ暗躍する組織が浮かび上がる。ページの割りに物語の進展が遅く、内実が分からず苛々するうちに終盤を迎える。(竹) |
メ |
プロスペル・メリメ |
エトルリヤの壺 |
2014
6/7 |
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19世紀のフランスの作家の短編集。仕事としてヨーロッパや中近東を周った経験から出来たと思われる小説は多彩。現代からすると分かり難い部分もあるが、総じて人間の営みは200年前とも変らないとも思える。現地の奴隷商人が囚われた奴隷船で反乱を起こす「タマンゴ」は、無知から来る愚かさはあっても夫婦の強い情を示す人間性は良い。(竹) |
モ |
キョウコ・モリ |
悲しい嘘 |
2007
1/28 |
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「シズコズ ドーター」の作者のエッセイ。20歳で渡米し、そのまま英語の生活を送り、英語でものを考え、英語で小説を書いた作者の思いが込められている。日本で生まれ、日本で半分アメリカで半分育った作者から見た日本の不可思議な所が、アメリカと対比して、作者自身の経験を通して語られる。(竹) |
モ |
キョウコ・モリ |
めぐみ |
2006
12/20 |
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母と別れた15歳の少女の青春小説。未熟な少女の頑なな考え方が、獣医の女性と会って成長し変わって行く。色々な愛を知って行く。自分に都合の良い甘い愛は知っていた。相手を気遣う苦い愛も経験する。でも、愛する事を表現するのが下手な人の愛は分かりにくい。それに神の愛も分かりにくい(私も分かりません)。まだ15歳、発達途上の女性だ。(松) |
モ |
キョウコ・モリ |
シズコズ ドーター |
2006
9/23 |
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自殺した母の思い出を抱いて、冷たい父親や愚かな継母との生活を切り抜ける少女の人生のある期間(青春)を描いている。固い蕾のような主人公の考えや行動は遠い自分を思い出す。作者は日本人でありながら英語で思考して英語で小説を書いていると言う。そんな事も気にならない程の出来。(松) |
モ |
メアリ・モリス |
中米ひとり旅 |
2005
12/9 |
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題名からすると街から街、国から国を次々と旅した紀行文と思ったが違う。メキシコのサンミゲルに部屋を借り隣の子沢山貧乏の女と友達になり、メキシコシティにいるその知り合いの男と恋人同士になり、その合間にグアテマラなどの他の国を見て周るという内容。情緒不安定な三十路女が主人公の私小説という内容。(竹) |
モ |
トニ・モリスン |
ラヴ |
2017
9/24 |
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幼なじみの少女同志だったのに、片方が自分の祖父と結婚して、気持も住む場所も離れた。月日が経ち、祖父が死に祖父のホテルも没落して反目しあいながら暮らしていた。そこにやとわれに少女がやって来る。第2次大戦の戦中から戦後にかけての黒人の公民権運動も背景にある、黒人の女性達の様々な愛の物語。ちょっと重い。(竹) |
モ |
トニ・モリスン |
パラダイス |
2017
6/7 |
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解放された黒人達が、黒人による差別に遭いながらも移動の末に自分達の町を作る。苦労ゆえに排他的で、意見の違う子供の世代も、救済的な女性達の集団にも反感の目を向ける。最初が殺戮の場面で始まるのが衝撃的。女達が主人公の短編で構成されている。登場人物が多く世代も違うので概要を把握するのが難しい。人物解説が欲しい。(竹) |
モ |
トニ・モリスン |
ソロモンの歌 |
2016
7/2 |
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アメリカ中西部に生まれ親のお陰で不自由の無い暮らしをする黒人青年の幼少から現在を描く。黒人奴隷の子孫として日々の満たされぬ想いをルーツをたどる事で何かを得ようとする青年。日本人としては理解し難い所もありスムーズには読み進めない。特に終盤から結末については物語の完成度より作者の思いを込めたかったのか頷けない。(竹) |
モ |
トニ・モリスン |
スーラ |
2015
11/28 |
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アメリカ中東部の二人の黒人少女の交友と町の物語。1919年からで今とは随分世情が違う。人種差別を殊更取り上げているのではなく、その頃の民度が低い状態に追い込まれている黒人社会を描いている。性格の違う二人が親友と言えたのは一方が結婚するまで、或いは子供の時の間だけというのは今でも変わらないか。人物描写がずば抜けている。(竹) |
モ |
トニ・モリスン |
タール・ベイビー |
2014
12/6 |
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白人富豪夫妻と、黒人の執事夫婦とその姪が住むカリブ海の別荘。一つの家族のようだったが、黒人の若者が流れ着いてから変化が起きる。人種の違いと育ちの違い、そして人種と育ちが違う場合は…。登場人物それぞれの生い立ちに物語をつけ悲しい事が起きても読者に酌量する余地を残している。会話の部分は舞台演劇のような趣がある。(竹) |
モ |
トニ・モリスン |
ジャズ |
2010
9/18 |
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年を重ね妻もいる男が若い娘を好きになり、他の男に取られるのが嫌で娘を殺してしまう。作者の唯一の課題となる黒人が主役の小説。出来事の必然性を証明するように淡々と一人一人の歴史を切なく語っている。人称が変わったり、誰が話しているのか分からなかったりして、厚くないページの割には実験的な文体で読みにくい。(竹) |
モ |
トニ・モリスン |
青い眼がほしい |
2010
8/4 |
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青い眼があれば幸せになれる黒人少女の願いと、その先にあった出来事を描いている。今より少し前の時代、黒人の貧困や無知が常態化して弱い者がもっと弱い者を圧迫していた。アメリカの人種差別がテーマなので読む前は気が重かったが意外に読みやすかった。こういう小説が読んだ人の目を開かせて、少しずつ良くなってきているのだと思う。(松) |
モ |
ニコラス・モンサラット |
非情の海(下) |
2020
7/12 |
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モ |
ニコラス・モンサラット |
非情の海(上) |
2020
7/12 |
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ヤ |
ヤ |
ジェイムズ・ヤッフェ |
ママは何でも知っている |
2021
8/5 |
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ニューヨーク若手刑事の母が安楽椅子探偵でブロンクスのママ。聞いた話と適切な質問で殺人犯を当てる。8編を収める連作短編集。表題作は1952年上梓で不適切と言われる表現もあるが、大体は古さを感じさせず、謎解きも納得する。殺人事件は出てくるがユーモアサスペンスという感じで気軽に読める。新書版でも今は珍しい200ページの薄さ。(竹) |
ヤ |
ロバート・F・ヤング |
ピーナツバター作戦 |
2019
6/21 |
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アメリカ人作家の5編のSF短編集。強いて言えば表題作が好み。素直な筋でロマンチックな作風が良い。1950年代の作品だが古さは味にもなる。逆に複雑にし過ぎて宗教臭い「われらが栄光の星」は好みではない。ストーリーも重要だが、ある程度はSF的アイディアも期待するが見受けられない。ページ数は200と短いが読むのに時間が掛かった。(竹) |
ヤ |
ロバート・F・ヤング |
ジョナサンと宇宙クジラ |
2018
9/26 |
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10作を収めたSF短編集。1962年作らしくマイルドでファンタジー的なもの。異世界を西部劇や古典になぞらえた作品が多い。表題作の「ジョナサンと宇宙クジラ」もクジラに呑み込まれた人々を描いている。争いや悪意が少なく、登場人物(人以外も)は善意に満ちている。その分物足りなくもあるが、露悪的な読み物が多い中、ほっこりとした気分になれる。(竹) |
ヤ |
ロバート・F・ヤング |
たんぽぽ娘 |
2018
8/9 |
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SF短編集で編纂されたのは5年前だが、内容は30年も40年も前の短編。だからと言って古臭くは無く、自分がSFに馴染み始めた頃の雰囲気がある。素朴な時間旅行や夢のある宇宙船、何より登場人物が優しい。こういうSFを読みたいと思っていたので本望。収録作では、同じ時間旅行ものでも「たんぽぽ娘」よりは「荒寥の地より」の結末の方が好み。(竹) |
ラ |
ラ |
ダヴィド・
ラーゲルクランツ |
ミレニアム5 復讐の炎を吐く女 (下) |
2021
7/10 |
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親から離された双子を違う環境に置いて研究する組織から翻弄された人達と、イスラム過激信仰を持つ家族を絡めたストーリー。このシリーズのスターであるリスベットやミカエルは活躍せず。ストックホルム警察の面々も端役。小説というよりルポルタージュのようで説明的な文章。それが起きた事を解説しているだけ。だから面白く無い。次は読まない。(竹) |
ラ |
ダヴィド・
ラーゲルクランツ |
ミレニアム5 復讐の炎を吐く女 (上) |
2021
7/10 |
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リスベットは子供を助ける為に違法行為をしたが、何故か裁判で戦わず刑務所に入る。その理由が不明。山場を作る為と勘ぐってしまう。登場人物が今回も増えてそれぞれのエピソードが交代で進行する。物語としては統一感が無い上に薄味になっている。女性を巡る大河小説の感がありストーリーと言うより記録だ。ワクワクする面白味が無くなった。(竹)。 |
ラ |
ダヴィド・
ラーゲルクランツ |
ミレニアム4 蜘蛛の巣を払う女(下) |
2020
4/10 |
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ラ |
ダヴィド・
ラーゲルクランツ |
ミレニアム4 蜘蛛の巣を払う女(上) |
2020
4/10 |
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ラ |
スティーグ・ラーソン |
ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士(下) |
2020
1/21 |
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ラ |
スティーグ・ラーソン |
ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士(上) |
2020
1/21 |
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ラ |
スティーグ・ラーソン |
ミレニアム2 火と戯れる女(下) |
2019
4/26 |
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スウェーデンでの人身売買を追っていたジャーナリストが殺害され、リスベットの関与が疑われ全国手配される。その背景にはソ連の工作員の秘密の亡命がある。ミカエルが問題を探る中でリスベットの生い立ちが明らかになる。サスペンスながら警察小説の面もある。手に汗を握ったまま結末はカットアウト。3作目をすぐ読みたいが筆者はもういない。(松) |
ラ |
スティーグ・ラーソン |
ミレニアム2 火と戯れる女(上) |
2019
4/26 |
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1作目の「ドラゴンタトゥーの女」を読んだのがもう5年近く前。本編もリスベットの行動に引き込まれる。関係を絶って1年間海外旅行をしてスウェーデンに戻ったリスベットは少しずつ人間関係を修復しようとする。恋人だったミカエルは人身売買を暴くというセンセーショナルな事案を企画中だった。そしてジャーナリストが殺されリスベットに容疑がかかる。(松) |
ラ |
スティーグ・ラーソン |
ミレニアム1 ドラゴンタトゥーの女(下) |
2014
9/17 |
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下巻は記者の男と調査員の女が合流し財閥の古い失踪事件を探る。すると現在に繋がる恐ろしい事件が形を現してくる。肝心の記者の名誉回復は終盤駆け足になってしまっているのが残念だが、複雑で悲惨で複合的なミステリで本を置く暇を与えないので寝不足になる。原題は「女を憎む男達」というのは納得。作者はすでに亡くなっているのが惜しい。(松) |
ラ |
スティーグ・ラーソン |
ミレニアム1 ドラゴンタトゥーの女(上) |
2014
9/17 |
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スウェーデンの作家によるスウェーデンを舞台にしたミステリー3部作の1。財界の悪事をスクープしたはずが名誉毀損で有罪になった男と、常軌を逸しているが調査員としては一流の腕を持つ女の話が交互に語られる。人物が魅力的で財閥の過去の事件や家系や経済界の表現などに小説の厚みを感じる。映画化で存在を知り読む。文句無く面白い。(松) |
ラ |
ギャビン・ライアル |
誇りは永遠に |
2008/
11/1 |
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ランクリンシリーズの4作目。舞台は第一次大戦勃発直前の1914年のヨーロッパ。イギリス情報局のランクリンが無政府主義者の操る国王隠し子騒動で活躍する。其々の登場人物が本当に息づいているのが良い。言外に含みがあり言わない事でも読む者には伝わってくる。この面白さは直木賞作品にも無い。(松) |
ラ |
ギャビン・ライアル |
誇り高き男たち |
2008 6/14 |
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ランクリンシリーズ3作目。バクダッド鉄道の建設をアラブ人に邪魔されたトルコとドイツは、イギリス、フランスに協力を要請する。表面上は協力する国々。人物も良いが、列車や船の旅での情景も面白い。第一次大戦前のヨーロッパから中東にかけてが舞台となる。スパイ物というより冒険活劇物だ。シリーズ一番の面白さ。(松) |
ラ |
ギャビン・ライアル |
誇りへの決別 |
2008 4/16 |
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ランクリン・シリーズの2作目。時代は第1次大戦前で小規模に飛行機が製造され始めた頃。飛行機を買いに来たイタリアの議員が刺され、陰謀を探るためランクリンはイタリアへ。登場人物が多く、それぞれの人物が生き生きと描かれ、各国の風景や列車の旅、時代背景も楽しめる文学作品に仕上がっている。まるで映画。(松) |
ラ |
ギャビン・ライアル |
スパイの誇り |
2007 12/22 |
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この作者の小説は一部しか読んでいないので、未読を図書館で探して読んでいる所。ランクリン大尉シリーズは始めて。第一次世界大戦前のイギリスの黎明期のスパイ物語。陸軍砲兵隊から転属になった男のスパイ初心者の様子を短編仕立てで構成している。第一次大戦前という世情は調べないと理解出来ない部分もある。若干筋が甘い感じ。(竹) |
ラ |
ギャビン・ライアル |
マクシム少佐の指揮 |
2007 11/18 |
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イギリスSASのマクシム少佐シリーズの2作目。内閣官房付き武官となり独自の行動で問題を解決(起こす?)する。今回は元部下の要請で脱走兵を助ける事になり、そこからMI6の作戦に巻き込まれる。官僚主義の組織や人間の描写が面白い。作中でマクシムが屈強な若者5人に襲われ結局やられるのは人間的。現実離れをしたスーパーマンではない。(竹) |
ラ |
ギャビン・ライアル |
砂漠の標的 |
2007 9/5 |
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1988年上梓のギャビン・ライアルの娯楽作品マクシム少佐シリーズ4作目。言ってみれば007のようなスーパーヒーロー。イギリスの元SAS隊員のマクシム少佐は又も行く所行く所でトラブルを解決する羽目になる。今回は中東ヨルダンの反乱軍制圧地に残されたイギリス最新鋭戦車を敵の手に渡さないよう処分する事が任務となる。(竹) |
ラ |
ギャビン・ライアル |
クロッカスの反乱 |
2007 7/26 |
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マクシム少佐シリーズの3作目。主人公はイギリスの元SASで陸軍の現役将校。対テロ活動に熱心なのは妻がテロに巻き込まれて殺されたせいか?役人や政治家の生態や考え方も凝縮されている。アメリカに行ったのは一応命令通りだが、東ドイツに潜り込んだ事は独自の活動。軍人がこんな事をするかな?というしらける部分はある。(竹) |
ラ |
ギャビン・ライアル |
本番台本 |
2007
5/24 |
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作者得意の航空サスペンス。古い感じは否めないが、その時代背景が男のロマンを(マジで)感じさせる。朝鮮戦争では優秀なパイロットだった主人公。今はカリブ海で古い輸送機で運送業をしているが、映画撮影隊に雇われる事になる。ところがある国に革命が起き、騒動に巻き込まれる。男の友情と女とバイオレンスは付き物。(竹) |
ラ |
ギャビン・ライアル |
拳銃を持つヴィーナス |
2007
4/19 |
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ロンドンの骨董銃器商の店主が中南米の金持ちに雇われる。仕事は絵画密輸。仕事中に自身が襲われ絵画を奪われてしまう。その後、同僚の絵画鑑定士の殺人事件に巻き込まれる。そんな大事な事が解決されないまま終盤まで行くのが、テンポが悪くスッキリしない感じを抱かせる。たかが?絵の事で人が死にすぎる。(竹) |
ラ |
ギャビン・ライアル |
裏切りの国 |
2007
3/8 |
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30年前の中東の晴れた空、乾燥した空気、美しい小型機、メカニカルな銃器、それに美女。映画向きの小説。私は明るい映画は好きだ。古代の100万ドルの剣と、密輸の銃器を軸に、利益を求めてうごめく人々の物語。この小説では悪い奴でも人が殺されるのは悲しいと思った。題名の「裏切りの国」よりも原題の「ユダの国」の方が合っていると思う。(竹) |
ラ |
ギャビン・ライアル |
ちがった空 |
2007
1/21 |
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ギャビン・ライアルのミステリー・アクションの第一作。北アフリカ、地中海を舞台の宝探し物語。時代は第二次大戦後から十数年経った頃。輸送機の雇われパイロットと、インドの土侯貴族の雇われパイロットの夢と現実の物語。世界は戦後を引きずり混沌としていた。パラダイスを夢見る男と、現実を見据え堅実に生きようとする男の友情が良い。(松) |
ラ |
ギャビン・ライアル |
もっとも危険なゲーム |
2006
9/23 |
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第2次大戦後にフィンランドで中古の飛行機を飛ばしている一匹狼のわけありの運送屋?が主役の話。脇役の行動の動機が納得いかない場面もあるが、全体に、背景も小道具も整った面白いサスペンスである。水増ししたような上下巻の小説が多い中、凝縮したと言うよりも、これが普通(本当)のサスペンス。(松) |
ラ |
バリー・ライガ |
さよなら、シリアルキラー |
2017
8/16 |
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父親が連続殺人鬼で収監されたが、その息子は殺人の技と楽しみを教え込まれた。少年の町に父親を真似した殺人者が現れる。スゴイ設定が読む気にさせたが、解説にあるように青春小説とは思えないし、サスペンスとしても凡庸だし、結末も唐突で尻すぼみ感がある。最初から連続物としたようで物語の出来は次回に譲るというような「逃げ」に思える。(竹) |
ラ |
クレイグ・ライス |
幸運な死体 |
2014
5/14 |
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暗黒街のボスを殺した罪で死刑になる寸前に助かった絶世の美人が、真犯人を探して復讐するという筋書き。勧善懲悪でもないし、クールなサスペンスでもない。弁護士の主人公を含め登場人物は一癖も二癖もありそうな輩で、ソフトボイルドな悪漢小説。ファッションや化粧の表現が如何にも女性作家らしいが自分には歯応えが足りない。1945年作。(竹) |
ラ |
クレイグ・ライス |
スイート・ホーム殺人事件 |
2012
12/19 |
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売れない女性推理作家とそのローティーンの子供たちの近所で殺人事件が起きる。子供たちは謎解きと称して現場を荒らしまくる。取り締まる警官たちも抜けた感じで、ジュブナイル小説の雰囲気。それならこのゆるさも許される。1944年の作はいいとしても訳が古すぎて今読むのには子供向けとしても適していない。多分新しい訳が出ていると思うが。(竹) |
ラ |
クレイグ・ライス |
大あたり殺人事件 |
2005
9/14 |
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前回読んだ「大はずれ殺人事件」の続編。前回よりもトーンダウンしている。こういう小説は謎解きよりも話の展開やスピードが重要と思うがそれも弱い。それでもこの時代のミステリーとしては及第点。訳者も言っていた様に前編もこの続編も映画化されても充分面白いと思う。(竹) |
ラ |
クレイグ・ライス |
大はずれ殺人事件 |
2005
6/2 |
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古き良き時代のアメリカが舞台。それを象徴するフルサイズカーが疾走するが、運転するのが若い女というのは作者が女のせいか。古いサスペンスは捜査方法がどの程度のものか分からず戸惑う。例えば弾道検査が出来る時代なのかどうかがね。それと少し人種差別の臭いもする。 |
ラ |
フリッツ・ライバー |
跳躍者の時空 |
2018
5/27 |
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作者の代表作を知らず、小品を書く少し古いのSF作家という印象。長岡市図書館にはヒューゴー賞を取った本が置いてない。その代わりに短編集を借りる。日本人の編んだアンソロジーで日本では初お目見えらしい。作者の多彩な作風が感じられる10作を収納。猫の主人公が5作あり、ホンワカしたムードが面白い。全部がこのシリーズでも良かったと思うくらい。SF含みのアメリカ版「我輩は猫である」。(竹) |
ラ |
フリッツ・ライバー他 |
モーフィー時計の午前零時 |
2016
9/25 |
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チェスを主題にしたアンソロジーで10編収納。チェスを知らなくても楽しめると巻頭に書いてあった。中の1編だけ、それにしても面白くない小説だと読んでいたら、後からノンフィクションだと気付いてガッカリ。部外漢にはどうでも良いものだった。これが将棋だったら間違い無く楽しめただろうから、やっぱりチェスを知らなければ楽しめない本だった。(竹) |
ラ |
フリッツ・ライバー |
闇よ、つどえ! |
2014
5/2 |
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24世紀の未来、世界は文化が退化し科学を掌握する僧侶達が上に立つという中世のような階級世界になっていた。世の中を変えようと男が立ち上がるが…。宗教と神話を混ぜたようなSF。1950年の作なので科学的な味付けが薄くSFというよりファンタジー。しかも自分は、宗教を交えた小説で面白いものに当った事が無い。今回もつまらなかった。(竹) |
ラ |
フリッツ・ライバー |
妻という名の魔女たち |
2013
10/3 |
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魔術なども研究する文化人類学の教授は妻の部屋で魔術の道具を発見した。妻は教授を守る為のものだというが教授は全てを焼却させた。次の日から教授には不運が付きまとうようになった。女は魔女の素質を受け継いで来ているという前提。教授の不運さを強調してもっと書き込めば、更に後半が引き立ったと思う。1969年作だが古さを感じさせない。(竹) |
ラ |
ジェフ・ライマン |
エア |
2012
6/21 |
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中央アジアの小さな農村で脳内ネットワークの実験が行われ、パニックから死亡者が出る。亡くなった90歳の老婆の意識が、農家の主婦の脳内に住み着いてしまう。近未来のネットワーク構築のさなか、辺境の貧しい農家の主婦のネットワーク起源の物語。作者は男性だが、文体が女性的で好きではないので読み進むのに時間がかかった。(竹) |
ラ |
ピーター・ラヴゼイ |
苦い林檎酒 |
2015
4/23 |
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9歳の頃、戦時下のイギリスの田舎に疎開していた大学教授は、当時殺人事件の証言をしそれが元で米兵が死刑となった。20年後にその米兵の娘が尋ねて来る。古い事件を掘り起こす事で新たな事件が発生するのは類型的だし結末も予想出来るが、筋がしっかりしていてなにより登場人物の造形が良い。何作か読んでいて好みの作家。(竹) |
ラ |
マーセデス・ラッキー |
女王の矢 |
2008/
12/21 |
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ヨーロッパ中世風SFファンタジー「ヴァルデマール」シリーズ。辺鄙な国境沿いに住む少女が〈共に歩むもの〉という馬に見出されて王国の首都に行き、〈使者〉という重要な役目の為に勉強や訓練や実地を通して、友情、陰謀、愛情、別れなどを経験する青春物語。分かりやすいので感情移入が出来て面白いが、逆に言えば単純でひねりが足りない。(竹) |
ラ |
ジュンパ・ラヒリ |
見知らぬ場所 |
2022
11/25 |
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第一部は5作の短編。第二部は同じ男女が主人公の3作の連作短編を収める。インド系の移民家族のイギリスやアメリカでの生活が描かれている。どれも丁度良い情感が心地良い。主人公以外の登場人物はインド系かどうかを探ってしまうのは、それも重要だから。作者のものは3冊目で割合と好きだ。400ページを超えるがスムーズに読めた。(竹) |
ラ |
ジュンパ・ラヒリ |
その名にちなんで |
2022
7/30 |
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アメリカのインド移民から生まれた男は、仮につけたゴーゴリというロシアの小説家の苗字が本名となる。インドでもアメリカでも違和感を持たれる名前で、後に改名する。インド系移民の生活を、インドに重きを置いた父母とアメリカ人として生きている子を対比して描いている。アメリカでは名前を変える自由があるという。中身が濃く面白かった。(竹) |
ラ |
ジュンパ・ラヒリ |
停電の夜に |
2022
3/19 |
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アメリカで活躍するインド系女性作家の9編を収める短編集。インド系アメリカ人の視点の作品が多いが、インドの出来事として書かれた作品もある。「三度目で最後の大陸」は情感を内に秘めた穏やかな語り口が良い。「本物の門番」は悲しいが逞しさも感じる。インドでは兄弟親戚は勿論だが近所という繋がりも濃いようだ。ピュリッツアー賞受賞。(松) |
ラ |
ジョナサン・ラブ |
ミネルヴァのふくろうは日暮れて飛び立つ |
2009/
3/12 |
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未来永劫国を統治する為中世に書かれた過激な「至上権論」が現代のアメリカに甦る。多発テロが起こり国を混沌に落としいれ権力を掌握しようとする勢力があり、阻止する為「至上権論」を読み解く学者と女性工作員が活動開始する。敵味方が入り乱れカオスへと至る時間は刻々少なくなる。スピードあるサスペンス小説で文句無く面白い。(松) |
ラ |
ラファイエット夫人 |
クレーブの奥方 |
2005
2/6 |
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昔々のフランスのお話。恋をしたら、あるいは恋をしたと思ったら行動する現代とは違う昔のお話。今が相思相愛でもいつか飽きられて浮気され後悔する日が来ると、プラトニックのまま人生を終えるクレーブの奥方。古い小説にしてはスムーズに読めた。 |
ラ |
R・A・ラファティ |
どろぼう熊の惑星 |
2020
10/3 |
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ラ |
R・A・ラファティ |
九百人のお祖母さん |
2017
11/5 |
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21編のSFを収録するハチャメチャドタバタ短編集。これは好みが分かれる所。嫌いでは無いがこればっかりだと飽きる。頭脳明晰だが破天荒な研究者とコンピュータが登場するシリーズ?物は又かと食傷気味。という事で早々に読了するかと思ったが、文庫本で500ページを越えるボリュームは前述の通りなかなか手強く図書館に延長を申し込んだ。(竹) |
ラ |
R・A・ラファティ |
宇宙舟歌 |
2008 5/24 |
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アメリカンコミックという感じの軽くてハチャメチャなSF。戦争で宇宙に出ていた者たちが、地球に帰るまでに経験する、色々な星々での出来事で、ホメロスの「オデュッセイア」を下敷きにしているという。筒井康隆の「虚航船団」は面白かったがこれは自分には合わない。(竹) |
ラ |
アーサー・ランサム |
ツバメ号とアマゾン号(下) |
2014
9/23 |
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兄弟姉妹のツバメ号と別の家族の姉妹のアマゾン号との戦争と和解。共同して海賊退治と、本物の泥棒が隠した宝探しと無人島での最後の共同キャンプ。創造力を働かせて波乱万丈の休暇を楽しむ子供達が楽しそうだ。自分が子供の時には子供向けの本は読まなかった。憶えているのは親戚の家にあった「里見八犬伝」で超面白かった。(竹) |
ラ |
アーサー・ランサム |
ツバメ号とアマゾン号(上) |
2014
9/23 |
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イギリスの兄弟姉妹が休暇中に湖でヨットを楽しむ話だが、理不尽な目にも遭うし冒険もする。梨木香歩さんお勧めの本。ジュブナイル小説なので面白いかどうか分からなかった。読み始めは幼稚かなと思ったが読み進むうちに面白みが増した。80年以上前の作品なのに古さを感じない。今でも田舎ならそういう雰囲気なのかと思わせる。(竹) |
ラ |
ジョー・R・ランズデール |
ボトムズ |
2020
4/26 |
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リ |
シンシア・リー |
今、韓国で起こっていること |
2020
7/12 |
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リ |
サム・リーヴズ |
過ぎゆく夏の別れ |
2023
2/25 |
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クーパー・マクリーシュ4作目。結婚してタクシー運転手を辞め、不動産会社社長のお抱え運転手になる。麻薬の売上金を巡り社長の息子が殺され、社長も狙われる。クーパーは命がけで事件を探る。暴力や殺人ありのハードボイルド。複雑で登場人物が多いが、ストーリーが面白くて読み進める。ただ原題と違う邦題は気取り過ぎて詰まらない。(竹) |
リ |
サム・リーヴズ |
春までの深い闇 |
2019
6/8 |
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シカゴのタクシー運転手シリーズ3作目。運転手は懇意の新聞記者が追う特種を手伝う事で自分自身も危ない目に遭う。運転手と新聞記者の視線が交互に現れ筋は進んで行く。文庫本だが500ページ超の大作。物語が複雑な割には盛り上がりに欠けるので退屈。恋人がいて息子がいて運転手とはいえ知識層の主人公の生き方に共感出来ない。(竹) |
リ |
サム・リーヴズ |
雨のやまない夜 |
2015
9/17 |
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インテリでタクシー運転手の男には恋人がいて相思相愛。しかし止むに止まれず昔の男の強請りを手伝う。強請り相手に逆襲された恋人を助ける為に男は駈けずり周る。警察に駆け込めば一番被害が少ないと思うがそれではサスペンスにはならない。読者が歯がゆくなる事も演出のうちか。主役がタクシー運転手というのが生かされていないのが残念。(竹) |
リ |
ジャック・リッチー |
クライムマシン |
2015
2/5 |
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50年〜80年代に活躍したミステリー短編のスペシャリストとよばれる作家の短編集。簡潔な文体は筋のアイディアを引き立てる。中でも「殺人哲学者」は秀逸で最後にアッと言わせる。ミステリー臭く無く古き良き短編集という感じ。表題作はミステリーにタイムマシンが登場するのも面白い。吸血鬼の探偵も出て来る。読み終わるのが勿体無い気がした。(竹) |
リ |
ケン・リュウ |
紙の動物園 |
2022
7/9 |
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作者は、アンソロジーの「折りたたみ北京」で初めて知った中国生まれアメリカ育ちの作家。これは作者だけの短編集。表題作はヒューゴー賞、ネビュラ賞、世界幻想文学大賞を受賞。中国は勿論日本や台湾を舞台にしたり、不死や伝説、過去の事件をテーマにしたものもあり多彩。多作家なので次の短編集が楽しみ。久しぶりにSFを堪能した。(竹) |
リ |
ケン・リュウ 他 |
折りたたみ北京 |
2021
2/27 |
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中国人作家によるSFアンソロジー。少し前に「三体」で、文化大革命を取り込んだSFを読んだので期待していたが、あまり驚きは無い。同じ作者の「神様の介護係」は印象に残った。表題作の「折りたたみ北京」まあまあだが、他は中国の味は付いているが作品としては好みではない。やはり自分はハードSFが好きなようだ。「三体」の続きを読みたい。(竹) |
リ |
劉 慈欣 |
三体 |
2020
11/19 |
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リ |
ヨン・アイヴィデ・
リンドクヴィスト |
モールス(下) |
2019
11/12 |
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少女は現代に蘇ったヴァンパイア。弱点はあるものの驚異的な力を持っている。面白くなる要素はあるが、サブストーリーに入れ込み過ぎ。それに筋にメリハリが無いので単調に流れている。文も一人称と三人称が混ざり、一人称も突然入れ替わり流れが切れてしまう。訳者あとがきによると評価は高いそうだが、エンターテインメントの面白さを感じない。(竹) |
リ |
ヨン・アイヴィデ・
リンドクヴィスト |
モールス(上) |
2019
11/12 |
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スウェーデンの舞台を現代とした怪奇ホラー小説。いじめられっ子の少年が、そうとは知らずに少女の吸血鬼と知り合う。地域には奇怪な殺人事件が起こり、犠牲者の友人達が調べる。少女の庇護者は逮捕され、少女は一人で生きて行く為に行動する。上巻だけではどういう視点で読めば良いか分からず、まだ没頭出来ない。クライマックスが欲しい。(竹) |
リ |
アン・モロウ・リンドバーグ |
海からの贈りもの |
2005
12/9 |
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今もって女性の支持を受けていると言う。瑞々しい文体というらしい。男の自分には分からない。夫とともに飛行機で大西洋横断をしたことや、子供を誘拐され殺されたことがある。そんなことはここには一言も載っていない。中流階級の白人女性なりの普遍的な悩みや考えを披露している。(竹) |
ル |
グレッグ・ルッカ |
天使は容赦なく殺す |
2019
5/17 |
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イギリスの秘密情報局の女性特務官が、地下鉄テロの首謀者を殺すべく中東に潜入する。その結果、同じイギリスでも別の情報局やアメリカ、イスラエルを巻き込み政治的な決着を付けようとする流れになる。アクションが練られていないし、数も足りない。厚い本だが韓国まで持っていって2/3ほど読んだ。著者の新しいシリーズというが期待ハズレだった。(竹) |
ル |
デニス・ルヘイン |
ミスティック・リバー |
2008 9/26 |
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家庭環境が違う少年3人は誘拐事件が起こるまでは仲間だった。歳月が経ち1人は警官に1人は強盗になり、もう1人は誘拐事件のトラウマを抱えて生きていた。そして殺人事件が起きる。ストーリーに目新しさは無いが良く出来ていて面白い。登場人物が多くそれぞれに説明がありスピード感が無いのが難。名付けてサスペンス大小説。660ページは長い。(竹) |
ル |
ピエール・ルメートル |
炎の色(下) |
2021
9/22 |
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娘は、自分達親子を陥れ世間的に成功した奴らに復讐を計画。これには前作で夫の腹心の部下が重要な役目を果たす。裏切った女も仲間に加える。徐々に手段を選ばない姦計が成功し復讐が成る。それとは別に、半身不随の子も事業を起こし成功する。政治的、経済的にも不穏な大戦の間の時代を描いている。歴史小説の色合いが濃い。(竹) |
ル |
ピエール・ルメートル |
炎の色(上) |
2021
9/22 |
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「天国でまた会おう」三部作の二。前作でフランスでも指折りの実業家の父親の前から身を投げた息子。娘の夫は悪事で刑務所。本作はその父の葬式で孫が大怪我。娘と孫は諮られて没落。後半は娘の復讐譚。世事を人任せにして騙された娘は子の将来を考え逆襲を計画。連作だが主役は交代。新しい小説として読める。大戦の間の凪のような時代。(竹) |
ル |
ピエール・ルメートル |
わが母なるロージー |
2021
6/1 |
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カミーユ・ヴェルーヴェン警部シリーズの番外編。パリ市内で爆弾が破裂する。犯人は自首するが、他の爆弾を供述し、別の事件で逮捕された母親と自分の逃亡を要求する。フランスの上層部まで震撼させる事件。強烈な個性の警部と優秀な部下。諧謔を含んだ会話。結末は予測出来たが面白さは変わらない。もうこのシリーズは書かないそうで残念。(竹) |
ル |
ピエール・ルメートル |
天国でまた会おう(下) |
2021
4/1 |
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上官は戦死者の埋葬で、兵士と戦友は戦争の記念品の詐欺で、それぞれが悪事に染まる。どちらも引き返しが出来ない。虐げられた者のハッピーエンドはありそうも無い。どういう結末になるのか、ストーリーは興味を引っ張って行く。片方は実際に起きた事件を基に、もう一方は虚構という。今までも面白い小説を書いた信頼出来る作者ならではの結末。(竹) |
ル |
ピエール・ルメートル |
天国でまた会おう(上) |
2021
4/1 |
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第一次世界大戦末期の戦闘中にフランス軍の兵士は、上官の味方殺しに気付き生き埋めにされる。助けた戦友は顔が損傷し家族に会えないと、死んだとして書類を改ざんする。戦後に上官は戦友の姉と結婚し大金持ちになり、兵士と戦友は貧乏で傷に必要なモルヒネさえも買えない。才覚が無いばかりに理不尽な目に遭うが、どう逆転するか興味津々。(竹) |
ル |
ピエール・ルメートル |
監禁面接 |
2020
5/27 |
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ル |
ピエール・ルメートル |
傷だらけのカミーユ |
2019
11/23 |
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カミーユ警部シリーズ三部作最終章。愛する妻を亡くして5年、失意から復活した警部が愛する女性が宝石強盗に暴行をされる。見境を失った警部は独断専行の捜査をして四面楚歌となる。筋は読み進むにつれ、おかしいと思うようになり、段々と真相が明らかになる。読み終えて、物事は収まる所に収まった。もうこのシリーズが読めないと思うと残念だ。(松) |
ル |
ピエール・ルメートル |
死のドレスを花婿に |
2019
6/21 |
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「悲しみのイレーヌ」は筋書きの残酷さに少し嫌悪感を抱いた。「その女アレックス」は文句無かった。どちらも面白いのは間違いない。この作品にはベェルーヴェン警部は出てこない。第一部では精神を病んだ若い女性の転落を見る。第二部では驚く展開が待っていた。筋の意外さには感心したが、面白いとは思えない。結末も含め好きな作品では無い。(竹) |
ル |
ピエール・ルメートル |
その女アレックス |
2018
11/7 |
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ヴェルーヴェン警部2作目。前作の「悲しみのイレーヌ」は問題なく面白かったが、結末の悲惨さで次作を読むのを躊躇していた。ヴェルーヴェン警部が復帰して、嫌々ながら手掛けた誘拐事件が思いもよらない方向に動き出す。三部に分けた筋書きの秀逸さ、警部や部下、上司の人物設定と作り込みが素晴らしい。悲惨な事件は正義で溜飲が下がった。(松) |
ル |
ピエール・ルメートル |
悲しみのイレーヌ |
2018
2/14 |
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フランス司法警察のヴェルーヴェン警部シリーズの1作目で作者にとっても処女作というが人物描写やストーリー構成が新人とは思えない秀逸さ。内容は小説を真似た連続殺人事件の捜査。イレーヌとは警部の妻だが、ミステリーの題に方向性まで暗示しているのがニクイ。良く出来てはいるが、残虐な内容と当然なのだろうが結末が気に入らない。(竹) |
レ |
エルモア・レナード |
オンブレ |
2020
1/4 |
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レ |
エルモア・レナード |
ホット・キッド |
2011
12/20 |
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禁酒法のアメリカ、ギャングや銀行強盗が横行した時代。裕福な親を持った二人の若者がいた。かたや連邦執行官になり、かたや銀行強盗になった。この本の前に読んだのが「パンセ」なので、猛烈に小説に飢えていた。空腹という調味料もあったが、それがなくても人物がしっかりして男も女も面白く、筋書きも見せ場が多く映画的で面白かった。(竹) |
レ |
エルモア・レナード |
キューバ・リブレ |
2011
9/9 |
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19世紀末スペイン統治時代のキューバを舞台に、カウボーイと大地主の愛人との恋愛あり、キューバ内戦やスペインとアメリカとの戦いもあり、スペイン統治の悲惨さを描き社会派の歴史冒険ロマン。前半はそれぞれの人物も生き生きとしてスピード感があり映画を見ているように面白かったが、後半はスピードが落ちまとまりも悪くなってしまったのが残念。(竹) |
レ |
エルモア・レナード |
身元不明者89号 |
2011
6/18 |
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裁判所の令状送達をする男がアル中の女を好きになる。女の死んだ夫の遺産の取り分を増やそうとして事件が起きる。女の夫の凶悪さを散々盛り上げておきながらあっけなく殺されたり、実は男もアル中で急に酒を飲みだしたり、人物や筋が一貫していない。B級サスペンスと思えば納得だし。週一のテレビドラマとしてなら何とか見れる。(竹) |
レ |
エルモア・レナード |
ママ、大変、うちにコヨーテがいるよ! |
2011
5/10 |
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悪漢小説の作者にしては珍しい動物小説。ハリウッドのコヨーテが高級住宅のシェパードとプードルと仲良くなる。拾った?首輪を付けてもらい犬になりすまし、ひと騒動を起こす。シェパードは何本も映画に出演、プードルもドッグコンテストの常連でプライドがあり、自由なコヨーテとの対比が面白い。素直に読める。挿絵もあるが絵本にも仕立てられそう。(竹) |
レ |
エルモア・レナード |
アウト・オブ・サイト |
2011
3/20 |
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ちょっとスマートな悪漢小説。銀行強盗を稼業の男が収監中の刑務所から脱獄。人質にとった連邦執行官の女性と恋に落ちる。互いに成就しないと分かっているからクールな恋になる。誰にも人生で一回くらいは後先考えずに行動する時もあるのだと納得できる筋書き。人物も背景もアクションも映画のような小説でやっぱり映画化されている。(竹) |
レ |
エルモア・レナード |
ラム・パンチ |
2011
1/13 |
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武器密売屋の売上金の運び屋をするスチュワーデスが、保釈金融業者を抱きこみ密売屋と政府の取締機関を騙して50万ドルを手に入れようとする。悪漢の金を盗むのに良心は痛まぬが、下手をすると自分の命が危ないし、実刑をくらう恐れもある。別題で映画化。映画としては不明だが小説としては肩のこらないB級サスペンスに落ち着く。(竹) |
レ |
エルモア・レナード |
タッチ |
2010
6/2 |
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人の病気や怪我を超能力で治し聖痕が現れる青年を巡り、自分の欲望の為に群がる人々を描いている。解説で恋愛小説とあるがその部分はほんの少しで、メインは儲けの種とあらば何にでも乗っかるアメリカの商業主義。取り上げられる聖痕はキリスト教を信じない身には最初から嘘っぽく感じる。何にしろ主題があやふやで皮相的で面白みに欠ける。(竹) |
レ |
エルモア・レナード |
ミスター・マジェスティック |
2010
4/6 |
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農家の男が逮捕され同じ房の殺し屋に脱獄事件での恨みを買う。殺し屋に狙われ風前の灯かと思われたが、この男は戦争のエキスパートだった。善人は悪人のする事に我慢して最後の最後に逆襲して読者の溜飲を下げるというお馴染みの筋書き。スピード感はあるが、一番の山場の逆襲劇にもっとページを使ってくれたらもっと面白かったと思う。(竹) |
レ |
エルモア・レナード |
ゲット・ショーティ |
2010
2/5 |
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ギャングの高利貸が借金から逃げた男を追ってサンフランシスコに来る。映画好きな高利貸は映画制作にのめり込み地元のギャングと利権で争う。表題はと「チビを捕まえろ」。このチビとは小柄な映画スターの事。映画のシナリオや実際の筋やそれをまたシナリオにするという複雑な筋書き。幾つかの緊迫場面もピークに達せず意気消沈。(竹) |
レ |
エルモア・レナード |
プロント |
2010
1/7 |
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イタリア語で「もし、もし」という意味の題名。マイアミでスポーツ賭博をやっていた男がマフィアから狙われイタリアに逃げる。男を追う保安官や地元で雇った元兵士を交えて追いかけっこが始まる。愛人や保安官が主人公の男を助けてやるが、男の性格の悪さは読んでいて腹が立つほどで、それほどに人物の作り方が上手い。B級サスペンス小説。(竹) |
レ |
エルモア・レナード |
追われる男 |
2009
12/5 |
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悪漢に恨まれてアメリカからイスラエルに逃げてきた男が、ひょんな事から居場所を知られ殺されかける。イスラエルに駐在する海兵隊の男を巻き込み、物語は追いつ追われつの展開になる。結末は完璧なハードボイルド。ハードボイルドは人の情を表さないのではなく、敢えて無視する所に真骨頂がある。原題を直訳すれば「狩られる男」か。(竹) |
レ |
エルモア・レナード |
スプリット・イメージ |
2009
11/6 |
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大富豪の男の趣味が殺人。事故や正当防衛など罪に問われない情況で人を殺してきた。ついには積極的な殺人がしたくなり、悪徳警官を雇う。街のチンピラを殺した事から殺人課の刑事から怪しまれる。派手なアクションやトリックが無いが、人間がよく描けているので面白い。ただサスペンス性が薄いのでピリッとしない。(竹) |
レ |
エルモア・レナード |
キルショット |
2009
10/3 |
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最初の登場人物がインディアンの殺し屋で、次が強盗とくるのでピカレスクものかと思った。その後に高層建築の鉄骨組立工の夫と妻が出てくる。この夫婦が悪漢の恐喝事件に巻き込まれ狙われる事になる。警察の捜査は全く進展せず、FBIの保護を受け住所を変えるが、悪漢は執拗に追ってくる。筋は並だがそれぞれの人物描写が巧みで面白い。(竹) |
レ |
エルモア・レナード |
フリーキー・ディーキー |
2009/
7/4 |
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デトロイトの爆弾処理班の刑事が職務中の揉め事から休職になる。原因となったレイプ事件を独自に調べるうちに大金持ちを騙そうとする奴らの存在を知る。ベトナム戦争に揺れた当時に左翼の爆弾テロに係わった者達や元ブラックパンサーなどが出てくる。登場人物に歴史的深みを与え人物描写に優れた小説になっている。(竹) |
レ |
エルモア・レナード |
グリッツ |
2009
5/17 |
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マイアミの刑事が傷病休暇中のプエルト・リコで、気になる女と自分を付け狙う男に会う。女は華やかさを求めてアメリカに渡り、賭博の街のアトランティックシティーで墜落死してしまう。刑事は現地に行き死の真相を探る。華やかな世界の裏で蠢く男や女のハードボイルド小説。気取らないで少しウェットな作風が好ましいし結末の形も好きだ。(竹) |
レ |
エルモア・レナード |
野獣の街 |
2009/
3/4 |
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根っからの犯罪者で、それも人殺しを何とも思っていない男とデトロイト警察殺人課の刑事との闘い。作者はプロットよりもまず登場人物の人格形成からと言うだけあって人物描写が素晴らしく、自分の頭の中で生きて動いている。面白い小説かどうかは筋書きよりも登場人物がいかに生き生きと書けているかの良い見本。(松) |
レ |
エルモア・レナード |
スワッグ |
2009/
1/18 |
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成功のための法則を考え武装強盗を始めたデトロイトの男2人の物語。成功を収めた2人は調子に乗り法則を逸脱し始める。さらに一攫千金を狙う2人の運命は如何に。大都会とはいえ狭い地域で覆面も無しに強盗を繰返すのがちょっと不自然。罪悪感無しの軽快なスタイルは教条的で無くて良い。結末は1976年作品のもの。今なら?(竹) |
レ |
レーナ・レヘトライネン |
要塞島の死 |
2022
11/25 |
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フィンランド警察の女性警官のシリーズ3作目。マリアは産休明けに警部に昇進して出勤。マリアが休暇中に立ち寄った島で所有者の社長が亡くなる。そこはマリアの過去の恋人も死んだ所。同僚が民間人への暴行で自宅待機。マリアは人員が少ないので現場にも出る。過激な環境保護団体や隣国の犯罪者などフィンランドの世相も反映。(竹) |
レ |
レーナ・レヘトライネン |
雪の女 |
2022
9/2 |
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フィンランドの女性作家のミステリーで、マリア・カッリオのシリーズ。エスポー警察勤務の巡査部長。セラピストの変死とその後の暴行事件を捜査。同僚の死のダイナミックな場面や自身の妊娠等深みのある作品。フィンランドという国を知るのも面白い。解説によると日本語訳はこれが最初だが4作目らしい。是非1作目から別のマリアを読みたい。(竹) |
レ |
レーナ・レヘトライネン |
氷の娘 |
2014
7/11 |
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フィンランド女性ミステリー作家の警察官マリアシリーズ日本紹介2作目。若いフィギュアスケート女子選手が惨殺されマリアが捜査の指揮をとる。被疑者ばかり多く捜査が進展しない。被害者の複雑な家庭、スケート界の内幕、敵役の警察の同僚、そして何より妊娠7ヶ月のマリアと演出が濃厚。読者に予断を許さずサスペンスフルなタッチは秀逸。(松) |
レ |
レーナ・レヘトライネン |
雪の女 |
2014
5/27 |
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フィンランドの女性作家のミステリー小説。女性警官マリア・カッリオシリーズの四作目だが日本での出版はこれが一作目。女性限定のセラピーセンターの屋外で主催者の女性が雪の中で凍死する。自殺か他殺か。センターにいた女性のそれぞれの事情が絡み合い先が見えない。主人公も魅力的だが、フィンランドの地名や風俗が目新しく感じた。(竹) |
レ |
スタニスワフ・レム |
短編ベスト10 |
2021
1/31 |
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ポーランドの高名なSF作家の短編集。この10作品は寓話的なSFでファンタジーに近く自分の好みとはかけ離れている。さらに宗教(キリスト教)が入ってしまうと理解不能で苦行となって飛ばし読み。最後の「テルミヌス」だけはリアルで、古い宇宙船の装備となっているロボットの話で分かり易かった。その他は面白くなかった。作者ではなくて選者のせい。(竹) |
ロ |
セオドア・ローザック |
フリッカー、あるいは映画の魔 |
2015
6/25 |
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実在の映画監督とその作品を題材に、中世のオカルト的な事や宗教の暗部が展開する壮大な物語。大学生の青年が映画に興味を持ち、後に映画評論で大成する女性の薫陶を受け映画論の大学教授になる。その後に映画の魔に取り付かれる。500ページを越える2段組で小さな字は内容が面白くても時間がかかった。他にやる事もあったからだが。(松) |
ロ |
フィリップ・ロス |
ダイング・アニマル |
2010
8/28 |
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自分の性欲を思いのまま満足させてきた老年教授が40歳近く歳の離れた教え子を好きになる。快楽を享受する為に離婚までして自由な精神を獲得していたはずの教授は、若い娘を手中にしたあと自身の老いを感じ嫉妬心の虜になる。自分にはそんなに性に執着する気持ちが分からない。共感は出来ないが人物描写は上等だし良く出来ている。(竹) |
ロ |
フィリップ・ロス |
ヒューマン・ステイン |
2010
1/14 |
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現代アメリカ純文学小説。人種差別を主題として他に老人の性、教育、ベトナム帰還兵、家族の絆などの問題を提起。表題は「人間の穢れ」と約すが、人間が生きて行くにつれ、純粋だった精神が段々と濁ってくる様は、まさに少しずつ人が錆びてくるようだ。登場人物のそれぞれの穢れを丁寧に描いている割には読みやすい。(松) |
ロ |
フィリップ・ロス |
いつわり |
2009/
8/28 |
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不倫相手との会話による筋を省いた小説。現実と想像を入り混じっている。自分がユダヤ系アメリカ人という事と恋愛が主題。イギリスで反ユダヤ主義を体験したが、友人達からは被害妄想と言われる。この問題は被差別の問題だけではないから難しい。それより、映画の一場面を切り取ったような会話は機知に富んでいて結構面白い。(竹) |
ロ |
フィリップ・ロス |
背信の日々 |
2009/
7/12 |
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ユダヤ系アメリカ人の兄弟の物語。兄は作家で弟は歯科医。弟は心臓病を患い手術が失敗し死ぬ。次の章では弟は死なず術後ユダヤ人を意識するようになり家族を捨てイスラエルに移住し先鋭的な指導者に憧れる。物語の設定がパラレルワールドのように変わる。移民の中でユダヤ人だけ偏見を受けるのはキリスト教徒と近くて遠い存在の為?(竹) |
ロ |
エベリオ・ロセーロ |
無慈悲な昼食 |
2018
4/17 |
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中南米の教会での1日半の出来事をロードムービーのように順に綴っている。雑用をする背中が曲った青年が主人公。神父や聖具室係とその養女、調理場を受け持つ老婆3人が登場人物。エピソードで戦争の悲惨、貧困、窃盗、無秩序、絶望等を表している。重いテーマにしては掘り下げないので読み難くは無い。200ページ弱はすぐ読める。(竹) |
ロ |
キム・スタンリー・ロビンスン |
レッド・マーズ(下) |
2007 7/29 |
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21世紀初期に厳選された100人が火星に住み着く話だが全く面白くない。何故かというと、話の筋に山らしき山が無い、一貫した主人公がいないので感情移入しにくい、政治的な話や恋愛話が多すぎて自分の望むSFらしく無い、SFとして納得できるようなハードが不充分、こんな所だろうか。勿論「グリーン・マーズ」も読む気が起きない。(梅) |
ロ |
キム・スタンリー・ロビンスン |
レッド・マーズ(上) |
2007 7/29 |
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SFを読みたくて、SFならフューゴー賞受賞作品と思って検索した所「グリーン・マーズ」が出た。「グリーン・マーズ」を借りたがその時点で三部作の二作目と判明。中途から読んでも面白くないので一作目から読もうとこの本を借りた。これもネヴュラ賞受賞作品。期待は大きかったが…。解説でも大褒めだが自分には合わない。(梅) |
ロ |
姜戎(ジャン・ロン) |
大草原のちいさなオオカミ |
2011
10/22 |
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夏の課題図書でふりがな付き。内モンゴルに下放され、羊飼いをする漢族の少年がオオカミの子を育てる。草原の人達にとり、オオカミは敵でもあり崇める対象でもある。その掟が中国の近代化で無視される。オオカミも含め野生動物の生きる知恵を人間は悪がしこいというが、一番悪がしこいのは人間ということに落ち着く所が少年少女向けか。(竹) |
ワ |
ワ |
パーシヴァル・ワイルド |
探偵術教えます |
2023
3/11 |
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田舎町のお屋敷のお抱え運転手が通信教育で探偵術を学ぶ。講座担当者との書簡形式の小説。素人探偵のマネをして危ない目にも遭うが、何故か解決してしまう。この男が愚か者なのか頭が良いのか分からない。素人が探偵術を実践する連作短編集。でも人好きのする男で、女性に関しては素人では無い様だ。そういう面でのトラブルもある。(竹) |
ワ |
イアン・ワトスン |
エンベディング |
2009
5/30 |
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新生児の全く新しい脳に外界を遮断して新しい言語を教え研究している学者が宇宙人来訪に立会う。宇宙人との取引には、埋め込み(エンベディング)言語を持つアマゾンの原始種族が必要であり、拉致しようとする。この表題にもなっているエンベディングの概念が難しく理解しにくい。この作家の短編は面白いのに長編はいまいちだ。(竹) |
ワ |
イアン・ワトスン |
存在の書 |
2008 8/20 |
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黒き流れ三部作の完結編。川が中心の女系の異世界SF。前二部も読んだので完結編を義務として読んだがやはり面白くなかった。主人公の輪廻転生が分かりにくい。社会制度や科学的小道具が本当らしく見えない。結末も無責任。最初の構想だけは良かったとしか言えない。傑作という評価もあるらしいが、少なくとも自分の好みではない。(竹) |
ワ |
イアン・ワトスン |
星の書 |
2007 11/25 |
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黒き流れ3部作の2。前作は設定の甘さはあったがダイナミックな物語として及第点。本書は前作の結末の始末がおざなり。ヒロインが対決する超存在は全知全能のはずだが、ヒロインに簡単に騙されるのも不自然。超存在の趣味が薔薇好きというエピソードもつまらない。ヒロインをただ冒険させているだけで、背景がしっかりしていないから面白くない。(梅) |
ワ |
イアン・ワトスン |
川の書 |
2007 11/2 |
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SFでも独自の世界を作り上げられれば半分は成功だと思う。流れの中央に存在する長大なワームにより渡れない川と越せない砂漠と登れない岩壁に囲まれ川筋に生活する民の話は「果てしなき河よ我を誘え」に情況は似ているが内容は全然違う。自分達が何者なのかワームとは何か。封鎖された世界から飛び出そうとする娘を描く。黒き流れ3部作の1。(竹) |
ワ |
イアン・ワトスン |
オルガスマシン |
2006
8/19 |
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前回読んだ「スロー・バード」のようなものを期待したのだが、長編だし全く違う作風だった。日本に暮らしていた事も生かした、女が奴隷化された近未来的な性風俗の小説。読み初めから気持ち悪くて途中でやめようと思ったがなんとか最後まで読み終えた。こういうのは好みではない。(梅) |
ワ |
イアン・ワトスン |
スロー・バード |
2006
8/9 |
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久しぶりのSF短編集。好きなのに余り読まないのはSFに出会った頃のワクワクするような本に巡り会わないから。その理由の一つは、料理に例えれば昔より口がおごってしまって、新しくて複雑なものしか旨いと思えなくなったから?自分には始めての作家だが、書かれた時代は新しくは無い。(だからこそか?)あの頃のワクワク感を味わうことが出来た。(松) |
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