二王子胎内薮道。
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     2013年7月21日の気持ち

ナリバ峰まではヤブは少なく普通に登れる。ナリバ峰自体がヤブの中で、黒石山まではヤセ尾根とヤブの繰り返しで何とかなる。黒石山から先は99%が背丈以上のヤブとの格闘で時間と心身を消耗リタイア。


     2013年7月21日10時58分
       舟窪の小池塘にて

このルート上では珍しく広く開けた所。地図によると1301ピーク付近らしい。この先は左の残雪を行きつめると小さな急な涸れ沢(涸れ滝)があり、ロープを伝って登って行く。リタイア後はここまで戻り昼食。

 前前日の天気予報で好感触を得ていて、準備をしていた7月3日の二王子岳胎内ルート登山は、前日になっての逆転の天気予報で順延を余儀なくされました。その後も、自分の休日と好天が合う事は無く、今日に至ってしまったのです。
 前回の登山から数えると1ヶ月近くのブランクです。その間にした運動と言えば1時間程度の水泳、水中歩行を2回やった事だけです。体重も少し増え、身体の切れも悪くなりました。シーズン初めにリセットされてしまったような感じです。
 今回も天気予報は前夜になって少し悪化しました。天候は曇り、降水確率は20%です。まあ、却ってカンカン照りよりは歩きやすいかもしれません。雨さえ降らなければいいのです。
 登山口は胎内第一ダムにあります。登山口は違いますが、近年では杁差岳や風倉山の登山に来ていて中条インターからの道順も覚えてしまいました。
 胎内川には幾つかのダムや発電所があり、現在も1基作成の準備をしているようです。名前は上流から順番に付けられているようでは無いので、胎内第一とか第二とか胎内川とかあって、初めて行くとややこしいです。それに、少し離れた下流に胎内第一発電所というのもあり素人には間違えやすく感じます。 
 二王寺岳は新発田側から2度ほど登っていますが、胎内ルートは初めてで、ネットを検索して2011年6月19日に登られた長谷川さんの記録を参考(上りはそっくり同じ)にさせて頂きました。2011年当時もヤブで、自分は2年と1ヶ月遅れの登山ですが、さらにヤブは濃くなっている事は予想出来ました(結果的に想定以上だったのです)。
 胎内第一ダムには広い駐車場があるのですが、まさか二王子岳に行く人達のものでは無く、飯豊連峰に登る人達の予備の駐車場のようです。今日も10台程が停まっていました。
 今日の装いは、上は化繊のハイネックの長袖(白)、下は昔のジャージです。頭は麦わら帽子ですが邪魔なのでザックにくくりつけ、頭にはタオルを巻きました。これも頭を枝から守るのに役に立ちました。頭の保護にはニット帽など良いかもしれません。軍手も勿論着用します。
 駐車場で準備中に、周りの植物を見ると草露は付いていないので、雨具のズボンは履かないでザックに入れスパッツだけを付ける事にしました。
 胎内第一ダムに下りる階段室を下っていると、子供に戻ったように何だか冒険の旅に出るような高揚感があります。ダムサイトは瀑布のせいで時々ひんやりした空気が流れます。反対側の丸パイプのハシゴを登って対岸の登山道に出ます。
 尾根まで落葉の急坂を上り、尾根では松やブナの巨木の根を階段代わりに上ります。途中にあった人工物は石碑の土台だけになったものと、古いロープです。ロープはこの先も要所要所に設置してありました。ナリバ峰には大木のお陰で潅木によるヤブは殆どありませんでした。
 ヤブの中の三角点がナリバ峰のようです。ここは、風倉山の南の稜線がつながっているのですが、眺望は全く無く残念です。ここまでは普通に登れる登山道なのですが、頂上がこれでは登ってくる甲斐が無いというものです。
 ナリバ峰から先がヤブとの戦いになります。黒石山まででも長い行程ですが、ヤブだけではなく湿地やガレたヤセ尾根などが時々あり、緩急が付いて退屈しません。ヤセ尾根では眺望も楽しめます。
 黒石山へは何度かニセ黒石で騙されながらやっと到着しました。行程時間は予定より6分遅れですが、出発が10分遅れなので全体で16分の遅れです。ちょっと嫌な予感がして来ました。
 黒石山は西側の一部の潅木が高くなっている以外は360度の眺望です。ここまで登ってくる価値があります。今日は曇りですが、東には北股岳の右奥に飯豊本山が見えます。西側は新発田市街が望めます。二王子岳は手前のピークに隠れて見えません。
 黒石山からが本格的なヤブ道となります。地図を見ると東側が急傾斜の割りに西側は比較的緩やかです。だから、ヤブの生えないヤセ尾根が無いのです。潅木は自分の背より高くて、ちょうど枝葉が自分の顔に当たり視線を遮ります。潅木の幹や枝を手でかき分け、足でかき分け、下を向いて道の痕跡を探しながら歩きます。
 しかも、尾根道とはいえ、道は殆どが東側ギリギリに付けられています。それが、一歩進むのに5〜6本も邪魔をします。両側からなら均等に押されるので真ん中を突き進めばよいのですが、片側だけだと、潅木は自分を崖に落とそうとする力になります。それに負けないように身体の脇の潅木を押し返しながらもその先の潅木をつかんで進むには全身の力を使わなくてはなりません。
 1301ピーク手前の急登では道を見失ってしまいました。一旦戻ってみるのですが分からないので、強引に本当のヤブこぎをして上を目指しました。何とか上がったら、両脇に低い尾根あり東側が開けた舟窪型の緩い傾斜の草原に出ました。まだ枯れ草が多い状態ですが、小さな残雪と小さな池塘があります。花はショウジョウバカマやシラネアオイがちらほらですが、これからお花畑になりそうです。
 道は舟窪型の尾根が合わさった所に水の流れていない低い滝があり、ロープを伝って登ります。さらに涸れた水路をたどって上ると湿地跡に出ました。ここで、道を見失いました。時間はもう、11時20分です。予定では、三光山には10時30分には着いていなければなりませんがまだです。森の中で先も見えません。雨も降って来ました。ここでリタイア決定です。
 ポケナビを見ると、リタイア地点は1301ピークの上の1320m地点となっています。気を落ち着ける為に水を飲もうとザックを見たら、サイドポケットに入れていた、水が満タンに入っていた500ccペットボトルがありません。ヤブでこすられて落としたようです。泣きっ面に蜂です。
 さっきの舟窪型の草原に戻り、池塘の前で昼食です。カエルの声とトンボの乱舞を肴にお握りを食べます。しばらくしたら、また雨が降って来ました。ここで、使わなかった麦わら帽子の出番となりました。
 早々に昼食休みを切り上げ、帰りを急ぎます。この下りで、また道を見失いました。上りでも見失った急傾斜の所です。方向を間違えて谷(狭い沢)に出てしまいました。進行方向が左にズレたという感じがします。戻るにはヤブの急傾斜を登らなくてはなりません。疲労しているのでパニくってしまいました。
 ともかく落ち着いて身体が落ちない位置で、ポケナビを取り出して現在地を見てみます。大分西に外れています。そんなに離れているはずは無いと思って、現在位置を設定し直すとルートの近くです。森の中で谷筋なのでGPSの感度が悪いようです。
 方向は谷を下って前の尾根に上った先です。手持ちの磁石でも確認しました。右に進路を修正してもいいのですが、同じヤブの急登を登るならと、一旦谷に下って尾根に上がりました。そして、ルートに戻りました。ヤレヤレです。
 後はもう、難しい場所は無いはずですが、潅木との戦いは続きます。もう、全身運動です。黒石山の手前で往きに落としたペットボトルの水を発見しました。奇跡です。嬉しくなって、まだ先は長いのに飲み過ぎてしまいました。
 水を拾った代わりのように、今度はクマ除けの鈴をDリングごと落としてしまいました。帰り道で何だか静かなのに気が付いて、手でザックの後ろを探ったらありませんでした。バネで開閉するDリングなので、潅木の枝が器用に開けて外してしまったのでしょう。
 黒石山からはもう休み休み下りて来ました。長い長い下りでした。最後は持っていった2リットルの水を飲みつくし、食料を食べつくし、残っていたのは塩飴1個だけでした。水が2リットルでは少なかったと反省しました。還りに500ccの水を拾わなかったらどうなっていたか、考えるのも怖いくらいです。
 ダムに降り立った姿は、ハイネックの長袖の両腕部分は潅木との格闘で黒く汚れ、頭のタオルは木の皮の小片がついていたものが、何度も汗を搾ったので、全体に薄黒くなり、スパッツを外してみると木の皮がごっそりと詰まっていました。
 ヤブこぎは身体全身を潅木に擦りつけ、時に殴打されながら歩きます。潅木の花粉や皮の粉、埃、虫を吸い込み喉がいがらっぽくなります。メガネをしていてもレンズの脇から小さな枝が入って目を指すので、ヤブに立ち向かう時は目をつぶります。少し高い潅木はしゃがんで通過します。
 ヤブこぎ中に皮膚が出ている首筋や長袖と軍手の間の部分で、ピリッと極細いもので刺されるような痛みが時々ありました。あれは何だったんでしょう。植物のトゲとも違うようです。ドクガの幼虫でしょうか。
 家に帰って風呂に入ってみると、足には幾つもの痣が出来ていました。それでもジャージーのズボンは切れていなかったので丈夫なものです。裸になってみてもマダニは刺さっていません。
 登山の次の日はまだ登る前より2kgの減量で、水分不足の為か1日便秘でした。鼻をかむと黒いものは出るし、花の種みたいなものも入っていました。喉もいがらっぽくタンが黒いのです。キタナイ話で済みません。
 ヤブこぎは何度か経験しているので少し自信があったのですが、今回のリタイアの原因は尾根に上ったらヤブは少なくなるとの思い込みがあったからですが、こればっかりは登ってみないと分かりませんね。ヤブ道の量に負けました。
 リベンジの為に胎内第一ダムからもう一度二王子岳を目指す気はありませんが、新発田ルートで二王子岳頂上に行き、そこから舟窪往復は出来るかもしれません。新発田ルートで頂上まで往復4時間30分(昼食休憩含む=2001年10月の実績)、頂上から小池塘往復3時間30分とすると、合計8時間となるので、今回の予定よりも時間的に短く楽そうです。今年はもうヤブこぎは充分味わったので来年になったら実行してみましょう。