私的山in新潟 燕 |
毒書生活分類(日本) 作者姓あいうえお順 |
作者と借出日 |
題名と感想 |
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あ |
あ |
青山七恵 |
すみれ |
2024
9/24 |
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3人家族の家に父母の旧友の女性が同居する。女性は精神を病んだ後の回復期。両親は仕事が忙しく、中学生の娘が相手をする。15歳と37歳の友達関係。女性は高校受験の前に出て行くはずがズルズルと居候。いつか来る結末。174ページと短い最小限の世界。好みなのでスイスイと読めて丸1日で読了。15歳の成長と傷心の物語。(竹) |
あ |
青山文平 |
本売る日々 |
2023
12/19 |
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江戸時代の本の行商人を通して農家や武士の生活を描く。連作短編を三つ収める。知らない本が次々と紹介される。江戸時代でも生活以外の人々の興味は尽きず、文化的に発展していたと気付かされる。書く為に資料を調べるのも根気の要る作業だっただろうと思う。作者はもう何冊目かになるが、澄んだ水のように読み易い文章だ。(竹) |
あ |
浅井リョウ |
正欲 |
2023
5/30 |
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性欲の対象が同性でも無い人。それは犯罪では無いが他人には理解して貰えない。自分の本心を隠して生きるが、他人の普通の欲望も理解出来ないからコミュニケーションが取れず生き難い。読んで思ったのはそれでも孤独は嫌なのかと、犯罪者に間違われても自分の性欲は隠して置きたいのか、と言う事。寛容な世の中は新しい欲望を掘り出すのか。(竹) |
あ |
浅倉秋成 |
俺ではない炎上 |
2024
9/24 |
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一流会社の部長がネットで殺人の嫌疑をかけられる。本名も会社名も顔写真も曝される。確実と思われる証拠も上げられる。死体も見つかり警察も動き出す。ネットの無い時代の「逃亡者」は長く逃げたが現代は難しい。分かりやすいシナリオかと思ったが、作者はひねりを加えて来た。現実でもネット上では悪意が渦巻く世の中になった。(竹) |
あ |
浅田次郎 |
流人道中記(下) |
2023
8/26 |
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流人は旅の間も人と関わり、知己からは歓迎され、洞察力も人情も行動力もある。与力はそんな人が何故罪を犯したかと問い質す。原因は上司の讒言。対向処置を取らず、本人は流罪で家はお取り潰しで家来郎党はちりぢり。それは与力も、読んでいる自分も納得出来ない。この人ならもっと良い方法もあった。作家のさじ加減と思うと萎える。(竹) |
あ |
浅田次郎 |
流人道中記(上) |
2023
8/26 |
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姦通の罪を犯した旗本が蝦夷松前藩へ流罪になり、若い見習与力と老いた同心が同行するが、同心は早々に逃げてしまい、世慣れた咎人と世間に疎い与力の二人旅になる。旅籠には大泥棒や、敵討ちの侍や、身売りされた娘などがいる。風俗も描かれ、与力が経験する江戸時代を読者も共に知る。旅と人情と士農工商が分かる教養小説。(松) |
あ |
朝吹真理子 |
流跡 |
2023
6/27 |
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誰かが本を読むところから始まり、読み手が物語の中に入ってしまったような流れで、神社に引き寄せられて船頭になり、次に家庭を持ち子供の父親で暮らしている。とにかく流れ流れて、取り止めの無い物語。読めない漢字や慣れない擬態語が多いが、いちいち調べないで読み進める。ハードカバーだが102ページの小品。ドゥマゴ文学賞。(竹) |
あ |
彩瀬まる |
花に埋もれる |
2023
8/1 |
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6編を収める短編集。始めの2編は物が脇役で、残り4編は現実に少しの幻想を入れた作品。表題名の作品は無いが、全作品花が主題としても良いのかも。中でも「二十三センチの祝福」は自分の好み。違う人生があったのに選ばなかった二人と、何気無く過ぎていく人生の哀しみが浸みる。名前は知っていたのに作者の小説は初めてようだ。(竹) |
あ |
荒木あかね |
此の世の果ての殺人 |
2023
4/10 |
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此の世の果てとは、2ヵ月後に小惑星が九州熊本に衝突する事。世界の終末で、逃げる人自殺する人で社会は崩壊。でも、女性は運転教習所に通う。教官は元刑事。殺人死体を発見し二人で事件を追う。筋書きは良いが細かい部分の不自然さがある。江戸川乱歩賞で巻末に選者の評がある。全員一致の受賞らしいが、先が分かるので面白さイマイチ。(竹) |
あ |
有川浩 |
三匹のおっさん ふたたび |
2023
12/5 |
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還暦過ぎの3人。剣道、柔道、電気工作がそれぞれ得意。暇を持て余し町内の夜回りを勝手にする物語の続編。世相の変化を夜回りや世代が違う家族との関係で知り憤る。感情を移入出来るから面白いし、スイスイ読める。漫画的な表紙や挿絵は好みでは無い。更に続編が読みたいが、変わり行く世の中、ネタ切れにはならないと思う。(竹) |
い |
石井仁蔵 |
エヴァーグリーン・ゲーム |
2024
12/10 |
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何人かの男女のチェスとの係わり合いから成長、そして高額賞金の大会で戦いを描いていて、作り易い小説と言える。人物が大事だが魅力的には書かれていない。悪役となる人物もただ不快なだけ。ポプラ社新人賞を取って、巻末には絶賛の記事が貼られているが、自分には面白さが分からなかった。ルールを知ろうという気にもならなかった。(竹) |
い |
石田衣良 |
コンカツ? |
2024
2/13 |
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東京で働くアラサー女子4人の結婚への道程を描く。主人公は自動車会社の総合職で結婚相手への条件は高い。お見合いパーティとかマッチングサイトでの合コンでは見つからない。そのうち父母の離婚が本決まり。結婚が分からなくなる主人公。都会の華やかさはドラマのようで、現実には思えないのは田舎暮らしだからか。思った通りの進行と結末。(竹) |
い |
岩井圭也 |
楽園の犬 |
2024
12/10 |
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太平洋戦争前の緊張高まる南洋サイパン。そこに内地での仕事が出来なくなった男が採用され、アメリカのスパイを監視する役目を負う。男は任務に着いた当初から自分は「犬」だと言うのと、「楽園」という言葉も読み終わって違和感ある。男は非戦論を考えるが、歴史を知っている今の人が作った「人間」という印象。安易な人物構成という気がする。(竹) |
う |
上橋菜穂子 |
精霊の守り人 |
2023
4/28 |
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偶然から皇子を救った女用心棒は、王の刺客から命を狙われる皇子と逃避行。皇子に産み付けられた卵を狙う怪物もいる。100年毎に卵を孵さなければ日照で民は苦しむ。呪術師、聖導師、狩人が入り乱れ活劇シーンありで面白い。青少年向けSFファンタジーで振り仮名が多いのが難だが、この版ではこれでも大人用に漢字を多くしたらしい。(竹) |
う |
宇佐美りん |
推し、燃ゆ |
2024
2/13 |
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推しを推す事だけが生きがいの女子高生。バイトで稼いだ金を推しに全部注ぎ込みライブを観てブログにアップする。その推しがファンを殴って炎上。だからと言って女子高生は変わらない。アルバイトをしている時は普通に見える女子高生。推しがいる事で平衡を保っているのか。自分には滅私奉公(古い)のような他人に執着する気持が分からない。(竹) |
え |
江國香織 |
ひとりでカラカサさしてゆく |
2023
10/24 |
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八十歳を過ぎた男二人と女一人がホテルで自殺した。本人達も登場するが殆どが残された者達の物語。全員が色とりどりの人生。結末も上品。人数が多くて係累を思い出すのが面倒だが、男一人は身寄りが無いので把握し易いのは作家の親切か。題は「雨降りお月さん」の歌詞で、三人で死んでも、一人で生きて一人で死んでゆくのかな。(竹) |
お |
太田光 |
文明の子 |
2023
5/30 |
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311ページに22編の短い小説を収める。ありふれた題材を著者が料理する。其々が関連した文明批評か。ただ、誰でも知っている事象を上辺だけなぞっている。深みが無いからスイスイ読めるが、軽過ぎて面白味が無い。最近新たに小説を書いたというので前の小説借りて読んだが、拍子抜けする位詰まらない。新しい小説も期待出来ない。(竹) |
お |
小川一水 |
こちら郵政省特別配達課(1) |
2023
6/13 |
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民間との競争の末に、コスト無視で何でも配達するという特配課に配属された男の眼を通したお仕事小説4編を収める。全くの未来の小説なら良いが、現実に近い設定では素人が乗った馬で日本ダービーを走ったり、地下鉄路線をバイクで走ったりはやり過ぎで現実離れして楽しめない。金は掛けても犯罪にならない面白い配達を考えられるはず。(竹) |
お |
小川洋子 |
博士の愛した数式 |
2024
10/29 |
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テレビとかで何度か目にした題名。今回初めて読む。2003年7月初出とある。家政婦として働くシングルマザーが担当した独身男性は一人暮らしで交通事故以後の記憶が80分しか続かない元数学者。家政婦の息子も下校後に来て、3人の家族のような生活が続く。数学の公式が出て来るが自分には難しい。作者は良い題材を見つけたと思う。(竹) |
お |
小川洋子 |
妊娠カレンダー |
2023
8/15 |
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両親は無く姉妹で住む家に姉の夫が同居。姉が妊娠した為に起きる不合理とも言える姉の言動を妹は受け入れる。でも…。ハードカバーだが200ページ未満で幅も小さな本。3作の短編を収める。1991年の本で大分擦れて傷んでいるが汚れてはいない。表題作は芥川賞で知っていたが30年も前か。作者の他の作品は何冊か読んだが印象が無い。(竹) |
お |
小川洋子 |
薬指の標本 |
2023
4/28 |
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表題作はサイダー工場勤めで薬指を怪我した女性が、何でも標本にするという個人の作業所に勤める。他に「六角形の小部屋」。どちらも女性が主人公で少しちぐはぐする現実から離れ、自分の心を見つめるような小説。ハードカバーだが幅が狭く208ページと短いのでスムーズに読める。SFとも言えず娯楽小説で無いとしたら、これは純文学か。(竹) |
お |
荻堂顕 |
飽くなき地景 |
2024
11/26 |
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没落する旧家に生まれた男の父は会社を興し家を助けたが、他所に女性を住まわせ子供も作った。そういう時代だった。男は父を憎み、美術品を好む祖父を慕った。その趣味の日本刀が物語のベースにある。一人称で語られる男の年代記。男の若い時は稚拙と感じたが、年を取っても人間としての魅力を感じず、感情移入出来なかった。(竹) |
お |
荻堂顕 |
ループ・オブ・ザ・コード |
2023
5/9 |
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生物兵器の使用で、それ以前の記憶も記録も国際社会から抹消され生まれ変わった国で、若年者に奇病が発生した。それを調べる国際機関の男。同時に、よそ者からの強制を嫌がり、生物兵器を盗み出す旧勢力も捜査する。近未来SFサスペンスだが、背景が複雑で分かり難い。純粋な日本人は出てこない国際的な小説。題名はあやとりの英名らしい。(竹) |
お |
奥田英朗 他 |
恋愛仮免中 |
2023
10/24 |
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有名作家5人の恋愛小説アンソロジー。窪美澄は好きで原田マハは好きでは無い。奥田英朗、萩原浩は長編を読んだ事がある。中江有里は女優として知っていて、小説はこの「シャンプー」が初めて。中学生女子の友人関係と家族の関係を描いているが、一つの結論も出して好感が持てる。全部で226ページの小品。スイスイ読めた。(竹) |
お |
恩田陸 |
なんとかしなくちゃ。青雲編 |
2023
9/28 |
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「キモチワルイ」と思う事があるとなんとかしたくなる女性の幼年期から大学3年までの話。父母共に大阪東京の老舗の系譜で世間的には裕福。兄二人姉一人の兄弟で家族的にも仲良しの羨ましい境遇。こういう恵まれた人が頭も良かったりするんだよなとフィクションの人物に嫉妬したりする。時々作者も登場する小説。脇役が良いから面白い。(竹) |
お |
恩田陸 |
蜜蜂と遠雷 |
2023
8/1 |
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日本で行われるピアノコンクールを舞台に、様々な人が競い合う青春群像小説。生い立ちも年齢も国籍も性別も違う人達が戦うが、其々の個性がクッキリ出て三国志のような趣がある。文章で表現する音楽は例え話が多く、クラシックの門外漢にも楽しめた。ただ500ページ超の大作で終盤は饒舌さが飽きて来た。7年越しにやっと読めた。(竹) |
か |
か |
川越宗一 |
天地に燦(さん)たり |
2024
10/29 |
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秀吉の朝鮮出兵で巡り合う島津の侍と朝鮮人と琉球人。戦いの中でしか生きがいを見出せぬ侍。身分制度から抜け出そうとする朝鮮の賤民。国の行く道を探る琉球の密偵。其々が大きな歴史の流れの中で個人の生き方を考える。韓国人が日本人を嫌いになった元となる歴史的事件だが、特に目新しいものは無い。そういう小説では無いか。(竹) |
か |
川上未映子 |
夏物語 |
2023
7/11 |
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大阪生まれで東京に住む女性。家族には恵まれず唯一の肉親の姉とその子とは離れて暮らしている。小説を1冊出版するがその後が書けないが、エッセイなどで生計は立てている。自分の子供に逢いたいと漠然と思い、精子提供を考えたりする。主人公とその周りの人達の人生を丁寧に書き込んだ500ページを越える大作。久しぶりに感動。(松) |
か |
川瀬七緒 |
二重拘束のアリア |
2024
12/24 |
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賞金稼ぎスリーサムの2作目。元刑事と凄腕女性ハンターと警察マニアの金持ちがメンバーの3人。1億円の報奨金を得て刑事専門の調査会社を起こすと、3年半前の夫婦の互いに殺し合った事件の依頼が来る。仲が良さそうな夫婦なのに疑問だらけ。この結末を破綻無くどうつけるのか、読みながら楽しみだった。それで、まあまあといった所。(竹) |
き |
木地雅映子 |
ぼくらは、まだ少し期待している |
2023
6/27 |
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高3男子は知り合いの女子の失踪を調べる。夏休み中で別居中の弟を探しに出た。複雑な家庭の事情は男子も同じ。母親の違う弟を連れて札幌から東京へ。そして東京から沖縄へ。気になる女子を追う事で、他人と係わるのを避けて来た男子の成長物語。家庭環境が複雑な人ばかりが登場。読み進めるのに把握しておくのが面倒。アッサリしたエンド。(竹) |
く |
窪美澄 |
じっと手を見る |
2023
11/7 |
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富士山の見える土地で生まれた幼馴染の男女と関わった人達が織り成す連作短編七編。二人が選んだ仕事が介護士。年取ってからでも続けられるはずだったが、若いうちから身体がキツイ上に低収入、仕事でセクハラもある。男は望んだが、女は男に飽き足らず別の人に心を寄せる。表題の作品で男は別の女と別れるが、原因が分かり難い。(竹) |
く |
熊谷達也 |
虹色にランドスケープ |
2024
1/4 |
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バイクがある生活の連作七編を収める。バイク好き仲間のそれぞれに関係する短編集。記憶が悪いので前の編を見て関連性を確認する。最初の事件を最後に回収する。自分も今は125ccのスクーターになったがバイクは好きだ。でも他人のバイクの傍若無人な走り方が気になって、バイク乗りを好きになれない。悪気は無いのだろうけど。(竹) |
く |
黒田夏子 |
abさんご |
2023
12/19 |
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表題作で芥川賞受賞した75歳。若い時の作品も収める。表題作は横書きで左から開いていく形式。内容は15編のショートショートで、漢字が少なく固有名詞が無い実験小説。母が先に亡くなり、父親と娘で住んでいた家庭に、お手伝いさんが入って変わったというような内容と理解した。表題はaかbか枝分かれする珊瑚を表しているらしい。(竹) |
さ |
さ |
桜庭一樹 |
青年のための読書クラブ |
2024
8/13 |
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幼稚舎から高等部まである東京の名門女学校の異端者が集う読書クラブ。代々、女学校の裏歴史を書き留める読書クラブ員。五章に渡って収めている。表題に青年とあるが自らをぼくと名乗る少女達の事。勝手に、青年が教師として赴任して少女達と交わる話かと思っていたが、ガッツリ少女達による少女達の話だった。まあまあ面白かった。(竹) |
さ |
佐藤究 |
爆発物処理班の遭遇したスピン |
2024
8/13 |
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8編を収める短編集。背景となる環境と物語を走らせる問題が多彩で、それぞれが面白い。サスペンスに現実感があるもの、SF的なもの、アイディアが豊富。ただ表題となる一編はスケールが大きいが理屈っぽい。一番好きなのは「くぎ」。カタルシスがある。装丁は何だか分からないのが残念。作者は初めて読むようだ。この先楽しみ。(竹) |
し |
柴崎友香 |
その街の今は |
2024
8/30 |
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大阪に住む28歳女性。会社が倒産してからずっとバイト生活。決まった彼はいなかったが、最近付き合うようになった彼とは進行中。でも、不定期の不倫も切れてはいない。大阪にいる両親は、近々愛媛に引っ越すが付いて行かない。昔の大阪の写真を見るのが好き。その場所に今の自分を重ねてみる。若さの端っこで揺れるように生きている。(竹) |
し |
白尾悠 |
サード・キッチン |
2024
1/16 |
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アメリカ留学した少女。裕福では無いから資金援助を受けている。その為に優秀を取りたいから勉強漬け。人種や経済格差の大学で、英語が下手でコミュニケーション不足でストレス。隣りの部屋の女性に誘われて入ったサード・キッチンで色々な気付きを得て、積極的になる少女。自分の身の上にも隠されていた真実が明かされる。爽やかな青春小説。(竹) |
た |
た |
高樹のぶ子 |
寒雷のように |
2023
9/28 |
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表題の他2編を収める短編集。表題は朝鮮が日本の植民地だった頃に日本に来ていた学生が軍部で出世して、世話になった先生や家族に逢いに来る。その様子が先生の孫娘から語られる。他も古いが懐かしく、心がざわつく題材。語られない所もあるが、当時の人間にしか分からないだろうなと思った。昭和59年の発行。表紙が白は何故。(竹) |
た |
高田大介 |
図書館の魔女(下) |
2024
6/1 |
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一ノ谷の隣国では政変の恐れ、別の一国とは戦争が避けられない。危急存亡の時に図書館の魔女は全てを解決する手段を考え付く。魔女達一行は隣国に入り、一ノ谷の王の代理として三国会談を取りまとめる。全体の筋は良いが叙述がくどいので無駄が多い。下巻はより厚く805ページで、702gで腕が疲れた。人気があるようで本が傷んでいる。(竹) |
た |
高田大介 |
図書館の魔女(上) |
2024
6/1 |
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海峡地域の一国の一ノ谷王国。そこに世界戦争が起きる前に鎮めた図書館の魔法使いがいた。歳若い図書館の魔女に代替わりして、戦争を望む人々が暗躍する。魔女は声が出せないので通訳として少年が雇われた。図書館は知識の宝庫。魔女は言葉だけで世界を戦争から救えるのか。652ページの読書は物理的にも大変。内容も理屈が多い。(竹) |
は |
は |
橋本治 |
橋 |
2024
10/15 |
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地方に住む二人の少女とそれぞれの娘の生き方を、時代の流れの中で描いている。接点は少ない二人だが同じ土地で同じ時代に生きた。一人は水商売、一人は信用金庫に勤め、結婚して出来た娘達も母親のレールの先を進む。今と比べると昭和は激動の時代だったと思う。それでも楽しい事もあったはずだが、この小説では描かれていない。(竹) |
は |
橋本治 |
巡礼 |
2024
6/25 |
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ゴミ屋敷の住人の歴史から、昭和の日本の成長が読める。姑は悪い人では無いのにちょっとした事で行き違いになり、嫁となっても不幸な事があり、分かり合えず離れてしまう。親子や兄弟の間でもそう。そんなお話の連続。結末は安易に思える。巡礼をしたら天国に行けるのか。二泊三日の仙台旅に持参して往復の車中だけで233ページを読了。(竹) |
は |
原ォ |
愚か者死すべし |
2023
10/10 |
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探偵・沢崎シリーズの新シリーズの1作目。2000年以前に第一期の長編を読み、次を待ちくたびれて忘れてしまう。作者が今年亡くなって思い出した。暴力団組長襲撃事件と政界の大物の誘拐事件が同時に起きて沢崎が巻き込まれるという展開。偶然起きる事件は怪しいとミステリー読みは思うが、都合の良い展開でも面白ければ良いのか。(竹) |
ひ |
東野圭吾 |
ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人 |
2024
1/16 |
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ウイルスの蔓延で疲弊する地方の町。そこで退職した教師が殺される。殺された元教師の娘と、弟が事件を捜査する。元教師は卒業生の相談に乗っていたという。弟は元マジシャンで強引な手法で警察から情報を取り、容疑者に罠を仕掛ける。全体に映像的な作品。小説としてはイマイチ。題も安っぽい。それに動機は自分でも予想していた。(竹) |
ほ |
堀江敏幸 |
めぐらし屋 |
2023
11/21 |
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母はとうに亡くなり、最近父も亡くなったアパートで遺品整理中に電話が鳴る。「めぐらし屋さん、ですか?」と。独り者の女性は、父親の人助けを調べていくうちに、周りから助けられて生きている事を実感する。毎日新聞の日曜版の連載らしいが覚えていない。本誌の小説は読まないが日曜版は読んでいたはずなのに。乾いた人情話は良い。(竹) |
ま |
み |
三浦しをん |
私が語りはじめた彼は |
2024
7/16 |
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大学教授の多様な女性関係で崩壊する家庭と子供。新たな家庭と子供。怪文書が出て、それを取り繕うよう指示される弟子の研究者。教授は自身としては登場しない。他の人に影響を与え、他の人の動きが連作短編小説になっている。作者の小説は多く読んだ方だが、これで直木賞を取ったとは知らなかった。それほど面白くも無い。(竹) |
み |
三浦しをん |
あの家に暮らす四人の女 |
2024
2/27 |
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東京の古家に暮らす4人の独身女性。2人は母娘、1人は娘の友達、もう1人はその友達の会社の後輩。後輩はDVに遭い男を遠ざけ、他は元々男っ気が無い。その為か平穏に暮らしている。それでも様々な事が起きる。谷崎潤一郎の「細雪」のメモリアル小説と銘打ってある。割合好きな作家でスイスイと読めた。このように愛や恋を抑えた物語が好き。(竹) |
み |
皆川博子 |
アルモニカ・ディアボリカ |
2024
3/12 |
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18世紀のイギリスで法と医学の先駆けを行く人達が様々な事件に立ち向かう物語の続編。登場人物が多く前作の関係性を忘れているし、ストーリーの進行も前後するので、読み進むのが大変。日本人作家が書いた海外小説は他にもあるが、これは重厚になり過ぎて面白く無い。飛ばし読みで何とか最後までたどり着いた。3作目もあるが読まない。(梅) |
み |
宮内悠介 |
ラウリ・クースクを探して |
2024
7/16 |
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ラウリ・クースクはバルト三国のエストニア人。幼い頃、まだパソコンの黎明期にプログラミングが得意だった。同じプログラミング好きのロシア人と仲良くなる。ソ連が崩壊してエストニアも独立。ロシア人は勿論、エストニアの友達とも疎遠になる。書いているのが日本人なので探しているのは日本人かと錯覚した。小説とすると内容が薄い気がする。(竹) |
む |
村田喜代子 |
飛族(ひぞく) |
2024
5/18 |
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九州の離れ小島に住む母92歳の元を訪れた娘65歳。島には88歳の海女友達もいるが二人とも元気。娘は自分の住む大分に母を連れて帰りたいが、母は拒む。歴史的にも重要な島だったが、住み良い暮らしを求めて人は本土へ移り限界集落となった。時化で死んだ人を鳥になぞらえて思いを語り踊りを踊る。娘はこのままでも良いと思うようになる。(竹) |
む |
村田喜代子 |
エリザベスの友達 |
2023
9/7 |
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認知症の母親を介護施設に預け、独身の姉妹が見舞いに通う。母は97歳、自分達も老いて来た。母は遠い昔に中国の天津の租界で優雅に暮らしていた。その記憶が濃く残っている。租界では日本人同士の奥様が英名で呼び合っていた。エリザベスは満州皇帝の皇后の英名。認知症は穏やかに死ぬ為の身体の防御本能か。なるようになる。(竹) |
や |
や |
矢作俊彦 |
ららら科学の子 |
2024
3/12 |
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左翼学生で警官を殺人未遂し中国に逃げていた男が30年振りに蛇頭の船で帰国。30年前の東京と今を比較する男は浦島太郎状態。友人に連絡を取ると非合法組織の幹部で男は優遇されるが、蛇頭から逃げたのでトラブル。ストーリーが進む可能性が広く、ワクワクしながら読んだ。憧れの都会の小説だ。「赤頭巾ちゃん気をつけて」を思い出す。(松) |
や |
山田詠美 |
ぼくは勉強ができない |
2024
7/30 |
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父はいないが、母と祖父と年上の恋人がいる高校生男子が主人公の連作短編集。全9編の最後は番外編で主人公が小学生の時の出来事。自分の高校生活を振り返ると、自分を持ち、他人にも関わって行く若者が羨ましい。こういう青春小説が好き。久しぶりに面白い小説に当たり、スイスイ読んだ。燕図書館では珍しい文庫本だが寄贈品。(松) |
や |
山田詠美 |
熱帯安楽椅子 |
2024
4/3 |
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小説家の女は、男との関係が終わり、世間からの非難にも疲れてバリ島に逃げる。そこの男は外国人の女に優しい。外国人なら通りすがりの関係で終わるから。女は何人かと関係してから、ステディな相手を見つける。男の友達の少年とも仲良くなる。事故の後に女は東京に帰る。1987年の作。この女の奔放さは今となっては珍しい事ではない。(竹) |
ゆ |
湯本香樹実 |
春のオルガン |
2024
4/27 |
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ページを開いてフリガナが多い。なんだ児童書かと思ったが面白かった。小学校を卒業したばかりの少女の春休みの家族と猫と世間の話。おじいさんが小さい頃のクラスの子とのケンカの話は涙が止まらなくなって困った。オルガンは出てくるが重要ではないので、文中にあった「月の砂漠」が流れているという暗喩か。「西日の町」以来の2冊目。(松) |
よ |
由原かのん |
首ざむらい |
2024
4/27 |
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短編4作収める。表題作は豊臣と徳川の戦いの末期に母の頼みで実の父親を捜しに大阪へ旅する若者の奇譚録。副題に夜にも怪奇な江戸物語とあるが、他3編も一冊にする為に無理に寄せたような内容。表題作はオール讀物新人賞受賞で腰巻には面白さの謳い文句があるが、それ程でも無い。アイディアもストーリーも平凡。突き抜けるものが無い。(竹) |
わ |
わ |
綿矢りさ |
勝手にふるえてろ |
2023
11/21 |
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奥手な26歳経理女子。営業男子から付き合いたいと申し出があったが、高校時代から片思いの男子がいて同窓会で逢った。両方とも付き合わないまま、自分の気持を探って行く。ページ1枚が厚いと思ったら全162ページ。行間も緩い。長岡帰りのバスの中で半分読んでしまう。単行本だが短編程度のボリュームだった。内容はまあまあ。(竹) |
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