海谷三山と渓谷。
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    2013年10月14日の気持ち

駒ヶ岳頂上から鋸岳の間は思った以上の険しさで、無雪期で道のある山としては最高ランクの危険度だと思う。ロープや鎖やハシゴが要所要所に設置されているが、山自体の険しさは自分のような者が入れるギリギリの山だと感じた。

    2013年10月14日9時59分
      鬼ヶ面山南峰にて
左から昼闇山、火打山、焼山、金山、天狗原山。この右に高妻山や雨飾山も見えるが画面に入り切れない。高い山に囲まれた鋸岳は小さいながら峻険さが窺える。こんな上天気に登れて、余は満足じゃ。
     
海谷三山縦走にまつわる珍事件

○インターチェンジ通過事件

 前夜車中泊の予定を当日日帰りに変更したので、自宅を早朝に出発しました。北陸道は暗いですが空いていました。オートクルーズを100km/h+αにセットして両足を楽にして、ブレーキをかける事も無く、遅い車はハンドルでかわして走行していました。
 カーナビは高速道を降りてからセットするつもりでした。ライトを点けるとカーナビの画面は反転して暗くなり見難くはなるのですが、道路脇には照明のある看板があるはずだし、糸魚川ICが分からないはずは無いと思っていました。
 上越JCTを過ぎた辺りでトンネルが多くなり、出たり入ったりを繰り返していました。トンネル内は明るく、出ると暗くなる事の連続で、目が暗さに適応しなくなっていたようです。
 あとから地図を確認したら、糸魚川ICは平牛トンネルを出て2km位の所です。蓮台寺PAもあったのにこれも覚えていません。居眠り運転では無いと思うのですが、注意散漫になっていたようです。
  行き過ぎたかと気が付いたのは何処かのトンネルを出た時に、薄暗い中に佇む工場群と車内に入ってくる化学的な臭いでした。あっ、ここは電気化学工業だ、青海だ、行き過ぎたぁ、と思いました。
 実はカーナビの画面は前の画面がずっと出ていたのです。オーディオを操作した時に、知らずに手動検索に入れてしまったようです。
 結局、親不知ICまで行って下りてUターンして又北陸道に乗り、下り線から糸魚川ICを下りました。
 前には関東でJCTを間違えた事がありますが、その時は90度違う方向に行ってしまったので大変弱りました。ICで高速道に乗る時に目的地と反対方向に上った事もあります。長く生きていると色々な事があるものです。


○車道落岩事件

 糸魚川ICからR148を南下し、根知駅手前で根知川沿いの地方道に左折します。根知小付近でさらに左折し山を上って行きます。この辺はもうカーナビ任せで言うとおりの運転です。
 御前山集落に近い所で、道路が崩落し山側に道を新設した所を過ぎると突然道路の真ん中に岩が現れました。
 道が狭いので岩の脇を通れそうもありません。車を降りてみると右の山側の草が潰されています。昨日の夜から今日の朝にかけて落ちたのでしょう。
 岩は長さ1m位、厚さ50cm位で長手方向が道路と平行になっていました。手をかけて押してみますが動きません。相当な重さです。
 山側の路肩を通れるか見てみますと草陰に埋まった岩の頭があります。これでは路肩も通れません。落ちていた木を梃子にして動かそうとしますが木が折れてしまいました。車は通りかからないし、近くに迂回路は無いしと往生しました。
 もう一度、憤怒の勢いで岩を押してみました。岩を引きずる事は出来ませんが、岩の長手方向を軸として揺らす事は出来ました。揺らしても元に戻りますが、何度も押して揺れを大きくすれば動くかもしれないとやってみました。
 ついに1/4回転動きました。これなら、車が通れる幅が出来たようです。両側の窓を開けて左右を見ながら恐る恐る車を進めたら通りました。いやー良かった良かった。これで予定通り山に登れると安堵。
 近くに道路が崩落した所があり大雨によるものと思いますが、多分この岩もその時に動いて途中で止まっていたものか、或いは支えていた土砂が流れ出して何かのきっかけで動くのを待っていたものなんでしょう。ローリング・ロック、オレに当たらないでくれぇー。


○登山口記憶消失事件

 自分のカーナビは古いので御前山集落から先の登山口の三峡パークへの道はありませんし、目的地に設定も出来ません。そこで御前山集落を目的地にして来たら、分岐に立派な絵地図の表示板がありました。お陰で無事、三峡パークにたどり着いたのですが、前の登山口にあった海谷第1発電所が見当たりません。
 21年前はRZR250R(バイク)で来て、海谷第1発電所の脇に駐車して狭いですが舗装された道を山境峠に上りました。そこから海谷渓谷への道と別れ、ロッジこまがたけがある駒ヶ岳登山口に上ったのです。
 推理してみると、現在は御前山集落から山境峠まで新しい道が出来て、山境峠は三峡パークとなり、海谷第1発電所付近を通る事は無くなったというのが正解のようです。
 おぼろげな記憶を補うのが写真なのですが、21年前はデジカメも無く、10枚程度しか撮らなかったので助けになりません。そこへ行くと今回は210枚も撮りましたが、さて、21年後に参考になるでしょうか。


○自己体力低下事件

 21年前は山境峠からだと駒ヶ岳頂上まで1時間24分で登っています。今日は同じ所にあると思われる三峡パークから1時間44分かかりました。ちょうど20分も遅くなりました。
 数年前に水泳をしていた時は、若い頃より早く登れたと自負していたのですが、もう、水泳を辞めているので体力が衰えて来たようです。身体を鍛えている訳では無いので、これが普通の61歳ですよね。
 三峡パークには駒ヶ岳まで2時間30分と表示されているので、1時間44分でも立派な記録です。21年で20分遅れたという事は、1年に1分遅くなったという事です。そう思えば老化と言っても大した事はありません。と、自分を慰めています。
 それにしても前の実績で登山計画を立てるのは考え直さなくてはいけません。


○海谷三山軽視事件

 駒ヶ岳から鬼ヶ面方面へ急下降して、1回上ってから再度の急下降をしていると2人ほど停滞していました。それがヘルメットを被った岩登り装備です。ええっ、そんな重装備がいるのと心の中で思いました。
 まだ下に何人かいるようです。急下降のロープが一人ずつなので手間取っているようでした。次は先に下りていいと言われました。有難い事でお言葉に甘えてお先に行かせて貰いました。
 団体の7〜8人全員がヘルメット姿なので、ニット帽にジャージの自分は何だか場違いの所に来ているようです。それにしても大げさなと思っていたら、その下の断崖絶壁で絶句しました。
 ロープや鎖はある(古い)のですが殆ど垂直の岩壁です。通過する時はオーバーハングしているような感じです。頭の中で何かの映画のシーンのように「コーション・コーション」と警報が鳴り続けています。
 重大危険箇所は2〜3mの下りでしたが海谷三山を見直しました。いやーお見逸れ致しました。鋸岳手前の長バシゴより怖かったでしょう。


○海谷渓谷山蛭事件

 鋸岳に行った帰りに分岐から海谷渓谷に下りました。道は自分が心配した程の急下降でもありませんが、ロープ等は何もありませんでした。
 時々道が薄くなり見失いそうになりながら、薄暗い森の中を木の枝を掴んで身体を支えながら下って行きます。こういう雰囲気は苦手です。何か出そうな気がして来るのです。
 この時、突然、白長袖Tシャツの右腕に茶色くて細長いものが出現しました。ギャーと吠えて一瞬で振り落としました。
 瞬時に「ヤマヒル」だと。フラッシュバックしてみると、長さ5cm太さ0.5cm、手足が無くて頭は定かでは無く柔らかそうな雰囲気。
 ミミズでは無い、シャクトリムシでも無い、ナメクジでも無い、ヤマヒルだとしてもこんなヤマヒルは見た事が無いが、こんなヤマヒルがいそうな気もする。
 その後は得体の知れない虫に注意しながら恐る恐る木を掴み、足から上って来るものはいないか注意しながら下りました。結局、後で遭遇する事はありませんでした。
 薄暗い森の中でマボロシを見たのでしょうか?いやいやあれは現実です。後から考えたら写真を撮っておけば良かったと思います。
 冷静になればヤマヒルだとしても、たかが血を吸うだけの存在ではないですか。殺される事は無いのに何であんなにビックリしてしまうのでしょう。先祖の体験がDNAに刷り込まれているのでしょうか。


○新潟上高地事件

 海谷高地は、長野の上高地に似ているので新潟の上高地と言われています。逆では無いのはアチラが有名だからでしょうね。
 自分の知っている上高地は河童橋の辺りだけですから、似ているかどうかと言われれば、石がゴロゴロした河原がある所が似ていますとしか言えません。似ていないと言えるのは、海谷高地は人が少ない(取水口付近で1人に遭遇)事です。
 ただ、海谷三山からの降下点から三峡パークに戻る途中に歩いてみると、両側に山が迫り、河原は広く、スケール感は大きいですね。歩きがいがあります。
 前日昼までの雨で川が少し濁っているのが視覚的には減点ですが、紅葉が本格化したら素晴らしい眺めになると思います。水害の跡のような倒木や、河原の抉れも自然の一つと鑑賞出来ると思います。
 とは言ったものの、自分は正直、あまり感動しませんでした。行程の終盤で疲れていたせいでしょうか。それとも自然に食傷して不感症になっているのかもしれません。そうだとしたら悲しい事です。


○取水口迷道事件

 取水口付近で出会った三峡パークから来た人に道を尋ね、右岸に渡るよう言われました。右岸から取水口に着いたら道が無いようで左岸の堰堤の下方面に赤リボンが見えるので、堰堤を渡り左岸に行きました。
 左岸の赤リボンの先の道を探すのですが、左岸には無いようです。かといって、赤リボンの対岸の右岸にも道らしきものはありません。取水口の小屋には誰もいないので聞く事も出来ませんし、案内板もありません。道を尋ねた人は上流に行ってしまいました。
 ここは原点に戻ってと堰堤を右岸に戻りました。そうしたら山側に新しく作られた道を発見しました。上流から来た時は気付きませんでしたが、堰堤を右岸に渡った事で正面に道が見えたのです。
 ここに看板かせめて赤リボンを付けていてくれたらと思いました。三峡パークから来ていれば当然分かる事ですが、山から下りて来た人には分かりません。まあ、これも新しい道の醍醐味です。
 自分の想像では、以前は三峡パークからは右岸を来て、堰堤手前で左岸に渡っていたようですが、水害で右岸が削られ山側に新道を作ったようです。


○海川渡渉困難事件

 右岸のトラバース道を下りると海川の渡渉点がありました。岩を渡って行くと足を濡らさずには渡れない最後の渡渉です。向かいにペンキの矢印やその上にハシゴも見えます。ここが渡渉点に間違いはありません。
 しかし、左から来る水の量は多く、白く飛沫を上げています。川に足を入れてみると、結構深いのです。腰の近くまで水没しそうです。頼りになる岩の近くは下が抉れて深くなっているのです。かといって左の浅い方は水圧が強く流されそうです。昨日の昼までの雨のためか水量が多いようです。
 海谷高地では浅く流れていた川が、渡渉点の狭い所を通るのでエネルギーが高まっています。思い返してみると取水口では取水していなかったので全量海川へ流れているのです。
 渡渉点の浅い所を渡ろうとすると水の勢いが強いので流されそうになるし、水の勢いの弱い所を渡ろうとすると腰までつかり動きが悪くなる。さあ、どうする自分。
 結局自分は、渡渉点直前の岩から対岸の浅瀬に飛びました。落ちた衝撃で足の先を痛め、水も跳ね飛ばし膝の辺りまで濡れる事になりました。
 でも、後から三峡パークに帰って来た、取水口で出会った人は腹の辺りまで濡れていました。それに比べればマシです。
 渡渉点は橋は勿論、ロープも無いので、取水口で取水していればいいのですが、余程晴天が続いた後でないと危険です。


 後記

 色々な珍事件はありましたが、珍しく好天で楽しい山歩きが出来ました。本来今日は自分の休みでは無かったのです。同僚が用があるからと代わった休日だったのです。今日の自分はツイていました。